長官記者会見要旨(平成27年4月16日)

会見日時等

平成27年4月16日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室


発言要旨

 はじめに、本日、気象庁ホームページの情報が正しく表示できない状態となったことについてお話させていただきます。気象庁ホームページでは、非常に多くのアクセスがありますので、それに耐えられるように、コンテンツ配信サービスを委託しております。本日10時頃から13時過ぎにかけて、このサービスの障害により、正しい表示ができない状態となりました。利用者の皆様にご不便をおかけしましたことをお詫び申し上げます。また、この作業の中で仙台管区気象台において職員が復旧作業中に不手際がございまして、「津波警報・注意報が出ています」という文面を一時表示させてしまいました。重ねてお詫び申し上げますとともに、ホームページの障害も含めて再発防止のための指導を徹底してまいります。
 さて、今日は平成27年度最初の会見でございますので、本来であれば今年度の主な取り組みについてご紹介するところではございますが、既に本年1月と3月の会見において今年度の施策について述べさせていただきましたので、本日は本日公開するひまわり8号のサンプル画像を中心にお話をさせていただきたいと思います。

 ひまわり8号につきましては、昨年12月18日に初画像を公開したところです。
 その後の各種の機能確認試験も順調に進んでおり、そうした試験の中で得られました画像を、本日この後に、当庁のホームページにて公開いたします。
 後ろのモニターに映しておりますのは、ひまわり7号と8号がとらえた今年の台風第4号の可視画像です。右手がひまわり8号で、この方が、きめ細かく雲の発達の様子をとらえているのがご覧になれると思います。解像度・分解能も非常に細かくなっておりますし、もう一つは時間の間隔が非常に短い、台風の場合は2.5分間隔でずっと追跡できる機能がありますので、台風をそのまま追跡しながら2.5分間隔で映像を捉えています。細かく見ていくとキリがないのですが、雲がモクモクと湧き上がるところなど細かい雲の様子が見られると思います。
 このように、世界最先端の機能を持つ「ひまわり8号」でございます。台風や集中豪雨等の監視が強化されるとともに、この観測データから求められる上空のきめ細かい風、これは雲の動きから風向・風速を推定することで、これは今までもやっておるのですが、時間間隔も短く、解像度も高くとなると雲による風のデータがこれまでよりも格段に良く得られるようになりました。これを数値予報に取り込むことによりまして、予報精度自体も向上するものと期待しているところでございます。
 ひまわり8号の運用開始は本年7月頃を予定しています。この観測データを有効に活用すべく、引き続き、その準備に鋭意取り組んでまいります。

 次は5月にかけての防災上の留意点について申し上げたいと思います。
 これから5月にかけての防災上の留意点ですが、先週は一時的な寒気の南下によりまして、銚子で最も遅い降雪の記録を90年ぶりに更新するなど、関東地方でも雪の降ったところがありました。また、今週は、この時期としては非常に強い寒気が上空に流れ込んだ影響で、大気の状態が非常に不安定となり、局地的な大雨やひょうが降るなど、広い範囲で荒れた天気となり、昨日は突風による被害も報告されております。これについては静岡・長野でJMA-MOTによる現地調査を実施する予定でございます。この季節、これから5月にかけてですが、日本付近では低気圧が急速に発達し、「春の嵐」や「メイストーム」と呼ばれる台風並みの暴風が吹き荒れることがありますし、先日のように上空に寒気が流れ込むなどして大気の状態が不安定になるなど、竜巻などの激しい突風が発生するおそれもあります。また、雪が多く積もっている地域では、雪解けによる、なだれや洪水、土砂災害などが起こりやすくなります。
 これからゴールデンウィークを迎えるにあたり、行楽地などに出かける機会も増えると思います。お出かけの際には最新の気象情報に注意していただくようお願いします。

 最後に東北地方太平洋沖地震の余震への注意についてでございます。
 地震発生から4年が経過しておりますが、現在でも、余震域の沿岸に近い領域では、大地震が発生した以前の状況に比べて活発な地震活動が続いております。まれに規模の大きな余震でありますとか、強い揺れ、さらには津波を伴うことがありますので、引き続き注意を宜しくお願いしたいと思います。

