気象審議会総合計画部会
議事録
第5回:平成12年1月20日

気象審議会総合計画部会 議事録

  1. 日時及び場所
    平成12年1月20日(木)14:00~17:00
    気象庁第一会議室
  2. 出席委員
    部 会 長:浅井
    委   員:石井、石田、中島、西尾、松野
    専門委員:石橋、小縣、長見、亀岡、西郷、田中、藤吉
  3. 議 題
    1. 開 会
    2. 議 事
      1. 第4回総合計画部会議事録(案)
      2. 総合計画部会中間報告(案)について
      3. 有識者による講演
        演 題:「衛星による地球観測」
        講 師:宇宙開発事業団地球観測システム本部
        地球観測推進部主任開発部員 森 山 隆 氏
      4. 気候・環境分野における課題について
      5. 今後の審議スケジュールについて
      6. その他
    3. 閉 会
  4. 議事経過の概要

1.開 会

(事務局)まだ若干の委員の先生のご出席がございませんけれども、定刻になりましたので、始めさせていただきます。

先生方には、ご多忙な中ご出席いただきまして、ありがとうございます。

本日の審議でございますが、既にご案内のとおり、17時までの3時間を予定しております。

それでは最初に、手元にございます資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元に、議事次第、本日の部会において事務局から説明予定の資料といたしまして計5-1「第4回総合計画部会議事録(案)」、計5-2が「気象審議会中間報告(案)に対する意見について(案)」、計5-3が「中間報告(案)」、計5-4「気候・環境分野の課題」、それから計5-5「今後の審議スケジュールについて」でございます。さらに、机上配付いたしましたものに「気候及び地球環境分野の業務の現状」がございます。それから気象庁関係のパンフレットが四、五部ついてございます。もう1つ、本日ご講演をいただく森山先生の資料がございます。欠けている分がございましたら、事務局までお知らせください。

本部会での議事については公開することとしております。本日、衛星による地球観測についてご講演をいただく予定にしてございますが、その内容につきましては、第4回と同様、その概要を簡潔に取りまとめたものを作成して公開することとしたいと考えておりますので、ご了解願います。

2.議 事

  1. 第4回総合計画部会議事録(案)

    (部会長)それでは、第5回総合計画部会を開かせていただきます。

    5回目になりますけれども、今回が本年の最初の会合でございます。ことしも昨年に引き続いて、どうぞ皆さん方、ご協力をよろしくお願いいたします。

    それでは、最初の議題でございますが、第4回部会議事録の取り扱いについて、事務局からお願いいたします。

    (事務局)事務局からご説明申し上げます。

    資料は計5-1でございます。この議事録につきましては、これまでの議事録と同様に、委員の先生方に事前に見ていただき、必要な修文を行ったものでございます。この部会でご承認いただければ公開したいと考えております。なお、この席でご確認するべきでしょうけれども、改めて読み直したら修正した方がいいという場合もあると思いますので、修正すべき点などございましたら、前回と同様、1週間後の1月27日(木)までに事務局までご連絡いただき、修文について部会長にご一任いただいた上で公開することといたしたいと存じますが、よろしいでしょうか。

    (部会長)いかがでしょう。よろしいでしょうか。--それでは、そういうふうに取り扱わせていただきます。

  2. 総合計画部会中間報告(案)について

    (部会長)では、議題の2番目に移らせていただきます。総合計画部会中間報告(案)を第3回のところで取りまとめたわけですが、その後、これはインターネット等を通して一般の方々からのご意見を聴取するということで意見を公募しておったところでございますが、幾つかの意見が上がっております。これについて事務局からご説明いただけますか。

    (事務局)それでは、お手元の資料計5-2に基づきましてご説明いたします。

    ただいまお話がありましたように、11月22日から12月17日まで約1カ月の間、インターネットを通じて意見公募をお願いしたところ、3件のご意見が寄せられております。意見を寄せてくださいました方は、気象業務に関連する分野に従事されている方、あるいは気象業務の経験者というような方々でございます。それで、寄せられた意見をまとめまして、審議会としてどう対応すべきかということを事務局としてまとめたものをこれからご説明します。結論としましては、今後の第21号答申に向けた調査審議の参考とさせていただきますが、今般の中間報告(案)を修正すべきものはないと考えております。

    具体的なご意見はその下に書いてあります。まず1つは、全般的な意見としまして、21号答申をどういうふうに調査審議すべきかというようなご意見でございます。最初の意見は、中間報告をまず先にやって、それから21号答申をやるというのではなくて、物の順序としては、現在の気象事業はどうあって、今後どのようにあるべきか、そのための基盤整備はどういう強化をすべきかということを議論した上で、中間報告の内容に沿った議論をすべきであるというご意見でございます。それは一面ごもっともでございますけれども、ここではいろいろ緊急性などもございまして、中間報告を先に議論いただいて、21世紀に向けた気象業務の展望については、基盤整備も含めまして今後答申に向けて調査審議を行うこととしております。

    それから次のご意見です。気象情報は高い公共性がある、一方、情報サービスとしての商業的ないろいろな価値があるという二面性があるので、そこに境界線を引くのは難しかろうということでございます。1つのご意見としては、例えば、民間企業が気象衛星を打ち上げて、その受益者、最大顧客として気象庁が関与する、そういうあり方はあり得るのではないか。そういうことをすれば予算節減が図れるのではないか、こういうご意見でございます。

    静止気象衛星といいますのは、もちろんいろいろお茶の間で親しまれているということもありますけれども、基本的な役割としましては、台風等の監視、予報といった防災的なものが中核的な役割を持っている。それから、国際協力としまして、アジア・太平洋諸国の気象機関に向けて雲画像などを提供して、我が国のみならず、それらの国の気象業務遂行上必要不可欠な役割を持っているということから、引き続き国として責任を持って行うべきではないだろうかということでございます。

    次のページに移りますけれども、予報業務の許可制度及び気象予報士制度に対するご意見です。1つのご意見として、1カ月予報の自由化をご審議いただいたわけですけれども、これに反対であるというご意見でございます。その反対の根拠としましては、外れた場合にだれが責任をとるのか、それからもう1つ、民間の予報精度をどう検証するのかということでありまして、1カ月予報だけではなくて、現在も行われております天気予報、週間予報などの一般向けの予報というのもやめて、民間は気象庁が発表する予報の解説にとどまるべきであるというご意見でございます。

    民間が予報業務を行うときの許可の要件としまして、その質を確保するために、一方では気象庁の数値予報資料などの提供を行っておりますが、他方で気象予報士制度を導入して質を確保しております。これによって、民間の気象事業の発展と同時に、一般向けの天気予報についての十分な質が確保されているということでございます。1カ月予報についても同様な措置をとれば、気象予報士の育成、研修などの措置をとることによってこれは十分であるというふうにお答えしたいと考えております。

    それから最後のご意見ですけれども、防災関係の仕事に従事している方のご意見として、もっと災害に対して突っ込んだ現象の予想ができる予報士を育成してはどうかというご意見ですけれども、これは具体的には地面現象としての地滑りとか、こういうのに対してもう少し突っ込んだことをしてはどうかということです。中間報告の内容としまして、災害に直接かかわる予想と予報の発表、これについては引き続き国が一元的に発表することが適当であるということでございます。台風、それら重大な気象条件のときに、気象予報士が重要な役割を果たすということは十分認識しておりまして、気象庁としては、引き続き解説などの活動を支援したいと考えております。

    (部会長)ありがとうございました。一般から大変貴重な幾つかの意見をいただいたわけですが、この内容を検討いたしまして中間報告(案)をまとめる段階で十分考慮されていること、あるいは今後の審議の中で考慮されるべき事柄が主ではないかと思います。したがいまして、特にこれまでにまとめた中間報告(案)をこれによって修文する必要はないのではないだろうか、そういう考え方でございますけれども、いかがでしょうか。何かご意見ございましたら、どうぞお願いします。

    (専門委員)賛成でございます。

    それから、補足になりますけれども、1週間前にアメリカ気象学会がロングビーチでありまして、そのときにも防災に関係するような話が結構出ていたんですけれども、日本はそういう点では先進国かなと。たまたま中南米の連中が20カ国ぐらいいたんですけれども、ハリケーンの予報・情報を勝手に出しているというようなことが現実にあって非常に困っているということを一生懸命問題にしていたんです。日本の例はそういうことがないと言ったら、みんな非常にうらやましがっていたということで、我々の中間報告はある意味ではその点をさらに確認して、世界的にも先端的な進め方をしているなということを感じたので、この中間報告でいいのではないかということを確認しております。

