長官記者会見要旨(平成24年7月19日)

会見日時等

平成24年7月19日(木) 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日の会見は、先週甚大な大雨災害をもたらしました「平成24年7月九州北部豪雨」について、次に、この夏の電力需給ひっ迫時の対応や熱中症対策を支援する新たな情報として「最高・最低気温分布予想図」の提供を開始することについて、最後に今週開催しました「竜巻等突風予測情報改善検討会」についてお話しします。

 はじめに、平成24年7月九州北部豪雨など今年の梅雨の状況です。
 沖縄では先月23日に、奄美では29日にそれぞれ梅雨明けしていますが、6月下旬以降は梅雨前線が本州付近に停滞するようになり、西日本から北日本の広い範囲で断続的に大雨となりました。

 特に、7月11日から14日にかけては、本州付近に停滞した梅雨前線に向かって南から非常に湿った空気が流れ込み、九州北部を中心に記録的な大雨となりました。特に、1時間に80ミリを超えるような猛烈な雨が数時間継続する現象が熊本県と大分県を中心に各所で発生したことが、今回の豪雨の特徴です。
 この「平成24年7月九州北部豪雨」により熊本県、大分県、福岡県を中心に各地で土砂災害や河川の増水・はん濫、浸水等による多くの被害が発生し、29名の方がお亡くなりになり、未だ3名の方が行方不明となり、甚大な被害となりました。さらに、多数の方が避難、被災されました。ここに、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りしますとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。

 気象庁・気象台の対応状況については、大雨や洪水の警報、土砂災害警戒情報などを段階的に発表し、さらに12日の大雨では、先月の会見でお話ししました「記録的な大雨に関する情報」を初めて発表しました。この情報は、大雨により重大な災害が差し迫っていると考えられる時に、一層の警戒を短い文で呼びかけるもので、具体的には報道等でも取り上げていただきましたが、「これまでに経験したことのないような大雨」の表現で発表いたしました。

 気象庁として、この情報を地方自治体等の防災関係機関に伝えるとともに、報道機関にも特に大きな協力をいただき、様々な場、ニュースなどで取り上げていただき、深く感謝いたしております。初めての発表であることなどを考えますと、気象台の抱く危機感をお伝えする情報という役割としては、一定の評価ができるものと考えます。しかしながら、この危機感を発表時点で実際に住民や防災関係機関などに伝え、共有できたかどうかについては、初めての発表でもあり、これから関係者にご意見をお聞きするなどして評価してまいりたいと思います。

 次に、この夏の電力需給ひっ迫時の対応について、熱中症対策を支援する情報としても使えるものとして「最高・最低気温分布予想図」を気象庁ホームページで公開することを開始します。
 この夏は全国的な電力需給のひっ迫が懸念される中、ひっ迫時の国民や関係機関の対応を支援するために気象庁として新たな対応ができないか検討を進めてきたところです。昨年は高温注意情報や気温の時系列的な予想の発表を開始しましたが、さらにきめ細かな空間的な分布が分るよう、気温情報を新たに提供するものとして「最高・最低気温の分布予想図」を明日(20日)から提供を開始します。
 この情報は、熱中症対策にも活用できることから、現在の熱中症ポータルページを電力需給ひっ迫時の対応支援用も含めて一つのポータルとして、高温注意情報や主な地点の気温予測グラフなどとともに、今回新たに始めます予想される最高・最低気温の分布図を一体的に把握できるようにします。
 このことについても、本日報道発表しますので、詳細については、担当からお聞きいただきたいと思います。

 次に、先月の会見でもご説明いたしましたが、5月6日につくば市などで相次いで発生した竜巻災害を受け、気象庁では「竜巻等突風予測情報改善検討会」を開催し検討を進めて参りました。第3回を先日(17日)に開催し、各委員それぞれの立場からご意見をいただき、提言案がほぼまとまりました。
 具体的な検討課題については、
 第一に、予測技術の高度化の可能性及び中長期的な開発の方向性、
 第二に、情報の発表・伝達のあり方、
 第三に、住民への利活用推進策、
等について検討を進めてきました。
 提言については現在作業中で、最終的には座長にご相談して今月中には修正のうえ公表する予定です。
また、この提言(案)については、昨日開催された内閣府の「竜巻等突風対策局長級会議」にも気象庁から報告しており、今後とも関係省庁と連携を図りながら具体的な竜巻対策を進めていきたいと考えています。

