長官記者会見要旨(平成29年5月18日)

会見日時等

平成29年5月18日(木) 14時00分~14時32分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。私から5点お話させて頂きます。

  沖縄地方、それから奄美地方の梅雨入りを先週末に発表いたしました。これから6月にかけましては全国的に梅雨に入るシーズンでございまして、本格的な出水期を迎えます。
  ご案内のように、昨日より気象庁では「警報級の可能性」及び「危険度を色分けした時系列」の提供を開始したところでございます。 また、報道発表していますように、7月上旬からは、表面雨量指数、流域雨量指数といった、雨による災害発生の危険度の高まりを評価する技術を活用いたしまして、大雨警報、洪水警報及び大雨特別警報を改善するということにしております。同時に大雨警報(浸水害)それから、洪水警報の危険度分布の提供を開始することとしております。
  皆様には、大雨などに際しまして時間をおって段階的に発表される気象情報、注意報、警報等とともに、これらの新しい新たな情報を活用いたしまして、早め早めの防災対応をとっていただけるようお願いしたいと思います。
  気象庁といたしましては、引き続きこれらの情報を的確にご利用いただけるよう、周知・広報を進めてまいりたいと考えております。報道機関の皆様には引き続きご協力をよろしくお願いしたいと思います。

  二点目でございます。気象ビジネス推進コンソーシアムについてです。本年3月にこのコンソーシアムを立ち上げました。これまで2回の運営委員会を開催いたしまして、コンソーシアムの略語を英語で「WXBC(ダブリューエックスビーシー)」と決めるとともに、セミナーの開催や気象データ活用の実証プロジェクト等に取り組んでいくこととしております。
  今月の5月30日にはコンソーシアム会員向けに、6月6日には会員以外の方にも呼びかけまして、気象情報の種類・入手方法や利活用の事例等について説明をする入門的なセミナーを開催する予定です。既に募集を行いまして120名の定員いっぱいとなっております。気象庁としましては、コンソーシアムの活動等を通じまして、気象データの利活用による生産性向上に資する取組を進めて参りたいと思います。

  三点目でございます。「気象業務はいま2017」の刊行についてです。「気象業務はいま」は、気象庁の取組の現状や展望など、気象業務の全体像を広く国民の皆様に知っていただくために、平成7年以降、気象記念日にあわせて毎年発刊してきております。今年も6月1日の発刊に向けて準備を進めております。
  詳細については、後ほど担当から説明の機会を設けさせていただきたいと思います。各分野で本書の内容をご活用いただければ、というように考えております。

  四点目でございます。気象衛星ひまわりに関する国際協力についてです。ご案内のように気象庁では、世界最先端の観測機能を有する気象衛星ひまわりを世界に先駆けて打ち上げ、運用しているところでございますけれども、このひまわりのデータが、各国で台風や気象の予報等に的確に利用されるよう、これまで世界気象機関(WMO)や国際協力機構(JICA)とも協力をいたしまして、アジア・西太平洋域約20か国・地域の気象局で、この気象衛星ひまわりのデータの利用に係る技術支援を進めてきております。
  先週の5月10日からスイス、ジュネーブで開催されております世界気象機関(WMO)の執行理事会、これは私も出席したわけでございますけれども、この執行理事会で、ひまわりに係る途上国支援は今後の衛星分野における国際協力のモデルとして高い評価を得たところでございます。
  世界の気象業務の発展、発達ということは我が国にとっても大変重要でございます。今後とも、我が国の技術や知見を広く提供いたしまして、各国・世界の気象監視・予報業務の発展に、貢献してまいりたいと考えております。