    (部会長)ありがとうございました。

    いかがでしょうか。ほかに何かご意見ございますか。よろしいですか。--それでは、そういう考え方に基づきまして、皆さん方のお手元に計5-3として中間報告(案)をお届けしてございますけれども、これは第4回までに部会委員の方々のところにお届けしてあるのと内容は同じでございます。ただ、一部体裁を整えるために、例えば、この前は気象審議会総合計画部会中間報告(案)となっておりましたが、それを気象審議会中間報告(案)にするなどの修正をしております。内容にかかわるような修正はなされておりません。先ほどのことをお認めいただきましたので、この中間報告(案)を2月3日に開かれる気象審議会の総会に私から報告したいと思っております。それでよろしいでしょうか。--どうもありがとうございました。

  3. 講演「衛星による地球観測」

    それでは、議題の3に移らせていただきます。主としてご審議いただくテーマは、気候、地球環境問題を掲げまして、これに対する将来構想についてご議論いただくことを約束しておったわけでございますが、そういうことを審議していく上でも、人工衛星による地球観測が欧米諸国のみならず日本でも近年非常に急速にこの面での世界的な貢献が著しくなっております。こういう背景を我々は十分認識した上で議論をするのが適切ではないだろうかということで、きょうは、宇宙開発事業団の中に地球観測システム本部というのがございますが、その地球観測推進部の森山隆主任においでいただきまして、最近の動向をお話しいただくということをお願いいたしました。

    森山さんは大変お忙しい中を快くお引き受けいただきまして、ご講演いただくことになっております。改めて森山さんには厚くお礼を申し上げたいと思います。

    ここで、森山さんから30分ぐらいお話をいただいて、あと10分ぐらい質疑応答ということにさせていただきたいと思っております。


    講演概要については第5回総合計画部会資料参照


  4. 気候・環境分野における課題について

    (部会長)それでは、次の議題に移らせていただきますが、4番目の議題、気候・地球環境分野の課題についての審議に移りたいと思います。これは資料計5-4をごらんいただきたいのですが、気候・地球環境問題にかかわる課題、それから将来構想、そういうものの骨子について、それと一部背景資料も含めて事務局でおまとめいただいた資料が計5-4です。それと、机の上にそういうものを考えていく上での大変有効な参考資料として幾つかの資料が用意されておりますが、そういうものを見ながら、まず30分ぐらいで事務局から資料に基づいてご説明いただく、そしてあと1時間ぐらいその内容についてご審議いただくというふうにしたいと思います。

    それでは、事務局からご説明いただけますか。

    (事務局)それでは、気候・地球環境問題の展望ということで説明させていただきます。

    お手元の計5-4の資料に基づきまして説明をいたします。

    現在、気象庁では、気候に関連いたします業務といたしまして、気候予報、これは長期予報とも以前は言っておりましたが、1カ月、3カ月、6カ月と予報を発表しております。また、異常気象などに関連がありますエルニーニョの情報、監視情報あるいは予測情報を発表しております。

    地球環境業務に関連いたしましては、地球温暖化やオゾン層に関する情報を発表しております。21世紀初頭を展望いたしますと、社会経済や環境保全に関する対策に当たりまして、これまで以上に気候・地球環境に関する情報の必要性が強まりまして、気候・地球環境業務の重要性が増大するものと見ております。こういう状況の中で、より信頼性の高い情報というのは、対策の効果と効率を高めまして、社会経済のよりよい発展に役立つものと考えられております。

    本日は、21世紀初頭の気候・地球環境業務の目標を提案させていただきます。この目標を作成するに当たりましては、この問題に関連いたしまして2年前に出されました気象審議会20号答申というものがございまして、この提言と取り組み状況の中で、現在残されております重要課題を考慮いたしました。

    それでは、1ページ目をごらんいただきたいのですが、これは本日の提案をまとめて示したものでございます。21世紀の気候・地球環境業務についての目標を紹介しております。

    まず、気候業務につきましては、気候情報の高度化を目標に掲げております。具体的な目標といたしましては、1年先までの気候予報の実現を目標にしております。現在の私どもでは6カ月までの予報を行っておりますが、1年先までの気候予報を実現することを目標に掲げております。これを実現するためにはいろいろなことが考えられますが、これには来年度から国内外の関係機関の協力のもとに始まる計画になっております高度海洋観測計画というのがございます。これはARGO計画と言っておりますが、これに参加いたしまして海洋データの飛躍的な収集を図ること、さらには、気候モデルの開発を推進することなどによりまして1年先の気候予報を実現することとしております。

    また、国際協力の推進といたしまして、アジア・太平洋地域を対象にいたしました国際的な気候センターの実現を提案しております。この地域の気象機関に気候予報支援資料を提供いたしまして、各国の気候予報、気候情報提供サービスの向上を支援する国際協力を推進することを目標に掲げております。

    次に、地球環境業務につきましては、21世紀は環境の世紀と言われておりますが、環境保全対策が強化される、特に地球温暖化の問題が最重要課題になると思われますが、このような地球環境問題への貢献を強化することを目標にしております。具体的な目標といたしましては、温室効果ガスあるいはオゾンなどの状況の変化、大気環境と言っておりますが、これらの監視あるいは解析技術を高度化いたしまして、精度の高い大気環境の監視解析情報を提供いたします全球大気監視解析センターの実現を提案しております。

    さらにもう1つの目標といたしまして、地球温暖化に関する解析予測技術を高度化いたしまして、地球温暖化情報の充実を目標に掲げております。この中で、地球温暖化等によります異常気象の変化などに関する監視情報の充実、さらには地球温暖化予測モデルの高度化によります日本地域の温暖化予測情報の提供を実現することといたしております。

    以上、本日の提案の概要を説明いたしました。

    それでは、個々の目標の説明に入らせていただきます。

    2ページ目をお開きください。

    個々の目標の説明に入る前に、気象審議会20号答申のレビューとフォローアップということで、提言の内容と取り組み状況を説明したいと思います。左に提言の内容、それから右に取り組みの中で現在残されておる重要な課題を示しております。20号答申でございますが、これは平成9年10月に、ここにご出席の松野先生を部会長として取りまとめをいただきましたものでございますが、ご存じない方もおられますので、これは少し詳しく説明させていただきます。

    参考資料13ページをお開きください。

    気象審議会第20号答申「今後の気候情報のあり方について」ということでいろいろな提言をいただいております。現在、気候情報に対しましては、予報精度の向上、あるいは予報期間の延長、さらには予報表現の改善に対する社会的な要望が高まっておりまして、このような社会的な要望にこたえるために実施すべき方策を提言しております。

    一番上のボックスを見ていただきたいのですが、どういう提言かといいますと、気候予報の改善をまず挙げております。この中で予報精度の向上を図ることはもちろんでございますが、それに加えまして、例えば太平洋赤道域の海水温情報の拡充、これはエルニーニョ予測のことでございますが、こういうものをすべき。さらには、予報の期間を延長すべき。現在6カ月でございますが、それ以上に延長すべき。さらには、予報の表現をわかりやすくするとか、そういう提言をいただいております。

    また、予報の改善に加えまして、実況情報の充実、さらには気候情報の普及の促進、あるいは地球温暖化予測情報の高度化、国際協力の推進等の提言をしていただいております。このような改善によりまして気候情報が高度化することによりまして、防災、農業、あるいは地球温暖化防止対策、その他産業活動の効率的な運営に役立てることとしております。こういう改善を実現するためには技術開発が必要となりますが、特にそこに書いてございますように、気候予測技術の高度化を提言しております。その中で、モデルの開発、データ収集の強化、解析技術の高度化、あるいは関係機関との協力によるモデルの実用化の促進を提言しております。このような取り組みを通しまして、気候情報が有効に利用される社会の実現を目指すということで、21世紀初頭の気候情報のあり方についてのまとめをしております。

    それでは、2ページに戻っていただきたいと思いますが、提言を実現するために現在まで取り組みを2年間行ってまいりまして、まだ残されている重要課題がございます。気候情報の高度化に関しましては、そこにございますように、さらに予報の精度を向上させること、期間の延長をすること、それから海洋観測データ収集の強化などが残されております。それから、地球環境問題への貢献につきましては、異常気象等の監視情報の充実、さらには温室効果ガスの監視の充実と状況を把握する解析センター等の世界センター機能の強化、あるいは日本地域の温暖化予測情報の提供などが残されております。

    3ページをごらんいただきたいと思います。

    このようなことから、21世紀の気候・地球環境業務の目標を提案しております。まず、気候業務につきましては、先ほど言いましたように、気候情報の高度化を目標といたしまして、具体的には気候モデルによる予報の精度の向上を図りまして、また国内外の関係機関との協力を推進しながら、具体的には1年先までの気候予報を実現する目標、それからアジア太平洋気候センターを実現する、この2つの目標を掲げております。

    次に、地球環境業務につきましては、地球環境問題への貢献を目標としておりまして、具体的にはそこにございますように、全球大気監視解析センターの実現、さらには地球温暖化の情報の充実ということで、異常気象等の監視情報の充実と日本地域の温暖化予測情報の提供というものを実現することを目標に掲げております。この4つの目標を掲げております。

