長官記者会見要旨(平成22年7月15日)

会見日時等

平成22年7月15日(木) 14時00分~14時30分
於:気象庁会見室

発言要旨

 昨日、一昨日と、梅雨前線の影響により、かなり広い範囲で大雨となっております。この雨による災害で亡くなられた方、被災された方には心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。
 まだ降雨が予想される地域もあります。さらに、これまでに降った雨で地盤が緩んでいる所もありますので、各気象台が発表いたします気象情報に引き続き注意をしていただいて、厳重な警戒をお願いします。また、災害復旧に携わっていらっしゃる方も多いかと思いますが、二次災害にあわれないように、気象情報に十分注意していただくようお願いします。
 7月12日には台風第2号が発生しました。これから台風の影響を受けやすい時期となってきますので、引き続き台風や大雨に厳重に注意をしていただきたいと思います。梅雨期にはこのたびのような集中豪雨がよくありますが、昨年のように、梅雨が明けた後7月下旬から8月にかけて起こる集中豪雨もありますし、また、急な強い雨、局地的な大雨もあります。これから夏本番となってまいりますと、夏休みで山や川など、屋外へ出られる機会も多いかと思います。集中豪雨のように大量に降る雨のみならず、急な強い雨、あるいは突風や雷などにも十分な注意をしていただきたいと思います。また、海での高波、さらに、暑くなりますので熱中症にも十分ご注意をお願いします。
 外出される際には、屋外であるがゆえにリスクがある所もありますから、気象情報を十分活用いただいて安全に過ごしていただきたいと思っております。屋外に出られると情報がうまく入手できないこともあろうかと思いますが、空の様子などに常々十分な注意を払っていただいて、黒い雲が出てくるなど怪しいなと思ったときには、安全なところに避難することで、身を守っていただきたいと思います。
 私からは以上でございます。


主な質疑応答

Q いままさにお話しされた大雨ですけれども、例年に無いような期間の長さあるいは雨量の多さというのが目立つかとおもいますが、それについてはどんな感想をお持ちかということと、それから観測体制、それから防災情報の発信において、どんな点に気をつけているか、それから市町村警報になってからですね、これがどういうふうにうまく運用できているか、あるいはそうでもないのか、そのあたり今の時点でどんな感想をお持ちかお聞かせいただけますか。
A 雨量については、私どものホームページで、毎時の雨量、3時間の雨量、1日分の雨量、3日分の雨量などを示しております。これをご覧いただきますと、量はかなり多いですが、必ずしも軒並み記録を更新しているという状況ではありません。もちろん、警報の基準を超える雨が降っていることは事実で、災害も発生しております。期間についても、いわゆる梅雨末期の大雨といえる降り方をしていると思っております。
 情報の提供の仕方ですが、5月27日から市町村ごとの警報を発表しております。また従来から、気象警報に加えて土砂災害警戒情報を出しております。それから河川につきましては、国管理の河川は河川局と、県管理の河川は都道府県と共同し、指定河川洪水予報を発表しております。このような情報についての報道は、たとえば、「どこどこの府県の一部で土砂災害警戒情報が出ています。」というように適切に行っていただいており、実際の状況が良く伝わっていると思われます。
 市町村ごとの警報の発表についての系統的な調査は、大雨の状況が一段落してから行いたいと思います。すなわち、私どもが発表した警報の形態や頻度などの調査はできますが、それをご利用になった方のご意見は、これらの方々の災害などへの対応が一段落したところで、お伺いする機会を持つことになろうかと思います。ただ、6月までについての警報の発表状況を見ますと、おおむね全国で市町村ごとの警報を発表する経験は持ったと思われます。
 市町村ごとの警報を導入するメリットについて、3点いつも申し上げていることですが、「名称として非常にわかりやすい」、「市町村ごとに発表されるので防災対応がとりやすい」、「いわゆる道連れという、これまで広い範囲を対象に警報を出していたので、本当に警報の発表が必要なのが一部の場合でも、残りのところにも警報が出ている問題が解消できる」、という点がございます。そのうちの防災対応について、これまで地方公共団体からお聞きしているご感想を申し上げます。私どもは、警報を発表してなるべく新鮮なうちに、地方公共団体にお尋ねすることがあります。これは相手の立場もありますので、いつもやっているわけではないのですが、私たちの出している情報が役に立ったかについて、常にフィードバックをかけておくべきだという意識から行っております。そういった一部の地方公共団体からのご意見ではありますが、今までは、旧二次細分区域に対して警報が出て、そこから自分のところはどうだろうかと考えなければいけなかったところが、はっきり市町村名が指定されるので、その点は非常に対応が楽になったという、ポジティブな回答も頂いています。
 一方、以前からもそうなのですが、予報の精度や解除のタイミングについてのご要望もあります。特に大雨警報は、土砂災害の懸念が残っている間は、雨が止んだ後でも出ていることがありますので、そういった時に解除ができないのかという、解除のタイミングについてのご要望があると聞いております。さらに、中にはかなり面積の広い自治体もありますので、さらに対象地域を細かく分けて警報を発表できないかというお話も頂いております。
 最後に、どの程度地域を限定して警報を発表できているかという点について申し上げます。たとえば今回のように、非常に広い範囲に雨が降る場合は、ほぼ全ての市町村に警報などが出ますので、市町村で分けて出した場合も、以前の二次細分地域で出した場合も、ほとんど同じになります。旧二次細分地域の端の方だけ雨が降るような場合は、5月末から6月末までの期間で大まかに調べたところでは、気象条件等にもよりますが、警報が出た範囲は平均すると従来の6~7割程度となっています。もう少し時間をかけて統計的にきちんと調べたいと思っておりますが、今持っている感触としては、非常に定性的ですが、そのくらいと思っております。