  最後は、熱中症への留意でございます。今年も既に各地で真夏日あるいは夏日となるところも出てきているところでありますけれども、熱中症への備えが必要となる時期になってきております。今週末から来週にかけましては平年より気温が高くなる地域もあります。特にこの時期はまだ暑さに体が慣れていないこともありますので、十分な留意をお願いしたいと思います。
  気象庁ではご存知のように、最高気温がおおむね35℃を超えると予想される場合には高温注意情報を発表いたしますし、高温注意情報の発表に至らない状況でありましても、最高気温が30℃以上となる場合には、天気概況の中で注意を呼びかけております。報道機関等による天気の解説等においても、この点、よく、既に報道されているところでございますけれども、気象庁としましても、ホームページに熱中症に関するポータルサイトを設けておりますので、熱中症対策にご活用いただくとともに、それぞれ、各報道関係者の皆様にあっては、この点についても、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q : 7月から表面雨量指数や流域雨量指数を用いた危険度分布の提供が始まるということですけども、これまでも様々な防災情報があるわけなんですが、そういった中で今回の情報提供が持つ意義についてお考えを教えてください。
A : 先ほど言いましたけれども、7月上旬から表面雨量指数を活用しました「大雨警報(浸水害)の危険度分布」、それから流域雨量指数を活用いたしまして「洪水警報の危険度分布」の提供を開始いたします。
  この危険度分布でございますけれども、すでに発表・公表して利用いただいております「土砂災害警戒判定メッシュ」とともに、大雨に伴う土砂災害、浸水害、中小河川の洪水害につきまして、どこで実際に危険度が高まっているかを示すということでございます。
これによりまして、現場に即した形で、より自らのこととして情報を捉えていただく、そして自治体等においては、具体的にどの場所で対応しなければならないかということで、効果的な防災対応に活用いただける。このようになることが、今回の意義であろうかというように考えています。
  いずれにいたしましても、時間をおって段階的に発表される、注意報、警報、土砂災害警戒情報等と併せまして、今回提供する危険度分布等をご利用いただきまして、自治体の避難勧告等、あるいは住民の皆様の避難行動に大いに役立てていただきたい、このように思っております。

Q : 気象庁では、将来的に「気象警戒レベル」の導入を検討されていることだと思いますけども、今回の情報がそのレベル導入に資する部分というのがかなりあるんではないかと思っておりますが、将来的な気象警戒レベルの導入に向けた準備の状況と今回の情報との関連性について教えてください。
A : ご指摘ありました警戒レベル、いわゆる「レベル化」ということでございますけれども、それにつきましては防災気象情報全体の整理の中で、中長期的な課題として取り組んで参りたいと考えております。
  まずは、7月上旬に予定しております、今回の危険度分布、色が付いていないところも入れますと5段階ということでございますけれども、5段階からなる危険度分布の提供に向けて準備をしっかりとし、これらが防災対応に利用されるように周知・広報に努めていくということが重要かと思っております。 この危険度分布の利用の状況等も踏まえまして、中長期的に今ご指摘にありましたレベル化の件についても検討して参りたいというように思っています。

Q : 昨今、北朝鮮を巡る国際情勢が緊迫化していることだと思います。万一、朝鮮半島で核実験等が行われた場合には、気象庁の地震観測網が大いに役割を果たすことになると思いますが、現在どのような観測体制でこの緊迫した状況に臨んでいるのか、また観測にあたっての気象庁としての心構えを教えてください。
A : 気象庁の地震・津波に関する観測体制でございますけれども、皆様ご案内のように、24時間体制で日本全国にある観測網を活用して、迅速に緊急地震速報、津波警報、あるいはそれに続く情報等を発表する体制としております。
  また、世界で発生する地震につきましても、世界の観測網のデータを活用し、あるいは米国等の機関のデータも利用して24時間体制で監視をし、津波について言えば北西太平洋津波情報センターということで、提供するという仕組みで私どもは日頃からしっかりと地震・津波の監視に努めているところでございます。
  こういう体制で引き続き日本及び世界の地震の監視をしっかりと行っていきたいと思っております。