    それぞれの目標について説明いたします。

    4ページをごらんいただきたいと思います。

    1年先までの気候予報の実現を目標といたしておりますが、この目標を実現するためには、気候モデルの高度化、あるいは先ほど申しました海洋の観測、ARGO計画の推進、あるいは衛星データの利用技術の高度化などが必要になります。

    まず、気候モデルの高度化について説明いたします。気候モデルというのは気候のいろいろな変動を物理メカニズムに基づきまして表現するモデルのことでございますが、これを用いて気候予報を行うわけですけれども、気候モデルというものは大気のモデルと海洋のモデル、それから陸面のモデルから成っております。気候モデルをよくするためには、それぞれの構成要素でありますそれぞれのモデルをよくする必要があります。それから、気候モデルの計算をする場合に必要な初期値、これは実況データでございますが、こういうものの充実も必要になります。

    それから、ARGO計画につきましては、このARGO計画によりまして海洋内部のデータが飛躍的に収集強化できるということから、物理メカニズムの解明が図られまして、海洋モデルの高度化を図ることができます。また同時に、海洋の実況データの飛躍的な充実を図ることができる。それからまた、衛星データの利用技術を高度化することによりまして、大気や陸面モデルの高度化を図ることができますし、大気や陸面の実況データの充実を図ることができます。これは先ほどNASDAの森山先生からお話がありまして、衛星データにはいろいろなデータがございまして、例えば陸面のモデルでございますと、土壌水分の状況であるとか、あるいは積雪の状況であるとか、そういう状況を把握する、そういうデータが必要になるわけです。衛星データを利用しまして気候にかかわる情報が得られるように利用の技術を高度化して役立てるということでございます。このような各種モデル、それからその他観測のデータを駆使いたしまして、1年先までの気候予報を実現することとしております。

    次に5ページをごらんいただきたいと思います。

    これは先ほどお話ししましたARGO計画でございますが、昨年の、日米両国の合意を受けまして、我が国で気象庁、科学技術庁等の関係機関の協力によりましてミレニアムプロジェクトということで、「地球規模の高度海洋監視システムによる気候予知」ということを来年度から開始する予定になっております。これはどういう計画かと申しますと、約3000個の中層フロート、これはセンサーがついた浮き沈みする浮きでございますが、これを全球の海洋にくまなく展開いたしまして、水深2000メートルから海面までの間を浮きつ沈みつしながら2週間ごとに海洋のデータを衛星を経由して送ってきまして、データを収集するというような画期的な観測計画でございます。

    6ページをごらんください。

    このようなミレニアムプロジェクトによるARGO計画を推進いたしまして、海洋データの飛躍的な収集強化を図ります。海洋の場合には陸上と違いましてデータが非常に少ないということで、こういう計画によって海洋のこれまでにないところのデータの収集強化が図れるということでございます。このデータを集めまして解析処理をする。さらに、海洋モデルの高度化に取り組みまして、データを同化解析処理しまして、海洋の内部の3次元的な分布を求め、データベースをつくる。このような取り組みを中心としまして、さらにこれに加えて大気や陸面のデータの収集の充実を図ります。また、これらのモデルの高度化に取り組みまして、総合的に取り組みを推進することによりまして気候予報の精度を向上させることを考えております。このような取り組みは気象庁だけでできることではございませんので、国内外の関係機関との連携協力が必要になってまいります。

    7ページをごらんいただきたいと思います。

    これは先ほど申し上げました気候モデルの開発計画でございますが、気象庁では12年度末にスーパーコンピューターを更新する計画がございまして、これによって計算能力が向上するという予定でございます。この来年度末の更新までに気候予報モデルを開発いたしまして、このモデルを用いて平成13年度からモデルによる3カ月、6カ月気候予報を実施いたしまして、予報精度を向上させることとしております。平成13年度以降も気候モデルの改良を重ねまして、3カ月、6カ月予報の精度向上を図るとともに、精度評価を行いながら1年先までの気候予報を実現することとしております。

    この気候予報モデルの開発と並行いたしまして、ARGO計画による海洋の実況データ、あるいは衛星などを用いました大気や陸面の実況データの充実を図るための解析技術の高度化に努めたいと考えております。

    アジア太平洋気候センターの実現につきましては、これは3カ月、6カ月気候予報のための気候予報モデルの運用が開始されます平成13年度以降に、国際的な進捗状況を見ながら実現していくこととしております。

    次に、8ページをごらんいただきたいと思います。

    国際協力の推進といたしましてアジア太平洋気候センターの実現を提案しております。世界気象機関では、1994年から世界的に気候に関する予測・監視情報サービスを行うことを目指しました気候情報・予測サービス計画、CLIPS計画と言っておりますが、これを推進しております。現在、この計画の国際的な技術基盤を検討する作業が開始されたところでございます。この中で地域の気候センターの計画がございまして、それに対してはアジア・太平洋地域の役割として気象庁が期待されております。このセンターでは、気候予報モデルを運用いたしまして、この地域の各国に予報支援資料や技術支援を行いながら、各国が行う気候予報・情報サービスの向上に貢献する国際協力を推進することといたしております。

    次に、9ページをごらんください。

    地球環境問題への貢献といたしまして、大気環境の監視あるいは解析情報を提供する国際的な全球大気監視解析センターの実現を提案しております。世界気象機関では、1989年に温室効果ガス等の変動、大気環境を全球的に観測いたします全球大気監視計画というものを始めておりまして、現在も続いておりますが、気象庁はこの計画に参加いたしまして、そこの左にありますように、温室効果ガスのデータを世界的に管理する温室効果ガス世界資料センターを運営しております。さらにその下にございますデータの品質管理を行います品質保証科学センターを運営しておりまして、精度の高いデータを収集処理し、世界に提供しております。これらのデータは地球温暖化にかかわるいろいろな行政、研究の分野で利用されております。

    このようなデータセンターに加えまして、現在、大気環境を監視解析いたしまして、データだけではなくて精度の高い大気環境の監視解析情報を提供する全球大気監視解析センターの実現が求められております。監視解析情報というのは世界各国の関係機関で使われまして、地球温暖化に関する科学的評価に利用されまして、最終的には地球温暖化防止条約等の効果的な推進に役立つものと期待されております。

    次に、10ページでございます。

    「異常気象等の監視情報の充実」を目標に掲げております。地球温暖化が進みますといろいろな気候の変化が起こり、それに伴って異常気象も変化する。さらには自然の気候変動に伴う異常気象がありまして、これによっていろいろな気象災害が発生するということでございます。したがいまして、このような異常気象についての監視能力を高めまして、また、異常気象の発生を素早く解析、分析、キャッチいたしまして、国の内外の関係機関に情報提供する体制を実現することを目指しております。このような情報は、異常気象が起こったときに、我が国では、海外の緊急援助隊等で援助をいたしますが、そういうときの情報にも使われますし、あるいは世界のいろいろな農業の被害等による食糧需給変化に対する我が国の政策というようなところにもこの情報が利用されます。

    次に、11ページをごらんいただきたいと思います。

    「地球温暖化予測モデルの高度化による日本地域の温暖化予測情報の提供」でございます。これを目標に掲げております。地球温暖化防止対策を進める上では、地球温暖化に関する科学的な知見というのは欠かせません。地球規模の温暖化予測情報だけではなくて、最近は日本地域の温暖化を精度よく予測する情報が必要になってきております。地球規模の地球温暖化予測情報というのは国際的には地球温暖化防止条約の必要性に科学的な根拠を与えるものといたしまして、その成立に貢献してまいりました。

    今後は各国で具体的な温暖化防止対策が進められることになっておりまして、そのための地域規模の温暖化予測情報が求められるものと見ております。国際関係機関と協力いたしまして、温暖化予測モデルの高度化をさらに推進いたしまして、地域の温暖化予測情報を作成いたしまして提供することを目指すこととしております。

    そこにございますように、今までは地球規模の温暖化、地球全体で温度がどう変わる、あるいは海面水位がどう変わるかという情報を出しておりましたが、今後は我々の身の回りの温暖化によるいろいろな気候変化の情報が求められております。上にございますが、日本海側の降雪がどのように変わるか、あるいは日本付近の海面水位がどのように変わるか、こういうような地域規模の温暖化の予測情報の提供が求められておりまして、これに対して今後提供していきたいというふうに考えております。

    12ページをごらんいただきたいと思います。

    「地球温暖化予測モデルの開発」の計画でございます。地球規模の温暖化予測モデルにつきましては既に平成7年度に開発が一応終わりまして、それ以後、地球規模の100年間程度にわたるいろいろな気候の変化、例えば温度がどのように変わるか、あるいは降水量がどのように変わるかという情報を出しております。平成7年度以後は精度の向上を図るために改良を続けておりまして、改良の都度、精度の高い地球温暖化予測情報を公表しております。日本周辺の地域の温暖化を予測する地域温暖化予測モデルの開発につきましては現在開発中でございまして、来年度に開発を終える計画でおります。その後、日本地域の温暖化予測結果を公表することとしております。

