長官記者会見要旨(平成25年1月17日)

会見日時等

平成25年1月17日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

 今年もよろしくお願いします。

 本日の会見では、はじめに、厳しい寒波が続いていますので寒さ対策や冬山登山への注意喚起についてお話しします。次に、今年最初の会見ですので1年の抱負について、前回12月の会見とも一部繰り返しになりますが触れさせていただきます。最後に、3月7日に新たな津波警報等の運用を開始しますので、その準備と周知へのご協力についてお話します。

 まず、寒波についてですが、今年の冬は日本付近に寒気が流れ込みやすい状況が続いているため、沖縄・奄美を除いて全国的に寒さが厳しくなっています。特に、日本海側や北海道では降雪量が平年を上回っている所が非常に多く、新潟県以北では平年の2倍以上の積雪となっている所もあります。また、東日本大震災の被災地でも最低気温が氷点下になり、厳しい日が続いています。引き続き、寒さや雪への対策が必要ですので、気象庁の発表する最低気温や雪に関わる予報等の情報に注意して、また情報の有効な利用をお願いします。
 また、今年の冬は残念ながら年末から年始にかけて北アルプスなどで山岳遭難が相次ぎ、先週の連休中にも遭難が報道されているところです。登山やレジャーでは、ゆとりある計画を立てることが重要ですが、山に入る前や入った後でも最新の気象情報を入手し、さらに天気や雪の状況などを自ら確認して悪天が予想される場合には中止するなどの勇気も必要と考えます。また、冬山に入った後も常に最新の気象情報を利用して、気象の急変等に備えることが重要で、場合によっては引き返すなどの判断もお願いします。いずれにしても、冬山での登山等のレジャーやスポーツを楽しまれる方々には、自らの命を守るために、気象等の知識の習得とともに、気象情報を有効に活用いただいて常に安全サイドに立った判断をお願いします。

 次に、一部、先月の会見の繰り返しになりますが、今年1年の抱負についてお話します。
 先ず昨年を総括しますと、一昨年来の多くの災害を教訓として、我が国の防災・減災、社会・経済活動の発展に向けて、気象庁として職員一丸となって、総力を挙げて情報の改善に向けた検討を進めた年でありました。
 本年につきましては、防災気象情報についてはこの7月に方向性が示されますので、気象庁が発表する防災情報のほぼ全てについて、今後の方向性が示されます。これにより、検討の段階から、津波警報をはじめとして情報の改善について具体化に着手する年になると考えています。つまり、本年は気象庁として気象防災の強化に向けて、新たなスタートを切る年と考えています。
 具体的に、分野ごとに簡単に触れさせていただきます。

1.地震火山分野では、3月7日に新たな津波警報等の運用を開始します。また、長周期地震動についても観測情報について先ずはPull型の情報で運用を開始し、予報等についても検討を進めます。さらに、降灰予報の高度化についても、警報化も含めて引き続き検討を進めます。

2.気象分野では、昨日(1月16日)最終回の検討会が開催された土砂災害に関する情報の改善をはじめとして、防災気象情報全体について7月には抜本的な改善策がとりまとめられます。また、今年度内に、全国20か所の気象レーダーのドップラー化が完了し、来年度にはデータ処理の高度化を図りつつ「降水ナウキャスト」などの防災気象情報に不可欠な予測についての精緻化と精度向上に努めていきます。さらに、「ひまわり8号・9号」についても平成26年度・28年度の打ち上げに向けて引き続き着実に整備を進めていきます。

3.気候分野では、昨年2月の気象分科会での提言を受けて、農業分野での気候情報の利用に加えて、その他様々な分野での情報の利活用を促進することとしており、例えば東日本大震災以降の電力需給のひっ迫への支援などの新たなニーズへの対応を行ってきました。本年は、さらに様々な利用者との“対話”を進め、気候情報の利活用の促進について“新たな道”を切り開いていきます。

4.なお、気象情報を支える基盤である情報通信システムでは、昨年6月のスーパーコンピュータの更新に引き続き、本年10月には「東日本アデス」を更新することで、これによって気象情報の高度化や情報提供体制の強化を進めて参ります。

