長官記者会見要旨(平成30年7月18日)

会見日時等

平成30年7月18日(水) 14時00分~15時00 分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。本日、私からは「平成30年7月豪雨」、そして熱中症への警戒の2点についてお話をさせていただきます。

  まず、今般の平成30年7月豪雨ですが、甚大な被害が発生しまして、今も厳しい環境の中で捜索、応急復旧活動が進められているところであります。今般の豪雨によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
  今般の豪雨ですけれども、西日本と東海地方を中心に広範囲において、過去に類を見ないほどの記録的な大雨となりました。具体的には48時間や72時間などの雨量が、多くのアメダス観測点で観測史上1位を更新しましたし、7月上旬のアメダスによる雨の総量ですけれども、統計上比較可能な1982年以降では、今回が最も多い値となっておりまして、総雨量は過去の豪雨災害と比べても極めて大きなものでした。気象庁では、今般の一連の豪雨に際しまして、早い段階から記者会見を開催するなどして、大雨に対する警戒を呼びかけ、さらには、状況の進行に応じまして、随時、防災気象情報を発表いたしました。大雨特別警報の発表については、結果として11の府県に上ったわけでございます。
  また、JETT(気象庁防災対応支援チーム)を派遣いたしまして、自治体の災害対策本部等におきまして、捜索、救助活動や災害応急対応への支援を行っております。JETTにつきましては、気象に関する今後の見通しや防災上の留意事項について解説を行うとともに、熱中症への注意喚起などを行ってきておりまして、昨日までに岡山県、広島県、愛媛県をはじめとして、22の道府県、そして12の市町に対して、のべ200名を超える人員を派遣しているところです。
  被災地では、これまでの大雨により広い範囲で地盤が緩んでいるなど、注意警戒を要するところがございますので、引き続き、地元市町村や各地の気象台が発表する情報に留意をいただきますよう、お願いを申し上げます。
  また、今後も7月下旬にかけまして、気温がかなり高い状態が長く続きまして、猛暑日が続くところもある見込みとなっております。被災地では屋外での復旧活動をはじめ、熱中症にかかるリスクが高くなりますので、水分をこまめに補給する、休息をとるなど、できるだけの熱中症対策、予防の対策等、健康管理に十分留意をしていただきたいと思います。
  気象庁といたしましては、引き続きJETTの派遣や、各地域の予報のポイントをまとめました「気象支援資料」の提供、適時の気象情報の提供・解説などを通じまして、この災害における応急復旧活動、避難者支援の取組を進めて参りたいと考えております。

  二つ目は、熱中症への警戒についてです。豪雨の被災地での熱中症対策を申し上げたところですけれど、全国的に気温がかなり高い状態が既に1週間以上も続いておりまして、今後も7月末にかけて気温の高い状態が続く見込みです。気象庁では、最高気温がおおむね35℃を超えると予想される場合には、高温注意情報を発表いたしまして、熱中症の注意を呼びかけてきているところです。本日も、北海道や東北地方の北部、沖縄を除きまして、広い範囲で高温注意情報を発表しておりますし、35度以上の猛暑日となる地点が、本日もそうですが、この数日間、多数出ている状況です。どうか、熱中症に対して最大限の注意、警戒をお願いしたいとこのように思います。

  私からは以上です

主な質疑応答

Q : 今も長官のお話にもありましたが、7月豪雨に関しては、非常に早め早めに会見を開いたという印象があります。その中で6日の10時半から、気象庁が大雨特別警報の可能性があるというような、これは異例だと思うのですが、こうした会見を開いたいきさつというか、どういった思いで会見をお開きになったのか改めてお聞かせください。
A : まず、この「平成30年7月豪雨」の流れの中で、皆様も報道等していただいているわけですけれども、気象庁の呼びかけの流れとしましては、4日の15時30分過ぎに、全般気象情報において、「西日本と東日本では8日頃にかけて大雨となり、数日間同じような地域で大雨が続くおそれ」ということを発表させていただきました。その翌日、5日ですけれども、記者会見を開いて「西日本と東日本では8日頃にかけて非常に激しい雨が断続的に数日間降り続き、記録的な大雨となるおそれ」ということを発表させていただきました。そして、今ご質問がありました、6日の10時半の記者会見におきましては、「今後重大な災害が発生するおそれが著しく高くなり、大雨特別警報を発表する可能性がある」ということを申し上げました。
  このような会見ですけれども、6日の時点までに、既に4日以降降った雨量が相当な量となっておりまして、24時間雨量や48時間雨量が記録1位を更新する地点も出てきておりました。既にそういう記録的な大雨となっている状況の中で、さらに8日にかけて、引き続き西日本・東日本の広い範囲で、猛烈な雨が断続的に降り続くと予想しましたので、そういったことから一歩踏み込んで大雨特別警報の発表可能性についても言及させていただき、一層厳重な警戒を呼びかけさせていただいた、こういう経緯でございます。

