長官記者会見要旨(平成30年10月17日)

会見日時等

平成30年10月17日(水) 14時00分~14時23分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。私から2点お話させていただきます。

  まず始めに、昨日報道発表しております「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の開催についてです。「平成30年7月豪雨」では、広域で甚大な災害が発生しました。改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。この7月豪雨を受けまして、これまでに防災気象情報が自治体の避難勧告の発令等の防災対策にどのように活かされたかにつきまして、点検・検証を進めてまいりました。この豪雨では、気象庁の防災気象情報や自治体の避難の呼びかけが必ずしも住民の避難行動に繋がっていなかったのではないか、といった指摘もありまして、防災気象情報の伝え方の観点から、今後の改善策を検討するため検討会を開催することとしました。本検討会では、避難等の防災行動に役立つための防災気象情報の伝え方の改善策について、防災情報の専門家や報道関係機関、自治体等の有識者の方々にご議論いただくこととしております。この検討会の第1回目の会合ですけれども、11月13日の開催を予定しております、その後、年内を目途に、改善に向けた一定の方向性をとりまとめていく予定としています。

  次に、10月4日公表しました「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画」についてです。気象庁がこうした計画を公表するのは初めてです。策定にあたりましては、昨年度から「数値予報モデル開発懇談会」を開催して、最新の科学的な知見に基づく検討をいただいてまいりました。また、本年8月に交通政策審議会気象分科会から提言いただきました「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」に示されております気象・気候分野に関する技術開発を推進していく計画にもなっております。気象庁では、この重点計画に基づき、数値予報の高度化・精度向上について、関係者の皆さまのご理解とご協力を得て、目標の達成に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q : もうすぐ、南海トラフ地震に関連する情報の運用開始から1年となります。約1年運用してみての感想と、課題だとか改善点がございましたら教えてください。
A : 南海トラフ地震に関連する情報の運用から1年ということでご質問がございました。ご案内のことかと思いますけれども、簡単に昨年の状況から振り返ってみたいと思います。
  昨年の9月に、中央防災会議の「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」の検討結果がでました。また、中央防災会議の防災対策実行会議での議論を受けまして、気象庁では、南海トラフ全域を対象として地震発生の可能性の高まりを評価した「南海トラフ地震に関連する情報」を昨年11月から運用しています。南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合、迅速かつ適切に情報提供を行うことは重要ですので、この情報の運用を開始したということです。まもなく1年を迎えます。
  南海トラフ地震ですけれども、発生には多様性がありますし、難しい解析・評価を行う必要があります。このため、気象庁では、有識者からご助言いただく「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を毎月定例として開催し、南海トラフ沿いの地震活動や地殻変動について評価を行いまして、その結果を定例の「南海トラフ地震に関連する情報」として発表しているところです。幸いにも、これまで、南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するような異常な現象は観測されておりませんが、気象庁としては、こうした平時からの監視、そして定期的な評価を着実に行うことで、解析・評価の技術向上を図り、異常な現象の発生時にはそれを速やかに評価し、適時的確に情報提供していく所存です。
  現在、中央防災会議防災対策実行会議の下に「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」が設けられておりまして、異常な現象が観測された場合の住民や企業等の防災対応について検討が行われているところです。これまで4回開催されております。その中で、防災対応を実際に行う上で、想定される異常な現象の典型的なケースを明確にして、それらを予め公表しておくことが重要との意見が出されております。これらを踏まえまして、同ワーキンググループの下に「防災対応のための南海トラフ沿いの異常な現象に関する評価基準検討部会」を設けまして、本日から検討を始めたところです。この検討は、気象庁の発表するいわゆる「関連情報」の充実とより適切な防災対応に資するものですので、気象庁もこの部会の共同事務局として参画いたしまして、関係府省と連携しながら検討を深めて参りたいと考えております。