 このような業務改善を進めるためには、引き続き技術開発を進め、情報の精度向上に努めるとともに、気象庁からの一方的な情報提供にとどまるのではなく、報道機関も含めて多くの関係機関との連携・協力を進め、情報の利活用促進とともに、普及啓発を進めていきます。
 さらに、東日本大震災等を契機として、多くの関係機関のご努力によって、防災の風土・文化の醸成や継承に向けて、国、地方自治体等、各方面で取り組みが進められています。気象庁としても、その一翼を担うこととし、今後とも、全国各地の気象台を有効に活用して、安全知識の普及啓発などに積極的に取り組んで参ります。このため、来月18日には、気象庁内部での取り組みになりますが、各地の気象台が取り組んでいる様々なプロジェクトついて「教育」、「広報」などの専門家に助言や評価をいただく場を設ける予定で、この助言を得て各地気象台の取り組みをさらに強化していきたいと考えています。

 次に、新たな津波警報についてですが、運用開始まで残り2か月となり、気象庁では、円滑な運用開始に向けて配信試験等を着実に実施します。併せて、周知・啓発を集中的に行う必要がありますので、今後、既に昨日から気象庁の入口等に貼りだしていますが、ポスターの掲示やリーフレットの配布、政府広報等を通じた周知啓発に努めていきます。報道機関の皆さまにも、引き続き新たな津波警報等の周知・啓発へのご協力をお願いします。

 最後に、毎回お願いしています、「東北地方太平洋沖地震」の余震への注意についてです。  今後もまれに強い揺れや津波を伴う地震が発生することがあります。周辺地域も含め、引き続き注意をお願いします。

 以上、私からのお話とさせていただきます。


主な質疑応答

Q この間の大雪のときに、言い方は悪いですけれども、気象庁としての予報が当たらずに、都市部、実際は東京都が一番あったと思うのですが、色々なところで対応が後手後手に回ってしまったというところがあると思いますが、反省の意味も含めて何かありますでしょうか。
A 日本の南岸を低気圧が通る場合、雪の予報はかなり難しいところがあります。当日の予報については、現在の我々の有する技術や知見から判断して発表したところですが、大雪についての予測が十分ではなかったことについては真摯に受け止めております。このため、今回の予報について、改めて分析し、課題を整理したいと思います。予報技術の向上を着実に進めることについても怠りなく取り組んでいきます。また、積雪となった場合、社会的影響は極めて大きいですので、必ずしも可能性は高くない場合でも、積雪のおそれがある状況であれば、その情報の発表方法について工夫するなどの検討を早急に進めていきたいと思っています。
 いずれにしましても、気象庁が発表する情報は、予報ということで常に技術的に不確実性を伴いますので、不確実性と併せていかに分かり易く国民の方々に情報をお伝えし、利用していただくかということについて、今後も検討を進めていきたいと思っています。

Q 可能性は必ずしも高くなくても、可能性を伝えられるような情報を検討したいということでしたが、具体的には、どういうことができるのでしょうか。
A 現在の枠組みを変更せずに簡便にできるということであれば、通常の気象情報は文章形式で発表していますので、その中でどのように触れていくかということになると思います。
 今後も南岸低気圧などは3月、4月くらいまでは可能性がありますので、そのような場合にも改善できるよう、早急に方針を取りまとめていきたいと思います。

Q 来週も南岸低気圧の可能性があるかと思いますが、今、南岸低気圧に関して関心が非常に高い中、今の状態で気象情報をどのように利用したらいいのかなどありましたらお願いします。
A 常に最新の情報をご利用いただくということと、気象庁のホームページでは文章形式での気象情報がありますので、可能であればこれらをご利用いただいて状況を確認していただくことも重要だと思っています。いずれにしましても、今回のようなケースについて、いかに不確実性も含めて伝えるかということについては、早急に改善策を取りまとめて、実行に移したいと思います。

Q 来週の南岸低気圧に関して、まだ分からないと思いますけれども、コースによってはまた都心に積雪もあるのかなあと思いますが、いかがでしょうか。
A 予報官から解説します。