    いずれのモデルも精度をよくするために改良が必要でありまして、改良を続けることといたしております。それから、将来的にはモデルが非常に細かいところまで表現できることになりますので、高解像度のモデル、すなわち1つのモデルになりまして、これを使いまして地球規模あるいは地域規模の温暖化予測を行うこととしております。これらの温暖化予測情報は国際関係機関あるいは国、地方公共団体、民間での広範な地球温暖化防止などの対策に利用されるということが期待されております。

    以上、それぞれ21世紀の目標の説明をいたしました。関連する参考資料としまして13ページから20ページまで資料を添付してございまして、13、14ページは気象審議会20号答申とその取り組み状況を詳しく整理したものでございます。

    15ページは、地球環境問題、特に大気環境の問題に関するいろいろな社会的な要請、気象庁の取り組み状況、残された課題でございます。

    16ページは、気候情報の流れを示しておりまして、情報提供に至るいろいろな作業を流れ図で示してございます。

    17ページは、季節予報の種類と対応ということで、気象庁が行っております気候予報の種類と内容を示してございます。

    18ページは、季節予報の現状と将来計画ということで、気候予報に必要な気候モデルの開発計画とモデルの詳細を示してございます。

    19ページは、季節予報に関する諸外国の現状を示してございます。

    20ページは、アメリカにおける最近の1年先までの季節予報の実例を示してございます。

    (部会長)ありがとうございました。

    気候予測の問題、気候モデルを高度化することによって、気候予測を実現しようという分野の問題と、それから気象業務にかかわる地球環境問題、両者は一応分けてお話しいただきましたけれども、相互に依存し合うというよりは、むしろほとんど実際上は一体となってやられるべき性格の業務ではないかと思うんですけれども、窓口として2つに分けてやるということもあるわけですが、一体として考えていった方がいいであろうということで、これを一くくりにしまして、気候と地球環境問題についての現状、将来構想をお話しいただいたわけです。

    これについてこれから議論していくわけですが、今のご説明で、何かわかりにくかったところ、聞き漏らしたところがございましたら、どうぞ。よろしいですか。--それでは、早速審議に入りたいと思います。どなたか口火を切られる方はいらっしゃいませんか。

    (委員)それでは、早速ですが、先ほど事務局からご説明がありましたときに、20号答申で、気候情報の今後のあり方のまとめを、97年の秋だったと思いますが、担当しましたことから、ちょっとコメントをさせていただきたいと思います。

    97年にまとめましたときのポイントとして、1つは、もう既にある程度実施していて実績のある1カ月予報の問題と、もう1つはエルニーニョの予測、その2つが大きな実施すべきことと。1カ月予報はもちろんそうですし、それから、エルニーニョも既に試験的に行われていて、これは世界的にどこでも行われておりましたが、気象庁においてもそれが行われていて、ある程度のスキルがあると。何もやらないよりも明らかに数値実験によってある程度予測の可能性があることがわかっていたので、せっかくそういうことがあるんだから、世の中の役に立つように発表すべきであろう、業務として行うべきであろうというのがそのポイントだったと思います。

    今の赤道域海水温というのは、エルニーニョが起こると冷夏というのがそのころからの統計的、経験的な関係でしたし、現在もまだそんなに長い期間としては崩れていないと思いますが、どうもそのころから必ずしも当たらなくて、97年は冷夏と予測されたにもかかわらず大変暑くて、私なんかもよくわからなかったんです。それで世間一般からは、エルニーニョといっても別に長期予報と結びつかないんじゃないか。実際、中高緯度の影響を受ける日本などではそれ以外の要因もたくさんあるから、海水温の予測が即気候の予測には結びつかないけれども、これは1つの、少なくともその場所にとっては、もちろん97、98エルニーニョのときにはインドネシアをはじめ、海水温の変化が激しいすぐ近くの地域は全部すごい影響があったわけですから、その意味で、何も日本の気候に影響がなくても意味があり、この点では正しかったと思います。そういうような議論があって、それ以外の要素もいろいろあったと思いますが、とにかく赤道域太平洋の水温予測が始まったというふうに理解しています。

    そのとき、いろいろなことが幾つかごっちゃになりましたが、少なくともそれについてはスキルがあったからそれをするということで、もう1つは、水温予測を直接気候予測に結びつけなかったのは、それが必ずしも十分な精度でないことと、それ以外の要因がたくさんあるということがあったと思います。そして、そのときの宿題として、より長期の、今回話題になっているような問題についての1年ぐらい先、それはかなり広いユーザーの方を含めたようなワーキンググループといいますか、部会で議論したときに、例えば農業とかいうセクターでは、1年ぐらいリードタイムがある方が実際の役に立つというようなお話がありましたし、そういう長いのが可能かどうかというと、その段階ではまだ不十分だということで、表現はよく覚えていないんですが、しかし、とにかくなるべく早く実現すると。

    エルニーニョはなるべく早く、そして、もう少し何年か後というような含みがあったと思いますが、数値予報というか、モデルに基づいた予測可能性があったら実行するというような感じのことを言っていたと思います。

    というようなバックグラウンドで考えますと、今回こういうことで出てきまして、今回と前回の気候情報の高度化とどこが違うか。今回は21世紀に向けての気象業務ということで、特別具体的にこれにポイントを絞って、これをいついつまでに実行するというものではないというふうに理解しています。今回は必ずしも、それに関して試験的に実行してみて可能性があるから、今後何年間のうちにそれを実行するんだという提案ではないというふうにまず理解していいかということです。

    それをもう1回言いますと、実際まだ今まで試みられていないし、それから、そもそも理論的というか、学問的な根拠として、1年前からの気候の予測ですね。エルニーニョの場合には、エルニーニョ現象というのは限定されますので、今は丸々発生する1年ぐらい前からできるかどうか依然として議論の多いところではありますが、かなり近づいてきていて、その特定の現象についてはかなり準周期的というか、繰り返し的な現象ですから、1年前でも可能性はあるかと思うので、それについてある程度の見通しを言及することは可能ですが、気候の予測一般についてはっきりした根拠あるいは実績というか、見通しというのは必ずしもないのではないかと思います。

    そこで、今度はお答えになる方、もしかしたら私なりに先取りしてしまうかもしれませんが、ここに書いてあるタイミングというのは、中層フロートのARGO計画と結びつけて書いてあります。そこで自分なりに考えてみますと、そもそも気候の問題について、部会長初めWCRPをずっとここ十何年世界じゅうでやってきたわけですが、そこでのものの考え方は、気候というのは非常に長期的な大気の状態の変化で、それを支配しているのは大気ばかりでなくて、海と地表面の状態とかそういうようなものの全体、気候といっても全体の変動である。したがって、それらを支配する法則をモデル化して、それを予測することができれば、それは可能性があるという議論だと思います、基本的な考え方は。

    それには観測が必要なわけですが、1つは、海について、エルニーニョに関しては、エルニーニョというのは非常に大きな激しい現象ですので、観測は今までもあったし、特に最近は熱帯のTropicalAtmosphere Ocean Array:TAOアレイという非常にすばらしい観測網が赤道域に展開されて、南北緯度7.5度より赤道寄りの海水温は数百メートル下まで常時はかられている。そういう状況のもとで予測可能性は非常に議論されて、実際になった。

    一方、それ以外の海については、特にサブサーフェス、表面水温はありますが、深いところの海水温は観測できなかった。少なくとも連続的に観測はできなかった。いろいろな船に沿っての幾つかの観測はあったけれども、常時観測網はなかった。ARGOによっていよいよそれが実現する可能性がある。実現する可能性というか、それを実現するのがARGOの目的ですから、それができると。

    一方、陸地面等については、前からいろいろ議論があったわけですが、きょうお話がありましたように、土壌水分とか積雪の状態とか、これはかなりの部分が衛星観測によって可能であるということは我々もある程度知っていますし、WCRPでもそういう観点から実行してきた。そこで、衛星でははかれない海の内部の状況について、ARGOによって非常に広範囲に、赤道域に限らず、中高緯度も、あるいは今まで赤道でも太平洋だけだったのがインド洋海域にも、全世界、海の中の温度や塩分がはかれるようになる。それで初めて全気候システムの観測網が一応完成するので、それによって物理的なモデルによる予測の可能性が、少なくともその前提条件が満たされてくることになった。

    そこで、かなりの時間のスパンをとって、本当に物理的な長期予測を目標としていろいろな研究とか観測をコーディネートして実行していこう。そして、それが可能性が出てきたらその段階で業務として実行しよう、そういう計画というふうに私は考えたい。したがって、前のように、既に何かある程度あって、それはもうこれからルーチンにできますという話ではなくて、ある種の原理的な可能性に基づく前提条件が満たされることになったので、1年予報するという目標を立てて、これから21世紀の初頭に頑張りますよと、これはそういう種類の提案というか、計画であるというふうに考えたいと思うんですが、いかがでしょうか。