Q : その一歩踏み込んでというのは、何かそういう風にしようというのは、その前段では何か内規で変わったとかあったのでしょうか。
A : 特にそういうものはございません。今般の大雨の特徴、様々な特徴があるかと思いますけれども、やはり広域にわたって、かつ前線がずっと停滞するという状況でした。現に4日、5日、6日と停滞し、相当量の雨が降っているわけでございます。そういう中で、一部には大雨警報も出て、あるいは土砂災害警戒情報も出ているような状況の中で、もう一歩踏み込むためには、当然大雨特別警報の基準には達していないわけですけれども、予想を踏まえますと、もう一歩踏み込んでいった方がいいのだろうという判断であったと承知しております。

Q : その後、大雨特別警報、先ほど長官のお話にもあったとおり、11府県に出されました。色々と言われているという状況も踏まえてですが、 発表のタイミング等については、気象庁としてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。その検証の中で、もし今後への課題というものがあったら教えていただけますでしょうか。
A : 大雨特別警報ですけれども、大雨による重大な災害が起こるおそれが著しく大きい場合に、災害への最大級の警戒を呼びかけるために発表しております。この基準につきましては、数十年に一度の大雨が予想される場合ということでして、それぞれ法令に基づいて都道府県の意見を聞きながら、この基準を定めているという状態です。その基準は数十年に一度ということですので、各地域によってこれまでの雨の降りやすさといいますか、たくさん降る場所とあまり降らない場所がありますので、それぞれの地域に対して具体的な数値を定め、その数値を越えるような場合には発表するというようにしてきているところでして、今回につきましても、まず九州から、福岡、佐賀、長崎ですけれども、大雨特別警報を発表したわけですけれども、その基準に沿った形で順次提供させていただいたと、こういうことでございます。現時点において基準をどうこうすると具体的に考えているわけではございません。ただ、やはり今般の被害は、本当に甚大な被害であります。私どもとしても、大雨特別警報に至るまでの間に呼びかけをし、大雨警報を出し、あるいは土砂災害警戒情報を出しということで、順番に警戒を高めていただく、あるいは自治体等で避難に関する情報を出していただくような取組をしてきておりますので、そういう中で、今回私どもの出した情報が、例えば内閣府が定めている「避難勧告等に関するガイドライン」に沿って自治体における避難情報に活用されたのか、あるいは住民の皆さんの避難に活用されていたのかとか、そういうものに活かされたかどうかはよく検証していかなければならないと思っておりまして、そういった検証の中で必要な見直しがあればやっていかなければならないと思っております。

Q : その点で言いますと、先日10日11日あたりで菅官房長官の発言の中で「気象庁の防災情報と自治体の避難情報の連携」という発言がありました。この辺りがうまくいかなかった可能性がある、ここについては検証するという考えを菅官房長官お示しになりましたが、それについて気象庁ではどのように対応していくのか。また、もう既に何か検証というか内閣府との話し合いなど始まっているのでしょうか。
A : まさに今ご質問のありました、自治体との連携という観点で私どもの出す情報が活用され、避難情報として反映されていったかについては、しっかりと検証していかなければならない、おっしゃるとおりだと思います。また、住民の皆さんが避難行動に移せたかどうかということも、政府としてしっかり考えていかなければならないということを官房長官はおっしゃられたのだと思います。大雨特別警報というのは、ある意味でもう最後通告のようなものでして、「避難勧告等に関するガイドライン」においては、大雨警報あるいは土砂災害警戒情報が出た段階で避難準備、あるいは避難勧告という形でやっていただくということがありますので、そういう方向に沿ってなされたかどうかということを、一つ一つデータを集めながら確認していく必要があると思っております。私どもの出した情報が、何時何分どこへということは調べておりますけれども、自治体と連携して調べていかなければならない、あるいは政府としては内閣府、消防庁とも連携をしながら調べていく必要があると思っております。そういう中で、自治体は、今、復旧活動に懸命になられているところございまして、私どもとしてデータとして整理できることはしっかり確認していきたいと思いますけれども、自治体とも連携できる段階になれば、本格的に調査ができるのではないかと思っている次第です。