Q : 新しい防災気象情報の伝え方に関する検討会ですけれども、長官ご自身が今まで振り返って考えられる課題や問題意識、なぜ気象庁の情報が、もしくは自治体の避難情報が住民の避難に結びつかなかったのかということに対して、どういうふうに評価されているのかお伺いします。
A : 11月13日に第1回を開催するわけでして、その検討に参画いただける有識者の皆さんのご意見を聞きながら課題を整理し、今後のあるべき方向を検討していかなければならないと思っており、今の時点では具体的に申し上げにくいところもあるわけです。先ほど申しましたように、昨日、中央防災会議のワーキンググループの会合がありました。そこでは、私どもが出す防災気象情報と自治体の避難情報との連携といったところを主なポイントとして検討いただくことになっております。この連携については、先月にも触れましたけれども、実際のデータを突き合わせて点検・検証しているところです。この何年か私どもが取り組んできたものとして、防災気象情報をかなり参考にいただいている、あるいは、ホットライン等についてもかなりご利用いただいているということがあると思っております。同時に、昨年から提供開始しました、洪水の危険度分布等については、まだ十分に使われていないという自治体もありますので、そういったところをしっかり使っていただくことがポイントなのではないか、私どもの情報と自治体の対応との関係についてはそのように思っております。
  一方で、気象庁・気象台から防災気象情報を発表する、自治体から避難の情報を発表する、こういった中で、それにも関わらず、なかなか住民の皆さんの避難行動に繋がっていないということについては、指摘もされておりますし、現実にそういったこともあるのだろうと思っております。このあたりについては、今回立ち上げる防災気象情報の伝え方の検討会において、どういった危機感を効果的に伝えていくことができるか、どういう工夫ができるか、そのために必要であれば、よりシンプルでわかりやすい伝え方があるのではないかといった問題意識を持っておりますので、そういったことについて、ご議論、ご助言等いただける検討会としていきたいと思っております。

Q : 気象庁が伝える防災気象情報、数年前から、わかった時点でというか危険な予報が出た時点でどんどん情報公開するような形で、共同取材をやったり、もしくは会見というところまで踏み込んで国民に伝えてきたりしたと思うのですが、この流れ自体については、長官はどういう評価をされていますか。
A : 積極的にお伝えするということについては、これまで有識者の皆さんの意見も聞きながらやってきておりますので、大きな流れとしてはこういう方向なのだろうと思っております。お尋ねのありました、例えば「新たなステージ」に対応した防災気象情報ということで、平成27年にご提言をいただいて、わかりやすく伝える、あるいは、影響のあることについては前広に積極的に伝えていくということがありますので、この方向性については引き続き必要だと思っております。同時に、昨年の8月に「地域における気象防災業務のあり方」でもご提言いただきましたけれども、地域の防災を担う関係機関の一員として地域に寄り添った形で、どうすれば防災力を上げていくことができるかという方向性をいただいております。そういった大きな方向性の中で、より住民の皆さんの避難につながるようなヒントがあるのではないかと思っております。最初のご質問に返りますけれども、大きな方向性としては、このような方向の中でやっていくべきなのではないかと思っております。

Q : 有識者の中で、特に牛山さんや田中さんから、気象庁が出している警報、例えば警報の上にある土砂災害警戒情報とか、どちらが上なのかわかりにくいというような意見がこれまでも何度か指摘されてきていると思うのですが、今回、そういったことも伝え方の検討会であるとか、内閣府のワーキンググループが走っていますけれども、そちらでもそういう議論がされるというふうな認識なのでしょうか。
A : 内閣府の中で議論されるかどうかについては、私はコメントする立場にないと思います。気象庁における伝え方の検討会におきましては、お話のありました、様々な情報があるということをご指摘する方がいらっしゃるのは事実です。ただ、例えば危険度分布等について言えばわかりやすく伝える工夫ができておりますし、内閣府が定める「避難勧告等に関するガイドライン」等においても、土砂災害については危険度分布と避難情報との関係も一定程度整理されてきております。そういった流れの中で、情報をもっとシンプルにするということが出るかどうかについては、皆さんの意見を聞きながら検討していくのだと思っております。
  いずれにしましても、住民の皆さんの避難にしっかりと繋がっていくにはどうすればいいか、私どもが目指すべき防災の成果を効果的に発揮されるためにどうあるべきか、どう工夫していくべきかという観点で考えてまいりたいと思っております。

Q : 被災地のアンケート調査、これも内閣府の資料の中にありましたけど、例えば危険度分布は非常にわかりやすい情報なんだけど、自分のところにプッシュでは送られてこないので積極的に見に行かないと、改善してくれればもっと役に立つのに、という回答もありましたが、これに関してはどうですか。
A : アンケート結果として、そのような回答があることは承知しております。それらに対してどういう工夫ができるかについては、まさに有識者の皆さんに意見を聞いて考えてまいりたいと思っております。