    (部会長)ありがとうございました。大変うまく口火を切っていただいたので、私なりにもう少しそれを敷衍して申し上げますと、二、三十年を振り返るわけですが、1960年代の後半から1970年代にかけて、気象の世界では短期天気予報、それの精度を向上することと、それから予報期間をどれぐらい延長できるか、つまり、二、三日から1週間あるいは10日ぐらいまで、高い精度でどの程度予報期間を延長できるか。そのために何をするかということで、一方では地球大気の観測計画と、一方では数値予報モデルを開発するためのもろもろの研究、その両者を一体として10年間ぐらいにわたって進めてきたわけですね。

    観測計画というのは、5つの静止衛星と2、3個の極軌道衛星を核にして、地上、高層の現地気象観測網を密にすることによって、大気のグローバルな観測網を整備充実するというWWW:WorldWeather Watch、世界気象監視計画が一方であり、そして他方でGARP:Global Atmospheric ResearchProgram、地球大気開発計画と呼んでおりますけれども、そういう大気モデルを改良するためのもろもろの研究を同時並行的にやっていく。それが1970年代に行われたことによって、今日の短期の天気予報の精度はぐんと向上しましたし、その予報期間の延長も可能になったわけですね。

    その流れをさらに発展させるということで、先ほどお話のあった、1980年代に入ってから、今度はWorld Climate ResearchProgramme、世界気候研究計画が行われつつあるわけです。気候の問題になりますと、大気そのものの観測研究もさることながら、それ以上に大気を取り囲んでいる下の海洋であるとか、陸地面の性状とか、そういうものがどうなっているかということを知ることの方が、むしろ大気そのものよりは重要になってくる。数カ月あるいは1年以上のタイムスケールになってきますと、大気の方は記憶力が乏しいものですから、もう1年前のことは覚えていないわけです。むしろバウンダリーコンディションとしての海洋であるとか、陸地表面の状態に大気がどういうふうにレスポンスするか、そういうことになるので、むしろ海洋の研究、あるいは陸地面がどうなっているかということを子細に知る、そちらの方にかなりウエートが置かれなければいけない。そういうための観測計画、研究計画を同時並行的にこれからやっていかなきゃいけないだろう。

    それで、海洋の観測計画としてARGO計画が大変有力な、大変重要な研究計画。もちろん衛星観測を抜きにして考えるわけにいかないんですが、そういうことが背景にあって、それで気象庁としては1つ夢を持とう。10年後には1年ぐらい先までの気候の予報を実現させる--実現させると言ってもいろいろな精度がありますから、そういう夢を持って、それに向かって進んでいこうということで、こういう構想を立てられていると思います。

    だから、気候の研究のところでは、一方では気候モデル、この気候モデルというのは、大気だけではなくて、大気、海洋、陸面から成る気候システムのモデルを開発、改良していくということと、それに対応する気候観測網を確立していこう。その両面をこの気候情報の高度化というところでは考えられている。

    それと同時に、今度は国際的にどういうふうに貢献していくかという行き方の目玉の1つとして、こういう国際的な気候センターをつくって、少なくともアジア・太平洋地域ではリーダーシップをとって、そしてそれが世界的なグローバルなシステムの1つの核として将来発展していくようにしようというのがこの気候情報の高度化の中心ではないかと思うんですね。

    ちょっと時間を使いましたけれども、そういうことが考えられるということで、皆さん方のご意見を承りたい。どうぞ率直なご意見をいただければ幸いです。

    (専門委員)本日のテーマはきょう結論を出す問題なんですか。継続審議の問題であるのか、きょうある程度結論を出して、2月3日の気象審議会に報告するのですか。

    (部会長)2月3日の気象審議会に対しては、先ほど申し上げました中間報告をするだけで、このテーマの審議はこれからまだ続けるわけです。そして、6月ごろをめどに取りまとめなさいということが審議会から出されているわけです。だから、6月ごろまでこういう審議は続けるつもりです。しかし、6月には答申をまとめる作業がありますので、実質的な議論は4月か5月ごろまでということになると思います。

    (専門委員)それで、先ほど松野先生、それから浅井先生も言われたのですが、これを見ると、非常に短期的に数年のうちに、あたかも1年先まで予測が相当できるような印象を受けます。温暖化についても今問題になっていることが、ちょっとやそっとでクリアできる問題ではないだろうと思います。 そういう難しい問題を前にして、四、五年のうちに何とかするというのは--それに向かって努力するというのはわかるんですけれども、これは数年ですから本当に短期的な展望ですよね。もう少し中期的にどういうことを考えていて、その中にこれが位置づけられると、誤解はなくなると思います。

    (部会長)どうもありがとうございました。

    全体の課題は21世紀を展望した気象業務のあり方なんですけれども、実際上は21世紀の初頭10年ぐらいをターゲットにして、10年ぐらいの範囲で考えるということなんですが、専門委員の今おっしゃった中期というのはどれぐらいのタイムスパンをお考えか。

    (専門委員)中期というと10年以上ですね。というのは、21世紀になって、ずうっとこれは問題であり続けると思うんですよ。そうすると、こんな景気のいいことを成果が期待できない今の段階で言うのは、将来の気象庁の足を引っ張らないか心配です。我々も何かプロジェクトをつくるときに、一番大きな問題を持ってきてぼんと据えて、あたかもそれができるようにやるんですけれども、その期間やってみたら問題が明らかになったぐらいで、次々にだんだんスケールダウンした研究テーマが出てくる。逆にボトムアップ的につくっていった方が戦略的に良いのではないかという気がします。

    (専門委員)私は非常に楽天的なので、やっちゃおうじゃないかというぐらいの気持ちを持ちたいんですね。ただし、それを進めるときに、中間報告のときには、でき上がってきたものはこれでいいんですけれども、今回のも、また20号答申のも見させていただいて、それから皆さんの資料ですと16ページだろうと思うんですけれども、気候情報の流れというところで、処理とか、解析とか、予測とかいうのは大学とか研究機関との連携になって、結局、民間のエネルギーというのは情報提供のところに来る。これは私は前回のところでもさんざん指摘させていただいたと思うんですけれども、例えばADEOSの話を聞いて、グランドツルースだとか、実際に水温を確実に押さえたいというと、例えば民間で私どもの会社の例でいうと、世界の2000隻ぐらいの船のデータを毎日デーリーで持っているわけです。あの辺のデータだってあるわけですね、TRMMのところだって。ですから、我々だってばんばん積極的にグランドツルースに近いようなデータを出して一緒になってやっていけば、10年なんて言わないで、5年でできるんじゃないのか。あるいは5年じゃなくて、2.5年でできるんじゃないかということを本音で考える。ですから、例えば20億のスーパーコンピューターでなければ数値予測もできなかったという時代はほんのこの間までだったじゃないですか。

    つまり、10年ぐらい先のところでは我々が数値予報のシステムをやろうと思ったら、20億の金を持ってこなきゃできなかったんですが、今1億でできる時代が来ちゃった。ですから、データを集めるネットワークだってインターネットがある。それから、民間というのも、実は私は森山さんにちょっとお願いがあります、例えばいろいろな観測のデータ、かなり貴重なものがある。ところが、実際にはそれを民間が入手しようとすると、コマーシャルというキーワードをつけて何かすごいお金を払わないとできない。ところが、研究のところは、それはいいと言っている。じゃ、民間というのは研究していないのかということですね。

    だから、処理とか、解析とか、予測とかから、最後の情報を伝えるところまで、もっとオープンなやり方で21世紀的な考え方でいけば、力を合わせればできるんじゃないのか。つまり、それには新しい人間のイニシアチブとか、もっともっと参加型の発想になってやっていく、そういうポジショニングが要るんじゃないのか。

    ですから、もっと、要するに日本がイニシアチブをとる。例えば気候センターといっても、気候センターなんて、中国語で言う何とか中心ではもうだめなんじゃないのか。ずばり今回のお話をいろいろ聞いていて一番感じたことは、21世紀の気象業務というのは何かといったら、1つはウエザーサービスというか、まさに今の気象業務というところだと思うんですけれども、もう1つは、気象庁と全く同じぐらいの気持ちで気候庁をつくる。その気象庁の運営と気候庁の運営というのは、コンピューターでいうと、LINUXとか、もっといろいろな人間が幾らでも入ってこられるような仕掛けをつくって、そして中心的なリーダーシップを気象庁がとっていくというやり方でいけば、もっといろいろな省庁を横断的に巻き込んで、21世紀的な物事の考え方、やり方でやっていけるような気がする。だから、余り悲観的になる理由は全然ない。むしろ情報の流通にしても、インターネットという爆発的に低コストで瞬時にデータをやりとりするシステムもできたし、計算するコンピューターそのもののハードウエアはばかみたいに安くなっているわけで、毎月3%ずつコストが下がって、パワーは3%上がっているというようなテクノロジーを使わないわけがない。モデルというのはやっぱりみんなで知恵を使わなきゃいけない世界だ。

