長官記者会見要旨(平成22年6月24日)

会見日時等

平成22年6月24日(木) 14時00分~14時30分
於:気象庁会見室

発言要旨

 6月8日から16日にかけまして、スイスのジュネーブで開催されていました世界気象機関(WMO)の執行理事会に出席してまいりました。このために、定例会見を1週間遅らせていただきまして、どうもありがとうございました。
 ご承知のようにWMOは、国連の専門機関の一つです。国際協力なくして地球全体のデータを集めることはできないですから、気象業務は、関係国が歩調を合わせてデータを交換し合うことが基礎になっています。こうした協力を円滑に進め、かつ、相互に助け合って良い気象サービスを全世界で進めていこうと考えて作られているのが、このWMOです。WMOは現在189の国と地域で構成されており、その最高意思決定機関は、全構成員が集まる総会と呼ばれるもので、これは4年に1回開かれます。また、この189の構成員の中から、主だった気象機関の長が執行理事に選ばれており、この執行理事の集まりが毎年今頃開催され、自然災害の防止軽減、開発途上国を含めた国際協力など、気象事業をめぐる重要な課題を検討します。
 今回の執行理事会の議事をいくつかご紹介いたします。昨年も何度かご紹介しましたが、昨年の8月の末から9月にかけて、第3回世界気候会議が開催され、この中で気候の情報を様々に利活用するため、「気候サービスのための世界的枠組み」を構築することが決定されました。この「世界的枠組み」を具体的にどういうものにしていくか、現在、検討が行われていますが、それに対し、WMOとしてどのように取り組むかが議論されました。
 それから、まだご記憶に新しいと思いますが、今年の3月から5月にかけて、アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火に関係して、ロンドンの航空路火山灰情報センターがさまざまな情報を出しましたが、その活動の報告が行われました。また、火山の噴火はどこでもありうることであり、今後各国の気象機関が、航空管制当局や他国の気象機関とどう連携していくかという議論が行われました。技術的にも困難なことがたくさんありますので、一朝一夕にはいかないと思いますが、イギリスの経験は当庁においても今後の大きな参考になるのではないかと思います。
 もう一点、すでに報道発表をしておりますが、IMO賞という、世界気象機関の最高の賞が、東京大学の名誉教授で、現在は海洋研究開発機構の特任研究員でいらっしゃいます松野太郎先生に贈られることが決まりました。世界気象機関の中で最高の賞を受賞され、非常に喜ばしいことと思っております。

 2つ目ですが、5月27日から大雨・洪水などの気象警報について、市町村ごとの警報の発表を開始いたしました。また、同じく5月27日から、1時間先までの雷・竜巻の発生の可能性について、ナウキャストという形の情報発表を開始して、約1カ月が過ぎました。市町村ごとの警報については、発表実績をざっと見ているところですが、運用開始前にある程度想定しておりましたように、これまでよりも若干地域が絞り込めている事例がかなり出てきています。
 先週から、九州南部を中心とする大雨で、大雨警報や土砂災害警戒情報を発表しています。がけ崩れや法面崩壊というような被害が出ておりますが、今のところ幸いなことに人的被害が出ていないと伺っております。避難勧告の発令をはじめとして、市町村において的確な防災対応が実施されているものと認識しています。
 市町村ごとの警報発表は、ご自分のところを名指しで情報が来ますので、住民の方にもわかりやすく伝わるはずです。防災機関にとっても、避難などの防災活動にうまく使っていただけるようなわかりやすい情報になるものと期待しております。この警報・注意報をうまく使って早めの避難などに活用していただきたいと思っております。
 九州地方ですが、先ほど全般気象情報が出まして、今晩から九州南部を中心に再び大雨になりますので、現地では引き続き警戒をお願いいたします。

 最後でございますが、4月23日にすでに報道発表しております通り、現在観測しているひまわり6号から、ひまわり7号(運輸多目的衛星新2号)への切り替えを、7月1日12時の画像から行う予定でございます。ひまわり7号によって引き続きアジア太平洋地域の観測を実施し、台風や集中豪雨などの監視、気象警報・注意報などの気象業務に利用します。


主な質疑応答

Q 市町村ごとの警報や注意報についてですが、約1か月といったことで、効果的に使われた事例があったかどうか、それから、これは無いと思うのですが、トラブル的なことはなかったでしょうか。
A ご利用になった方の反応は、私の手元までは上がってきておりませんが、これまでだったらこのくらいの範囲に警報が発表されたのが、このくらいの地域にだけ警報を出すことで済んだという事例については、かなり上がってきています。そういう意味では、道連れと呼んでいますが、本来ある地域だけを警戒すればいいが、二次細分区域が大きいために、残りの地域にも警報が出たような状態が、かなり避けられていると思います。勿論、従来の二次細分区域全域に出ているというものもたくさんあり、気象状況、あるいは予測の状態によって判断が違いますが、個人的な印象としては、私が事前に思っていたより、きめ細かく出ているように思われます。当初は、まず大丈夫と思うところだけ外せばいいという程度に思っておりましたが、かなりの事例で、地域を絞り込んだ情報を出すことをやっているようです。トラブルにつきましては、今のところ私は聞いておりません。

