長官記者会見要旨(平成23年7月21日)

会見日時等

平成23年7月21日(木) 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室

発言要旨

 「東北地方太平洋沖地震」が発生して、4ヶ月が経過しました。
 本日の会見では、はじめに、地震後の対応状況ということで、余震への注意、次に来週開催いたします第2回の「津波の勉強会」について、さらに津波観測施設の臨時復旧を7月末までに行いますのでこの点について触れます。また、夏の大潮への注意、熱中症対策についても、触れたいと思います。
 次に、地震とは話題が離れますが、「台風第6号」の状況についての私なりの感想と、夏の行楽シーズンを前にして、水の事故がこれから増えることが懸念されますので、その点についての注意喚起について述べさせていただきたいと思います。

 先ず、余震への注意です。余震は次第に少なくなっていますが、ご承知のように7月10日には約3か月ぶりにM7.0を超える余震が発生して、本震以来はじめて津波を観測しました。今後もM7.0以上の大きな余震が発生する可能性がありますので、引き続き注意をお願いします。また、規模の小さな余震でも、陸域や沿岸域の近くで発生しますと、場合によっては最大震度5弱以上の揺れの可能性もありますので、引き続き被災地を中心として注意をお願いします。

 次に、津波の勉強会、正式な名称は「東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた津波警報改善に向けた勉強会」ですが、6月8日に第1回を開催し、第2回については昨日お知らせしましたとおり来週27日に開催します。
 この第2回では、気象庁から津波警報の改善の方向性についての案をお示ししたいと考えております。この案につきまして、各委員の皆様から忌憚のないご意見をお伺いしたいと考えています。
 その結果については、中央防災会議の専門調査会へもお示しして、同専門調査会からもご意見を伺いたいと考えています。最終的には、気象庁として秋頃までを目途に今後の改善の方向性をまとめて、関係機関とも連携して具体化を進めたいと考えております。

 次に、津波観測施設の臨時復旧です。東北地方太平洋沖地震による巨大な津波によりまして、東北地方の太平洋沿岸、特に宮城県、岩手県を中心に気象庁の津波観測施設が被災しました。3月末の応急復旧で「岩手」、「宮城」、「福島」各県1か所につきましては津波の監視ができる状況にしておりますが、早期に他の観測施設も復旧させる必要がありますので、7月下旬を目途に、7か所の津波観測施設を臨時復旧させるよう、現在作業を進めております。これにより、被災前と同様に津波や潮位を監視できる状態に回復させる予定です。ただし、これもあくまでも臨時復旧ですので、最終的な復旧に向けて、年度内を目途に作業を進めております。

 次に、夏の大潮への注意喚起です。東北地方の太平洋岸ではご承知のように大規模に地盤が沈下していることから、高潮や高波に極めて脆弱な状況にあります。夏から秋にかけては潮位が高くなる季節です。現在、報道等でも報じていただいていますが、通常の状態でも浸水・冠水が日々続くというような状況にありますので、これからの時期はさらに高潮・高波に注意をお願いします。
 気象庁としましては、引き続き、大潮の際には潮位に関する情報を発表し、関係する自治体や住民等へ注意喚起していきたいと思います。さらに、被災地を支援するという観点から、主要な沿岸地域について「潮位カレンダー」という名前の、潮位の時系列的な情報をホームページで公開しておりますので、ご利用いただきたいと思います。さらに、7月15日から国土交通省防災情報提供センターの携帯電話向けホームページで潮位予測、満潮・干潮の時刻といった潮位の関連の情報を見ていただけるようになっていますので、被災地の方には是非ともご利用いただきたいと思います。

 次に、夏を迎えての熱中症対策についてです。東北地方を含めて全国的に梅雨明けが非常に早かったこともありまして、その後高温が続いています。夏はこれからが本番ですので、引き続き熱中症に注意する必要があります。
 特に被災地は過酷な環境であり、さらに関東・東北を中心に電力が不足する状況を考えますと、節電への取り組みと併せて熱中症対策を図っていく必要があります。このため、気象庁では、今月13日に「高温注意情報」の発表を開始しました。35℃以上の猛暑日を予測するもので、これによって熱中症への注意を呼びかけていますが、十分有効に活用いただいているものと思っております。引き続き、よろしくお願いいたします。