    というようなことを考えたときに、私はぜひもう少し楽観的に物事が考えられるようなフレームワークというか、物事の進め方を21世紀的な、もっと自立しながら、ネットワークをいかにうまくつくっていくかという形に気象庁にぜひイニシアチブをとっていただきたい。そういうような21世紀の気象業務をこそビジョンとして立ち上げていただきたいという気がしてなりません。

    (委員)大変大きな流れと非常に前向きな議論、全体的な議論の中で、私がこれからお聞きしたり確かめるようなことは的はずれで、この議論に入る前にお聞きすべきことだったかもしれませんが、それを承知でこういう大きな流れの議論をする前に確かめておきたいことが少しあります。

    先ほどの説明で11ページとか12ページに関連するのですが、「検証された全球領域モデルを基礎に地球温暖化予測モデルの高度化」と書かれています。ここの検証されたというのはこれからそういうモデルをつくるのかと思いましたら、12ページの説明で、平成7年に地球規模のモデルは終了したとおっしゃって、現在はそれを改良しながら用いているというようなご説明をなさいました。地球規模の地球温暖化予測というのは多分長期にわたってのモデルだと思うんですが、本当にそういうものができて、それが検証されたのですか。つまり平成7年にモデルができて、そのモデルを用いて平成11年の予測をしたら、ちゃんと予測できたということですか。そのモデルが本当に検証されたというのはどういうことか、私にはそこがよくわからないのです。

    もう1つ、改良と言った場合に、それはイニシアルコンディションをどんどん変えながらシミュレーションするということか、ソフトそのものを改良していくというのかどうなんでしょうか。私は、そういうところをもっと押さえていって今の大きな流れに向かえば非常に期待できる結果になると思うのですが、そういうところを抜きにして、いろいろな方向、発展的なものを並べたときに、足元が崩れないんでしょうかというのをお聞きしたいんです。

    全体的な気候モデルがまだきちんとしていないときに、11ページの地図にあるような地域について、温暖化ですからかなり長期にわたってのモデルだと思うんですが、それぞれ長期的予測をしていくというのは実際には非常に難しいと思うんです。難しいからやらないんじゃなくて、もちろん挑戦すべきことですし、しなくてはいけないと思うんですが、今そこの基本的なところで楽観論に立ってしまうと問題があるのではないでしょうか--現在やっている方は本当は楽観していないと思うんですが、検証されてしまったように言うと、実情を知らない一般の人は、本当に短期間で地域毎の長期予測が一気にできるのではないかと思ってしまいます。そうではないんじゃないでしょうか、どうなんでしょうかというのをお聞きしたいんです。

    (事務局)それでは、ただいまのご質問について、これがどういうふうな意味で書いているかということをご説明したいと思います。

    11ページに書いてあります、「検証されたモデルを基礎に」の意味ですが、これまで地球温暖化予測、これは世界各国の研究機関で、CO2が2倍になったときにどういうふうな気候変化が考えられるかということで研究されておりますが、そういったときに使っている気候モデルは、例えばそのモデルを使って数日先の天気予報をやり、あるいは1カ月予報をやり、果たしてそれがちゃんと予報できるモデルかどうかというふうなことの検証は必ずしもできていないモデルでやっていた。

    これから温暖化予測の精度を上げていく1つのステップとして、温暖化予測に使う気候モデルを、短期からここで考えます季節ぐらいの期間の予報に使って、そのモデルがどの程度の成績を上げるのかをきちんと調べて、そういうモデルで温暖化予測をやろうと考えている。季節予報から一気に100年先までいくのはある意味で非常に無謀かと思いますが、現在その間を埋めるものとしてエルニーニョの予報がどの程度できるかという検証がある。さらにその先のところとして10年から数十年変動についても検証をやりたいわけですが、その検証はいつできるか不明。これはARGO計画の成功ともかかわるような問題であり当面気象庁としては短期から季節予報程度、さらにはエルニーニョ予報、そういったところへの応用で、どの程度の評価が下せるモデルかということを見きわめた上で、そういうモデルをベースにした気候モデルを用いた温暖化予測をやっていきたい。

    ここで書いております言葉は以上のような意味で書いておりましす。先ほど説明の中で平成7年度にモデルができたと言いましたか、これは、一応温暖化予測に使う気候モデルができたということで完成したということではありません。このようにご理解いただきたいと思います。

    (事務局)各先生のお話、要素研究について分析がないではないか。今課題がたくさんあって、必ずしもそれが実現できない、できる保証はどこにあるか。端的に言うと、こういうご質問だと思うんですが、私ども短期予報の世界で持っております全球ルーチンモデルにしても、あるいは領域モデルにしても、ある一定の仮説を置かざるを得ない。物理過程をすべて解明しているわけではございませんで、仮説を立てながら、なおかつ最も最近の知見を、具体的に物理過程が明確になったところで、またそれを置きかえていく。そういう意味で、モデル開発には完成というのはありません。モデルはどんどん高度化させなきゃいけないと気象庁では考えております。

    平成7年に地球環境モデルは、プロトタイプあるいは、プリミティブモデルと言ってもいいかもしれません。また、気象庁としては一応エルニーニョの予測とかそういう形で、ある程度の実用段階とは言いませんが、実用に向かってのモデルとしての位置づけはあり得るのかなという感じはしております。

    それと同時に、平成16年度以降の1年先までの気候予報のモデル開発という非常に大きな目標を掲げた上で、何を気象庁がやらなければならないかというと、まさにオールジャパンの取り組みでないといけないわけでございます。気象庁としてはモデル開発戦略を、この審議会のご答申のご検討、ご審議をいただく中で、そこを大学の関係機関あるいはほかの関係機関との役割分担を明確にした上で、目標に向かって、要素技術についてそれぞれの機関のご協力を得たい、それから、オールジャパンのモデルとは一体どんなものかというイメージもつくっていきたいと考えているところであります。

    行政需要から申しますと、気候モデルにより1年先までの気候予報の開始というのは国民の期待が非常に強いということから、我が国の優秀な科学者の結集を図っていきたいという思いでありまして、気象庁だけではできないのは確かでございまして、国民の期待にこたえるべく、夢のある目標を気象庁は取り組むべきであるとこの審議会で言っていただければ、私どもとしてはその激励のもとに、関係機関あるいは民間も含めて、オールジャパンとしてこれの実現に10年かけて何とか取り組みたいと考えています。

    この10年先に100%精度の高い気候予報ができるかというと、それはなかなか技術的には難しいと思います。しかしながら、使いやすい情報を生む可能性は否定できないと思うんですね。国民のために使いやすい情報を、予報というのか、アウトルック例えば今年の夏はどういう天候の出現度が高いとか、そういうことでも出し得れば、我が国の経済社会にとって非常に重要ではないかと思っております。先生方から言われるように、要素技術についての不確定性は非常に強いんですが、ご激励いただければ、気象庁としては何としてでも取り組んでみたいというふうに思っているところでございます。

    (専門委員)当然そういうことだと思います。私、言っているのは表現の問題で、例えば平成15年とか、数年先にすごいドラスチックに何かされるように見えますよね、この絵はそういうふうに書いてある。そういうのではなくて、今言われたように終わりがない。終わりがなくても収束すると思うんです。いずれ21世紀の間に気候モデル等もあらゆる努力をやってこの程度までと、これ以上いくのは大変だというところは来る。それがいつ来るかわかりませんけれども、早くて20年、30年先じゃないでしょうか。そうすると、そういう長期的な大事業を気象庁はやっているんだ。そういうことであれば、例えば気象庁の第1世代の気候モデルは既にある。第2世代とか、そういうようにして書いてあると非常に理解が得やすい。

    (専門委員)オールジャパンのご答弁があって、私、質問しようかと思っていたことでしたので、応援演説いたします。

    行政改革ということで、中間報告の背景にも、気象庁のやるべき範囲のような、余り行政が出しゃばらないような範囲の書きぶりになっていましたけれども、我々の庶民的な立場からいえば、行政改革というのは何もそれだけではなくて、他省庁とのコミュニケーションをよくする。要するに縦割り行政を崩して、本当に使いやすい行政になってもらうことが非常に重要なわけですね。今、気象関係でさえ、たくさんの行政がいろいろの角度でかかわっているわけですから、それぞれがどういう能力を持って、どういう需要を持ってやっているのかということとか、研究機関だとか、民間の組織も、例えば商社なんかもありますし、いろいろなところが資料として欲しがっていることとか、みずから研究していることがたくさんあると思うんですね。