(予報部担当)週間天気予報では、22日(火)は南岸低気圧により「曇り一時雪か雨」の予報になっています。南岸低気圧の影響により雪の降る要因としましては、上空に冷たくて乾いた空気が入っている状況で、南海上を低気圧が通って雨雲がかかると雪になるというパターンがあります。冷たい空気は今現在入ってきつつあり、現在九州から北海道にかけての広い範囲で雪が降っています。その寒気が残った状態で22日に低気圧が南海上を通る予想となっていますので、現時点では雪の予報にしているところですが、それが実際に積雪に至るかどうかについては、低気圧がどの位置を通るのか、雨雲がどのあたりまで上がってくるのかということで、まだ少し不確実なところがあります。予報課としましては、影響が大きいことから、早め早めに情報を出して、積雪の可能性があればそのことを十分伝えたいと思います。さらに、長官の話にもありましたが、その影響が大きいことから、積雪の可能性が低くてもその点をどのように情報の中に盛り込んでいくのかについての検討をしておりますので、この点についてもよろしくお願いします。

 今、担当から解説がありましたが、来週の22日(火)にも雪の可能性があります。今回の経験を踏まえて改善した情報を発表することを現在検討していますので、ご理解いただきたいと思います。いずれにしましても、最新の情報を的確に出していきますので、引き続き報道各社にはご協力をお願いします。

Q 先ほど、各地の気象台の取り組みに対して専門家に助言をいただくといったお話でしたが、例えばイメージとしては、各地の気象台が学校とかに出前授業しているようなことに対して、レビューするといったものでしょうか。
A その通りです。各地の気象台が独自に、出前講座という形で学校に出向き授業したり、あるいは教育委員会と連携して教師の先生方に研修等で講義をしたり、また、最近は地元のテレビ局やFM放送等と連携して津波防災等への周知啓発を行ったり、様々な取り組みを行っていますので、それらにつきまして各管区や沖縄気象台から代表的な取り組みを挙げていただいて、本庁で会議を開いて実際にプレゼンテーションして防災・教育・報道・広報の4名の専門家の方々に聞いていただいき助言をいただいて、改善をしていくということを考えております。普及啓発の取り組みはこれまで気象庁独自でやっていますので、外部有識者など外からの意見を聞いて改善することは極めて有意義なことと考えています。報道記者の方々も我々のプロジェクトを見ていただき、ご助言をいただきたいと思います。

Q 専門家とは、例えば、大学の先生とかでしょうか。
A 防災分野では静岡県危機管理部の岩田孝仁さん。この方は気象庁の防災情報の検討会等にも参加いただいています。また、教育分野では板橋区立志村第一小学校校長の矢崎良明さんで、防災に相当力を入れられていらっしゃる方です。報道分野では気象庁記者クラブにも在席されていました時事通信山形支局長の中川和之さん。また広報の分野では電通パブリックリレーションズコミュニケーションデザイン局長の花上憲司さん。広報の専門家という観点からご意見をいただきたいと思います。

Q 今日、阪神淡路大震災からちょうど18年になります。東日本大震災では津波の脅威を、阪神だと地震の脅威を毎年考えさせられる日だなと思っているのですが、改めて、日本全国どこでも地震は起きうることを踏まえ、今の状況は耐震化とか進んでいますが、地震への備えについてありましたらお願いします。
A 阪神淡路大震災から、ちょうど18年目になります。6,400名を超える方々がお亡くなりになり、あるいは行方不明の方もまだいらっしゃるということで、ここに改めてご冥福をお祈りいたします。
 大震災以来、気象庁を含め国をあげて地震防災対策を進めておりますが、これにより気象庁を含めて4,000を超える震度計等が整備され、さらに地震や津波等の情報の改善を進めてきたところです。我が国は直下型地震や南海トラフ等の海溝型地震など、世界的にも地震の多発国です。また、東日本大震災以降、東北地方太平洋沖地震の余震も引き続き活発ですので、地震への備え、特に日頃からの備えが極めて重要ですので、そのことを皆さまにお願いしたいと思っています。


(以上)

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