長官記者会見要旨(平成23年1月18日)

会見日時等

平成23年1月18日(火) 17時00分~17時25分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日付で気象庁長官に就任いたしました羽鳥光彦でございます。よろしくお願い申し上げます。
 まず、自然災害の防止軽減、社会経済の発展に資するため気象庁は様々な情報を発表しています。こうした情報を国民の皆様にお知らせし、ご理解いただくためには第一に報道機関の皆様のご協力が不可欠ですので引き続きよろしくお願い申し上げます。年末からの全国的な大雪、あるいは低温につきましても新聞テレビ等通じて的確に報道いただき感謝いたします。特に、気象情報だけでなく災害や交通障害など社会への影響といったことについて横断的あるいは総合的に情報をお伝えいただくという報道側の役割は極めて重要と思っています。それによって我々の気象情報の価値をさらに高めて頂いていると言うことで、常々記者の方々には感謝しているところでございます。引き続きこれからもご支援をよろしくお願い申し上げます。
 気象庁の仕事は気象・地象・水象に関する情報を作成しまして、社会を支えるということでございますので、そのためにはやはり技術基盤を強化する、それにより情報自体の質を高めると同時に、国民・地方自治体などの方々による利活用を広げていくということが重要かと考えてございます。

 それぞれの分野について若干触れさせていただきます。
 気象の観測・予報については、昨年5月から運用を開始しました市町村警報、これが第一に重要なものでございまして、現在運用後のフォローアップを精力的に行っているところでございます。その成果を活用して少しでも多くの改善につなげる必要がございますので、来年度の出水期あるいは台風シーズンにつきましては、このような成果を踏まえて運用をしたいと考えています。また、監視・予測技術、これにつきましては来年度末にスーパーコンピュータの更新を予定してございます。さらに、次期静止地球環境観測衛星も運用に向けた整備が進められておりますので、これらハードを最大限に有効に活用して予報精度の向上に努めてまいりたいと思っております。
 次に、地震火山分野でございますが、これは御承知のように我が国は世界に類のないほど多くの地震が発生しているということ、さらに、多くの活火山を抱えています。また、昨年2月には南米チリ沿岸で発生した大きな地震による津波によりまして、我が国でも漁業施設などに被害を被ったことは記憶に新しいところです。このため、地震・津波・火山噴火による被害の軽減に向けて、引き続き、情報発表の迅速化、精度の向上、内容の充実ということを意識して仕事をしてまいりたいと思っています。現在、御承知のように「緊急地震速報の評価・改善」、「津波予測技術」、「東海地震に関連する情報の理解促進」などについて有識者を交えた検討会あるいは勉強会が進められていますので、それらの成果も踏まえ、関係機関と連携・協力しながら一歩でも情報の質を高めたいと考えております。特に、地震・火山の監視網、これにつきましては、多くのシステムや観測機器を整備・拡充させて頂いておりますので、それらを如何に有効に活用して最大限の成果、情報の質を高めて行くことが重要かと考えています。
 次に、地球環境、異常気象の分野でございますが、地球温暖化等のかかわりで異常気象への影響が懸念されて、国際的にも国内的にも大きな関心を呼んでいます。それらへの対応も気象庁として大きな課題と認識しています。季節予報も含めて長い時間スケールの予報につきましては、多くの不確実性が残されております。こうした予報を不確実性を持つ中でもいかに具体的な対策に生かしていくかということが今後の重要な課題と思っております。世界気象機関におきましても、「気候サービスの世界的な枠組み(GFCS)」が検討されておりまして、利用面とのインタフェースの強化が叫ばれているところでございます。気象庁としてもこうした国際的な動向や社会経済活動からの要請を踏まえまして、気候監視予測技術の高度化を図ると同時に関係機関とも連携し気候情報の利活用の裾野を着実に広げていく必要があると考えています。気候サービスについては国際的にもかなり挑戦的な分野ということでございますので、気象庁として、その成果を活用してアジア太平洋諸国さらには世界各国に模範を示せればと考えています。
 私からは以上です。どうぞよろしくお願いいたします。