Q : 5年前に特別警報の運用が始まりましたが、特別警報というのは、最後通告であり、それまでに警報の段階で避難は指示、完了しているかどうかを確認するような警報だというふうに、我々記者は理解しています。だけどそれがうまく住民の皆さん、それから自治体の皆さんには伝わっていたのかというところが、これから検証とおっしゃいましたが、今回の事案について現状どんな感想をお持ちでしょうか。
A : 5年前に大雨特別警報を創設した段階から、様々な周知活動を行ってきて、報道関係の皆様のご協力も得ながらやってきているところもあります。個々の地域、個々の府県にとってみると、初めて出るということがございます。そういった観点で、特別警報を待ってしまうようなことがあるのであれば、より一層周知していく必要があるのだろうと思っております。その辺りは検証を見ながらということですけれども、昨年8月に「地域における気象防災業務のあり方」ということでご提言をいただいて、平時から、私どもの情報の意味するところ、あるいはその読み解き・活用について自治体の方と一緒に勉強していくというか、学んでいかなければならないという大きな方向性を示されておりまして、それに沿って、これまでもやってきましたけれども、より一層そういうところを強化していく必要があるのではないかと思っております。加えまして、やはり住民の皆さんにご理解いただくということ、あるいは住民の皆さんが地区ごとに行動していただくことが何より重要だと思っておりまして、分析してみないとわかりませんけども、そういうことに対して、国としてあるいは気象庁として、できることは何かということは考える材料になるのだろうとは思っています。

Q : 昨日、内閣府にも取材をかけますと、特別警報の位置づけを今よりも一段下げると言えば変ですけど、特別警報が避難指示相当というようなガイドラインに変えていくというような動きも取材では察知したんですが、そういった動きというのは長官の耳に入っているでしょうか。そして今後の警報、注意報、特別警報の位置づけについて、気象庁としては何かありますでしょうか。
A : まず、具体的に今お話のあったような検討があるかどうか知りません。それは私の耳には特に入っておりません。先ほども申し上げましたけれども、特別警報は重大な災害が起こるおそれが著しく高い場合ということですので、仮に、それを下げようとすると、いわゆる空振りを何度もやってしまうというような状態になるという、技術的な観点はあるのだろうと思います。そこを含めて、検証の結果として議論していただく話なのかもしれないと思いますけども、今の時点では特に具体的な話はございません。

Q : 今日40度を超えた地点が既に出ておりますが、これについてお願いいたします。
A : 岐阜県の多治見ですか、40度を超えたと先ほど見ましたけれども、平成25年の高知以来ということで、今は太平洋高気圧とチベット高気圧が両方重なっているような状態でして、晴れの日が続き出しますと、気温が下がらない、非常に気温のベースレベルが高いまま経過して、ずっと長く続くような状態になっております。これは、ある意味ボディブロー的にずっと皆さんの健康状態や社会活動に影響を与える状況ですので、本当に工夫をして、熱中症にならない、あるいはどうすれば暑さに対して対応できるかといったようなことに知恵を出し合うというか、そうして健康にも留意していただきたいと思いますし、特に被災地は大変な状況ですので、あとは様々なところに影響が出ないように、とにかく半分祈るような気持ちで何とかしてほしいと思います。気象の予測はしっかり出していきたいと思いますけれども、どうぞ皆さん、熱中症に対して注意・警戒をしていただければと強くお願い申し上げたいと思います。

Q : 今日消防庁のほうで熱中症の患者、搬送者数の発表がありまして、かなり昨年に比べて増加している状況で、農業をはじめとして産業界にも影響があると思います。改めてそういった農業とか産業界に向けてこの熱中症に対する注意喚起をお願いできればと思います。
A : 気温が高く、体温より高い場所があります。まず、私どもが発表する気温の予想、あるいは観測した値というのは、日陰の比較的風通しのよいところを基本としておりますので、それぞれの場所では、アスファルトの地面ですと50度、60度になってしまう、あるいはもっと高いかもしれません。そういう状況でありまして、個々の場所で見ると気温が予報や観測の値より遙かに高い状態もございます。その状況に応じて、先ほども申し上げましたように、水分をとる、休息をとる、今お話にありました農業関係でも事前にできることがあると思います。今後、少なくとも来週いっぱい暑いという予報になっておりますので、やれることは早め早めにやっていただいて、産業への影響、農業への影響を軽減し、健康への注意・警戒をぜひお願いしたいと思います。

