長官記者会見要旨(平成30年11月21日)

会見日時等

平成30年11月21日(水) 16時45分~17時04分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。まず、私から3点お話させていただきます。

  始めに、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」についてです。先月もお話をしましたように、本検討会では、危険度分布をはじめ防災気象情報が避難などの防災行動に一層役立てられるよう、危機感を効果的に伝えていくための方策や分かりやすくシンプルに伝えていくための方策等の改善について検討を行うこととしております。
  13日に開催いたしました第1回の検討会では、これまでに気象庁で実施してまいりました防災気象情報と避難との連携状況や、アンケートなどの検証結果をお示ししたうえで、課題や論点について委員の皆様に大変活発なご議論をいただいたところです。このいただいた意見を踏まえまして、今月末に予定しております第2回目の検討会では、改善策の具体案についてさらに議論を深めまして、年内には一定の方向性をとりまとめていく予定です。

  次に、11月13日に報道発表しました「第1回気象ビジネスマッチングフェア」の開催についてです。気象庁では、国土交通省生産性革命プロジェクトであります「気象ビジネス市場の創出」としまして産業界における気象データの更なる利活用や、産業分野の生産性の向上に取り組んでいるところです。この生産性革命プロジェクトに関連しまして、平成29年3月には産学官連携で気象ビジネスを推進する気象ビジネス推進コンソーシアムを設立いたしまして、会員数は設立当時の215から本年11月1日現在で439と大きく増加しており、産業界における気象データの利活用への期待がうかがえるところです。こうした状況を踏まえまして、11月30日には「第1回気象ビジネスマッチングフェア」を開催して、産業界における気象データの利活用が促進され、新たなビジネスの創出に大きく寄与していきたいと考えております。このようなイベントは初めての試みですので、報道関係機関の皆様におかれましても是非取り上げて頂ければとお願いを申し上げたいと思います。

  最後に、気象等に係る安全知識の普及や防災教育の取組についてです。毎年のように地震や大雨による被害が発生しておりまして、特に子どもたちへの防災教育の重要性に鑑みまして、今般、気象庁のホームページに、小・中・高校生等の防災教育に関する副教材や副読本として活用できる資料をまとめて紹介するポータルサイトを作成しました。ポータルサイトで紹介する資料につきましては、気象庁で作成したものもございますし、これに加えて、日本赤十字社、日本損害保険協会、都道府県、政令市の各教育委員会等が作成したものがございます。それらについては気象庁もその作成に協力させていただいたものがありまして、これらの資料をポータルサイトで紹介させていただきたいと思っております。また、ポータルサイトでは、作成した機関別、対象年齢別、現象別、資料の形態別等にそれぞれ分けて、容易に資料を選んでご覧いただくことができるようにしています。このポータルサイトが、防災を学びたい、あるいは防災を教えたいという方々が、資料を選び利用する際の一助になればと考えております。もちろん各地方気象台等が行うさまざまなイベントでこの防災教材を利用していきたいと考えております。なお、このポータルサイトにつきましては、本日の17時に公開する予定であります。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q : 防災教育のポータルサイトですけど、どういった組織に、どういうケースで、どういう場で活用していただいたら良いでしょうか。長官の受け止めをお願いします。
A : 今年、たくさん災害がございましたし、様々な機関が防災教育の必要性についてご理解をいただき、その必要性を踏まえて、取組をしていきたいと思っていると思います。例えば、気象台が自ら行うものもございますし、気象台が行うもの以外についていえば、地区単位といいますか、小学校単位といいますか、そういうところで様々に勉強するということがありますから、そのために小学生対象、中学生対象あるいは幼児対象というように分けております。幼児対象であれば、幼稚園、保育園でやろうと思ったときにご利用いただきたいと思います。中学校でもそうです。気象台の職員だけがそれを利用するということでは、当然広がりがありませんから、地域の防災リーダーの方とか、あるいは教育委員会の皆さん、それから気象台では、教育委員会を通じて、地域の先生方に集まっていただいて、それをご利用いただくような取組もしているので、そういう形で裾野を広げて使っていただくような工夫をしていきたいと思っております。

Q : 緊急会見で手話を導入しようということを検討中だということのようですが、その進捗と今後の展開を教えてください。
A : 緊急会見については、ご案内のように、大きな災害が予想される場合、豪雨が予想される場合、あるいは台風で大きな影響があるような場合、さらには大きな地震が発生した直後などに、緊急に記者会見を開催して、報道機関の皆様の協力を得て、警戒の呼びかけ、防災上の留意点について広く国民の皆様にお伝えしているという状況があります。お尋ねがありました件については、聴覚障害者の方にも正確かつ的確な情報をお伝えするということが重要であるということは常々申し上げてきておりますし、そういった工夫をしてほしいという要望も頂いております。こういった点を踏まえて、年度内に気象庁が行う緊急の記者会見に、手話通訳者を配置して対応してみることができるよう準備を進めております。手話通訳者を配置するということですので、それが効果的に利用されるためにはテレビ報道で活用いただく必要があります。そのため、気象庁が撮影した映像を報道機関の皆様へ提供するといった工夫も考えております。いずれにしましても、皆様のご意見をうかがいながら、この件を進めてまいりたいと思っておりますのでご協力をお願いいたします。

