長官記者会見要旨(平成25年5月16日)

会見日時等

平成25年5月16日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日は、簡単に3点について述べさせていただきます。初めに、これから本格的な出水期ですので、そこについての注意点を説明いたします。次に、夏に向けて「高温注意情報」の運用を開始しますので、これについての説明を行います。そして、最後に6月1日、気象記念日と呼んでいますが、その際に「気象業務はいま2013」、気象庁の方でいわゆる気象白書と呼んでいますが、これを刊行しますので、その点について説明したいと思います。

 初めに、出水期の注意です。
 沖縄・奄美は既に梅雨に入っておりますが、全国的に6月には梅雨に入り、本格的な出水期を迎えることになります。昨年も7月に「九州北部豪雨」が発生しておりますが、このような豪雨災害に備えていただくためにも、各地の気象台が発表する大雨等の気象警報など防災気象情報に注意いただき、対応をお願いしたいと思います。特に大雨に伴います、洪水・土砂災害・浸水等の災害への警戒をお願いしたいと思います。
 また、本日の朝にも岩手県沖で地震がありましたが、引き続き「東北地方太平洋沖地震」の余震は続いております。今後もまれに強い揺れや津波を伴うような地震の可能性も考えられますので、毎回お願いしていますが、周辺地域も含めて地震活動へも十分な注意をお願いします。
 なお、東日本大震災の被災地の一部等では、地震や津波により地盤が脆弱になっている、あるいは、沿岸地域では地盤が沈下している、さらには排水施設が被災しているなどということもありますので、土砂災害や洪水、さらには高潮についても危険性が通常より高いと考えられます。このため、大雨・洪水・高潮の警報・注意報、さらには、土砂災害警戒情報についても、引き続き発表基準を引き下げて運用しています。被災地では二次災害を防止する観点から、これらにも警戒をお願いします。

 次に、今年の高温注意情報の運用開始についてお話しします。
 高温注意情報は、一部地域を除き最高気温が35度以上で熱中症対策が極めて重要な気象状況の時に発表するものです。平成23年度から発表しており、昨年度から全国を対象に、環境省等の関係省庁と調整をして、十分連携をとって運用しております。また、気象庁のホームページに熱中症に関するポータルサイトを設けておりまして、関係省庁のリンクを貼っていますので、ご活用をいただきたいと思います。
 この夏は、季節予報によると気温は平年並あるいは高い傾向が予想されています。また、今週初めにも気温が高い状況が出現しましたので、熱中症等についてメディアでも警戒を呼びかけていただいておりますが、これから真夏に向けて、梅雨の晴れ間等、急激に気温が上がるような条件では、熱中症にも更に注意が必要になってきます。
 毎年のように多くの熱中症患者が救急搬送されているような状況がここ数年続いておりますので、当庁が発表する高温注意情報についても十分活用いただき、対策を行っていただきたいと思います。特に高温注意情報が発表された場合には熱中症の危険性が特に高い状況ですので、広く対策を取っていただき、情報を活用し、熱中症に十分注意していいただきたいと考えています。

 最後に、「気象業務はいま2013」の刊行についてです。
 本日この後、記者の皆様には共同取材の場を設けております。詳細を担当から説明いたします。
 この「気象業務はいま」については気象庁の業務をより一層ご理解いただくということで毎年発行しているものです。
 今回は、情報通信技術(ICT)の急激な発展とともに、気象サービスが民間も含めて、ますます身近なものになり、さらには産業やエネルギー分野など様々な利用が進んでいることから、「社会に活きる気象情報」というテーマで特集を組んでいます。情報通信技術(ICT)を活用した今後の新たなサービスの展開ということもかなり期待されておりまして、また社会経済活動においても、様々な、例えば再生可能エネルギー等でも気象情報の利活用も期待されるところですので、今後このような分野が益々発展することを気象庁としても期待しています。