Q : 特別警報だけではなくて、被災地の注意報、警報、土砂災害警戒情報などに対しての理解がまだまだ進んでいない状況もあるのかなというのがあります。今回気象庁としてはがんばっていたのに、これだけの犠牲が出てしまったと。その辺で一般の方々への気象情報をどう伝えていくか、どういうふうに進歩させていくか、警報とか土砂災害警戒情報とかはどういうものなのか、その辺はどうですか。
A : 大変難しいご質問ですけれども、一般論として申し上げれば、日頃やっていないこと、あるいは知らないことを急にやろうとしてもできませんので、気象庁が出している天気予報、あるいは高解像度降水ナウキャスト、「雨雲の動き」のようなものを見るような、そういう日頃からの目を持つと言いますか、そういうことを全体として進めていくということが大事なのではないかと思います。昨年8月の「地域における気象防災業務のあり方」でも、国土交通省が進める水防災意識社会、あるいは防災意識社会という、そういう地域社会を目指す中の一員として気象台もしっかりと貢献できることをしていこうとしております。やはり、自らのことを、自らのおかれた状態が危ないと、これは逃げたほうがいいと思っていただくのが何より重要ですので、そういった気持ちになっていただく、動いていただくためにはどうすればいいかということなのだと思います。気象情報の観点から言えば、今申し上げた「雨雲の動き」等日頃から見ていただくということもありますし、昨年から始めました危険度分布がございますけれども、土砂災害の危険度分布、洪水の危険度分布、浸水の危険度分布とございます。ああいった自分のいる場所と危険度の関係が比較的わかりやすい情報をより一層ご活用していただくことが重要なのではないかと思います。それから、やはりお年寄りが多いような地域がございますので、そういったときにそういう情報にアクセスがなかなか難しい方もいらっしゃるかと思います。この辺りは、地区ベース、コミュニティベースでそういった情報を読み解くリーダーのような方がいていただいて、お互いに連携してやっていくような関係をまずは作っていただく、その中で、リーダーの方が気象情報の見方をよく習得していただくというようなことに向けて、気象庁、気象台としてもできることはやっていかなくてはならないのではないかと思います。

Q : もう一点なんですけれども、いわゆる気象台長と地域の首長とのホットラインについてなんですけれども、今回はどのように機能したのか、その辺りを教えて頂ければ。
A : 粗々集計はできておりまして、具体的な数字ですけれども、7月1日から11日までは19の道府県の231市町村の間で台長と首長との間でホットライン等が行われていて、それに加えていわゆる担当者レベルでの間で相当な連携・連絡を取っていたと承知しております。全般的にみると、昨年の8月の「あり方の検討会」を受けて、一生懸命やろうとしているという状態があると思っています。そこについても先ほど申し上げました、地方自治体・地方公共団体との連携の検証の中で少し丁寧に見ていく必要があると思っています。いずれにしても、一生懸命連絡をして何とかしようということで、いつをもって従来というかは悩ましいですけれども、気象台と首長さんの連携、市町村の連携というのは相当進んでいるのではないかという感触は持ってはいます。精査して検証していきたいと思います。

Q : 先ほどのお話にありました危険度分布についてなんですが、今回の立て続けの会見でも、危険度分布を確認するように、というような発言があったと思います。ただ現状として、危険度分布を一般の方は別として、自治体が避難情報とリンクをさせているところがかなり少ないというのが現状としてあると思うんですが、そこについてはいかがお考えでしょうか。
A : 危険度分布を見て頂いて、それも踏まえながら避難の情報を出したというような話も聞いています。今お話にもあったように、あまり見られてないのではないかというような声もあるかと思います。そこについても、自治体との振り返りの中で、連携の検証の流れの中で、どれぐらい見られているのか、もっと見られるためにはどうすればいいかというようなことを考えていくのだろうと思います。

