長官記者会見要旨(平成27年12月17日)

会見日時等

平成27年12月17日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室


発言要旨

 先月に続いて、雪に関する留意事項についてお話ししたいと思います。
 この冬全体の天候は、北日本では平年と同様、北からの寒気の影響を受けやすいものの、東日本から沖縄・奄美にかけては寒気の影響を受けにくく、気温は、北日本ではほぼ平年並、東日本から沖縄・奄美にかけては高くなる、いわゆる暖冬の可能性が大きいとの見通しです。
 冬型の気圧配置は持続しにくく、日本の南岸付近を低気圧が通過しやすくなる見込みです。
 低気圧の通過と一時的な寒気の南下のタイミングが合うと、普段雪の少ない太平洋側でも雪になります。このような普段雪の少ない、雪に対して脆弱な地域で雪が降りますと、交通機関の混乱や事故なども起こりやすくなります。
 また、暖冬であっても一時的に冬型の気圧配置が強まって、日本海側で大雪となることがあります。雪下ろしや除雪等における事故、交通障害、さらに冬山での遭難など、雪による災害や事故を防ぐためには、雪が降る前にしっかりと準備をしていただき、気象台が発表する大雪や暴風雪等の警報等に十分ご注意いただきまして、万全の対策をとっていただきたいと思います。

 以上です。


主な質疑応答

Q 12月ということで今年最後の会見ですが、長官が今年一番印象に残っている気象等の出来事はなんでしょうか。
A 一つに絞りきるのは難しいのですが、まず、5月の口永良部島の噴火によって全島避難したことや、6月には箱根山でも噴火がありました。桜島、阿蘇山等で多数活発な火山活動があったことが1点です。もう一つ、気象の分野では、「平成27年9月関東・東北豪雨」での水害など、甚大な災害が各地で発生しております。
 まずは、こうした災害が発生した中で、報道機関の方々には、適切かつ迅速に防災気象情報を伝えていただいたことに感謝したいと思います。
 二つ挙げましたが、火山について言いますと、これまで経験したことのない、噴火警戒レベルが口永良部島で5、その後桜島で4という、今まで発表したことのないレベルを発表しましたし、また御嶽山の教訓を踏まえて、レベル1の範囲内で火山活動の高まりがあった場合に現地調査を行って、きめ細かい臨時の解説情報を発表しましたし、噴火速報の運用を開始し、阿蘇山で発表しました。こういう経験したことのないレベルの発表であるとか、火山情報の改善ということを、その都度行ってまいりました。こういう火山の活動や、それに伴う気象庁の情報発表ということを通じまして、噴火警戒レベルと、それに応じた防災行動が社会に浸透していってほしいと考えています。

Q 今の質問に関連しますが、気象行政を1年間振り返ってみて漢字一文字で表すとしたら、長官はどのような文字をお考えになりますでしょうか。
A 今申しましたとおり、様々なことがありましたので、それを一つの漢字一文字で表すのは難しいかなと思います。

Q 一言ではどうですか。
A 先般、安心の「安」の字が書かれていましたが、我々の立場で言いますと、安心安全に貢献していくという、そういう意味で「安」の字というのは我々にとっても重要な文字かもしれないなと思います。フレーズはなかなか思い浮かびませんが、感想としてはそういうところです。

Q 火山の関連ですが、大分この1年、体制的にも制度的にも転機の年であったと思いますが、今、レベルのことで浸透していってほしいとおっしゃいましたが、気象庁としては今年は転機の年かと思いますが、もう少し踏み込むと、一番どこを大きく変えていこうと、いろいろ提言も出て法改正もあったことを踏まえて、どこをどう変えていこうと今考えておられますか。
A まず、春にいただいた提言、御嶽山を踏まえた提言を実現すべく、平成28年度要求を行っているところで、その実現に全力を注ぎたいと思います。その中では、活動評価をするためのシステムの強化や、要員の増強でありますとかを要求しておりますし、その平成28年度要求の前であっても、気象研究所に、火山の博士号を持った職員を採用するということをやっております。こういうことを通じて、監視能力や、そのデータに基づく火山の評価能力を、今後時間が掛かるかもしれませんが、強化していきたいと思います。自ら力を付けつつ、法改正に基づいて火山防災協議会の活動が今後活発化すると思いますが、その中で、これまでもその活動に参加してきましたが、さらにその中で活動を支援すべく取り組んでいきたいと思っています。