    間に合えば、ぜひこの答申の背景にそういう資料をつけていただき、どういうことをそれぞれやっているか。ここに国際的なセンターづくりの話は出ているんですけれども、どちらかといえば、日本の中でまずそういうことがされて、お互いの、今いろいろな科学技術が進んでおりますから、そういうものを駆使して何がやれるのかということを、裏づけとしてまずつくっていただく必要があるのではないか。そうすると、もっと真実味のある、どのぐらいの期間で到達できるかというふうなのもだんだん煮詰まっていくのではないかと思うんです。気象庁の範囲だけで考えているとやっぱり限界がある。もっとその膨らまし方が、国内的にも各機関に呼びかけるという役割をぜひやっていただきたいと思います。

    (委員)私も、気象庁ができないというのではなくて、こういうことは気象庁がやらないと一体どこがやるんですかと言いたいので、率先して中心になって進めていただきたい。一般の人たちはこういうのを気象庁がどんどんして下さることを望んでいるのは確かなんです。この委員会でサポートしてもらうまでもなく、気象庁にはしていただきたいと思います。

    ちょっと細かいことでもう1つお聞きしたいんですが、非常におもしろい取り組みとして、5ページにあるARGO計画で海底から表面までの温度を測定するようなシステムを取り入れるとおっしゃっているんですが、これは海底から途中までの海洋の状態を計るのですか。

    (部会長)海底からではないんです。大体2000メートルぐらいです。

    (委員)2000メートルくらいまでのこの深さのフロート、測器がある位置の同定手法の開発はこれから進めていくわけですね。途中のフロートの位置やなんかを決める方法を開発するというのは、これからしていくような開発部門ですか。

    (事務局)実は既にこういった中層フロートは開発されておりまして、百数十個程度、今現在大西洋を中心に放流されておりまして観測データを送ってきている状況でございます。

    位置につきましては、大体10日間ぐらい、水深2000メートルぐらいのところをゆっくりと深海の流れに沿っていきまして、それが上がってきて衛星にデータを飛ばすわけですが、そのときの位置とその前の位置でそのフロートの流れぐあいを推定するということでございます。

    (委員)大体インターポレートして平均をとると。

    (事務局)そういうことでございます。

    (委員)最初に言ったことの繰り返しですが、やはり確認しておきたいのは、エルニーニョ予測のときと今回とは違う。あのときは、エルニーニョのメカニズムがかなりよくわかるようになっていたし、観測システムもあり、そして予測実験もある程度の成果をおさめて、見通しがあったから業務化するというのであったけれども、今は必ずしもそういうのではない。ただ、先ほどお話ししましたように、じゃ、なぜ今かというと、ARGOによって新しく、今まではかれなかった、熱帯以外の、赤道域以外の海面下もわかるようになった。あとは衛星が--衛星はこれまでもあったわけですが、衛星で陸面もわかるので、基本的なデータが得られる。あとはモデルを改良することによって見通しが立つであろう。だから、それを目指して研究開発を行おう。そういう提案というか計画であるということで、最後になってしまうと、先ほど来いろいろなところから心配されたように、我々は一生懸命違うつもりであっても、結局同じように気象庁では何年後かに1年予測を目指して実行することになったということになってしまうので、幾らそこで厳密にやっても意味ないじゃないかと言われるかもしれませんが、そうだからこそ、我々自身が出発点のところで、これの可能性については、むしろ予報可能性についてを含めてこれから研究開発を進めるんだということをはっきりしているべきではないかと思います。

    その点、原案をつくられた方でどういうふうにお考えかもちょっとお伺いしたいと思うんです。

    (事務局)20号答申での表現は、「気候モデルの予測精度を確認の上、1年程度先への延長を目指すべきである」、こんな表現になっております。今回21世紀10年を初頭としてやってみようというか、ぜひ激励していただきたい、そういう形にしていますところは、先ほどご指摘のとおり、まさにこのときには余り詳細に議論されていなかった観測システムの高度化の部分と相まって、原理的な可能性としてやってみるべきではないかというような提案の内容になっておりまして、その辺についてのご議論をいただきたいということございます。

    (委員)賛成したいんですけれども、わからないものですからお伺いしたいんです。ARGO計画は、これを読む限り、これから始まる計画ですね。ですから、これで得られたデータはまだ何もないわけですね。ですから、こういう計画を実施するのにはそれなりのデータの蓄積に時間が必要だと思うんです。どのぐらい蓄積すれば1年予測なり何なりができるのかということが1つ。

    出てきた1年先の予測というものは、そういう説明があったのかどうか知りませんけれども、私が聞き漏らしたのか知りませんが、どの程度のことをアウトプットとしておっしゃるのでしょうか。ことしは温度が高い、低い、そのパーセントぐらいなんでしょうか。確かに長期予報というのはみんな欲しいんですけれども、その精度が問題だと思うんです。何度高いというのか、日照はどうだというのか、そういう要素の1つ1つについてどのぐらいのことが言えるデータが出るんでしょうか。

    (事務局)ご質問の前段のARGO計画についてお答えいたします。先ほどもちょっと申しましたけれども、現在百数十個ぐらいは運用されているということで、このARGO計画は、我が国だけではできませんので、国際的に調整をとって進めていこうという計画になってございまして、2004年度ぐらいまでには3000個放流したいというような目標を掲げて、現在各主要国で計画が進められているという現状でございます。

    (委員)1年か2年のデータでわかるものですか。時間の軸は要らないんですか。

    (事務局)このフロートは寿命が大体4年ございます。そして、1個フロートを入れますと、1カ月に3回か4回ぐらい観測をいたします。それが4年間運用されますので、百数十回ぐらいデータをとってくる。それが全体で大体300㎞置きに水温、塩分のデータが得られる。こういったデータを海洋の初期値に、いわゆる予測モデルの初期値に使うということで、画期的に気候予測、季節予報の精度向上を図りたいという計画になってございます。

    (事務局)長期の季節予報で想定される物理量というふうなお話がありました。ここにちょっと関連しまして、とじ込んであります参考資料とした19ページに諸外国の例などが掲げてありますけれども、今実験的にアウトルックなるものを出している。例えばアメリカ大気海洋庁(NOAA)等で見ますと、気温、降水量、この辺がまずは取りかかりになるかと思っております。

    (委員)分解能はここに書いてあるここの数字ぐらいということですか。1.5度とはどういう意味ですか。

    (事務局)これは、例えば一番上ですとNOAAが使用していますモデルの現在の水平方向の分解能で、将来的な技術の展開とか、それによっても変わってくるかと思います。

    (専門委員)利用企業側から見ますと、通常の天気予報の場合にはかなり統計的にユーザーとして検証ができるわけです。3カ月も見れば、このシステムの予測精度はどうだろうかということがかなり見られるんですが、6カ月モデルとなりますと、そういうことはやっていられないというか、10回検証すると5年かかってしまいますので、アウトプットの統計的な意味をある程度事前に、どれぐらいを目標にしているんだ。例えば現状から何ポイントぐらいよくなるはずですねと、難しい要求かもしれないんですが、そういうことを教えていただけるとありがたいんです。

    (事務局)先ほど申し上げましたように、これは10年先の実現を目指す目標でございまして、当然その経過の中で、今でもそれなりのモデルがあるわけでありまして、先ほど申しましたARGOのデータを入れたりなんかして改良を図っていくわけです。そのプロセスの中でモデルが持つ特性というか、予報、予測に関する特性とかそういうのを検証しながら、仮に業務化する前には、そういう特性についての情報はこの場合ユーザーにとって極めて重要ですので、気象庁としては責任を持ってそこは明示した上でお使いいただく、こういうことになると思うんです。

    現段階でどの程度かというのは、これから取り組むわけでございますので明示的には申し上げられないと思いますが、気象庁がさまざまなものを業務化するときには、ある程度の社会で使っていただいて問題がないという意味での検証は行った上で業務化いたしますので、その意味で松野先生や田中先生がおっしゃるように、だめだよというようなものは、幾ら10年先の目標を掲げても、それを業務化するということはしないはずでございます。

    (委員)また中身的には繰り返しですが、もちろんあと報告書にいろいろ形を整えていくと思うんですが、今ここで21世紀をにらんでこの目標を掲げてやりますという1つがARGOであって、もちろんモデルの問題もあると思いますが、もう1つは衛星観測、きょう森山さんにいろいろお話しいただいたのですが、タイミング的にも非常によく合うというか、地球観測衛星がアメリカ、ヨーロッパ、日本それぞれそろって、ちょうどいろいろなものが観測できるようになる。

    たしか2003年ぐらいだったと思いますが、CEOP:Coordinated Enhanced Observing Periodというのが日本の研究者などを中心に提案されてやっているわけですから、そういうことによって、衛星によってはかられるいろいろな、気候予測にとって必要な物理量もある成熟度に達する。それでARGOが海の下、衛星でははかれない海の中もわかるようになる。よって、ここで1つ全体的にエンド・ツー・エンドの目標、プログラムをつくって研究開発をいたしましょう。そういうような形というか、そういうふうに物事を考えたいと思うんですが。