Q : 先ほどからの質問に関連するんですけど、今回豪雨の会見につきましては、大変きめの細かい情報を発出されたと思うんですけども、土砂災害警戒情報から危険度分布に至るまで、それ自体は非常に有用な情報と思いつつも、やはり建て増し建て増しで来て、大変情報が多くなったことがわかりにくさに繋がったのではないかという指摘もありまして、大雨特別警報の会見でも今後の情報のスリム化に言及する発言もありましたし、これにつきましてはメディアも含めた専門家がやはり検討した上で現在があるんだということは承知はしているんですけど、今後のその情報の発出方法ですとか、スリム化とかそういったことに関しては現在の認識はいかがでしょうか。
A : 今のご質問の中にもありましたように、私どもの持っている危機感やあるいは情報の中身をどうすればお伝えできるのかということについて、本当に長い時間をかけて今のような形になっているということでありまして、具体的に何をどうすれば良いかということは今すぐに何かあるわけではありません。やはり、住民の皆さんの目線で、あるいは自治体の皆さんの目線で検証をしていく中で、やっぱりこうなのだろうということがあれば、それは反映をしていかなければならないとは思っておりますけれども、具体的に何か考えているということはありません。一つ前のご質問にもありましたけれども、危険度分布というのがある意味、色の付いてないものも入れると、5つの色で色分けをして示していますので、非常にわかりやすい情報ではあるので、ああいったものの利用促進は、引き続きしっかりやっていかなければならないと思いますけども、それ以上については、特に、今、具体的なアイデアはありませんし、検証結果を見ながら、考えていくのだろうと思います。

Q : 避難に関しての3段階の名称を何度も変えてきた経緯を我々はもちろんよく知っておりますし、例えば、高齢者が避難の準備をするということも、ちゃんと名称を変えてこられたのもよく知っております。今、一番強い避難指示に関してもわれわれは報道で出すときには「避難指示(緊急)」という風に画面では出すんですが、やはり意味を聞いたときに、いっそ「避難指示」を「緊急避難指示」という言葉に変えてしまう。そうすればどんな人でも、予備知識がなくても、「緊急避難指示」という日本語を聞けば、これは緊急だと思うと思うんですね。そうでもない時にという思いもあるんですが、これだけ200名以上の方が犠牲になっている現実を見た場合に、「避難指示」という言葉を「避難指示(緊急)」ではなくて「緊急避難指示」という言葉にもう変えようという、こういった考えはどうでしょうか。
A : 今のご質問、一義的には災害対策基本法の流れの中で、例えば岩手の豪雨等を踏まえて、どういう表現にするかというのを内閣府の検討会の中でやられていて、国として自治体の出す避難行動の名称を検討して決められているという状況なので、私の立場として良い悪いというコメントをする立場にないというのが正直なところです。今おっしゃられたような趣旨も踏まえて、おそらく政府で検証する中で必要であればそういったことも検討されるという程度にしか私の立場としては言えません。

Q : もちろん所掌が内閣府にあることは重々承知していますが、長官からの発言というのはちょっと大きいと思いますので、何らかの機会があったらどうでしょうと思って聞いております。
A : これも様々に色々な方の意見を聞きながら今の形になってきているので、やはりその検証を踏まえながらどうすればいいか、皆さんのお知恵を出しながら考えていくべきだと思います。今どうこうという具体的な考えも持っておらず言及することができない立場ということです。