Q : 防災教育の話が出たのですけれども、「伝え方検討会」の中で、委員から自治体の職員への研修の必要性ですとか、すでに気象庁がされているのですがそういう点をさらに広げていくとか、そういったところのお考えをお聞かせください。
A : 冒頭で申し上げましたように、第2回の「伝え方検討会」が今月末にありますから、その際の意見もうかがいながら、今後方向性を決めていくことになると思います。第1回で一つご指摘があったのは、気象防災アドバイザーの活用をもっとするべきだという点だと思います。現在57名ですけれども、気象庁側で登録してご利用いただくよう環境作りをしておりますので、気象防災アドバイザーが活躍することで、市町村における気象の見方、防災への対応をサポートしていくというのが一つあるのだと思います。それから、防災担当者向けの研修を強化していかなければならないというのは、すでに昨年の8月に提言いただきました、「地域における気象防災業務のあり方」の中にも含まれておりますので、気象台がそれぞれの県の防災担当者や市町村の防災担当者とともに、防災気象情報の見方、利用の仕方について学んでいくような教材についても作成してきているところですので、まずはそういったものを十二分に使い切るような努力をしていかなければならないと思っております。

Q : 形としては、それぞれの気象台がそれぞれの自治体と一緒に進めていくというようなやり方で進めていくということでしょうか。
A : まずは、そういうやり方があるのだろうと思います。それだけで十分な広がりができるかどうかということがありますので、それ以外の工夫等については、皆様の意見をよくうかがいながら何ができるかを考えていかなければいけないと思っております。

Q : 「伝え方検討会」に関して、先日の第1回目を傍聴しました。来月には一定の方向性を取りまとめるという一方で、座長の田中先生から、重要な課題だから少しロングレンジでやるというようなお話もありましたけれども、そのあたりの整理は長官の中でどのようにお考えでしょうか。
A : 方向性としては、年内でまとめていくということが重要なのではないかと思います。それは、政府としての一体性もあると思います。例えば中央防災会議の下で行われているワーキンググループによる検討、あるいは国土交通省で行われている検討、いずれも関連しておりますので、方向性としては年内にしっかりとまとめていきたいと思います。一方で、具体的な設計といいますか、改善策の具体について言えば、すぐできることもあれば、じっくり考えていかなければならないこともありますので、年内に取りまとめた以降、より具体的な検討が必要な事項については来年以降も検討していくといった可能性も含め、座長ともよくご相談していきたいと思っております。

Q : 検討会は、例えば来月取りまとめたからそこで一旦終わりということでもないのですか。
A : そこは座長ともご相談だと思っております。継続が必要で、同じメンバーでやる方がいいというお話があればそうなるでしょうし、そこは相談しながら進めていきたいと思います。

Q : 逆に言うと、来月で一旦区切りということですか。
A : 一旦区切りが必要なのだろうと思います。ただそこで全てが具体的に決まるということでもない部分があると思います。そういう意味で、一定の方向性をまとめたいということです。そのあたりも踏まえて、それ以降は考えていくのだと思います。

Q : 先月、長官は皇太子同妃両殿下のところに御進講に行っているようですが、極めて珍しいということですが、どんな内容をどういう経緯で御進講があったか、お話いただけるところだけでもご紹介いただければと思うのですが。
A : 先月ですけれども10月23日に、皇太子同妃両殿下に御進講をいたしました。「平成30年7月豪雨」について、ご関心があられるということをうかがいましたので、まず、その概要、発生要因、そして昨年の「平成29年7月九州北部豪雨」との比較といったようなこと、それから、背景としまして日本において大雨が増えていることや将来どうなるであろうかとか、猛暑日の日数が増えてきているけれども今後どうなるかとか、世界の気候がどうなのか、といった点について、ご説明申し上げました。また、今年いくつか地震が発生しておりましたので、日本周辺の地震や火山活動の状況についても簡単に触れさせていただいております。両殿下からは色々とご質問をいただきまして、大変深く関心を持っていらっしゃったという印象を持っております。大変光栄な機会をいただきましたので、今の状況についてご説明を申し上げました。

Q : 「伝え方検討会」についてですけど、前回先生からご意見があって、その意見の中で長官としてこれはいいなとか、これはやってみたいなと思ったものがあるのかどうか。2回目に向けて気象庁として、意見を受けてどういう提案をしていく用意があるのか、そのあたりを言える範囲でいいので教えてください。
A : 前回、13日に開催しました資料については公開されております。気象庁側が事務局として作成しました課題・論点についても、すでに皆さんご覧いただける環境にあるかと思います。それらに関連して、委員の皆様からは先ほども申しましたように、大変活発な意見をいただき、いずれも有識者としてありがたいご意見であったと思っております。どの点が云々というよりは、ほぼ課題・論点をカバーする形で意見を頂いております。まずはその意見をしっかりと汲み取った形で、とりまとめの方向性のところに盛り込んでいくということが、重要なのではないかと思っております。具体的にどれがというよりは、ご紹介している課題・論点について、先生方からいただいた意見をしっかりまとめてまいりたいと思っています。

(以上)

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