Q : 検討会に関連してですけれども、検証・点検を進められていると先月の会見でもおっしゃられていましたが、それをおそらく土台にして検討会が進められるのかと思うのですが、検証の進み具合と具体的にどのような点を検証・点検項目としているのか、どういったことが分かりました、と出てきそうでしょうか。
A : 11月13日に第1回の検討会をやることにしておりますので、その際にはそれまでの検証したデータをお示しして、課題・論点を整理する必要があると思っております。これがスケジュール感です。それから、実際にどのような点検・検証をしているのかということについて言えば、具体的に私どもが出した情報と避難勧告・避難指示(緊急)との関係、あるいはタイミングで、いくつかわかることについて言えば、死者等が出た被害の時間との関係といったようなこと。それから、具体的にインタビュー形式で自治体等の皆さん、あるいは間に合うかどうかわかりませんけれども、国民の皆さんから直接アンケートを取って、どういう意識を持たれているかということについて、材料を集め検証を進めている状況です。

Q : 国民の方へのアンケートというのは、母数としては多いのでしょうか。
A : 一定程度多くしないと統計処理もできませんので、具体的には担当の方に聞いていただければいいと思います。対自治体についてはこれまでもインタビュー等も含めてやってきておりますけど、国民の皆さんへのアンケートについては11月以降やって、追加的に色々見ていきたいと思っております。

Q : いずれにせよ、検討会の中でそのデータもいずれ出てくることになるであろうと。
A : はい。

Q : 南海トラフのお話ですけれども、南海トラフの情報に関しても、用語が難しかったり、国民の方々にとってはなかなか分かりにくい分野だと思うのですが、この豪雨災害で検討されようとしているテーマと同じように、南海トラフに関しても分かりやすさ、伝わりやすさというのを今後検討されていく計画はありますか。
A : 具体的に計画そのものがあるわけではありませんけれども、気象に関しても用語が難しいということですけれども、地震・火山はさらに難しいようなこともございます。それで、今月、南海トラフの検討会で訓練もしましたけれども、そういった中で、情報の中身がこれでいいのかどうか、実際に評価・検討を行うにあたって、迅速に、タイムリーに評価をしていくためにどのような情報を私どもが解析しなくてはならないのか、情報を作っていかなければならないのか、こういったことについて問題意識をもっているところです。そういう中で、情報の中身についての議論ができると思いますし、先ほど申しました中央防災会議のワーキンググループで検討している防災対策と私どもが出す臨時情報がリンクしていくことが重要ですので、そういう防災対応との連携を意識した形で情報の中身を考えていく必要があります。そういった中で当然分かりやすい情報に努めていくことは考えるべき要素であろうと思います。

Q : 例えば豪雨災害ですと、危険度マップみたいな一般の市民の方が目で見て、色で見て分かりやすいような工夫をされていると思いますので、ぜひ南海トラフに関してもそういった工夫があるとうれしいのですが、そのあたりをお教えてください。
A : そういう意見があることは承りました。もちろんすでにそういう意見があることも承知しておりますので、すぐに何かという形ではなくて、しっかり問題意識を持って取り組んでいきたいと思っております。

Q : 検討会の話に戻るのですが、歴史を紐解きますと、例えば土砂災害警戒情報にしても、記録的大雨短時間情報にしても、特別警報は最たるものですが、大きな災害の発生をきっかけにして情報が新設されたという歴史的な経緯があって、それは本当に情報がきめ細かくなってきた一方で、煩雑になってきたという指摘もあるわけですね。このような経緯で情報が増えてきたことについて、やっぱり必要なことであったのか、あるいは、ちょっと反省点があるのか、そのあたりの長官の現状認識はいかがでしょうか。
A : 今回の7月豪雨もそうですし、それぞれの災害が起こる度にもっと何かできたのではなかったかという振り返りをし、情報の改善をするというのは行政機関であるなしに関わらず当然行うべきことで、やってきたのだろうと思います。その都度、何ができるか、何を変えなければならないのかということを検討してやってきたので、それはその時点その時点での判断としてはそういうことであったし、それをやったからこそ、きめ細かな情報として、充実してきたということはあると思います。一方で、今ご指摘のありましたように、あるいはそれ以外の方からのご意見で、もっとわかりやすくシンプルにすべきではないかということをおっしゃる方がいるわけで、そこについては、真摯に耳を傾け、今回住民の皆さんがなかなか避難をしないという実態があるということもありますので、そういった中で、どのようなことができるかという問題意識を持って検討していくことが必要だと思います。検討会の中で有識者の皆さんに意見を聞きながら方向性を決めていきたいと思います。

(以上)

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