 次に、地震の話題から離れまして、台風第6号への対応状況、及び夏の水の事故への注意喚起についてお話したいと思います。

 台風第6号については、1000�を超える記録的な大雨や暴風、高波をもたらしたことが特徴ですが、これによって西日本から東日本にかけての広範な地域で被害を受けました。ここに被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。また、報道機関の皆様には、適切に報道していただき、国民の方々に十分な注意喚起を行っていただいたと思っております。引き続きご協力をよろしくお願いします。
 今回の台風は、速度が遅く、大型で強い勢力のため、長期間にわたり西日本から東日本に影響を与えたことが特徴として挙げられます。夏の台風は予報が難しいということが昔から言われておりますが、開始してまだ2年目の台風の5日進路予報について、今回の進路予報の評価を見ますと、かなり良い評価ができるのではないかと思っております。今後、自らの評価だけではなくて、実際の利用者、自治体等がどう受け取ってどのように利用されたかということも含めて評価して、さらなる情報発表の改善に努めていくことが重要と思っております。
 いずれにしましても、本格的な台風シーズンはこれからですので、台風への常日ごろからの備えと、さらには気象庁の台風情報を有効に利用していただいて、台風災害の防止・軽減をお願いしたいと思います。

 次に、最後の話題になりますが、夏を迎え、水の事故への注意喚起についてです。今回の台風第6号においても、はるか南方から“うねり”が来て、かなりの前の段階から、遊泳中や釣りなどの際に水の事故が発生するという痛ましい事故も発生しております。今後、本格的な夏を迎えるに当たって、さらなる注意をお願いします。
 山や川などの行楽地で様々な活動を行うシーズンですので、集中豪雨のみならず、局地的に降る強い雨や雷、突風についても十分な注意をお願いします。
 この点で、外出の際に事前に気象庁の気象情報をご確認いただくとともに、外出中も自らが積乱雲の状況を見る、あるいは空模様に注意することが極めて重要と思っています。例えば、周辺で黒い雲が広がるような状況では、しばらく安全な所に退避するといった、自らが行動して危険から身を守ることが極めて重要と考えています。このような行動により、かなりの面において突然危険が降りかかるような状況を回避できるものと考えております。
 なお、国土交通省防災情報提供センターの携帯電話向けホームページでは、すでにご承知のように、レーダーによる雨の分布の実況とナウキャストという短時間の今後の見通しの情報の公開を始めております。来週の26日からは雷と竜巻についても実況とナウキャストの情報を公開する予定です。外出中には、この携帯電話向けの情報をご活用いただくとともに、自らが空模様を常に点検して危険を回避していただくようお願いします。

 以上が主な話題ですが、終わりにあたりまして全国の皆様にはもう一度、地震発生後や台風・大雨などにとるべき行動を自ら再点検し、常に身の回りを備え、防災意識を高めていただきたいと思います。さらに、夏を迎え、熱中症や局地的な大雨といった点にも細心の注意を払っていただきたいと思います。
 最後に、気象庁はさまざまな情報を発表しておりますが、これらの情報を有効にご活用いただいて、自らの安全・安心を守っていただくことをお願いして、私からのお話とさせていただきます。




主な質疑応答

Q 太平洋沿岸で津波観測施設を二次復旧させるというお話がありました。気象庁としてもハードの損壊で津波警報の解除などで苦慮されているかと思いますが、復旧によって臨時とはいえ気象庁にとってどういうメリットになるのか、お考えをお聞かせください。
A 津波観測施設の臨時復旧は、場所は若干ずれますが、箇所的には被災する前の段階に戻すということと、衛星通信を使用して情報の伝達等のバックアップ措置も取っていることで、これまでよりもしっかりと監視に使えると思っております。ただし、臨時の措置ですので、応急ではなくて確固たる施設に復旧させるように努めていきたいと思っております。

Q 臨時復旧の整備がなくても津波警報や注意報の発表には割合影響がないと言っていましたが、これが新たに加わることによってどのように精度が上がるのでしょうか。
A 警報等の発表の段階よりも、発表した後の津波の状況の監視についての確度が高まると考えています。当然、津波の状況を見ていれば早期の解除にも有効に活用できると思いますので、観測網の充実は発表後のフォローアップに極めて有効と思います。

Q 来週の第2回の津波の勉強会で何らかの改善の方向を示すということですが、具体的な議論は勉強会の中で行われると思いますが、現時点でどのような方向性を考えているのか、長官としてのお考えをお願いします。
A 基本的には迅速性と不確実性とはトレードオフの状況にありますので、不確実性を踏まえ迅速性を担保しながら、その中でトリガー情報として最善な津波警報がどうあるべきかという解を求めていくことと思っております。

Q 今回示される方向は、ある程度今後の気象庁の大方針みたいなものになっていくと考えてよろしいのでしょうか。
A これまでの津波警報の技術は、マグニチュード7の中盤あるいは後半ぐらいまでの地震への対応としては技術的には最善と考えておりますので、その点とマグニチュード9.0という巨大地震への対応と両方をあわせて適切に対応できる津波警報はどうあるべきかが今後の方針だと思っております。これまで我々がやってきた津波警報を全く否定するものではないと思っています。

