長官記者会見要旨(平成24年6月21日)

会見日時等

平成24年6月21日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日の会見は、はじめに本年初の上陸台風となりました台風第4号とこの出水期から予定している気象情報の改善についてお話します。次に、5月6日に発生した竜巻災害を受けて開催しました「竜巻等突風予測情報改善検討会」、さらに今月28日に予定しています「緊急地震速報対応訓練」の3点についてお話しさせていただきます。

 まず、台風第4号についてですが、台風第4号は、19日17時過ぎに和歌山県南部に上陸し、東海地方から関東甲信地方を抜けて三陸沖に達しました。6月に台風が上陸したのは平成16年以来8年ぶりとなり、これに伴って梅雨前線が活発化したこともあり、西日本・東日本の広い範囲で6月としては記録的な大雨となり、さらに東日本を中心に秒速20メートルを超える非常に強い風が吹きました。
 このため、強風災害、土砂災害、浸水等の多くの被害が広域で発生し、お一人の方がお亡くなりになり、多くの方が怪我をされました。また、東日本大震災で被災された東北地方において沿岸部を中心に浸水等の被害が発生しています。ここに被災された方々に改めてお見舞いを申し上げます。

 一方、南シナ海から北東進してきた台風第5号は今日未明に熱帯低気圧に変わって今朝9時には消滅しましたが、その後梅雨前線に向かって暖かい湿った空気が流入するため梅雨前線が活発化しており、西日本では既に激しい雨が降り続いており、明日にかけて大雨となるおそれがあります。西日本では、今月15日以降、梅雨前線や台風第4号によってかなりの雨が降っていますので、地盤が緩んでいるところがあります。土砂災害、河川の氾濫、浸水、突風などに引き続き警戒をお願いします。

 次に、この出水期からの気象情報の改善についてお話しします。
 昨年の台風第12号により、紀伊半島において土砂災害や洪水など極めて甚大な被害が発生しました。
 この時地元の気象台では、大雨警報や土砂災害警戒情報などを発表し、さらに、大雨が続いて危機的な状況になったことから、気象情報の中で、例えば「土砂災害や浸水害、河川のはん濫に最大級の警戒が必要です」という内容で、最大級の警戒を呼びかけておりました。しかしながら、災害が発生した後に地元の地方自治体の担当の方々にお聞きしますと、例えば「台風の中心が遠ざかりつつある状況であり、もう雨は終息するのではないか」との声も聞かれるなど、気象台の持つ危機感を十分に伝えられていなかったことがわかりました。
 このため、気象庁では、この台風第12号等の教訓を踏まえて、今月27日から、大雨により重大な災害が差し迫っていると考えられる時には、一層の警戒を短い文で簡潔にわかりやすくお伝えして、気象情報の内容を改善して提供することとしました。

 さらに、時期を合わせて、気象情報において最大瞬間風速の予想を発表することとし準備を進めていました。そのような状況の中で、台風第4号が日本に接近・上陸することが予想されたことから、強風災害の防止・軽減のため、今週18日に前倒して実施しました。この最大瞬間風速については報道等でも取り上げていただき誠にありがとうございます。これまで以上に強風に対する防災対応について一般の方々に注意喚起を行うことができたのではないかと思っています。瞬間風速は、暴風や強風による被害という観点では平均風速より強く結びついており、これにより、これまで以上に防災対応に活かせるように情報を改善し、その利活用の促進についても関係機関と連携を進めていきたいと思っております。
 この詳細については、後ほど担当から説明します。
 いずれにしましても、全国的に梅雨に入り、梅雨末期にかけて大雨災害の発生しやすい時期ですので、防災関係機関のみならず国民の方々にも事前の備えをお願いするとともに、気象庁から発表する警報等に注意をお願いします。