Q : 豪雨の関係ですけれども、5日に、主任予報官が記者会見をされた最初のときですけども、台風ではなくて梅雨前線で記者会見をされる、警戒を呼びかけるといことは異例だったと思うのですが、地域を特定しないで警戒を呼びかけるということの難しさがあったと思います。それは、どういう中で議論があって、最終的になんで会見をしようという決定に至ったのかという意思決定の部分についてお話を聞かせていただけますでしょうか。
A : 意思決定といいますか、先ほども少し4日、5日、6日の全般気象情報から始まって、記者会見を5日、6日とした流れについてお話をさせて頂きました。気象の予報は当然のことながら近ければ近いほど精度が高くなるわけでありまして、そういう意味では4日の段階ではおおむね西日本、東日本で同じような地域で大雨が続くおそれといったことであり、今ご質問のありました5日の時点になったわけですけれども、その5日の時点では既にある程度雨が降って大雨になってきている中で、より確度の高い予測が出てきた。それも地域を限定するといいますか、今回の場合はきわめて広範囲で梅雨前線が停滞をしてその場所から動かない、あるいは上昇流等によってその活発な状態が断続的に続くということでありますので、場所としても西日本、東日本の東海地方等はある意味予想の範囲として入っていると、そういう状況で、私どもが持っている確度、この予想が相当確からしいとうことと、もうすでに降っているというような状態の中で、やっぱり何が起こると言わなければならないというようなことがありました。今までも台風以外ですと、猛烈に発達する低気圧等について事前にやったことがあると思いますけれども、ある程度の予測の確度が高い、それから影響が強いというようなことについては積極的に発表してきているところです。これは、先ほど危険度分布のお話をしましたけれども、平成27年に「新たなステージに対応した防災気象情報」ということで検討会をさせていただいて、前回の広島の豪雨が一つのきっかけになっているわけですけれども、その中の検討会の「新たなステージに対応した防災気象情報」の方向性として、影響が大きいことについてはその可能性がそんなに高くなくても、早め早めに情報を出していくということの重要性を指摘されておりますので、私どものマインドとしては、インパクトの強い現象についてはなるだけ早く、確度が高まればその確度に応じた表現として出していこうということが、少しずつではありますけれども、定着をしてきている中で、今回の5日の発表を行ったということです。

Q : 最終的に、会見をしようということを決められたのは長官でいらっしゃいますか。
A : 非常に難しい質問の言い方ですけれども。もちろん、先々週の7月の始めの週は、その都度、状況がどうなっていて、どういうところに注目し何を呼びかけたらいいかというような打ち合わせは、私を含め、今回ですと予報部も含めて、毎朝やっております。そういう中で、5日の朝にもやりましたし、朝の段階では、午後の会見について、やった方がいいだろうというような現場からの声もありましたので、「それは当然やりましょう」と特に何の迷いもなく「やりましょう」とこうなったということです。

Q : 特別警報のことで、先ほど長官が九州の方から順次基準に沿って出していきましたということで、まさにそのとおりだと思うんですが、昨年だったと思うんですが、深夜になってしまうと、それを見て、最後通告とはいえそれから逃げる人もいるかもしれない、動けないということで深夜になってしまうと、かえって情報の価値が薄れる可能性があるので少し早めの時間に出すことも考えたというようなこともあったと思うんですが、ですからその機械的な基準だけじゃなくて、そこに人間の行動を踏まえたものが入る余地というのがあると思うんですけど、今回しっかり特別警報を出した気象庁にそれ以上を求めるのは酷かもしれないんですけども、そういったその人間的な要素も加味してもうちょっとその出すタイミングを考えたら若干違う結果もあったんじゃないかなという指摘も聞くんですけども、これについてはどうお考えですか。
A : そういう指摘があることに関しては、しっかりと受け止める必要があると思います。先ほどお話しました、「新たなステージに対応した防災気象情報」の検討においても、平成26年の広島の豪雨もまさに深夜から早朝にかけてでありまして、そういう深夜に避難情報が出てもなかなか動けないというようなことに対して、早め早めに夕方の段階で避難準備をかけていただくとか、避難勧告を出していただくようなトリガーになるようなことは心がけなければならないというようにやって参りました。そのひとつとして、今年の6月に15時間先までの降水の予報、雨量の量的予報を延ばすというような工夫をして、夕方の段階で翌朝までの雨の状況を知って対応していただくというようなこと、基礎情報となるための情報提供をやってきています。とはいえ、なかなか夜中に言われても逃げられないという話もあると思います。そういうこともありますから、ある意味、避難については土砂災害警戒情報、大雨警報で考えてくださいということをお願いしてきていたというのが実態でありまして、今回は相当早い段階で土砂災害警戒情報が出されているということがあります。そこをまず使っていただきたいということです。
  大雨特別警報については、確度の高い情報を出すという話と、確度は低くても基準を下げても出すべきだという議論の、たぶん両方あるのだろうと、今日の話を伺うと思うのですが、これまでは数十年に一度という基準に達した段階で出すということをしっかりとやってきたわけでありまして、何が何でも大雨特別警報でないと避難がなされないということでもないのではなかろうか、と少なくとも思っており、土砂災害警戒情報、大雨警報で避難勧告、避難準備を出していただいて、それに対して動いていただきたいということを勧めてきたわけでして、その点についてはしっかりやってきたつもりではあります。けれども、こういった夜の雨で色々被害が起こったような状態もありますので、検証する中で考えていかなければならないと思います。

