長官記者会見要旨(平成29年11月16日)

会見日時等

平成29年11月16日(木) 14時00分~14時18分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。最初に私から2点お話をしたいと思います。

  まず、気象防災の専門家育成の研修についてです。気象庁では、昨年度に気象予報士の活用モデル事業といたしまして、全国の6つの市に出水期の間、気象予報士を派遣いたしました。その結果、市町村の防災の現場に気象防災の専門家がいることの有効性、これが確認できましたことから、今年度は「気象防災の専門家」を育成するための研修を開催する予定です。気象の専門知識に加えまして市町村の防災対応についての知見も兼ね備えました「気象防災の専門家」の活用促進につきましては、先般、8月でございますが、報告書が取りまとめられました、「地域における気象防災業務のあり方検討会」においても提言いただいたところです。このため、「気象防災の専門家」として気象予報士などが市町村の防災の現場で即戦力となるための研修、これを来年の2月から3月にかけまして開催することとしておりまして、今月下旬から受講生の募集を開始する予定としております。気象庁といたしましては、気象防災の専門家の活用促進をはじめといたしまして、「地域における気象防災業務のあり方検討会」でいただいた提言を確実に実行し、地域の防災力強化の支援に取り組んで参りたいと考えております。

  次に、長周期地震動の実証実験についてです。この件につきましては、11月10日に報道発表いたしました。防災科学技術研究所と共同で、長周期地震動の予測情報に関する実証実験を一昨日14日より開始いたしました。今回の実証実験では、参加登録いただいた方に長周期地震動モニタというWebページを通じまして、地震が発生した際、緊急地震速報が発表されるわけでございますが、その発表された際に、予想される長周期地震動階級等をご覧いただきまして、身の安全の確保等に有効に活用していただくというものです。実際にどのように利用されたか等のアンケートを後日とりまして、いただいたご意見を踏まえまして、今後提供を計画しております長周期地震動の予測情報の利活用方法の検証等を進めて参りたいと考えております。長周期地震動に関心のある方は是非この実証実験にご登録いただければと考えております。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q :今月1日から南海トラフ地震巨大地震に関する新しい情報の運用が始まりました。これまで40年近く続いてきた東海地震に対する取組についての総括と、今後の新情報の運用にあたっての想いというか議論というかそういったものをお聞かせください。
A :今ご質問がございましたように11月1日から南海トラフ地震に関連する情報の運用を開始いたしました。この件につきましては皆さんご案内のとおりですけれども、背景といいますか、流れをもう一度復習ということで最初にお話させていただきます。
  9月の下旬ですけれども、中央防災会議防災対策実行会議の「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」におきまして、報告書が取りまとめられました。この報告においては、地震学の進歩により得られた最新の科学的知見等を踏まえまして、気象庁に関連することといたしまして、一つは、大規模地震対策特別措置法に基づく現行の地震防災応急対策が前提としている確度の高い地震の予測はできないのが実情であると述べられております。また、地震発生の可能性が相対的に高まっているという評価は可能であり、南海トラフ沿いの観測データの分析・評価結果を防災対応に活かすことができるよう、適時・的確な情報発表が必要である等のご指摘をいただいたところであります。これを受け、気象庁としては、2、3日以内に東海地震が発生するおそれがあるといった、これまでのような確度の高い地震予知情報の報告は難しいものの、南海トラフ沿い全域を対象といたしまして、大規模な地震に繋がる可能性がある異常な現象を観測した場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価した場合などに、情報発表を行うことといたしまして、冒頭申し上げましたように、11月1日から南海トラフ地震に関連する情報の運用を開始したところであります。
  振り返ってみますと、気象庁におきましては、大規模地震対策特別措置法による地震防災対策強化地域にかかる東海地震につきまして、地震発生前に前兆滑りが起きる可能性があり、これを捉えることができれば、地震予知の可能性があるという科学的な根拠に基づきまして、必要な観測・監視、情報発表体制を整えまして、東海地域における地震活動、地殻変動の常時監視を実施してきたところです。この間、東海地域などにおきまして短期的なゆっくり滑り、長期的なゆっくり滑り等の検出やこれらの現象を監視する技術の高度化等に取り組みまして、新しい知見や技術の改良など、地震学の進歩にも貢献してきたと考えております。今般9月に報告がありましたワーキンググループの報告は、そのような地震学の進歩も踏まえて、南海トラフ地震に対する防災への貢献のあり方が示されたものと考えております。
  この南海トラフでございますけれども、大規模地震が発生する確率は年々高まっているという認識でございまして、今後は今回のワーキンググループの報告等も踏まえまして、東海地震に限定せず、東海地域を含めたより広範囲な南海トラフ全域を対象に、地震活動と地殻変動について監視を行って、地震発生の可能性を評価するものです。これまでに比べますと対象とする領域も広がるわけでございますし、多種多様なケースが想定されると思います。従ってこれまで以上に難しい分析・評価をしなければならないと感じておりますので、これまで蓄積してきた知見を活かしまして、南海トラフ地震と関連するような異常な現象があった場合には、南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会の有識者の助言もいただきながら、適時・的確に情報提供して参りたいというように考えております。
  いずれにしましても、南海トラフ地震につきましては、発生すれば極めて甚大な被害が広範囲に及ぶということが想定されております。私どもが11月1日から運用を開始することといたしました、南海トラフ地震に関する情報が防災活動に一層的確に活用されるように、今後とも監視、分析、評価、情報提供におきまして、検討を進め評価し、進化をしていく必要があるというように考えております。

