長官記者会見要旨(平成24年1月19日)

会見日時等

平成24年1月19日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室

発言要旨

 今年もどうぞよろしくお願いします。
 まず初めに、昨年の東日本大震災や台風第12号等の災害に伴い、いまだに多くの方々が、仮設住宅で厳しい生活をされ、そのような中で新年を迎えており、ここに改めてお見舞いを申し上げます。

 本日は、今年初めての会見ですので、今年1年、気象庁として重点的に取り組む課題を中心にお話しさせていただきます。

 昨年は、東北地方太平洋沖地震、新潟・福島豪雨、台風などによる多くの災害が発生し、それらを教訓としまして、平成23年度第一次補正、第三次補正予算などにより観測網・施設等のハード面の強化を進め、現在も年度末に向けて取り組んでいるところです。さらには、津波警報の改善や、大雨や台風にかかわる情報の検証など、これらの改善に向けた検討に着手したところです。また、年末には平成24年度予算案が閣議決定されたところです。

 本年は、それらも含めまして多くの施策について着実に具体化すべき年であり、国民の生命・財産を守るために気象業務の更なる発展を期すべき極めて重要な年になると考えております。

 個別分野ごとに具体的にお話をしたいと思います。

 はじめに気象分野ですが、現在、東京都清瀬市にあります数値予報を行うスーパーコンピュータの更新作業を行っており、これが更新されますと、局地モデルから気候モデルまで様々なモデルが高度化され、予報精度の向上が期待されます。また、全国の気象レーダーについてもドップラー化がすべて完了することで、大雨・台風等の一層の監視機能の強化を図ります。また、「ひまわり8号・9号」、これは平成26年度と28年度の打ち上げになりますが、ひまわり本体の製造に加えて、ロケットの製造もスタートいたします。このように様々拡充する観測や情報システムなどのハードを十分に使いこなして、さらに、昨年の大雨や台風災害、市町村警報についてもしっかりと点検・評価し、防災気象情報の更なる改善を進めて参りたいと思います。
 次に地震火山分野ですが、これについては既に何度も会見で詳細に触れていますので簡単に申し上げます。最重要課題であり、現在検討の最終段階に入っています津波警報の改善はもとより、長周期地震動にかかわる情報についても、利用者の意見を踏まえて具体化に向けて着手したいと思います。また、緊急地震速報につきまして、誤報等で適切でない状況が、先の1月12日もあり大変ご迷惑をおかけしています。引き続き緊急地震速報の改善を図るとともに、その精度や質等について十分周知するように努力したいと思います。さらに、火山観測網についても計画的に整備・強化し、現在も活発な活動が続いている「新燃岳」や「桜島」等の火山について的確な情報の発表に努めていきたいと思います。
 最後に地球環境・海洋分野ですが、現在、国際的にも国内的にも気候変動や異常気象に極めて脆弱であるという状況が出現しており、気候変動や異常気象に伴う社会・経済活動へのリスクがかなり高まっている状況です。昨年の例ですとタイの洪水が国内はもとより国際的に多大な影響をもたらしたことはご承知のとおりです。このような状況を背景としまして、現在、交通政策審議会・気象分科会において気候情報の利活用促進の観点で、特に「利用者インターフェース」という、利用者との連携をどう進めるかということについてご審議いただいています。3月にはご提言をいただく予定ですので、この提言を一つ一つ着実に具体化して利用促進を図って参りたいと思います。

 これら気象、地震火山、地球環境・海洋分野等について、個別に業務改善を進める課題について説明しましたが、今後、気象業務全体を通して共通・横断的に取り組む姿勢の観点として、我々が発信する情報の全てについて、「受け手の立場に立ち、分かりやすく、かつ、実際の行動に直接的に結びつくこと」が求められていることを常に念頭に置いて情報の発信をし、業務の改善を進めることが必要だと思っています。そのためには、国民・社会のために何が出来るのかを常に念頭に置いて情報を発信していく、業務を改善していくことが必要ですので、今年1年、気象庁職員一丸となって取り組んで参りたいと思います。

 さて、東日本大震災の被災地でも、かなり低温が続いていまして、雪や最低気温が氷点下になる日が続いています。引き続き寒さや雪への対策が必要ですので、気象庁の発表する天気予報、特に最低気温や雪の予報に注意をお願いします。
 また、この冬は、日本海側を中心に西日本から北日本にかけて平年よりも積雪の多い状況が続いていますので、引き続き除雪等における事故に注意をお願いします。また、一方では太平洋側で乾燥した状況が続いていまして、今日から明日にかけて雨や雪が予想されているところではありますが、引き続き火の取り扱いやインフルエンザ等に注意をお願いします。

 最後に、「東北地方太平洋沖地震」の余震は次第に少なくなっていますが、今後もまれに大きな余震が発生して、場合によっては震度5弱以上の揺れ、さらに津波が発生する可能性もありますので、引き続き注意をお願いしたいと思います。

 以上、私からのお話を終わらせていただきます。


主な質疑応答

Q 津波警報のあり方については、昨日までパブリックコメントをかけて大体固まっていると思います。一方、長周期地震動のあり方については、まだ検討会の最中で、今年度内に新たなものを策定するとのことですが、実際今、長周期地震動について発表には何が足らず、今後どういったものがさらに必要になっていくのかという点を教えてください。
A 長周期地震動につきましては、近年、高層建築や長大橋、石油タンクなど、これまでの短周期の地震動による被害とは違って、地震による長周期の揺れによって大きな被害が出る構造物が増えて来たということで、これまでの震度という指標では揺れや被害を表せないということがあります。そのような構造物に対する震度に代わる指標として何か適当なものはないかということで、前回の検討会では委員の方々から、幾つかこのような考え方があるのではないかというご提案をいただきました。それらを参考にしながら、速報性や分かりやすさ、さらには共通に利用できる仕様は何かという点で今後詰めていきたいと思っております。

Q まもなく新燃岳の活発化から一年が経過しますが、これまでの対応を踏まえて、所感をいただきたいのと、今後の体制はどのように考えていますか。
A 昨年1月にマグマ噴火が始まり、その後、内閣府も含めて、政府全体で新燃岳の対策を噴火と同時に強化しております。ガイドライン等もかなりしっかり出来ています。今後も噴火の可能性がありますが、実際の噴火活動に際しましては、気象庁としては的確に情報を発表するとともに、気象庁も参加して内閣府等で定めたガイドライン等に沿って、市町村や県等との連携や情報の共有をしっかりと進めて、噴火活動に万全を期していきたいと思います。

Q 今度も噴火の恐れは引き続きあると思いますが、情報の共有が大切だということですね。
A 極めて重要と思っております。


(以上)

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