長官記者会見要旨(平成22年12月16日)

会見日時等

平成22年12月16日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室

発言要旨

 12月1日に緊急地震速報の全国訓練を実施しました。訓練は約2,000に上る機関のご参加をいただいて実施することができましたが、大きな混乱も無く、良い訓練になったのではないかと思います。
 緊急地震速報を有効に活用するためには、訓練が欠かせませんので、今後もできるだけ多くの皆様に訓練を実施していただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。引き続きご協力をよろしくお願いします。
 同じく緊急地震速報に関連しますが、12月15日の未明に予定しておりました緊急地震速報の大阪システムへの切り替えを直前に延期しました。これは大阪システムから発信された緊急地震速報を利用できない端末があることが判明したために取った措置です。この作業はいずれやらなければいけませんので、大阪システムに切り替えても問題がないことが確認されましたら、実施したいと考えております。その際には改めてお知らせします。

 二つ目でございますが、岩手県大船渡市にある当庁の大気環境観測所は、非常に厳しい勤務環境の中で温室効果ガス等の精度の高い観測を約四半世紀にわたって継続して実施し、国際的にも高く評価されておりますが、すでに報道発表しました通り、このたび第23回人事院総裁賞を受賞しました。今月の9日に授賞式が行われ、授賞式の後、皇居で大気環境観測所長が天皇皇后両陛下に拝謁を賜わりました。
 この人事院総裁賞は、国民全体の奉仕者として職務に精励し国民の公務に対する信頼を高めることに寄与した職員または職域グループを顕彰するものです。当庁の今回の表彰は職域グループとしての受賞で、当庁としてはこれで5回目の受賞となります。いずれも離島や海上の非常に厳しい勤務環境の中で、重要な情報、貴重な観測データを取得し続ける私たちの仕事の姿勢が認められたものと思い、非常にうれしく思っています。


主な質疑応答

Q 緊急地震速報の大阪システムへの切り替え延期についてですね、業者の責任もあろうかと思いますけれども、気象庁としての責任とか業者への指導とか監督についての気象庁の責任をどう考えていらっしゃるでしょうか。
 それから、あのときの報道発表でどこの業者のどういう端末が問題で影響する利用者・ユーザーがどれくらいいるのかという点についてきちんと取材対応が気象庁はできていなかった。業者名も伏せているし、その辺はやはり非常に問題があると思っています。基本的な事実関係をきちんと明らかにして行かないと信頼を得ることもできないと思いますし、報道機関の問い合わせに対してきちんと答えないというのは非常に問題があると思っていますけれど、その辺いかがお考えでしょうか。
A 大阪システムへの切り替え延期の点につきまして、緊急地震速報がスタートして当初は東京のシステムだけで運用してきましたが、東京に何かあったときのために大阪のバックアップシステムを今年の3月15日に稼働させました。その大阪システムから出る信号を利用できるかについて、昨年から関係の方々に問題がないかどうかおたずねし、問題ありと回答された方には、どういう対応を取られるか聞いた上で作業を進めてきました。私たちとしましては、関係の事業者さんには十分な意を尽くしているのではないかと思っています。すなわち、「こういうことになりますけれども問題ありませんか。」という照会をし、危ないとおっしゃった方には「大丈夫ですね。」という念押しをした上で「3月15日から始めます」ということをお知らせしており、当庁としてこれ以上の対応は、なかなか考えにくいと思っております。ただ、今回は切り替えの直前になって、ある事業者さんから「わが方では若干問題がある」という話があったので、それを知った上で切り替えを強行するのは無理と思い、延期をさせていただいたというのが経緯です。
 それから事業者さんの名前を公表しなかった点につきましては、幸いなことに実害が発生するところにまでは至っておらず、未然に事を止めることができましたので、私たちとしては、特に事業者さんの名前を公表するという、一種の社会的制裁を行うには及ばないだろうと考えた次第です。取材の対応の中で若干の不備があったというご指摘つきましては、今後できるだけ良い対応をしていきたいと思います。