Q 確かにマグニチュード7や8ぐらいまでですと量的予報にしても実況との相関が比較的良くでていますね。今回、それをはるかに上回るものが起きたとなると、そこから先の考え方は、今後変わってくるものなのか、今までの考え方を使うものなのか、どうなのでしょうか。
A 先般の地震では今までの技術的な力が十分及ばなかったということはこれまでも申し上げていますが、今までの技術で及ぶところと及ばないところを極めて冷静に分析して、及ばないところについて、不確実性を踏まえつつ迅速性を担保し安全サイドでどういう情報を出していくかというところがポイントになろうかと思っています。警報発表の出し方全体が大きく変更になるようなものではないと思っています。具体的には現段階ではお話できませんが、現在の枠組みが大幅に変更になるというものではないと思います。

Q 第2回の津波の勉強会で、長官が個人的でも結構ですので、期待される点は何でしょうか。
A 先生方は色々なご意見をお持ちですし、前回ご議論いただいたことを踏まえて気象庁の考え方、案をお示ししますので、その案について忌憚のないご意見をいただきたいと思っています。さらに、我々が客観的に最終的な判断ができる材料となる意見をいただけたらありがたいと思っております。

Q 台風第6号ですが、気象庁としてもだいぶ早いうちから危ないぞと言っていたかと思います。早い段階からレクも今回2回ありました。それは、気象庁として情報を積極的に出して行くということをベースに、こういった対応をしたと受け取って良いのでしょうか。
A これについては、私が予報部長の時、2年前に台風第18号がありまして、この場合も5日進路予報を開始して初めて土日を挟んで日本に影響するような台風であることを踏まえて記者発表したと記憶しています。この時は金曜日ぐらいの段階から事前にレクをして対応を早めました。5日進路予報の効果、成果をできる限り使って社会にお示しすることが重要で、そういう取り組みをしていましたので、その延長で今回も予報部に対応をお願いしたという結果でございます。今後も当然5日進路予報を活用してできるだけ早い段階で記者発表を行う、あるいは解説することで国民に危機感を伝えていきたいと思いますので、引き続き報道機関の関係者の皆様には協力をお願いしたいと思います。また、記者発表等ご要望があれば遠慮なく言っていただければ、ご要望に応えるように努力していきたいと思います。

Q 先週の終わり頃から伊豆の東方沖で無感地震が続いたことについて、現在の状況と今後の見通しを教えてください。
A 私は現在の詳細を把握しておりませんが、地震予知情報課が厳重な監視をしておりますので、担当から詳細を説明させます。

【担当】伊豆東部の地震に関する質問についてお答えします。地震は17日から18日の2日間にわたって継続しましたが、18日の午後から減少しまして、現在はほぼ落ち着いた状態に戻っている状況になっております。まだしばらく監視しますが、このままの状態が続けば、これで今回の活動は小規模なものだったとのことで終了するとみております。【ここまで】

いずれにしましても、厳重に24時間監視しておりますので、なんらかの変化があれば情報等でお知らせいたします。

Q 長官は就任されて多分半年ぐらいになられたと思います。多分誰もやったことがなくて初めてやってどうかと言われても答えにくいとは思いますが、正直いろんなことがあり過ぎたこの半年について、率直に言っていかがでしたでしょうか。
A これだけの災害というのは、私自身、ここにいる皆さんも初めての経験で、その経験を一日一日自ら考えて克服してきたというのが実態ではないかと思います。私としましては、ここにいるスタッフを含めて優秀な職員を抱えておりまして、職員の協力を得ながら適切な指導がこれまでできてきていると考えておりますので、引き続き被災者の立場に立って気象庁としての情報が発信できるように、指導をしっかりやっていきたいと思っております。また、今回を教訓として、地震津波の情報の改善や、気象の情報の提供のあり方、日々の業務に加えて被災者への情報提供のあり方というものついても、今後の防災対策を強化するため改善策を常に持っておくということが重要かと思っています。

Q 津波警報については、今回のことがあったから議論する場ができて、根本的に一回見直してどうあるべきかを検討されていると思います。津波警報以外の気象庁の情報、新しいものも含めありとあらゆる情報が出されていますが、これら情報の出し方や使われ方についても再度見直すというイメージなのでしょうか。
A 予報部関連の情報など様々な情報の発信を開始しておりますが、ある一定の期間が過ぎましたらそれを評価して、そのまま継続しても情報の有効性があるものなのか、あるいは改善を進めるべきなのか、といった点検を行っていく必要があると思っています。
ただし、現時点において見る限りにおいては、今回私どもが新しく作った気象の情報や高潮に関する情報は、被災者の立場に立って良い情報が発表できているのではないかと考えております。質問されましたように、ある一定の期間が来た時にしっかりと評価して改善するなどの策を考えていく必要はあると思っています。



(以上)

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