 次に、先月の会見でご説明いたしましたが、先月6日につくば市などで発生した竜巻災害を受け、気象庁では「竜巻等突風予測情報改善検討会」を開催し、予測技術の高度化の可能性及び中長期的な開発の方向性を検討しています。さらに、情報の発表・伝達のあり方及び住民等の利活用の推進策等についても検討を進めています。
 先月31日に第1回の検討会を開催しました。各委員から、それぞれの立場から様々なご意見・ご指摘をいただきました。それらを踏まえまして、今後さらに2回程度の議論を経て7月中には改善策をご提言いただきたいと思っています。
 なお、この検討会における議論や得られた方向性については、本日も14時から開かれていますが、内閣府の「竜巻等突風対策局長級会議」にも報告し、意見などを聞いたうえで、関係省庁と連携して具体化を図ることとしています。

 次に、「緊急地震速報対応訓練」についてですが、その前に、先ほど13時19分に緊急地震速報を福島県と山形県に発表しました。しかし、実際に震度を観測したのは宮城県で、宮城県中部のマグニチュード3.3の地震で、最大震度は4地点で震度2でした。このとき福島県でもマグニチュード1.8の地震が発生しており、ほぼ同時に2つの地震が発生したために過大な予想震度になり、緊急地震速報を発表したということのようです。このように、緊急地震速報が適切に発表できないという事例があり、次第に少なくはなっておりますが、ご迷惑をおかけしております。気象庁としましては、技術的な改善を進めて、適切に発表できない事例を少しでも少なくする努力を払っていきたいと考えています。
 さて、本題に戻りますが、今月28日に、内閣府、消防庁と共同で、「緊急地震速報対応訓練」を実施する予定です。今回の訓練は、国の機関や地方自治体、全国の気象官署等が参加して、緊急地震速報を受信した場合の対応訓練を行います。地方自治体では、消防庁のJ-ALARTを通じて緊急地震速報を受信して、自治体の対応訓練や機器の動作確認等が実施される見込みです。
 気象庁は今後もこのような訓練を進めて、緊急地震速報の利活用促進に努めてまいります。

 最後に熱中症や余震への注意についてです。

 熱中症対策の一環として、今月1日より全国で高温注意情報を開始しており、昨日、台風第4号の後に、今年初めての高温注意情報を群馬県に対して発表しました。気象庁のホームページでは熱中症に関するポータルサイトを設け、高温注意情報に加えて、主な地点の気温予測グラフなどの情報も提供しております。今後、気温が高くなることもありますので、熱中症対策に情報を有効利用していただきますようお願いします。

 最後に、余震への注意のお願いです。
 東北地方太平洋沖地震の余震については、引き続き少なくはなっていますが、今後もまれに大きな余震の可能性があり、場合によっては津波が発生する可能性もありますので注意をお願いします。また、周辺地域の地震活動も活発な状況にありますので、引き続き地震活動に十分注意をして、事前の備え等をお願いします。

 以上で、私からのお話を終わります。


主な質疑応答

Q 28日の緊急地震速報対応訓練は、毎年行われているものでしょうか。
A 年に2回ほど行っています。このあと12月にも全国的に行われているものです。

Q この前と違ったところとは。
A 特に大きな変更はありませんが、訓練を定期的に行って、緊急地震速報の利活用を広めていくということが重要だと思っています。3月に報道発表した緊急地震速報の利活用状況等に関する調査のアンケート等にもありましたが、緊急地震速報はよく認知されているものの、実際に速報を受けてから対応が執れるという事例が少ない、4割程度は何もできない状況にあるということでした。訓練を重ねて、対応できない人の数を減らしていくことが重要だと思っています。

Q 短文で伝える気象情報の発表について、これによって、避難または危機感を訴える効果があると考えでよいでしょうか。
A 気象庁から非常に多くの情報を発表していますが、利用者側からみると、非常に短い情報で簡潔に分かりやすくということが重要ですので、その点を強調するために、例えば「新潟福島豪雨に匹敵する」とか、記録的な大雨が降る可能性がある場合に短文で分かりやすく気象情報を発表して、対応をお願いするということを考えています。