Q いまの緊急地震速報の話ですけれども、今回問題あるといった事業者さんは、更新の必要があるところに更新する必要があるということを伝えていなかったという話らしいですけれども、一回売った後のアフターケアの部分というのは、今作っているガイドラインなんかでも盛り込んでやっているという話なんですけれども、ガイドラインを今作っているということについてどのようにお考えですか。
A これは去年の12月の訓練の時に、残念ながら「まさか」ということが起きて、思いがけないところまで影響が出たことで私たちとしては反省をし、訓練報の取り扱い等も含めて事業者の皆さんに技術的な水準を保って頂くため、その一つの方策としてガイドラインを作ろうとなった次第です。
 どうして初めから気がつかなかったのかと言われたらその通りかもしれませんが、この緊急地震速報は世界のトップを走っている技術、システムですので、我々としてはいろいろな試行錯誤を重ねてやってきております。ガイドラインの作成が、まだなお作業中ということに関しては、ある時点でガイドラインの内容についてパブリックコメントを行ったところ、強い関心を持っている方が多くいらっしゃいって、貴重なご意見をたくさんいただいておりますので、それを十分に咀嚼した上でガイドラインに反映させたいため、現時点ではまだその作業を行っているところです。

Q 今年一年を表す漢字がですね、「暑」いという漢字で、先週発表されていましたけど、この「暑」いという字が今年一年を表す漢字になったということについてどういう風に思われていますか。
A 言い得て妙だと思いました。私たちも一年を振り返ってみますと、やはり今年の夏の暑さとはいろいろな意味で重いものでしたから、それが漢字になったことについては、良いご選択をなさったと思っています。

Q その中で熱中症患者の数もですね過去最高になりましたし、かなり多くの方が亡くなられました。気象庁としては事前に前日には翌日の気温が37・38度に上がるというふうな予報もちゃんとできているのですけど熱中症の患者の数が減らない。この辺気象情報のですね、扱い方というかもっと良いこういう風に工夫してやれば熱中症患者も救えるのではないかとかその辺を長官としてお考えのところはあるでしょうか。
A 天気予報の中で最高気温予想を発表するとともに、地方ごとにその地方公共団体と相談の上で高温に関する気象情報を発表している県もあります。熱中症の発症の仕組みは、単に気温だけで決まる問題ではなく、対策も様々なシチュエーションに応じ多岐に渡っているということもあって、一つのすっきりとした情報で対策できるとは思えないものですから、私たちとしては、天気予報の最高気温等を目安にして頂きつつ、そういう調整の整った県においては高温に関する府県気象情報を発表して注意喚起を行っているところです。現時点では、このようなやり方でタイムリーに情報を出していくのが適当と思っています。

Q 総務省の行政評価の話ですけれども、いろいろ言われていますけれどどうなんでしょう。
A 全体としてはいろいろなご指摘を受けておりますし、我々としても良い情報を国民に出しなさいという観点から、良い気象業務をやりなさいという行政評価監視をいただいていると思っていますので、勧告された内容につきましては、これを真摯に受け止め、所要の対応を考えていきたいと思っています。

Q 緊急地震速報についての件は的外れではないでしょうか。つまりM8クラスの海溝型の巨大地震の時に本領を発揮するためのものだと思うのですけど、つまりそういうことを総務省はわかっていないのではないでしょうか。
A そこまでの詳しい内容はなかったかと思いますが、現実に国民の方の目に触れる状況を考えると、内陸で起きたものについても緊急地震速報を出していますし、そういったもの全体をみて国民の方は評価をされていると思いますので、今出したもののパフォーマンスがどのくらいかと言われれば、残念ですが勧告の通りが事実ではあります。

Q それは指摘も真摯に受け止めるということですか。
A ただ、おっしゃるように原理的にできないものもあります。すなわち、震源が非常に近い地震については、もともと間に合わないものですし、原理的に持っている推定震度の誤差も、これは我々も少しずつ縮めていく努力はしておりますが、なおある程度の誤差はあります。しかしながら、様々な技術改善や、例えば地下深いところの地震計のデータを使って、直下型の地震についても1秒でも早く出せるようにする等の取り組みを行っており、ご指摘はそれなりに真摯に受け止めたいと思っております。


(以上)

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