 最後に梅雨末期の大雨、熱中症対策、余震への注意についてお話しします。

 梅雨明けにつきましては、中国・四国から関東甲信にかけては17日、北陸は18日に、それぞれ平年より早く梅雨明けしていますが、九州、東北では梅雨が続いています。梅雨も末期を迎え、大雨災害の発生しやすい状況ですので、防災関係機関のみならず国民の方々にも事前の備えをお願いするとともに、気象庁から発表する警報等に引き続き注意・警戒をお願いします。

 また、今週に入り日曜日から全国的に高温となり多くの熱中症の被害が報告されています。本日も、17府県で高温注意情報が発表され、全国各地で真夏日あるいは猛暑日となっています。梅雨明けを前後して、あるいは本格的な夏に入り、急激に気温が高くなることもありますので、先ほど申し上げました新しい「最高・最低気温分布予想図」や高温注意情報等を十分に活用いただき、熱中症対策を、具体的には「水分をこまめに補給したり、適切に冷房を使用する」といった対策をとっていただきたいと思います。

 最後に、余震への注意のお願いです。
 「東北地方太平洋沖地震」の余震については、少なくはなってきていますが、今後もまれに大きな余震が発生し、さらに津波が発生する可能性もあります。周辺地域でも強い揺れを伴う地震が発生することがありますので、引き続き注意をお願いします。


主な質疑応答

Q 九州北部豪雨に関しまして、12日に初めて発表された短文情報についてこれから被災自治体に意見を聞いて評価していくということですが、現時点で長官が考えている課題、それから実際に自治体にうまく伝わったのかどうかについてどのように受け止めているか、現時点でわかっている範囲でお聞かせください。
A 冒頭で申し上げましたとおり、一定の評価はできるのではないかと思っておりますが、初めての発表ということで、自治体への事前の周知やメディアを通じた周知などが十分であったかどうかを検証する必要があると思います。県等には事前に説明していると聞いておりますが、市町村のレベルまで果たしてどこまで周知が進んでいたかということについて評価したいと思っています。
 特に、住民や防災関係機関において新しい情報が行動にどう結びついたのかということを調査・評価する必要がありますが、その際のポイントとしては、発表のタイミングが利用者から見て適正かどうか、実際の発災状況と比較して情報のタイミングがどうか、さらには防災関係機関において受けた情報が具体的な防災対策にどう結びついたか、さらには住民がそれを見聞きして、どんな行動や判断に利用したか、そういった点について課題を整理する必要があると思っています。
 現時点で、今回の情報の発表と発災状況ということを見ますと、いくつかの課題があると思っております。短文での実際の発表は6時41分ですが、ご承知のようにこの時間帯は既に阿蘇市等では大きな土砂災害が発生しています。この情報は実況を伝えるという色彩が非常に強いのですが、災害の防止という観点では、将来的にはリードタイムの確保が大きな課題ではないかと思っております。
 また、今回のこの「経験のない大雨」の情報だけではなく、事前に大雨警報や土砂災害警戒情報を時間を追って段階的に発表していますので、こういった情報全体としてどのように機能させ、役割を果たして、実際の災害対策に活かすのかということが重要ではないかと思います。
 一方、今回阿蘇で集中的に雨が降った後に熊本で河川の増水・はん濫等がありましたので、上流域で降った場合に下流域にどう危機感を伝えるのかといったことも今回の課題ではないかと思っております。
 最終的には、防災関係機関との認識を共有すること、あるいは住民の理解、住民への周知を同じレベルにして、気象庁の情報が有効に活用されるように努力する必要があると思っています。

Q 竜巻の検討会で通報者制度について言及されたと思いますが、これについて竜巻だけでなくて、大雪あるいは濃霧についても活用できるのではないかという案も出ておりました。この通報者制度そのものについて、どのように議論を進めていこうと考えていますか。
A 今後、検討会などの場を設ける、設けないに関係なく、検討を進めるにあたって、まずは関係機関や有識者等のご意見をいただきながら検討を進めていく必要があると思います。検討会でも委員の先生から信頼のできるデータの情報収集を如何に組織化するのかということが重要であるとのご指摘いただきましたので、この点を中心に関係する機関と連携しながら検討を進めることを考えています。