Q 結構ここしばらくの梅雨前線の前の段階のときに、かなり関東でもあったのですが、局地的に雨雲が発達して集中豪雨があったとおもうのですが、この時というのは、やっぱり予報というのは非常にむずかしいなというのはいろいろ見ていて感じたのですが、国交省はXバンドレーダというのを公表したりですね、いろいろその後対策が進んでいると思うのですが、気象庁は今後局地的な集中豪雨であったり、そういったものに対応してやっていきたいことであったり、現時点でそういう局地的な集中豪雨に対する予報に関する感想であったりそういったことをお願いできますか。
A 集中豪雨の予測でさえ、現在は技術的には難しい場合があります。それから、ご指摘のあった先日の東京都・埼玉県の県境付近の大雨の予測は、非常に難しいものがあります。我々としては、ひとつの方策として数値予報に期待をもっています。現在、そのような小さい水平規模の現象に対する数値予報は、5キロの格子間隔で計算をしていますけれども、これをその半分以下くらいの格子にするともっと、細かい現象をうまく表現できる可能性があります。それについて現在試験中でございまして、その成果を見て少しでも予測につなげていきたいと考えています。おそらく、場所と量までを特定して予測することは非常に難しいと思われますが、そういった現象がどこかで起こりそうだ、つまり、雨が降った場合には集中的に降りそうだという情報などが得られるのではないかと期待して、開発を見守っているところです。

Q 首都圏の局地的な豪雨の時の状況でちょっと感じたことがあるのですが、あのときは23区へ警報がこれまでの区域という意味で23区に出ていたのですが、北区、港区あたりには土砂災害の情報が出ていたかと記憶しておりますが、その一方で千代田区とかそういった一部のところで、たしか警報が出されてなかったと記憶しています。ああいう場合に、逆に出ていないことが大丈夫なんだろうかとかそういった話とか、反応とかはなかったのでしょうか。
A そういうお話は聞いておりませんが、23区西部という地域を対象に警報を発表すると千代田区も対象に入りますが、区単位でみますと北の方を中心に警報が出ているという状況だったかと思います。やはり、ああいうタイプの雨の降り方の場合は、もともと場所はかなり絞り込み易いので、千代田区の辺りは出さなくても大丈夫と判断したわけです。「出し忘れたんじゃないですか」というお問い合わせはなかったと思われます。

Q 場所と量を少しでも細かくしたいということで、現時点で、警報とか出たけどもなにもなかったとかですね、出す市町村の問題ではなく、そもそも出す予報の精度の問題ではあると思うのですが、あまり安全なときに警報とかがでていると、市民のほうがにぶっちゃうところがあると思うのですが、それの警報の出す率というかですね、どの程度危険な時にどのくらい出ているかとかですね、そういうふうな検証とかはされているのですか。
A 警報がどの程度当たっているかの自己評価は、従来から行っております。警報を発表する必要がない地域に、仕組み上出てしまうことは、今ご指摘のオオカミ少年効果を生みやすい、すなわち、警報は出たけど何もなかったということを積み重ねると、警報に対する信頼度を失わせるものになります。それを絞りこめる枠組みができたのが、この市町村ごとの警報のメリットのひとつですので、いわゆる道連れを減らすことがどのくらいの効果を生んでいるかについては、しばらく運用してみてその評価を行いたいと思っております。

Q メッシュを細かくするというのは別次元な問題でやろうというような、コンピュータが入ればということでしょうか。
A さっき申し上げたメッシュは、予測するために使う道具のことの方を話しました。数値予報のメッシュを細かくすることで、量的な予測あるいは定性的な予測に対して良い情報が得られることが期待できるというものです。一方、警報を出す区域を市町村ごとのように小さくしていくことは、本来は技術とセットになっているのが望ましく、技術的に細かく予測できるようになったら警報などを細かく出すというのも、ひとつの考え方ではあります。しかし、このたびの市町村ごとの警報発表は、枠組みとして防災対応の基本単位である市町村ごとに情報を出すことで、受け手の対応がとりやすくなるという面を狙ったものです。


(以上)

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