Q : 7月の上旬から表面雨量指数の危険度分布が始まるじゃないですか。気象情報を巡って情報というものが増えることになると思うんですけれども、その利用の仕方について、おそらく警報級の可能性ということで5日先まで「高」とか「中」とかそれで示して、近づいてきたら危険度を色分けした時系列でいつ強まるのかということがわかって、実際に本当にその現象が来たら危険度分布というものを利用して、地図を開いて、どこで本当に危険性が高まっているのかっていう段階的な利用の仕方っていうものを、おそらく気象庁としてほしいと考えてらっしゃると思うんですけれども、そういった形でここまで情報が増えているので、しっかりとそれを伝えるために、その使い方なりそういったものを色々整理して、周知・広報していかなければならないと思いますけれども、気象庁としてしっかりとこの情報を一人ひとりの防災行動というものを促すために、どのようにこれから伝わる情報にしようとしていこうとしているか、考えていることとかあれば教えていただけませんか。
A : 全体として、今ご指摘がありましたように、情報が様々に増えてきていて、ご利用の皆様がどんな情報があるかを全部カバーできない、あるいはこんな情報があったのにと思ってもなかなかそこにアクセスできない、といったことがあって、全体を整理していくべきだというご指摘が長年にわたってあると、この点については、例えば2年前の7月に提言をいただきました交通政策審議会気象分科会においても、そういう中長期的な課題があるので、しっかりと取り組んでいく必要があるというようなことを言われておりますので、その認識の下でどうしていくかということでございます。
  その中で、今般の危険度分布につきましては、まさに先程意義のところでお話しましたけれども、利用者の皆様がこれまで気象庁が提供してきている情報の中で、ある意味もっとも身近な情報として感じていただける情報として提供していこうとしています。1kmメッシュということになりますけれども、いわゆる「我が事」として捉えていただくということです。段階的に情報を発表していく中で、それをご利用いただきたいと言ってもなかなか5日先までの警報級の可能性、あるいは明日までの情報といった形で注意をいただけるということは、非常に意識の高い方が注意をしていただけるわけでございますけれども、自分の身に本当に関係するなと思っていただくという意味でこのメッシュ情報を提供する意義は非常に高いんじゃないかと思います。メッシュ情報を使うと自分のこととして考えて対応できるなという身近なところからまずスタートして、大きな文脈、段階的に発表される情報があると、そういう段階で使っていくんだな、ということを利用者の皆様にも逆に訴えていく、周知をしていく大きな機会になるのではなかろうかというふうに思っております。ちょっとわかりづらい説明かもしれませんけれども、気象庁が発表する様々な情報の中で、今回のメッシュ情報の持つ意味は「我が事」と考えていただきやすい最も身近な情報と捉えることのできる情報のひとつと思いますので、こういった利用を周知していくことで「このメッシュ情報を使うんだな」と、使うにあたっては「その前に警報が出るんだな」という、時間で言えば逆の流れの中で気象情報をきちっと使っていただくような工夫を一層進めていくことが必要なんではないかというのが1点でございます。
  それから、一般の皆様に対する利用は今お話しましたけれども、防災関係者、いわゆる市町村を始めとする防災関係の皆様につきましては、引き続き段階的な発表についてお願いをしていく、あるいは周知をしていくということもありますし、先般4月に第1回の検討会を開催しましたけれども、地域における気象防災業務のあり方という検討の中で、まだ結論がどうなるかわかりませんけれども、自治体の皆様等が、気象庁の持っている情報をよりよく理解していただくような環境をどうすればいいかというようなことがありますので、そういう中でまた工夫ができることがあればやっていきたいなと、このように思います。

Q : 地震の研究についてちょっと伺いたいんですが、地震学者のロバート・ゲラーさんが今日発行のネイチャーに日本政府は地震予知ができないことを認めるべきだという主旨の論考を載せてまして、つまり地震予知や長期予測に今の地震の政策が頼っているというところを改めるべきなんじゃないかというふうに載せているんですけども、その件について率直なご意見を教えていただけますでしょうか。
A : 地震の予知そのものについては、いわゆるプロモート、推進をするという観点からは、ご案内のとおり政府の中では文部科学省が所管する地震調査研究推進本部の中で長期予測を進めておりますので、ある意味その点については私の立場としては率直にといっても答えづらいところがございますので、そちらの方に聞いていただければ、というように思います。一方で、それでは短期予知はどうなのかというところがあると思います。短期予知につきましては、これもご案内のとおり、中央防災会議の中にワーキンググループが置かれて、特に南海トラフに関して、予知の可能性がどうなのかということも含めて、態勢をどうするかということを検討しておりますので、そちらにおける検討を真摯に私としては見守っていく立場にあるというように思います。いずれにしましても、気象庁は、例えば東海についての地震予知をする責務を現行において有しているわけでございますので、できる限りのことを精一杯やるというのが私の立場だと思っております。

