長官記者会見要旨(平成24年4月19日)

会見日時等

平成24年4月19日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日の会見は、年度始めですので、平成24年度の気象庁の業務計画を中心に概要をお話しさせていただきます。

 まず、東北地方太平洋沖地震の教訓を踏まえて、3月に津波警報の改善策を取りまとめました。この新たな津波警報は、平成24年中に運用開始することを目指していて、これを実現することが気象庁としての今年度の最も重要な任務のひとつと考えています。この改善には、広帯域強震計や海底津波計などの整備、さらには新たな津波警報を作成・発表するための気象庁の計算機システムの改修が必要となりますが、それのみならず警報を伝達していただく国、都道府県、市町村、放送機関、民間事業者等数多くの関係機関における準備も必要となります。このため、気象庁におけるシステム改修等を着実に実施することはもとより、これらの関係機関と調整しつつ、また、新しい津波警報について国民への周知を十分行いつつ、運用開始に向けて準備を進めて参ります。

 また、長周期地震動については先般の大震災でもその防災上の重要性が再認識されたところです。昨年度の検討会での提言を踏まえて、今年度中に長周期地震動に関する観測情報の発表を目指します。更に、長周期地震動の予報に向けて、検討会を開催し具体的な検討を行う予定です。

 次に火山業務についてですが、昨年は、霧島山新燃岳や桜島で活発な噴火活動がありました。この噴火に伴う降灰により、周囲地域の生活・経済活動に大きな影響がもたらされました。引き続き、活発な活動が続いていますので、気象庁としましても地方自治体等の防災関係機関との連携を強化しつつ、的確な監視と噴火警報の発表に努めて参ります。また、現在、降灰の予報を行っていますが、領域のみを予報しており、具体的な対策を取りづらいということもありますので、どのくらいの灰が降るのかを量的に予報することを計画しています。このため、現在技術開発を進めていますが、量的降灰予報を導入するため、有識者の方々にご意見をいただく検討会を立ち上げて、その実現に向けた準備を進めて参ります。

 次に、気象関係についてです。昨年は、地震・津波や火山噴火において未曾有の災害が発生しておりますが、気象災害においても平成23年7月新潟・福島豪雨、台風第12号、台風第15号などにより大きな被害が発生しております。これらの気象災害を教訓として、大雨等の監視・予測の更なる強化、さらには避難等の行動に結びつくような気象情報はどうあるべきかという今後の改善について、改めて強く認識したところです。このため、観測網の強化や予測技術の高度化を図り、情報の改善について進めて参ります。

 今年度の具体的な施策としては、例えば、現在、スーパーコンピュータの更新作業を進めています。清瀬市において現在作業中で、東日本大震災の影響によりスケジュールが若干遅れていますが、6月には運用を開始できる見通しです。この更新により、その処理能力が現在よりも約30倍に向上しますので、数値予報の、特に局地予報やアンサンブル予報において精度向上が期待できます。さらに、観測関係では長野、静岡、名瀬の3か所の気象レーダーをドップラー化する予定で、これで全国20か所の気象レーダーすべてのドップラー化が完了し、今後の局地的な大雨や竜巻等の突風の監視あるいは予測に効果を発揮するものと考えています。

 また、現在制作中の次期気象衛星、ひまわり8号、9号について、26年夏及び28年夏に打ち上げるため、ロケットの製作にも着手していますので、この衛星及びロケットの製作について着実に進めて参ります。

 以上、気象関係について、スーパーコンピュータ、気象レーダー、ひまわりといったハード面について触れましたが、最終的には当庁の発表する防災気象情報が防災関係機関や住民等で実際に活用されてこそ当庁の業務が成り立ちますので、これら情報の改善について更に進めていきたいと思っています。この点については、昨年の台風や大雨災害を教訓として、実際に地元に入って調査しておりますが、それらを踏まえて防災情報について如何に情報の受け手側に立って分かりやすく伝えるか、かつ具体的な行動に結びつくように如何に改善するかということが大きな課題と考えており、現在鋭意検討しております。

 また、東日本大震災や台風第12号では未曾有の災害となり、気象観測施設自体も被災するということがありましたので、こうした施設についても災害に強い施設として強化するとともに、離島等においてはアメダス観測所の非常電源を強化する対応策を進めていきます。

 最後に、気候分野につきましては、本年2月に交通政策審議会気象分科会による提言をいただき、気候情報の利活用の促進に向けて、新たなスタートを切ろうとしているところです。具体的には「利用者インターフェース」と言っていますが、利用者と具体的に対話をしながら利活用の促進策を検討して参ります。また、当庁にはアジア太平洋気候センターという世界気象機関に認められている組織がありますので、ここを中核として途上国への支援といった点も強化して参ります。さらに、先ほど触れましたスーパーコンピュータの更新に伴い、気候分野のアンサンブル予報の精度向上によっても、利活用が促進されるのではないかと期待しております。

 最後に、余震やなだれなどへの注意のお願いです。
 東北地方太平洋沖地震から1年が経ち、次第に余震自体は少なくなっていますが、先程、零時33分頃にもマグニチュード5.1、最大震度4の余震がありましたので、引き続き余震には注意をお願いします。また、余震でもまれに大きなものになりますと、津波が発生する可能性もあります。さらには、周辺地域でも地震活動が活発化していますので、十分な注意をお願いします。

 また、4月に入り、春らしい陽気になっていますが、雪の多い地域では融雪により、例えば、なだれ、洪水、土砂災害といった現象が起こりやすくなっていますので、十分注意していただき、地元気象台などが発表します気象情報の利活用をお願いします。