 以上です。


主な質疑応答

Q HPの件ですが、閲覧できなくなって3時間近くというこれまでにない長い時間と伺っていますが、長い時間見られなかったことについて改めて受け止めをお願いしたいのですが。
A かつてホームページというのは広報の手段の一環だったのですが、気象庁自ら国民に直接情報を伝えるツールの一つとなっていますので、それが3時間止まったということは重く受け止めています。まずは原因をよく分析して、今後再発しないように努めていくことが重要かと考えています。

Q ひまわり8号ですが、1977年の最初のひまわりから38年間で世界最先端まで至ったことについて受け止めをお願いします。
A 気象庁にとって非常に大きな事業で多大な予算をいただいて長い期間衛星を打ち上げ続けられたことは、まず国民の皆様に感謝をいたしたいと思います。その間、担当者が努力し、またセンサーについては関係する会社等が非常に努力し、世界的に協力して、気象庁にとっては新しい衛星、他の国にとっては次世代の衛星を、最初に我が国で打ち上げられたことは非常にうれしいことです。今後は、これまでと比べるとデータ量にして50倍、今の7号と比べて格段に良くなっているわけで、これを良くなっているな、というだけで済ませたのではもったいない。先ほど申しましたように、雲の動きから風の分布を調べるという、これは海上ではなかなか観測できない、海上の観測は少ないものですから、衛星のデータは非常に重要だと思います。この高機能の衛星データをしゃぶり尽くすくらい徹底的に利用しつくして、防災上、あるいは予測精度の向上に今後努めてまいりたい。というのも、打ちあがって実際に運用を始めるとまず監視はできるようになるのですが、これを予測精度の向上に繋げるためには技術開発が伴いますので、日々研鑽して続けていくことによって予測精度の向上を図っていきたいと思います。

Q 様々な現象に役立つことが期待されますが、一番期待できる気象現象は何でしょうか。
A 台風の周辺でも雲が湧き上がってくるのが見えていますが、2.5分間隔なので、リアルタイムで雲が湧き上がってくるのが分かるため、積乱雲に伴う集中豪雨の監視にはまず役立つ。これを予測にまで繋げるにはさらに難しいハードルだと思っています。もう一つは、まさに見ていただいた台風で、台風の後ろの細かい構造まで分かりますし、台風の渦の中の雲の動きから風の分布も分かりますので、台風を中心とする予測精度向上に非常につながると思います。台風の強さの推定の精度も上がると思いますし、進路等の予測精度も向上していくものと、防災上はこの二つ。あとは、黄砂が見えるとか、海面水温とか海水の状況が細かく見えるというところもありますので、地球環境の監視にも非常に役に立つと期待しています。

Q ひまわりに関連して、今長官がおっしゃっていたように、実況監視という意味でもすぐ使える即戦力だなと感じる一方で、数値予報に生かしていくということになると、長官がおっしゃるようにまだ技術開発が必要になってくると思いますが、ここも非常に求められているところだと思うので、ここについては気象庁としてどのように臨んでいくのでしょうか。
A 衛星データは運用開始とともに得られるようになるのですが、初期値としてモデルに入れるときに、モデルの最適化が必要です。得られるデータのセットが変わってきますので、それをどううまく使いこなして精度を向上させていくかというのは、今までも色々なところで積み重ねてきて数値予報モデルというのは作っていますので、データが入ってきたから良くなるものではなく、データの取り込み方の最適化などが必要になってくるので、もとからこういうデータが得られることは分かっているのですが、実際のデータを見ながらそこをアジャストしていくというのはどうしても必要になりますので、一定期間は必要で、時間をいただきたいと思います。

Q それは実際にデータを使ってみながら検証していく作業が必要になるということでしょうか。
A これまでもこういうデータが来るだろう、ということは、擬似データを使って既に開発は進めているのですが、それを最終的に詰めていくためには実際のデータを入れながら、今調整の段階でもデータが得られていますので、それを取り込んで数値予報課の方で鋭意やっているはずで、それを積み重ねていって、運用開始には、なかなか最終的な形にはならないかもしれませんが、今既に走り出しているのがある時点で日の目を見るだろうと思います。

