長官記者会見要旨(平成21年6月18日)

会見日時等

平成21年6月18日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

 皆さん、こんにちは。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に私からいくつかお話をさせて頂きたいと思います。
 今月の初めですが、スイスのジュネーブで開催された世界気象機関という組織の執行理事会に6月3日から10日にかけて出席しました。
気象には国境がないということで、国際的な協力をしないと気象事業はできないものですから、国連の専門機関として世界気象機関、WMOというものがございます。この中に主だった気象機関の長で構成される執行理事会というものが設けられております。この会合は、例えば自然災害の防止ですとか、開発途上国を含めた気象事業に関する国際協力をどのように進めるか、といった重要な課題に関する検討を行うために例年開催されています。
 議事の中で、特に関心の集まる気候の問題に関係して、日本の気象庁の国際的な気候情報提供の実績が認められ、世界で初めてWMOの「地域気候センター」として正式に指名されるに至りました。気候の情報提供や気候の予測は開発途上国では必ずしも十分にできませんので、地域でどこか進んだところ、一定の水準以上のところが気候の予測情報の提供とか技術指導・研修などを近隣の国々に対して継続して実施していくため、地域気候センターという仕掛けを作りましょうとWMOでは検討してきました。一定の水準以上の仕事をやっているところを認めたいということで、WMOは今までは「こういう資質をもったところは『地域気候センター』になれますよ」と言ってきましたが、この度、日本の気象庁と中国の気象局が世界で初めて正式に指名されることになりました。指名されたからといってその日から業務が新しく変わるというものではないのですが、今までやっておりました関係諸国に対する気候情報の提供・予測情報の提供あるいは研修といったものを、WMOの枠組みの中でも正式に認知された形でやっていくということになります。
 気象庁はWMOの地区協会という分け方でいきますと、アジアを対象としたところに入っています。中国も同じです。そうしたアジア各国の気象機関に対して、気候情報を提供したり、気候の予測・監視技術といったことの技術移転、研修を、これまでにも増して確実に進めていくという役割を担うことになりました。そういう意味で、私たち自身としましても、気候情報の精度向上ですとか気候データの充実に取り組んで参りたいと考えているところでございます。
 また、この執行理事会の中で、5月の会見でも少し触れましたが、8月31日からジュネーブで開催されます第3回世界気候会議をWMO主催で行う計画が進んでおりますが、そこで得られる成果についての話し合いが行われ、WMOが他の国際機関と協力しつつ、気候情報を効果的に利用するための新しい世界的な枠組の構築を目指す方向性がこの執行理事会において支持されました。加えて、こういった気候情報を有効に利活用していく枠組には各国気象機関が重要な役割を果たすべきだ、という重要な指摘がなされました。
第3回世界気候会議への日本からの貢献ということで「気候情報に関する東京会議」を7月6日から8日にかけて開催する予定です。この東京会議におきましては、最終日の7月8日に一般の方々にも参加頂けますシンポジウムを午前中に予定しております。現在、参加を受付けておりますので皆さまにも是非ご出席いただくようによろしくお願いしたいと思います。
 次はお天気の話でございますが、先週6月11日ころまでに、全国各地で概ね梅雨に入ったと見ております。梅雨期は大雨が発生しやすい時期で、それに伴う被害も発生しやすい時期です。私たちも、気象警報・注意報など各種防災気象情報を適時適切に発表するよう日頃から努めているところです。国民の皆様におかれましても、私たちの発表します気象庁の発表する各種防災気象情報に御留意頂いて、十分に大雨の備えをお願いをしたいと思っています。
 また、報道関係の皆さまにおかれましては、防災気象情報を非常に適切なタイミングでお届け頂いたり、また過去の事例や注意事項を折りに触れて記事にして頂いており、これらは、災害の防止軽減に大きく役立っていると思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。 一方、西日本では、4月以降、雨の少ない状況が続いています。もう少し続くようですけれども、少雨に関する状況や見通しについて適時情報を発表して参りたいと思っているところでございます。
 雨と言いますと御記憶にあると思いますが、昨年、局地的な大雨が課題となりました。これはすでに一昨日、こちらで交通政策審議会の気象分科会の会長でいらっしゃいます島崎先生と、企画課長の方から御説明をさせていただいております同分科会の、「局地的大雨による被害の軽減に向けた気象業務のあり方」について報告書を頂いたところです。これは今年の1月から5回にわたり、熱心なご審議を賜り、私どもでは思いつかない視点からもご助言を賜って興味深い報告書を頂けたと思っております。
 気象庁に対して、ひとつは安全知識の普及啓発をもっと強化すべきだろう、それから二番目としましては、安全知識を持っていて、そこで気象情報を生かすにしても屋内外を問わず気象情報を入手する手段を拡大するようなんとか努力すべきではないか、さらにはそもそもこういった現象に対する適切な情報を、という切り口で、監視・予測技術と気象情報の改善を目指すべきといった御提言を頂いたところでございまして、今後、このご提言の主旨を踏まえて、関係機関との連携をしつつ、局地的な大雨への対応を進めて参りたいと考えています。
 そろそろ、局地的な大雨が発生しやすい時期となって参りますので、その御提言の中から、できることは速やかに着手して行きたいと考えているところです。その一つといたしまして、3番目に申し上げました監視・予測技術と気象情報の充実というところに関連しますが、7月1日から、急激に発達する積乱雲を少しでも早く捉えようということで、現在の気象レーダーの観測間隔は10分ですけれども、これをレーダーの運用を工夫することで5分毎に情報が出るように短縮したいと考えています。こうすることで積乱雲が発達する途中のプロセスを早くみつけることができたり、あるいは、今まで10分間隔ではなかなか見えなかったような激しい現象も捕まえられる可能性があります。こういう情報も活用して頂いて、実況をうまく判断して頂けるのではないかということから、このような対策を講じることとしました。この成果は私ども自身の実況監視にも活用したいと思いますし、気象庁ホームページや気象業務支援センターを通じて、国民の皆様、報道機関の皆様、民間気象事業者の方々に御提供したいと考えています。これにつきましては、後ほど資料とともに担当者から詳しく説明します。
 また、安全知識の普及啓発のため、国民の皆さまの「自分の身は自分で守るんだ」という意識、どこが危ないのか知って頂くこと、こんな現象があって、こんな情報もあって、これらをこういうふうに活用して、危ないと思ったら逃げてください、といった趣旨のリーフレットを作っています。「局地的大雨から身を守るために」というリーフレットです。なるべく早い時期に、夏休みに入る前に教育関係の方ですとかに、説明にあがるとか、あるいは研修といったようなことでお話させていただく機会を持つとか計画しているところです。これはホームページにも載っていますし、皆さまもすでにお持ちではないかと思いますけれども、こういったものがありますとか、あるいは、この中身を噛み砕いて国民の皆さまにお知らせいただけると私どもとしては非常に嬉しゅうございますので、是非、皆様方にも御協力頂ければと思います。私からは以上です。