 以上、若干長くなりましたが、私からのお話とさせていただきます。


主な質疑応答

Q 昨日、東京都から巨大津波の被害想定が出まして、国の方でも南海トラフの巨大地震を想定されていますが、想定が進んでいることへの長官の受け止めと、それを受けて気象庁としてどのように地震や津波の情報の出し方、内容を改善していくのでしょうか。
A まず、首都直下あるいは南海トラフでの被害想定について、東京都や、内閣府などの政府内で検討が進んでいることについては、東北地方太平洋沖地震を受けて、科学的に考えられ最大級を考えることによって、多くの国民や社会が事前に備える、準備活動につながっていくのであれば、極めて効果的なことだと思います。
気象庁としましては、例えば南海トラフの被害想定ではマグニチュード9.1の地震やそれによる津波が想定されていますが、内閣府等において想定を確定した段階で、当庁の津波警報の発表に活かしていく考えです。具体的には、当該地域において、過小評価というような判断がなされる地震が発生した場合には、南海トラフでの想定に対応した津波の高さを用いて津波警報を発表していくことを現在検討しているところです。また、首都直下地震につきましては、大深度の地震計を活用するなどして緊急地震速報をできるだけ早く発表することにより、情報面での改善を進めていきたいと思います。
いずれにしても、我が国はどこで地震が発生してもおかしくはないということですので、こうした被害想定を契機に、自らの常日頃からの備えを点検確認することが、被害の未然防止、あるいは軽減に大きくつながると考えますので、よろしくお願いします。

Q 発達した低気圧の影響で、強風が各地で吹きました。この際、会社に勤めている人とかが早めに帰宅などして、ある程度対応ができたと思われますが、この際での情報の出し方が気象庁としてどうだったかという点と、こういった事前の情報提供を昨年の台風を踏まえた情報改善と今後どのように結びつけていくのか、お聞かせください。
A 4月3日は、急激に発達した低気圧ということで、通常の情報発表に加えて、この記者会見の場でも主任予報官から注意を喚起しました。その中において、早めの帰宅など国民一人一人の具体的な行動を促すというような報道発表を行い、報道において特に際立って気象庁の対応を取り上げていただいたと思います。
今後も、このような状況で例えば帰宅困難問題が発生するような気象条件等が予想される場合には、事前に記者会見したり、情報についてもう少し具体的に工夫する余地があるのかという点も考えていきます。
また、今回の対応については、東日本大震災や台風第15号の経験もあり、住民一人一人の対応や企業あるいは東京都の対応についてもかなり進んできたという印象を持っており、全体的には昨年に比べれば順調に進み、帰宅困難はそれほど大きな問題にはならなかったと思っております。
引き続き気象庁だけで検討を進めるのではなく、東京都や鉄道関係者とも情報交換をして、当庁がどのような注意喚起をしたら良いかという点を相談させていただき、少しでも多くの改善を行い、被害の軽減につながればと思っております。

Q 気象観測施設自体を強化するとのことで、非常電源の強化はあると思いますが、施設をもう少し頑丈にするとか、通信網を改善するとか、具体的に教えてください。
A 地震の場合は、震度計などの施設自体は壊れておらず、基本的には通信と電源の問題です。また、アメダスについても電源の問題が大きく、この点を強化して参ります。施設自体では、水戸地方気象台の庁舎などが損壊しておりまして、これについて着実に復旧させて参ります。

Q 気候情報の利活用の促進についてお聞きします。審議会でまとめられて、「関係者で話し合う機会を作りましょう」という状況だと思いますが、例えば今年度いつぐらいに1回目の話し合いがあるとか、こういう業界にすでに声を掛けているとか、具体的な動きはあるのでしょうか。
A 具体的には、まだお話しできるものはありません。ただし、審議会にもありましたが、すでに農業分野でかなり成功を収めていますので、それらの活動を参考にしつつ他の産業や経済活動へも広げたいと考えています。ただし、最初からすべての分野に広げるというのは無理がありますので、重点的に広げるべき分野について現在リストアップして、具体的に個別に接触し、対応しようとしているところです。担当の方からも具体的にお話しできるような内容も無いのではないかと思うのですが、何か補足があれば。

(企画課担当)まだ探りという状況です。具体的にテーブルに着いて、話し会いを設けて、その先において協力してデータ解析をするということを想定していますが、その手前の段階で探りを入れて、色々な業界とお話している状況です。本格的にはこれからというところです。

Q 降灰について、エリアだけではなく量的な予測を行うお話がありました。これまで、噴煙の高さの把握が技術的な問題であると指摘されていた分野だと思っていますが、今、改めて乗り出すにあたって、技術的なことで何か目処がついたとか、何らかの設備的な面で準備が整ったとか、そういうような背景があるのであれば教えてください。
A 上空の風については数値予報モデルがかなり正確ですので、やはりご指摘のとおり、噴煙の高さや噴煙の量の把握が技術的に重要となっています。昨年度、気象研究所が気象レーダーを使って噴出量を求めるという非常に良い研究をしており、レーダー監視と気象の予測モデルをカップルさせることによって、量的な予測をしていこうと考えております。気象研究所の研究はすばらしいと思いますので、ご関心があれば取材していただけたらと思います。担当者から何かありますか。

(地震火山部担当)長官の説明どおり、気象研究所で気象レーダーを活用した技術を検討している段階です。



(以上)

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