Q : 検討の余地はあるのでしょうか。
A : 今から、すぐにどうすればいいか、なかなか難しい話だと思います。濫発をするような状態になっていいのかということもございます。既に避難勧告等については、土砂災害警戒情報で出していただくという仕組みがあるわけですので、まずそれがしっかりできたかどうか、あるいはそれを受けて住民の皆さんが動いていただいたかどうか、それを基本とした検証を行っていくのだろうと思います。

Q : 警報自体の存在が、今、薄れてしまっている感があるんですが、そこを何とかするということですか。
A : むしろ、先ほど言いましたように、危険度分布は我がこととして考えていただけるので、警報が出たとき、土砂災害警戒情報が出たときに、自分の住んでいる場所はどうなのかを見ていただいて動くということが、今まで私たちがお願いしてきたし、引き続きしっかりやっていかなければいけないことだと思います。

Q : 地域との連携で、先ほど、ホットラインがかなり活用されているという話があったんですけど、ピンポイントのゲリラ豪雨的なもののときは、それが割とやりやすいと思うんですが、今回みたいに同時多発型で、あちこちで起きてくると、なかなか気象台であっちからもこっちからもホットラインというのが対応しきれない、むしろ、今回のようなことが普通に起きるようになると、そういうケースが増えてきてしまうと思いますが、それはどのように改善していくのでしょうか。
A : 今回の雨は、例えば昨年の九州北部豪雨による被害を受けた領域よりも圧倒的に大きい、元々雨の降った領域が広い、たくさん降ったということがあります。そういう広域の豪雨に対して、私たちがどこまでサポートできるかは、私たちで検証しなければならない振り返りの一つだと思っております。これはJETTについても同じでして、今回のような広域の豪雨ではない場合は、ある意味被災した全ての市町村に対して、出て行ってサポートするということができるかもしれませんけれども、今回は市町という意味では12、例えば岡山県の真備町とか、広島県の呉市とか、そういう被害の大きかったところに出て行って、JETTの活動をさせてもらっています。今回、効果的にJETTの活動をしようと思ったときに、県の災害対策本部の中で活動することが、限られたリソースの中ではより効果的になるのではないかということで、当初からそういうことを視野に入れながら動いてきたところです。この点については、広域の場合にどういうように限られたリソースの中で動くことが効果的であるのか、ホットラインやJETTについては、検証の中で考えていかなければいけないと思っています。

Q : 5日の時点で、記者会見をして、気象庁の意識を社会に向けて発信されているわけですけれども、実際、政府部内でそういう危機意識がどれだけ共有されていたのか、5日なり6日なり、それについてはいかがですか。
A : 私どもが情報を出す段階、あるいは2日の月曜日からずっと、毎朝、会議をやっていましたけれども、その際の私たちの持っている情報を関係省庁、政府の中で共有しております。したがいまして、私どもの持っている危機感については、お伝えすることはできていたのではないかと思います。

Q : もちろん、現場の担当者レベルではあると思いますが、実際、それに関して長官がどのように動かれたか、例えばどこに対してこういう話をしたとかありますか。気象台長は自治体とのホットラインがあって、それでやり取りされると思いますが。
A : 5日の時点では、もちろん先ほどいいました、事務的にといいますか、それぞれの省庁で対応しております。それから、私ではありませんが、予報部長が国土交通省等に行っております。6日についても、特別警報を発表する前から、国土交通省の会議等で警戒を呼びかけました。あるいは、翌日には朝から官邸等に行かせていただいている状態でした。細かい点は省略させていただきたいと思います。

Q : 翌日というのは7日でしょうか。官邸とずっとやり取りされていたのでしょうか。
A : 5、6日は関係省庁の会議が開かれております。この会議は防災担当大臣をトップとしてやっていて、課長級の会議ですので私は行っておりませんけれども。

Q : もうちょっとトップレベルで情報を共有するなどのお考えは。危機意識をより伝えるためにとか、もしくは長官自ら会見するとかありますか。
A : 記者会見については、気象庁は中央省庁では珍しいところですけれども、地震や気象の緊急会見は、いずれも現場の課長に基本的にはお願いしています。それは、発表権限を委任しているということもありますし、現場で実際に判断しているということで、よりリアリティがあり、皆さんに訴えかける力という意味では、現場の課長が記者会見を行うことが適任なのではないかと考えております。