Q さらに関連で、噴火警戒レベルの判断基準が、今後精査して公表して、できるだけ共有していこうという説明で、進めているところだと思いますが、なかなか進捗状況が芳しくないのではないかと見ているのですが、その進み具合と難しさはどうでしょうか。
A おっしゃるように、火山ごとに過去の噴火の事例も千差万別ですし、観測体制も火山ごとにかなり違いますので、今取り組んでいるのは、まず経験も豊富でデータも豊富な火山を対象としてやっているところです。それで、他のもっとデータの少ない火山ですと、おそらく活動履歴に抜けが出てくると思います。抜けがあるところをどう補っていくのか、といったところの方針を立てて、他の火山に展開しようという段階です。そのため一見遅いように見えるのですが、最初の火山で丁寧にフルスペックで全体を見直して、それで他の火山にどう展開していくかという方針を今立てて、他の火山に展開しようとしているところですので、これから加速していくと思います。年内は難しいですが、年度内にいくつかの火山についてお知らせすることができればと考えているところです。

Q 今週、COP21でパリ協定が採択されて、先進国も途上国、新興国も合わせた最大公約数的な目標が示されました。今世紀末には温室効果ガスを正味ゼロにする目標が示されたわけですが、気象庁というのは対策を立てる省庁ではないですが、こういった気候変動に関しては関わりがゼロとは言えないと思いますので、こういった協定が採択されたことの受け止めと、日本の気象庁としてこういったことをやっていくべきというお考えがありましたらお聞かせ下さい。
A COP21そのものについては、コメントすることはないのですが、日本国政府としては、COP21の前に適応策も含めた計画を策定しており、その中で観測・監視・予測を継続的に行っていくべしということも書かれていますし、適応策についても適応計画というものが立ち上げられていますので、気象庁としては、これまでIPCCに貢献してきたような、観測・監視と予測の科学的知見を提供するのは、もちろんこれまでどおり続けるとともに、国内のいろいろな分野での適応策策定に対して、何かデータの提供や知見の提供によって適応策を支援していくことが今後求められてくると思いますので、そういったところに今後力を入れていきたいと思います。

Q では、パリ協定を受けて何か、ということは、今のところは。
A 今は私自身、まだ検討していません。担当部局で検討していれば、そのうち私の方に上がってくると思いますが、今のところ私の頭の中にはまだ何も入っておりません。

Q 先ほどのご回答と重なるところがあるかもしれませんが、火山の噴火警戒レベルの基準についてですが、判定基準について公表する予定ということで作業を進めていると思いますが、現在の状況や今後の見通しなどが分かればお答えいただければと思います。
A 繰り返しになりますが、今私が理解しているところでは、一番データが豊富で過去の噴火経験も豊富な火山について、作業が終わったところです。その作業結果を踏まえて、今後、他の火山にどう展開していくか、データが豊富な火山は同じようにやればいいと思いますが、データが少ない、あるいは噴火事例が少ない火山について、埋まらない部分をどういう形で埋めていくか、例えば、似たような噴火の形態を持つ火山をグループにして知見を抽出するといった、いろいろなことを今火山課で検討していると思いますが、それを、できれば最近レベルの上げ下げがあったり活動が活発だった火山を優先的に選定して作業を進めていくことになるのだろうと思います。47ないし、さらに三つ加わった50の火山を一気にやるのは難しいので、とりあえずはそういった方針で優先順位を決めて、精査の方針を各センターに伝えて、センターごとに選定した火山について取り組んでいくというのが、今後1~2か月の一番の仕事です。それが1~2か月で終わるかどうかは、今のところ何とも言えませんが、先ほど申しましたとおり、年度内には、いくつかの火山についてご報告できるようにしたいと思っています。

Q 警戒レベルの基準を公開することによって、住民の人であるとか、山にいる人に、どういったことを、例えば考えてもらうきっかけにしてもらったりとか、メッセージ性のようなものはあるでしょうか。
A まずは、その火山の専門家と充分火山学的な認識を共有し、次に火山防災協議会にそれを示して、また認識を共有することによって、噴火する前の段階から、どういう状況になればどういう行動を取るのが望ましいか、そうすべきであるかという根拠が分かりますので、実際に行動を起こしていただく住民の方々、あるいは観光客の方々の納得性が高まるのだろうと思います。そういうことを、発表する側も受け取って行動する側も、共通の認識と納得感を持って行動していただくことによって、よりスムーズな防災行動ができるのではないかということを期待しています。


(以上)

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