長官記者会見要旨(平成27年11月19日)

会見日時等

平成27年11月19日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室


発言要旨

 気象庁の特別警報に関しまして、新たに、気象等及び噴火に関する特別警報の「緊急速報メール」による配信を、本日11時より開始しました。
 緊急速報メールは、個々の携帯電話ユーザーに直接配信されるもので、緊急性が極めて高い特別警報の伝達に大変有効であると考えています。今回の特別警報の配信開始によって、全ての特別警報が緊急速報メールで配信されることとなり、特別警報がより一層多くの方々の適切な防災行動につながるものと期待しています。

 次に火山に関する留意事項について述べさせていただきたいと思います。
 5月に噴火した口永良部島については、現在も噴火警戒レベル5を継続しています。気象庁では、口永良部島を含め、現在も13火山に対して噴火警報を発表し、警戒を呼びかけているところです。また、火山活動に変化が見られた霧島山のえびの高原などでは、臨時の「火山の状況に関する解説情報」を発表しています。国民の皆様には、気象庁や地元自治体が発表している最新の情報を入手し、それぞれの火山の状況の把握に努めていただきたいと思います。

 最後に、雪に関する留意事項についてお話したいと思います。北海道など北日本では既に雪の降っている地域もありますが、これから本格的な雪のシーズンを迎えます。
 先週ですが、中央防災会議会長から「降積雪期における防災態勢の強化等について」という通知がなされたところですが、本通知の趣旨を踏まえ、雪に関する防災気象情報の発表を迅速かつ着実に行うとともに、関係機関との緊密な情報共有を図るなど、降積雪期の対応に万全を期すよう庁内に指示したところです。
 振り返ってみますと、昨年は大雪の立ち上がりが早く、12月の上旬には、日本付近に強い寒気が流れ込んだ影響で、日本海側で大雪となったほか、普段、雪の少ない四国で大雪の被害がありました。
 雪下ろしや除雪等における事故、交通障害、さらに冬山での遭難などを防ぐためにも、早めに冬装備の準備をしていただき、気象台が発表する大雪や暴風雪等の警報等に十分注意いただきまして、万全の対策をとっていただきたいと思います。

 以上です。


主な質疑応答

Q 緊急速報メールについて1点伺います。緊急地震速報や津波と比べますと、気象の特別警報というものは重大な災害の切迫の度合いや避難行動の性格もだいぶ異なると思うのですが、気象特別警報で緊急速報メールを使っていくことの意義や、今後の課題についてお願いします。
A 地震や津波に限らず、特別警報というのは、重大な災害が発生するおそれが著しく大きいときに発表するものです。気象等に関する特別警報については、数十年に一度という特に異常な現象が予想される場合に発表することとしております。意義でございますが、気象等に関する特別警報を緊急速報メールで配信することによって、より多くの方々に、より一層迅速な防災行動につなげていただくというものだと思いまして、そういう意味で非常に意義があるものだと考えています。
 今後の気象庁の取組でございますが、特別警報が発表されたときには、既に災害が発生していてもおかしくないという状況で発表することになりますので、気象庁では、現象の推移に合わせて、注意報や警報などの気象情報を、特別警報に至る前に、段階的に発表しておりますので、それを用いていただいて、特別警報を待つのではなく、このような情報を活用して、早め早めの防災行動を取っていただきたいと思います。これは緊急速報メールで発表するかどうかとは別の視点ですが、これは常に大事なことだと思っています。緊急速報メールが来ることによって、かえってそれを待つのは非常に良くないことだと思っています。
 また、大雨や暴風、津波や火山など自然現象により、また、個々の人が実際にいる場所、住んでいらっしゃる場所や旅行先など、状況によって取るべき行動は異なってまいります。いざというときのためには、お住まいの地域や旅行先にどのような災害の危険があるのか、それに対してどのような防災行動が必要なのかを事前に皆様が確認していただいておくことが非常に大切だと思います。
 こういう点で、気象情報や地域の避難情報なども含めて、防災に必要な知識を身につけていただくよう、普段からの準備が重要だと思います。気象庁としては、特別警報の緊急速報メールでの配信を含めて、特別警報をはじめとする気象庁が発表する防災気象情報について、平常時からしっかり周知し啓発してまいりたいと思います。