Q : 会見以外で政府の中では。
A : 官房長官会見が毎日行われるわけですけれども、その中で私どもが出したことを踏まえて、呼びかけをしていただいていたのだと思います。確認してみないとわかりませんけれども、調べていただければどの時点からどう言っているかがわかると思います。

Q : 大雨特別警報が出された段階では、広島では特別警報が出される前から、救助の要請が相次いでいるという事態がありました。そういう事実はありつつも、気象庁としては、土砂災害警戒情報や大雨警報の時点で、あくまで避難を呼びかけてほしいということでしょうか。大雨特別警報の基準については、今の段階で変えることは考えていないというお立場でよろしいでしょうか。
A : 今までの避難勧告等に関するガイドラインに沿って、土砂災害警戒情報等の段階で避難勧告などをやっていただくということをずっとお願いしてきたというわけですので、その点については引き続きお願いする必要があるのだろうと思います。いずれにしても、今回このような被害になっているわけですので、連携がどうであったかというのをよく検証いたしますので、その検証段階を踏まえて、何をやらなければならないのかということを考えていきます。何が何でもこうしませんとか、これに決まっていますとか、というようなことを今の段階で申し上げるのは適当ではないのではないかと思います。

Q : 危険度分布について、我がこととして考えていただく必要があるとおっしゃいましたが、土砂災害警戒区域がどこかとか、氾濫のハザードマップの浸水域はどこかとかですとか、それを重ねて見られるような仕組みはないのでしょうか。ハザードマップをなかなか見てもらえないと、国交省の中でもそういう議論がありまして、そういったことについて、国交省、都道府県も含めて連携していくお考えはありますでしょうか。
A : 確かに、今おっしゃいましたように、土砂災害の危険度分布で濃い紫が出たときには、住んでいる場所が、土砂災害警戒区域にあるのかどうかということを踏まえて判断をお願いしておりますので、そういう判断を容易にするような工夫を考えていくのは一つのアイデアとしてあるのだと思います。その時に、そういう形で示していくということがあれば、先ほども申しましたように、地区の防災リーダーのような方が、動いていただく、回るということもありますし、その辺りは検証を踏まえながら考えていくことだと思います。

Q : 特別警報のことなんですけれども、先ほどから大雨警報、土砂災害警戒情報と段階を踏んで、出るタイミングとしては最後で、なくてはいけない情報で、最後の通告として、既に重大な災害が起きているかもしれないというときに出すもので、特別警報の制度上そういうふうになっているとは思うんですけれども、ただ今回これだけ被害が先に出ていて、だけど制度上被害を考慮していないという中で、この特別警報を気象庁として出す意味合いといいますか、住民に何を伝えたいのかというのが、改めて今回疑問に思っているところだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
A : 先ほどどなたかお話ししましたけれども、最後通告のような意味合いがありますので、直ちに身を守る行動、その場で最善の行動を取っていただきたいというメッセージは、大雨特別警報に含まれているのだろうと思いますので、そういったことをしっかり周知していく必要があると思います。

Q : 直ちに身を守ってほしいと言いながらも、重大な災害が起こっているおそれも著しく高いという意味では、もっと前に持って行かなければならないものなのか、という認識もありながら、でも最後通告として直ちに身を守ってほしいというのは、やっぱり社会として理解を難しくしているのではないかと思うのですが、その辺り、今回どのように受け止められますか。
A : 気象の予測技術や精度とのトレードオフの部分があるのだろうと思います。今回も一部といいますか、かなりの地域や時間帯で線状降水帯のようなものが見られましたけれども、ああいったことを事前に予測することは難しい状態です。ベースとして大雨が続いて、もうあと50mm、100mm降ると現在の大雨特別警報の基準に達するようなことがある場合に、今の予測技術をもってどう訴えかけていくかということかと思います。相当の空振りも覚悟でやるということであれば、濫発のようになってしまっても、それは意味があるというのであればやらなければならないと思いますけれども、それは正に社会がどのように受け入れていただけるかということだと思います。今の段階では、法律に書いているように「著しく高い場合」ということになると思いますので、それにのっとってやらせていただいているということです。

(以上)

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