Q 先日、蔵王で空振計の障害がありましたが、改めて今火山活動が活発化しているという学者もいる中で、故障について全国調査をされる予定があるかどうかということと、三陸沖で震源が100kmずれるということが2月にありましたが、その対策の進捗状況を教えてください。
A 津波のほうは、先月お話しましたように、P波を使った震源と、P波とS波を両方使った震源を比較して、一定のずれがあった場合にはアラームを鳴らし注意喚起をするということをシステムに組み込むことにしています。もうやり方は全部出来上がっていて、それをソフトに組み込んで、今テストランをやっているような状況ですので、今月24日には実際に作業に組み込みます。過去の事例を調べてみると、緊急作業ですからある程度のずれはあるのですが、その通常のずれの範囲を大きく逸脱するときにアラームを鳴らし、3分の中で津波警報を出そうとしていますので、あまり時間を掛けられないことから、二つ地震が起こったとみなして、それぞれの地震について津波の評価をします。それぞれ若干ずれた結果が出てくる可能性があるのですが、それを足し合わせた形で、つまり広めに、Aの震源でこの範囲、Bという震源でこの範囲だったら、両方足し合わせた範囲に、警報なり注意報を出すというやり方で、時間はほとんど余分に掛からない方法で津波警報・注意報を出すという方法で第一報を対処したいと考えています。これは24日からです。
 もう一つの火山の観測装置の故障の全国調査ですが、ある時期やったことがありまして、いくつかの火山で障害になっているものがありました。火山の火口周辺や、雪に覆われた火山は、非常に観測環境が厳しいので、どうしても一定の割合で、ある程度障害が発生するのは、ゼロにはなかなかできません。それが実情です。そして、その地点にアクセスできる場合は、至急交換することにして対策を取るのですが、場所によっては、特に冬の期間、なかなかアクセスできずにある程度欠測が続くということがあります。その場合はやむを得ないのですが、他の観測データを総合して注意深く活動を監視していくという方法でその間は対処したいと考えています。

Q ホームページの障害ですが、幸いこの3時間、大きな災害、警報がなかったのですが、その辺の受け止めを改めてお願いします。
A 非常に不幸中の幸いだったと思います。常に最悪の事態が起こりうるということを考えていますので、今回は本当にそういう意味で幸いでした。警報が発表されるような状況のときは、他のあらゆる手段を、皆様のお力をお借りしながら国民の皆様に伝えるように努力していきたいと思います。

Q 今後同じようなことが起きた場合のバックアップの手段を検討するとか、そういったお考えはありますか。
A まずは原因を分析してみないとなかなか申し上げられないのですが、原因を分析した上で対応策を考えていきたいと思います。

Q 原因は今のところ分かっているだけでもどういったところなのでしょうか。
A (予報部担当)委託業者からの正式な報告はまだいただいておりませんが、電話で少し聞いたところ、プログラムに不具合があってそこを改修したので、同じ障害は発生しないと聞いています。

Q 降灰予報がかなり詳しくなると思いますが、改めて降灰予報が詳しくなることによって、どういう方向で運用してほしいと思っているのか、その点を説明してもらえますか。
A 今までは降灰がある範囲だけを予報していましたが、その中で濃淡がありますので、その量を見積もって3段階に分けて発表する。これは社会の影響度をある程度考慮してなのですが、今の現代社会ですと1mmも降ると大変なことになりますので、もう少し少ないところから影響度に応じて色分けして発表させていただきますので、その影響度を良く見ていただいて、対応・行動をとっていただければと思います。情報の出し方としては、時間を掛けてはいけないので、まずは常に活動が活発な火山は定時で常に出し続けて、いざ活動があると、まず速報的に出すものがあって、あと詳細に、という3段階くらいで考えていますので、それぞれ、迅速性や詳細性で、それぞれ使い分けていただければと思います。


(以上)

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