Q 火山についてですが、2007年12月から法律が改正され、火山の警報が導入され、8年ほど経ちますが、この間を振り返って、火山の情報発表の位置付けだけでなく、事前に予測して防災対応を促すという仕組みになりましたが、実際にはなかなか予測が難しかったり空振りであったりして、新たに出てきたものがありますが、気象庁自らの評価している、この間8年あまり、どのように評価されていますか。
A まず、火山噴火の予知というものが非常に難しく、できる場合もあれば、非常に難しい場合もあるという前提のもとに、噴火警報や噴火警戒レベルが導入されたということを、御嶽山も踏まえて再確認する必要があると思っています。最近の御嶽山も含めた事象を振り返ってみて、やはりそういったところをもう一度確認して、出しすぎるのも困りますが、あまり出しすぎないのも困りますので、警戒レベルですから、警戒することが重要であるということを再認識して取り組んでいく必要があるだろうと思っています。全体を評価してどうかというと、どうしても、なんとか現象を予測したいと担当者は頑張るわけですが、それが必ずしも可能ではない場合が多いということを、気象庁担当者も私もまわりの方も再認識したのだと思います。そういうところを踏まえて、今後の取り組みとしては、しっかりと過去の事例などを踏まえて、火山学の進展も踏まえて、レベルの基準などをしっかりと、今改めて作業しておりますが、判断にぶれがないように、しっかりと基準を定めて、それを関係者と充分共有しながら、今後、最善を尽くしていきたいと思っています。過去についての評価は大変難しいのですが、私個人の感想としては、そういうところを私自身再認識して今後に向けて取り組みたいと思っているところです。

Q 噴火警戒レベル導入からも8年ほど経つのですが、噴火警戒レベルは科学的な評価の部分とそれに応じた社会的防災対応をセットにして分かりやすく示すことが狙いだったと思いますが、一方で、結び付けたことによって、かえって自由度を阻害した面といいますか、あいまいな表現で自由度という言葉を使いましたが、地域に、対応が決まっているのだからお任せというか、気象庁が判断をしてくれる、レベルが上がったときにこうすればいい、というお任せ意識を生んでしまったのではないかという指摘もあります。そのあたり、功罪と言っていいのか、科学的評価と社会的対応を結び付けたことそもそもについて、どうお考えでしょうか。
A 噴火警戒レベルの前に、火山活動度レベルというものをやろうとして、それが社会の活動との関連ではなく、火山の噴火の活動の大きさ、段階分けをして試みたのですが、まったく上手くいかず、つまり社会との結び付きがないものですから、社会の反応がない。言い方が難しいのですが。それと比べると、警戒レベルにしたことによって、社会の防災行動と結び付けたことによって、よりこちらに目を向けてもらった面も大きいのではないかと思っています。今おっしゃったように、お任せという自治体もあるかもしれませんが、そこは、そうならないように、今まさに火山防災協議会をさらに活性化しようと、法律も改正されて法的に位置付けてきちんとやろうとしていますので、もしお任せ的な認識があったとすれば、そうならないように、一緒に考えて、一緒に火山防災を進めていこうという、科学的に観測データに基づいて判断すべきところはお任せいただきますが、前もって、そのレベルになったら、地域としてどういう行動を取るかということは、火山防災協議会で一緒になって考えて決めることですから、一体となってやる方向に進んでいるというのは非常に良いことだと思っています。マイナス面があったとすれば、そういった点はどんどん改善していけるものだと考えています。

Q 年内にも、活火山法が改正されたものが施行されるかと思いますが、今の質問にも少し関連しますが、長官としてどんな点に期待をしているか、改正後のことについて期待感がありましたら教えていただきたいと思います。
A 先ほどの繰り返しになりますが、活火山法の改正前で言うと、義務や役割があいまいな面があったのかもしれませんが、今回の法改正によって、気象庁や火山学者、地元自治体や住民の関係が明確になりますので、そこでの気象庁の役割をしっかり果たしていけば地域全体として火山防災が良好に進むのではないかと期待しております。法的に役割や位置付けが明確になれば、その分、当然責任も明確になりますので、その点はしっかり意識して、気象庁として最善を尽くしていきたいと考えています。

Q 箱根山の火山活動の現状と、今後のレベルの引き下げについて、どのような認識でしょうか。
A 箱根山は、地殻変動、山の膨張を示す変動が停止して、その後、地震活動が続いていましたが徐々に低下してきています。ほぼ噴火前の状況に近づいているのではないかと認識しています。噴気はまだまだ勢いがあるのですが、あそこはもともと噴気地帯ですので、仮に地震活動が収まっても、噴気は続くのだろうというのが専門家の見立てです。こういう状況を踏まえながら、観測データをしっかり見て、噴火警戒レベルの引き下げの時期については適切に判断していきたいと考えています。

Q 地元の箱根町の方には、レベル1になった場合を見越して、ガスはまだ濃度が高いということで、立ち入り規制の継続などを検討しているようですが、レベルを動かすといった話が先ほどありましたが、地元ではそういったことを行うことについては、気象庁として評価というか受け止めはありますでしょうか。
A 火山性のガスについては、火山から離れた温泉地帯でも場所によってありまして、それぞれの地域で自治体においてガス濃度の測定や立ち入りの規制を行っているところが他にもたくさんありますので、レベルが1か2かということに関わらず、観光客などの安全のためにそういった対策を考えていただいていることは非常に良いことだと思います。


(以上)

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