 

主な質疑応答

Q. 提言を受けて、これまでの気象行政の中で欠けていたポイントは何と考えるか?
A. 報告書の提言の三本の柱はこの順番に足りなかったことと認識しています。
 実質的に一番に、自分が危ない場所にいるかどうかを分かってもらいたい、国民の皆様への啓発が大事だと言われています。私どもは、情報の精度を高めるというところにかなりのエネルギーを割きますし、私としてはその部分はとても大事なことだと思っておりますが、加えて、現時点での情報を少しでもうまく活用して頂き、安全確保へと繋いで頂くことも大事なのだと思います。そもそも局地的大雨は現時点でピンポイントでは予測できない現象で、「だいたいこんなことがありそうだな、どこかで起きるな」ということぐらいは、前の日とかその日の朝にはある程度はわかるにしても、「ここが危ない、あなたのところですよ」というところまではなかなか予想し切れないものですし、影響する範囲が非常に狭いこと、またいらっしゃる環境によってその影響がひどく違います。家の中にいれば特段問題はないのですけれども、川の中で遊んでいたらとても危ない、そういった現象ですので、まず自分が危ないところにいるのかどうか認識して下さいということを気象庁もちゃんと説明しておかないと情報をいくら出してもなかなか効果がないんじゃないか、それから、情報をどういうふうに活用するべきかということもあわせて説明しなさい、ということを一番最初に重点としてご提言頂いております。
このことについては我々も折に触れて、例えば防災気象講演会ですとかで、ある程度は言ってきたかと思いますが、そこをもう少し組織的に広く伝わるように、例えば、教育関係者の方々や地域の防災のリーダーの方にうまくお伝えして、広く伝えなさいという御助言も頂いております。 「自分の身は自分の身で守るんだ」という意識を涵養していく方法についても御提言を頂いており、私達はこれから勉強していかなければいけないと思っています。大きなところはそういったところだと思っています。

Q. 気象レーダーの5分化について期待感をお伺いしたい。
A. 積乱雲の寿命は30分から40分ぐらいです。30分から40分ぐらいで一つの現象が終わってしまいます。今は10分間隔で観測していますから、かなりひどくなった状態が10分後に画面にわッと出る。その真ん中のところがあると、だんだん積乱雲が大きくなっていきつつあるということも分かりますし、もっと激しい雨が来ることも早く分かるというメリットがあると思います。

Q. 防災にかなり役に立つと考えているということか。
A. もちろん皆様にレーダー画像を見て頂かなければなりませんが、今までよりも時間間隔が細かくなっていますから、結果的には激しい状況を少しでも早くお伝えできるようになると期待しています。

(以上)

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