主な質疑応答

Q 気象庁の業務全般で特に重要だとお考えになる喫緊の課題というものはありますでしょうか。
A 予報分野では、市町村警報のフォローアップ、これをもう少ししっかりやって市町村警報の運用を利活用しやすい形に変えていく、運用を改善していくということが大事かと思っています。
 地震火山関係では緊急地震速報など、さまざま改善するものがございますのでこれらについては有識者の意見も聴きながら少しでも多くの改善ができればと思っています。
 さらに地球環境や異常気象の分野では、先ほど言いましたように情報に不確実性を伴うということで、国際的にもそういう不確実な情報をどう伝えるかということが極めて大きな課題になっています。実際の利用者とも相談しながら利用方策を模索して、その成果を社会に広げていけたらよいなと思っております。

Q 昨年の猛暑等、気象庁の発信する情報に関心が非常に高まっていると考えておりまして、長官は携帯とか新しいメディアへの関心が高いと前にお聞きしたことがございますが、国民への情報発信の方法としてそういった新たな取り組みとかにチャレンジするとか、今後の長官在任中にどのようにしようとお考えなのかお聞きしたいと思います。
A 新たなメディアは、私自身も関心がありますが、民間も含めて様々な取り組みが行われております。最近はスマートフォンですとか良いものが出てきておりますので、新しいものについてどういう動向であるのかというものを常にアンテナを張って我々も対応していく必要があろうかと思います。
 ただ、国自らがやるべきかという話と民間の活力あるいは地方自治体のそのようなものに対する活力をどう活用していくかというところがあります。我々の業務は税金を使っているので、最小限のコストで最大限の効果を生む方向で官民がうまく連携協力してやっていけたらと思います。また、民間がこの分野では極めて独創性が強く、良い仕事をやってもらっておりますので、民間の力の活用が極めて有効で、その中で国の役割がどうあるべきかということを常に検討していく必要があろうかと思っております。

Q 率直に、いま気象庁に国民から求められているのは何だとお考えになりますか、何を今取り組んで行かないといけないとお考えですか。
A 信頼性の高い実際の状況をお伝えする、これは予報に限らず実況でも科学的な信頼性をもってなんでそれが起きているのかということも含めてしっかりお伝えすることが重要なんだろうと思います。予報精度の向上というのは極めて重要な課題と受け止めています。また実際それに何が必要かというとやはり技術力だと私は確信しています。気象庁は技術官庁でございますので、世界的な部分も含めて技術力をしっかり確保していくということが最重要と思っております。当然、最終的には最初に申し上げましたように利用者とのインタフェース、ここのところも常に忘れないようにやっていかなくてはいけないというところでございます。

Q 国民から期待されていることをどういう風にとらえておられますか。
A 実際私自身が接するのは、記者さんたちが書かれた記事に対する国民の反応とかそういうものでございまして、今の自然現象がどうなっているかという事実関係とか、明日の行動に伴って我々の予報はどう使われているかという話ですので、国民生活に密着したものが要求されているととらえております。

Q どんな時感じますか。
A 家族も含めて社会から、厳しい意見も多いので、もう少し頑張らなくてはいけないなというような気がいたします。

Q 先ほど市町村警報についてのフォローアップというお話をされましたが、少しでも多くの改善ということで、これについての現状認識というかこれまでの予報部長の立場としての自己評価でも結構ですが、現状というのをどういう風に認識されていますか。
A 5月にスタートして、そのあと自治体にヒアリングに行ったり、現在はアンケート調査も行っていますが、全体的には好評は得ていると思っています。名前が極めて分かりやすくなったとか、実際に空振りとかも少なくなっているようですのでそういうことでは好評は得ていると思っているのですが、やはり切り替えた当時の評価でございますので、実際の運用は我々の発表する警報が自治体の防災対策に活かされてようやく目標が達成したと言えるわけですから、そこのところは厳しく評価して改善につなげていく必要があるのではないかと考えております。

Q ご自身としては及第点ではないというところですか。
A まだまだだと思います。実際これから我々の警報を発表したときに防災対応とのリンクがもう少ししっかりしないといけないと感じております。

Q 先ほど信頼性の高い情報・実況を出していくのだとお話があったのですけど、昨年の京田辺のアメダスであったり、他にも航空も含めていろいろな観測ミス、場合によっては人命につながるようなミスが起きています。最近の気象庁は新しい情報とか技術の方ばかりで足元の観測が揺らいでいるのではないでしょうか。
A 私としてはそう感じてはございませんが、いろいろミスがあったということはしっかりと反省して対応していかなくてはいけないと思っています。足元の観測は一番重要であるというのは私自身観測部で観測課長を務めていましたので、良く認識していますし、予報業務においても、観測あっての予報だと予報官等も含めて職員は認識しているので、足元の観測が一番重要であるというのは気象庁の職員であれば誰でも認識しているのではないかと思います。