Q 最大瞬間風速の予想を気象情報に使うことについて、これによるメリットをもう一度お願いします。
A 強風による被害を調べますと、平均風速よりは瞬間風速に対応して被害が発生する、つまり瞬間風速の方が実際の被害との関係が良いということです。そういう点で情報の受け手側が防災対応を執りやすくなるとのことから、平均風速に加えて、瞬間風速も伝えて行く考えです。また、報道機関各社の報道の仕方をみますと瞬間風速をよく伝えていただいています。一般の方々もどちらかというと平均風速より瞬間風速の方が馴染み深いということも言えると思いますので、被害との関係も含めて、瞬間風速を普及していきたいと思っております。

Q 短文で伝える気象情報について、これまでのものが長過ぎたということですか。
A 長過ぎたという言い方もあると思いますが、現場の予報官が持っている危機感を伝えるとき、長い文章だとなかなか読み取ってもらえないということもあり、非常に短くして、予報官の危機感を端的に表す表現にしていくということが重要と考え、このような形の改善を図ろうとしたところです。「○○豪雨に匹敵する」は非常に分かりやすい言葉ですので、これに代表されるような分かり易さをさらに追求していくことが重要と思っています。また、今回の短文形式の発表の仕方は、自治体などの機関と事前に共有して、お互いが同じ土俵に立って情報を発表する、利用するということが重要だと思っていますので、今後、ますます自治体との連携を深めていきたいと考えています。
 また、報道機関各社に情報をお伝えいただく場合にも、そのキーワードを使っていただければ非常に分かりやすくなると思いますので、積極的に活用していただきたいと思います。

Q 今のお話しについて、危機感を伝えるということが重要だということですが、一方で、こういった最上級の情報を用意すると、それが出るまで対応する必要が無いという待ちの姿勢だったり、情報依存の姿勢を強めてしまったりという懸念もあると思うのですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
A 短文での情報が実際に発表される回数がどのくらいかということが重要だと思いますが、年単位でみた場合、さほど多くはないと思います。また、通常の情報発表においても、適切に危機感を伝えていくことが重要だと思っています。
 予報部から補足がありますか。

(予報部担当)必ずしも、最も上のランクというものが予め決められていて、それに対応して情報文が発表されるといった、機械的に決まっているものではなく、その都度、臨機に対応して行く考えですので、これが出るまで待つということにはならないと考えています。

Q 津波警報の改善のことでお聞きします。細かさを追求してきた方向から8段階を5段階にしたことと、情報を受け取る側のシステムの改修などでは、当初の見込みより大変そうだということで少し開始時期が後ろにいったと思うのですが、それらについてどうお考えでしょうか。
A 津波警報の改善については、昨年度1年間かけて検討し方針を出しましたが、関係機関その他多くの方々に説明し、安全サイドで発表するということがかなり受け入れていただいていると考えています。また、改善はできるだけ早く運用して、国民の生命や財産を守るために活用していきたいということが方針です。一方で、気象庁側の問題でもありますが、自治体等でのシステムの改修が必要ということもあり、警報の運用開始が予定よりは3か月ほど遅れるということがありますが、原則今年度末には開始したいと考えております。
 また、いくつかの機関ではシステム改修がさらに若干遅れるというご意見もありますので、そこは1年くらい暫定的に移行措置電文を用意して、そういう方々にも対応できるようにしていきたいと思います。
 いずれにしても、できるだけ早く改善策を運用して津波防災の強化につなげていきたいと思っております。

Q 今回、津波警報の方でも、分かりやすくということで例えを出すとか、そういう一文が入ると思いますが、危機感をイメージをしてもらうという点では、今回の短文気象情報も同じような考え方ということなのでしょうか。
A 全体的には、津波警報でも大雨に関する気象情報、警報でもまったく一緒でして、受け手側が理解して、具体的な行動を取ってもらうということが重要です。気象庁としてその方向で、情報について常に見直し、改善を進めていくという考え方でいます。



(以上)

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