 以上です。


主な質疑応答

Q 特別警報の導入を受けまして、現在の進捗状況などを教えていただけませんか。
A 特別警報については、現在国会で審議をいただいていまして、衆議院は通過していますが、参議院については今後の審議状況によるというところです。また、地方自治体等への説明ですが、前々回説明しましたように、都道府県あるいは市町村への説明を順次やっていまして、都道府県については既に2回の説明が全都道府県で終わっています。また、市町村につきましても3月下旬から説明を個別に、あるいは県主催の会議等での説明を介しまして行いまして、現在のところ85パーセントくらいの市町村への説明が終わっているところです。今後、5月中にはほぼ全市町村について説明が終わるようにしたいと思っています。また、当然公布後には発表基準の意見聴取といったプロセスもありますので、さらに丁寧に説明を行っていきたいと思っています。

Q 特別警報の関連で、市町村への説明がだいたい85パーセント終わったということですが、例えば、会議の場で時間をもらって説明をしたりですとか、個別にやったりですとか、どのような説明をしてきたのでしょうか。
A 基本的に、我々が設定している発表の基準案、対象とする現象といったところで、全体として15分程度の説明の場をいただいています。また、個別意見をいただいて、こちらもそれに必要な対応等も検討しているところです。

Q 新しい、かなり重要な警報にしては、説明が15分程度だとたぶんまだわからないこともたくさんあるかなと思うのですが、今後「公布後に意見聴取を通して丁寧に」というところは、個別に対応するとか、具体的にどのように説明するイメージを持っていらっしゃるのでしょうか。
A 色々なケースがあろうかと思います。先程言いましたように、県あるいは気象台が主催してお集まりいただいて説明会を設ける、さらには個別市町村を回って説明する、また、今はICTが発達していますから、当然メール等でも説明が可能ですから、できるだけ市町村の要望にお応えできるような形でやっていきたいと思っています。

Q 関連でもう1点なのですが、「警報のときにどうする」、「特別警報のときにどうする」というものが難しいところだと前の会見でも長官がおっしゃっていたと思うのですが、今はその考えの整理がどのようになっているか伺えますか。
A 現時点においてもまだ検討中ということですが、いずれにしましても、公布後3か月の範囲内で運用開始ということですので、地域防災計画においてどう位置づけるかということについても、市町村の方からも色々ご意見を伺ってきていますので、そこも含めてしっかりと調整はしていきたいと思っています。

Q ちょっと細かいことなのですが、特別警報は警報よりももっと甚大な状態を示すものだと思うのですが、例えば、ふと思ったのですが、高潮警報は警報が出る段階でかなり被害が出るものだと一般にも広く受け入れられているかなと思うのですが、そういう場合にもっと上のものを作ってどうしたらいいのか、ふと疑問に思ったのですが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
A 実際上の高潮でも通常の護岸の状況等から警報基準を定めていますが、台風等によっては今後それをはるかに超えるような高潮というものも想定されると思いますので、その際に暴風と併せて特別警報を発表していくということが考えられると思っています。

Q 先程「気象業務はいま」のところで、ICT技術のことを重点的にということですが、長官は入庁されて30年余りということなのですけれど、その間ICT技術の進歩がかなりのものだったとはお察しいたしますが、振り返られて、その技術の進歩とはどういうふうに感じられていますか。率直なところを伺えればと思います。
A 率直なところ、技術の進歩の中で一番大きいものは携帯電話であり、さらにインターネットだと思います。戸別の家庭まで、それまで一方的に報道等からの気象情報が流れているという時代から、受け手側が自ら判断して情報を取りに行ける、あるいは個別のサービスとして情報を受け取ることができると、そういう時代が来たということで、そこは極めて大きいかと思います。FAX等が出た時代もありましたけれども、それはまだまだ今とは隔世の感があります。FAXの段階でも戸別家庭でFAXで気象情報を受けるとか、そういう形のサービスも出てきてはいましたけれど、やはりインターネット、携帯電話、さらには今のスマートフォン、これらはかなり気象業務にとっては個別の、あるいは、個々国民へのサービスという点では大革命だと思います。


(以上)

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