Q :今の南海トラフに関連して、ひとまず今月下旬に第一回の定例の検討会が開かれるということで、ひとまずのところ先生はそのままということで、今後体制の拡充とか、また観測関係も東海、東南海、南海でだいぶ差があると思いますが、来年度以降どういった取組をしていくのかというところをお願いします。
A :評価検討会を開催するにあたっての体制ですけれども、現象を見ていくという行為、これはある意味共通ですので、11月1日から運用開始するにあたりましては、もうすでに公表しておりますように、これまで地震防災対策強化地域判定会のメンバーでありました会長、委員にそのまま就いていただいて、この判定会と一体となって検討を行うということにさせていただきました。また、データ提供や解説等にご協力をいただく関係機関につきましても、国土地理院、産業技術総合研究所、防災科学技術研究所というメンバーにこれまでご協力いただいていたわけで、この体制で進めます。関係機関につきましては、南海トラフということで、海上保安庁、それから海洋研究開発機構にも、この地域にて観測をしているということもございますので、参画をいただいてより詳しいデータの解析ができるようにして参りたいと思っております。今後検討していきますと、南海トラフの地殻活動についてさらに知見を有する有識者として、委員の追加が必要ということがあれば、必要に応じて検討していきたいと考えております。
  それから観測の体制ですけれども、現在すでに、気象庁でありますと、東海地域を中心とするひずみ計の配置がございます。それに加えまして、先ほど申し上げました関係機関の中には、紀伊半島、四国、あるいは南海トラフで観測網を展開しているところもあります。これらの観測データを当面はしっかりと活用し、見ながら進めて参りたいと思っています。トータル的にどのような監視体制が望ましいか、効率的で効果的であるかということにつきましては、全体の観測網の検知能力、あるいは配置等も踏まえながら、どういったことが想定できるかについては調査する必要があるというように思っておりまして、このあたりは来年度の予算の中で、関係機関の協力も得ながら調査をしていき、どのような観測網の構築あるいは再配置をしていけば良いかということを、順次考えていきたいと考えております。

Q :南海トラフの新情報に関して、もし発表された場合に、どういう対応をとればよいのかと地元の自治体であったり、民間企業からも困惑の声、戸惑いの声があがってくることがあると思います。長官ご自身としまして、もし発表した場合にですね、どういったふうに情報を活用してもらいたいか、お考えをお聞かせいただけないでしょうか。
A :9月の下旬にワーキンググループの報告があって、間断なく速やかに防災対応に臨むということで、11月1日から南海トラフに関連する情報の発表を開始いたしました。それぞれこの情報を発表した時にどのような防災対応が可能か、効果的かという検討を並行して進めるということがございますので、当分の間という位置付けで、まずは私どもが南海トラフ地震に関連する情報の発表を始めたと、これはご承知のとおりだと思います。そういった中で当面何をやるかということですけれども、臨時の情報として相対的に発生の可能性が高まっていると、こういった場合には日頃の防災対応を点検してくださいと、こういうことでございます。皆様にもお知らせしております。避難路、避難所の確認、耐震固定等の確認、それから家族間で連絡をとってみる、あるいは家庭に備蓄する食品等の確認等をとっていただきたい。これらが現在のところお願いを申し上げていることであります。これ以外に様々な議論がワーキンググループで出たことも承知しておりまして、要配慮者等に対してどうするかといったような課題もあるかというように思っております。このあたりにつきましては、ワーキンググループ公表以降、内閣府等からも報告があるように、静岡、中部、高知県でモデル地区を設けて検討を進めるということが進んでおります。実際にどのように避難すれば良いか、あるいは産業を中心とする経済活動をどう考えていけば良いかというような検討が今後進むようになると思いますので、そのあたりで私どももオブザーバーあるいは協力をしながら、どういったものが良いかということの検討を引き続きサポートしながら、私どもの出す情報がどのように使えるか、引き続きしっかりと関わり、努力していきたいというように思っております。当面のところは、先ほど申しました日頃の防災に関して対応できることを確認いただくということを是非お願いしたいと思います。

Q :長周期地震動の予測の実証実験ですけど、現状登録された方の人数は分かってらっしゃいますか。
A :今回、年度内を第一期として実証実験を行うこととしており、3000名を募集しようということにしておりまして、最新(募集以降2日間)では500名弱くらいだと聞いておりますので、是非皆様にもご宣伝いただいて、登録者が増えると大変ありがたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

(以上)

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