Q マスコミや特に住民というか、間に立つ者というか、マスコミとか自治体ということになると思いますが、そのへんとの連携というのはどうなんでしょう。むしろマスコミが本当にこの情報を伝えきれているのかなという気もしないでもないですが。
A これは、この業務を設計した時から議論になったことで、非常に広い範囲に警報が発表されたときに、その市町村名をすべて出すとなると、たとえば、テレビであれば画面が全部埋まってしまうじゃないかという議論もありました。かなり広い範囲に警報が出るような時、すなわちテレビの画面が全部市町村の名前で埋まって、それも延々と流れるという状態であれば、従来の二次細分区域に相当する市町村をまとめた地域名を用いて皆さんにお伝えする術も残していますから、私どもとしてはそういうものをご活用下さいとしております。私も、実際に警報が発表された市町村名だけをテロップに出したテレビの画面を見たことがあります。出ている範囲の広さとの兼ね合いですが、非常に多い時はまとめた地域名で、少ない時は市町村名で、という工夫をしておられる放送局もあると聞いております。

Q 世界気候会議での話で、気候サービスの世界的な枠組みに今後どう取り組んで行くかというお話がありましたけれども、どう取り組んでいくような方向の話なのでしょうか。
A 気候情報は、いろいろな種類があって、今日発表したような3カ月予報や1カ月予報という季節予報から、地球温暖化予測の情報といったものまで非常に範囲の広い情報ですが、そういったものをどう活用していくと良いかが一つの焦点になっています。気候の情報は、皆さんもお感じになっていると思いますが、まだまだ研究をして精度を上げなければいけないし、気候の情報を作っていくためには、さまざまな観測もやらなくてはいけない。そしてその研究成果と観測データをうまく使って、たとえば良い予測を作ることをやらないといけないし、それからその情報を利用者にどういう風に使っていただくかというところに、実は大きな問題があって、現在の確率で出している情報を、どういう風に使えばどういう分野の方にメリットがあるかについては、利用者の方と情報を作っている側とが緊密な連携をとって、すなわちインターフェイスをうまくやっていかなければならない。これらのことが、気候情報を有効に活用するための重要な柱です。すなわち観測と研究とそれに基づく良い情報を作ること、そして、利用者がうまく情報を活用できること、これが全世界的にうまくいくような仕掛けを作ろうということで、非常に抽象的で申し訳ないですが、「気候サービスのための世界的枠組み」というものが考えられています。
 観測、研究、それに基づく情報の作成というところまでは、ある程度今まで枠組みがあります。すなわち、国際機関での連携ですとか、データのやり取りですとか研究を一緒にやりましょうとかいう枠組みができています。また、情報の提供は、数値予報の結果を開発途上国に配ったり、あるいは地域の情報、たとえばアジア地域における気候情報を、咀嚼して開発途上国に情報を差し上げたりする仕掛けが出来つつあります。ただ、そういった情報を、今度はお客さんとの間で、こういう風に使ったらこんな分野は有効ですねというところは、まだ道が遠いと思います。そういったところをどういう風に埋めていくかを考えようとしているのが、「気候サービスのための世界的枠組み」で、これを具体的にどういう風に推進するかについては、現在、ハイレベルタスクフォースというものが作られ、そこで検討が重ねられていて、来年の5月頃に開催される世界気象会議で具体的な姿が示されるよう、作業が進められています。

Q アイスランドの件でお伺いしたいのですが、イギリスの困難、何が困ったか、どういうことが一番困ったと言っていましたか。
A 結局、濃度自体の予測がなかなか難しいことが大きかったと思われます。そもそも出た火山灰の量がわからないものについて、拡がっていく量、その絶対値を予測しなければいけない難しさがあったと。やはり最初の発生源といますか、その量がわからないもの、あるいは衛星観測で捕えていても、その絶対的な量がわからないものから予測していくということが非常に難しかったと。そして火山灰の量を観測する方法も、現在の技術ではなかなか難しいというようなことを言っていました。
 もうひとつは航空関係の方かと思いますが、どのくらいの量だったら航空機にとって危ないのかがわからないということかと思います。

Q イギリスの話を聞いて、日本でこう改善すればいいとかですね、もしくは、改善のための調査をしなければいけないとか、長官として何か思われたことはありますか。
A これはすでにICAO(国際民間航空機関)の方でタスクチームというものが出来ていて、いろいろな相談を始めていると聞いております。具体的にどうやって観測するかは、すぐには名案が浮かびません。

Q 具体的に、どのくらいの濃度だったら飛行機のエンジンがつまるとか、そういうような実験データがないという状況で、まあ、今回、民間業者がちょっとやったとか、あれは公開されてはいるのでしょうか。
A そういうのが出たという数字は見たことがあります。

Q それを基に今後どうやるかっていうのも、今後の課題ということでしょうか。
A そう思います。


(以上)

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