Q これまでのご経歴でですね、特に印象に残る仕事を挙げていただくとするとどういうものがありますでしょうか。
A かなり長いことやっていますけれど、印象という点では前任の予報部長の時にちょうど市町村警報の切り替えあるいはナウキャストとか、かなり革新的なことをやっておりますので、その時に予報部長をやれたというのは幸せだなと思っています。

Q ご自身の性格を自己分析されるとするとどういった感じですか。
A 性格ですか。それはたぶん周辺の職員に聞いていただけたら間違いはないのではないかと思います。
Q ご自身はどのようにお考えですか。
A どうでしょうか。冷静沈着と言っておきましょう。

Q 長官に就任されてからどんなことを職員の方にお話しされたのですか。
A 長官になってからいろいろな行事が多いので直接お話をするのはまたの機会をとらえてやりたいと思っております。

Q こんなことを言いたいというのはあるのでしょうか。
A 職員に向けては訓示がございましたので、やはり技術力であるということと、国民からの信頼を得るということが重要ですので、技術と信頼というものをモットーに仕事をしていく必要があるだろうと話しました。

Q 気象庁の職員の方にこういうものを求めたい、例えば現状こうでこういうところをもっと変えてほしいとかですね、こういうふうな姿勢で仕事に取り組んでほしいとか思われるところがあればお願いしたいのですが。
A 繰り返しになりますけれども、技術力をしっかり高めてほしいということと、利用者をよく見て利用者のために仕事をしてほしいということでございます。利用者は最終的には国民でございますが国民のために技術力をしっかり確保して仕事をお願いしたいということです。

Q 技術力とおっしゃるときに、やはり先ほどからおっしゃるように、実際のハードがしっかりしないといけないと思うのですが、例えば来年度の予算、概算要求で要求したものが一部例えば観測施設などを削られたりですね、国の状況によって予算も削減傾向になっていますから、その辺は長官として予算の増額を求めていくのか、できる範囲で対処していくのかその辺のお考えをお聞かせください。
A 毎年度の予算の話ですので必要なものについては我々も精査し、効率的・効果的にお願いしていくことかと思います。技術力の場合はハードに加えて、数値予報という分野は人的要素が極めて大きいですから、ハード面に加えて人材の育成という観点も重要と思っております。

Q 東海地震関係についてお伺いしたいのですけども、政府は東海・東南海・南海の3連動地震の対策を本腰を入れてやっていこうと打ち出しているのですけれども、それに伴いまして気象庁としての観測体制の変化・改善・強化の可能性というのはあるのでしょうか。見通しを聞かせて下さい。
A 現時点においては、関係機関、大学等が東南海・南海も含めて様々な観測をやっておりますのでその辺との連携を進めていると認識しております。そこの連携を進めていくことによって、やはり東南海・南海の場合はまだ調査研究の段階ということでございますので、気象庁でもその調査研究に精力的に取り組んでいくということが必要と思っています。

Q 去年の夏の猛暑ですとか、今もすごく寒かったりしますけれども、なんとなく異常な感じがするという気候が続いたり、異常な現象、局地的に大雨が降ったりですとか、そういうことに関して国民の関心がすごく高くなっていると思うのですけれど、それについていちばん身近な省庁が気象庁であると思うのですけれど、国民の信頼を得られる仕事していくことが大事だというお話と関連しますけれども、必要なことってどんなことだと認識されていますか。例えばハードとかマインドの部分でお話しいただければ。
A 国民が天気とか地震火山とか自然現象に接していてそれなりに関心をお持ちであるというときにその関心にしっかり科学的に応えていくということが重要と思います。

Q それをしていくことが信頼を重ねていくということですか。
A やはり気象庁の仕事は24時間365日自然現象を監視するということが第一の仕事ですので、その監視の結果をどう国民に還元していくかということですので、国民の方々が感じることについて的確に我々が科学的に応えていくということが重要と思っております。そのためには記者の方々にいろいろ逆に刺激をいただけたらと思います。よろしくお願いします。


(以上)

このページのトップへ