Q : 御嶽山の噴火の関連で2点お伺いしたいのですけども、いま現在、噴火警戒レベルの引き上げ・引き下げの判定基準の明確化が順次進んでいると思うんですが、御嶽山の時のようにレベル1のままに噴火するということが過去にもありますし、これからも起こりうるのではないかと専門家の先生でもおっしゃる方がいらっしゃると思うんですけども、こうしたまだまだ噴火の予測というものが万全ではない中で、地元の気象台だとか自治体だとか住民も含めてですね、火山の噴火も含め、火山とどのように付き合っていったら良いのかという点について長官としてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。
  もう1点は、御嶽山の訴訟の関係で、次回6月14日、第2回被告側からの口頭弁論があると思うんですが、今週の始めには長野県と国側の準備書面が提出されたと思うんですけれども、改めましてこの訴訟に関してですね、次回に向けて準備書面について国側としてはどのようなお考えを盛り込む形になったのか、お答えできる可能な範囲でお伺いできればと思います。
A : 御嶽山に関連してという質問で2点だと思いますので、御嶽山の噴火につきましては、平成26年の9月であったわけでございますけれども、改めて噴火災害によって亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた方にお見舞い申し上げたいと思います。噴火警戒レベルの透明性といいますか、基準を明確にして公表していくということは順次取り急ぎ、遅いというご批判もありますけれども、各火山で、それぞれ火山学者、地元の自治体等の方、いわゆる火山防災協議会の方々とよく協議をしながら、見直しができたところから順次公表してきているところであります。御嶽山につきましても、すでにレベル判定基準の公表は済んでいるところであります。これは、今までの私どものそれぞれの火山における知見、あるいは噴火の経験がないような、データが少ないようなところは、似ているような火山の点検を踏まえまして、火山学者等の意見もよく聴取しながら、警戒レベルの見直しを検討してきているところであります。では、今回定めたそれぞれ毎回見直したものが全て完全であるかと言えば、それは必ずしもそうでない、その時にはベストエフォートということで決めておりますけども、相手は自然でありますし、私どもが火山に対する知見を十分に有しているわけではないという謙虚な立場に立って、それぞれ火山に対して臨む必要があると思っております。
  レベル1のままで噴火する、御嶽山はそうだったわけですけども、レベル1のままで噴火する可能性があるということにつきましては、可能な限り、我々の知見の持っている限り、規制範囲の中であるいは火口の中での影響しかないような場合は、レベル1としたまま噴出物が出るようなことはもちろんありまして、そういう場合は想定の範囲内だと思いますけれども、いずれにしても想定を超えて噴火が起こるというようなことはまったくないということはないと思います。さはさりながら、御嶽山の噴火で私どもが経験をし、さらに学んだことというのは早め早めに警戒を呼び掛けていくことなんだろうというように思っておりまして、そういう意味でレベル判定基準についても、そういう考えが御嶽山については反映されたものとして公表されてるんだろうというように思います。
  どのように付き合っていけばいいかということにつきましては、大変難しい質問で答えがきちっとできないので大変申し訳ないんですけれども、やはり火山の特徴は様々ですけれども、火山に関係する方たちが恵みもあるけれども、しっかりと火山に対する恐ろしさ、怖さを共有していく、それは登山者含めてですけれども、火山の持っている怖さ、正しく恐れるということかと思いますけども、そういうことを共有していくということを火山防災協議会等を通じて、あるいは地方気象台がそれぞれございますので、地方気象台として日頃からそういう関係者とよく連携をしていくと、そういう行為を私どもとしてはしていかなければならないのかなと思います。
  訴訟の件につきましては、係争中の事案でありますので、具体的なコメントは控えさせていただくというのが基本姿勢でございますので、この点についてはご理解いただければと思います。いずれにしても真摯に対応させていただきます。このように思っております。

Q :長官の方からお話のありました民間利用の件にも関わってくるんじゃないかと思ってるんですけど、昨年は雷監測システムの公開ということもありまして、気象庁ではこれまで非公開だった情報の公開が順次進んでるんじゃないかと思うんですけど、民間利用という点で言うと、非公開だった情報を公開することで、一面でもちろん公開することは必要なことではあるんですけども、一面で民業圧迫に繋がっている面もあるんじゃないかと思うんですけども、長官のお考えを教えていただければと思います。
A : ご案内のように気象庁として観測をし、観測した結果を使って予測データを作ったり、警報等の情報を出したりするわけでございますけれども、そういった観測のデータ、それから防災や交通安全等のために作成したデータ、これにつきましては公開するのが基本だというように思っております。そのように個別法としての気象業務法でも定めておりますし、国全体としてはオープンデータということがありますので、国の有する情報をオープンにしていくということは重要でありまして、これにより広範な利用を促進して、防災あるいは社会全体の利便性の向上、経済活動も含めてですけれども、そういうことの効果が期待されるわけでございますので、これに対応していくのが基本なんだというように思っております。
  いま個別の話として、雷観測システム、LIDENですか、お話がございました。特別会計、いわゆる航空のための特別会計でございますけれども、特別会計で整備してきたシステムについても、特別会計を負担している方のご理解、一般の利用者の要望、気象庁側のシステムも含めた準備の状況を踏まえて順次公開をしてきているところでありまして、例えば平成18年だったと思うんですけども、すでに飛行場の様々な気象データは公開してきております。そういった観点で、昨年、雷観測システム(LIDEN)につきましては、利用者のご要望がたくさんございました。それから私どもとしても準備が整ってきたというところもありましたので、今年の1月の末ですか、データを配信させていただくということで実施したことでございまして、全体として利用を進めることで防災あるいは経済活動、利便性を向上させていくことに取り組んでいくことが、私どもの使命だと思っておりますし、仮にそのような特定の業者さん等があるようでしたら、それは丁寧にご説明をしてご理解をいただくんだというように思っています。

(以上)

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