長官記者会見要旨(平成18年3月17日)

会見日時等

平成18年3月17日(金) 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室

発言要旨

前回の先月下旬から日数が少ないこともあり、今回は特段に新しい話題はありませんが、3月1日に、昨年末から2月はじめの大雪を「平成18年豪雪」と命名しました。この豪雪では多くの方が亡くなられ、また、多大な物的被害なども発生しています。災害に遭遇された方々に、あらためて心からお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、復旧が一刻も早く進むことを願っております。気象庁では豪雪の命名はこれで2件目になるわけですが、今冬は雪の量が非常に多かったことに加えて、高齢化など新しい社会状況下でこれまであまりなかった形の豪雪災害が発生しており、これらを今後に教訓として残すべく命名を行ったところです。

この間、気象庁では、大雪に対してその都度、気象警報や大雪情報などを発表してきました。また、ホームページに大雪の情報を詳しくお伝えする内容を追加し、日々更新するなど取り組みを強化してきたところです。ホームページはタイムリーな情報の更新が容易なところから、このような情報提供の強化に取り組んでいきたいと考えています。この後、気温の上昇とともになだれ、融雪などによる新たな被害も心配されます。引き続き、適時適切な情報の発表に努めていきたいと考えています。

さて、この一年度の間を振り返って見ますと、「18年豪雪」以外にも、台風第14号時の各地での大雨とそれに伴う災害、関東での局地的な豪雨など、雨や風による気象災害も数多く発生しました。気象の状況をしっかり把握するとともに、的確でタイムリーな警報や情報を発表することは気象庁の最も重要な任務であると常日頃から認識しています。これに関連して、今年度は「ひまわり6号」の運用開始に加え、「ひまわり7号」の打上げが成功裏に行われ、今までにない、盤石な宇宙からの監視体制を整えることができました。また、3月にはスーパーコンピュータを世界的に高速なものへ更新し、予報業務の基盤の一段の強化も図っています。気象庁の数値予報の精度についてはここ2年間で世界のトップクラスに肉薄するほどに向上してきています。数値予報の結果は様々に加工され、これに予報官が判断を加えて最終的な予報を作成することから、最もその基礎となる情報の精度向上は今後の予報の改善に大きく貢献するものと考えています。

一方、地震の関係では、幸いこのところ大きな被害を伴うような強い地震は発生していませんが、今年度を振り返ってみますと、8月の宮城県沖の地震、その前の7月下旬に東京で震度5強を観測した地震などにより、多くの被害が発生しました。主要な活断層や海溝型地震など、長期的な発生確率で表現されている地震の想定域が多々ありますが、一方で日本の場合は、いつ、どこで地震が起こっても不思議でないことを、また、常に地震への警戒をしていくべきことであると考えております。

また、昨年末より緊急地震速報の早期の情報提供を目指し、混乱のない提供方法や使い方などについて有識者の皆様に様々な角度から検討をお願いしていますが、先日、第4回検討委員会を行い、中間報告の案についてご議論いただいたところです。このあと、来月を目途にホームページにその内容を掲載し、国民の皆様の意見を伺う予定にしています。


主な質疑応答

Q 緊急地震速報を特定ユーザー向けに前倒しで運用を開始するようだが、ホームページを通じて集められた意見に応じて見直すことはあるのか。
A 先行的に提供を開始するユーザーについてはここ1~2年の間、試験的な提供の中で様々な意見を伺ってきたところであり、また、専門的な分野での活用については情報の特質なども十分ご理解頂いているところですので、基本的には先行した提供を早期に始めたいと考えているところですが、今回いただいくご意見もふまえて進めていきたいと考えています。

Q 先日、38豪雪以来の豪雪の命名をしたが、すでに基準のある地震や豪雨以外の豪雪のような他の災害についても命名の基準を設ける予定はあるのか。
A 地震や豪雨については基準を定めているところですが、今後も新しいタイプの災害が発生する可能性があることから、基準は時に応じて見直しを図る必要があり、常に社会インフラや生活環境等の変化も含めて不断に注意していくべきもの考えています。

Q 今回の大雪の命名は教訓として記憶に残す役割は果たしているが、災害の警戒を呼びかけるという観点では命名のタイミングが遅いのではないか。
A 命名のタイミングは対象とする現象の種類に依存するものであると考えています。地震については可及的速やかに命名しています。一方で、大雪のような長期緩慢災害の性格のあるケースについて教訓として命名する場合は、ある程度の期間にわたる災害の状況などみて判断する必要があると考えています。なお、大雪に対する警戒の呼びかけや状況については、気象庁ホームページ等をも含めてタイムリーに提供することを心掛けております。

Q 福岡県西方沖の地震は命名基準を超えていたはずだが、どうして命名しなかったのか。
A 命名する地震の規模としては、この地震のマグニチュードが比較的小さく、また、発生から2日過ぎた時点の全壊戸数も小規模であったこともありました。呼称についても多くの報道の中ですでに定着している感があり、一方で新潟県中越地震の経験などから復旧活動の立ち上がりも早く、また、災害復旧対策もそれなりに進んでいる中、いまの時点でも振り返って命名することは考えていません。ただし、命名の基準の運用は難しいこともあるので、今後も社会活動の変化をも含めて常に検討を続けるべきものと考えています。

Q 先日も首都圏直下型地震の被害想定が発表されるなどしているが、地震が発生後その地震の名称も含め想定の地震であるとかその関連性などの方向性を示されると住民が安心するという点でよいと考えるが。
A 昨年、東京湾で小規模な地震が連続して発生した時や、宮城県沖で発生した地震など、それぞれ首都直下型地震の前兆ではないかとか、あるいは想定されていた「宮城県沖地震」であるかなどについてみなさんのご関心も高かったと思っています。東京湾の地震については地震発生後速やかに気象庁としての見解をお知らせしました。一方宮城県沖の地震については、政府の地震調査委員会での専門家による検討を待ったところです。ご指摘のようにできるだけ早期に適切な情報をと考えていますが、場合によっては、判断に少し時間がかかる場合もあることもご理解願います。

Q 東海地震について、お気づきのことがあれば。
A 東海地震がある程度の間隔で起こるのは宿命であると考えています。現在まで、毎月判定会の先生方にデータの分析をお願いしていますが、いまの時点で顕著な異常は見られていません。


(以上)

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