Q 先程の大雨の情報に関して、長官が「一定の評価」と言われましたが、具体的にどういった面での評価を「一定の評価」としたのでしょうか。
A 「経験のない」ということを当日の朝から報道機関で取り上げられ、住民の方々に非常事態であるということが十分に周知できたのではないかということと、被災現地に調査団等も入っていますが、今回当庁が使った「経験のない」という表現について、この用語が非常な危機感を伝えるという点ではかなりご理解をいただき引用されることも多く、浸透しており、その目標を達成できたのではないかと思っています。

Q あとは、実際の防災対応という点で活かせるかどうかということでしょうか。
A 即時的な避難などの対応への活かし方に加え、発災後の救助や復旧を如何に早く進めるかという観点での利用もあると思いますので、そういった点について評価していく必要があると思います。

Q 自治体によっては、去年の紀伊半島豪雨では数値を言われてもなかなかイメージがわかないというところもあるし、逆に数値で判断をするのでそれ以外ではわからないというところもあると思いますし、難しい点だと思いますが、その点はどうお考えでしょうか。
A 利用者である自治体側によっては使い方が色々あると思います。気象庁ホームページや自治体等の防災関係機関が閲覧できます当庁の整備した防災情報提供システムなどに多くの数値的な情報がありますので、「経験のない大雨」の情報に加えてこれらも十分活用いただけたらと思います。

Q このような情報発表をやりますと言ってから今回の発表が非常に早かったということもあると思うのですが、事前の周知については今の時点ではどのようにお考えでしょうか。
A 県までの説明は基本的にやっていると聞いておりますが、市町村レベルまでどこまで周知したかについては、調査してみないとわからないのですが、不十分なところもあったのではないかと想像はしています。担当のほうから、この点について何かありますか。

(予報部担当)私どもも市町村のどこまで説明したかまだ十分には把握していませんので早急に調べて、更に市町村等への聞き取り調査も早急にやりたいと考えています。

Q 聞き取り調査は、通常災害があった時に行っていると思いますが、そういった形で調査するということなのでしょうか。
A 気象庁では災害が発生した際や警報を発表した際に、その警報がどのように自治体で有効に活用されたかということについて、自治体からのニーズを吸い上げるという目的もあって、地元自治体に調査に入っておりますが、その一環として調査するということです。

Q 九州北部豪雨について、実際の雨量は気象情報で出された予想雨量の数値よりかなり大きく超えたりとか、雨の警戒が必要な範囲が後ろ倒しにずるずる延びたりとか、予報が外れたという面もあるかと思いますが、今回の予報全体についての評価はいかがですか。
A 昨年の台風第12号の時には量的にも的確な予報ができたと思います。今回の場合は、集中豪雨であり、梅雨前線の場合は予測がかなり難しかったということで、予想雨量も実際より下回ったという結果になったと思います。この点については、現在気象研究所で分析も進めていますので、そういうメカニズムの解明といった点も含めて今後対応していきたいと思っています。

Q 最高気温の分布情報は、地点の予想等はこれまでも出ているわけで、おそらくこれまであったものを加工しているものだと思いますが、こういった分布図というものにすることによっての効果や活用法についてどうお考えでしょうか。
A 分布図にするということは、地域的な変化がわかりやすいということがあります。また、ポイントで出しますとどうしても自分の住んでいる所のポイントがないといった問題も生じますが、分布図にすると自分の住んでいるポイントの気温というものを大まかには把握できます。気温は地理的な変化も大きいので、都心部等ではかなり有効ではないかと思います。

Q 大阪管区の職員が千葉県警に逮捕されるという事件がありましたが、それについて処分についての見通しはいかがでしょうか。
A 非常に遺憾なことでして、事実関係を把握した後に厳重に対処したいと思っています。気象庁に対する信頼の失墜行為ですので、厳正に対処いたします。



(以上)

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