    (専門委員)全体の資料のつくりというか、視点の問題だと思うんですけれども、全体資料として、どうしても供給者側といいますか、サプライサイドのつくりになっているからわかりにくい部分があるんじゃないかと思うんです。一体世の中に長期予報等に関してどういうニーズがあって、どういうものを求めている具体例があって、だから、こういうものを提供していくんだというような、ディマンドサイドといいますか、本当に求められているものはこうなので、それに合わせて供給していくことが一番多くの人の要求を満たすことになるんだというような視点というんですか、そういうつくり方は非常に重要だと思うんです。

    さっきからずっと全部何度も眺めているのですけれども、そういう部分というよりは、どっちかというと、技術、テクノロジーを駆使してこういうものをサプライしていく、供給していくんだというところはよくわかるんですが、その辺が割と全体の視点としては供給側の論理で貫かれている。資料のつくり方なのかもしれませんけれども、そうなのかなと思うんです。実際どういうものが提供できて、どういうものの役に立つんだ。あるいは、現実にこういうことを望まれているのだから、こういうことを満たすんだというような視点も重要だし、逆にそういうものを入れていけば非常にわかりやすい説明なり、1つの完結したストーリーになるんじゃないかと思うんです。

    (部会長)大変もっともなご意見だと思います。前回の20号答申のところでも、実は気候情報に対する利用者側の使い方とか、使うについてのディマンド、そういうものも実は調査されて、そういう資料に基づいてああいう答申が出ているんですが、今回の場合も当然そういうことをやらないといけないですね。おっしゃるとおりだと思います。

    (事務局)今の部会長のお話に基づきまして、20号答申でのアンケート結果は、情報の共有の観点から、委員の方々に後ほどお送りしたいと思います。

    (専門委員)計5-4の4ページに1年先までの気候予報の実現、このページを見ながらお話を聞いていた方が非常によくわかったような気がしたんです。5ページ以降はそのための補足資料、説明資料になっているのではないかな。そういう意味では、わかりやすくということでいけば4ページに尽きているのではないかというふうに思いました。つまり、何を目指していくのかということがはっきりして、それはどういう手段で、しかもめどがどの程度立っているのというのに対してるる述べておられる。そこまでだれもがみんなわからなくてもいいという部分があるのかなと思いましたが、いかがでしょうか。

    もう1つ、そのために何をしなければいけないかという中に、例えば何とかセンターみたいなものを引き受けますという部分は、そこがどういう業務をする、どこまでつくってあるかにかかわりなく、約束してできることだと思うんです。問題は、そこがどれだけ意味のある情報を発信できるかという部分でしょうけれども、そこはやってみなきゃわからないというのもある。世間に約束するのは、アウトプットではなくて、そういうものをつくってお役に立つように努力しますという部分であって、アウトプットの方は目指しますということではっきり書いてあれば、それでいいんじゃないかと思います。わかりやすいという意味で、そういうふうに。

    (専 門委員)技術的にどういうふうに精度のいいものを、さらに先を取り組もうということと、それから、これをするときのスタンスは21世紀にどうするんだ。そこのところが、今まではやり方が違っているというところまで気象庁に準備があるのかどうかというのは、私、非常に気になるんです。だから、それをずうっと一貫して同じスタンスで私は申し上げているのですけれども、例えば教育基本法だって、知識はあるけれども考える力がない、理解はできるけれども説明できない、こんな日本人いつまでたってもだめじゃないか、こういう問題を議論したわけじゃないですか。21世紀は違うんだ、変えていくんだ、こういうふうに言ったわけですよね。

    気象庁も、自分たちが一生懸命頑張ってきました、これからも頑張ります、少しでも精度を上げますと。これは確かに大切なスタンスではあるけれども、その前にワーキング・トゥギャザーでいきましょうという考え方になるか、ならないか。私は実は今度アメリカに行って1つ大変なことを確認したのですけれども、クライメット、要するに気候というのは大変な問題だということで、従来アメリカの産業界は比較的引いていたんですね。ところが、クライスラーもフォードも、ちょっと待てよ、そんなことをやっていたら危ないぞというふうになって、民間みずからが応援するぞというふうに変わっているじゃないですか。つまり、ADEOSの計画にしても、あるいは今気象庁がやろうとしていることでも、日本の企業が応援するぞとなったときに変わると思いませんか。

    やっぱり民間とかNGOだとか、彼らのワーキング・トゥギャザーというディメンジョンをきちっと理解して巻き込んでいくような行政改革という次元が僕は絶対あると思うんです。それならば、仲間内の民間気象から早く巻き込めと。これは1カ月予報のときでも、気象庁が出した成果を民間に開放してどうのこうのというスタンスではないんじゃないですかと。できるなんて格好つけたくないですけれども、僕たちもインボルブさせてください、させた方がいいですよ、そういうところから変わるんです。絶対に変わりますよ。

    だから、気象庁は、おれたちのエネルギーで気候庁もつくるという気構えというのか、そういうイニシアチブというようなものをワーキング・トゥギャザーでいくんだというスタンスさえつくれば変わるんじゃないか。僕は、21世紀は富の使い方についてみんなが真剣に考える時代でもあると思います。ぜひ気象庁のスタンス--先ほども専門委員がおっしゃっていたように、結局、サプライ側の発想ではなくて、ボーイングがワーキング・トゥギャザーだ、ユーザーさん、どういうふうにつくったらいいでしょうかねということを聞き出してから777をつくり出していった。やっぱりつくる側も変わってきているわけですよね。ぜひその辺のところのスタンスを今回の21号答申の中では明確に出していただけないかなという気持ちが僕はすごく強いんです。

    (部会長)ありがとうございました。随分貴重なご意見をたくさんいただきましたが、ほかにいかがでしょうか。

    (委員)内容的にはまた同じことを別の形で表現することになるかと思いますが、先ほど専門委員の気候庁という言葉と、みんな一緒にということですが、当然のことですが、先ほど来、観測に関して衛星とARGO計画と、少なくとも専門委員のおっしゃるほど広くはないけれども、気象庁で閉じない、従来の短期予報のときの気象庁で閉じない、非常に広い範囲の協力によって初めてなし得るものなので、この計画はもちろんそれが前提になっていると思うんですが、そういうことをもう少し明確に出すことは必要でないかなと思います。

    かつてGCOS:Global Climate Observing Systemの提案があって、それをどういうふうにつくっていくかというのは、たしか95年ごろいろいろワークショップがあったり勉強会をやって、私も一緒に参加しましたが、そのときも、天気、短期予報に関しては気象庁単一の組織でできるが、気候はそうじゃないんだと。GCOSはそれを一種のネットワークみたいな形でやっていくということなんじゃないかと議論したことがありますが、今回まさにそれが必要なわけですから、単にこういう目標とかのほかに、そういう観点に関しても何かそういう方向へ向かっていくんだということを盛り込まれたらいいなと思います。

    (専門委員)需要というのは、この20号答申のときからほんの数年で物すごく変わったような気がするんです。私たちの目から見ますと、例えば金融ビッグバンで金融がいろいろな形で変化していますし、さらにまだするわけですけれども、そういう金融にこれまでに比べて一般消費者を含めて参加するようになっていくわけですが、そのときに金融商品を選ぶ1つの目に気象というものだって参考にする人たちはふえてくるわけですよね。そういうふうにいろいろな部分で利用価値というんでしょうか、そういうものが出てくると思うんです。だから、例えば金融にということで動機が不純だなんて思わないで、そういう時代で、それは非常に有益な利用方法になっていくのだと思っていただいて、例えば証券業界の意見の参加も必要な場面も出てきたりするんじゃないかと思うんです。今の時代が非常に動いていますから、そういうことをもっと気象庁も考慮してというか、どんな需要があるかということも検証していくのは非常に重要だと思うんです。

    (部会長)ありがとうございました。大変多くの方々から多種多様なご意見をいただきましたが、いずれも励ましの積極的なご意見だったように思うんです。考えてみますと、気候の予測、予報は気象学のいわば究極の目標みたいなものなんですね。だから、我々は絶えずそれに近づこうとするんだけれども、なかなか到達することはできないたぐいのものではないかというふうに思うんです。そういう意味では、いわば初恋の人のようなものかなと。

    そそういうあこがれを絶えず持って、それにいかに自分自身を高めていくか、向上していくかということは大変大事なので、究極の予報は気候の予報としても、いろいろなステージ、レベルがあると思うので、ここに書いてある予報の実現というような表現をしますと、気象庁の気持ちはよくわかっているんですけれども、その言葉の受けとめられ方はあるいは誤解を招くかもしれない。そういう意味で、田中専門委員がちょっとおっしゃったモデルの第何世代というような表現、レベルを表現する、そういう表現も1つ考えていいのではないかという気はしているんです。

    いずれにしましても、先ほど来からたくさんいただいた非常に貴重なご意見を参考にしまして、大変難しい作業になるかと思いますが、たたき台をつくっていただいて、そしてそれに基づいて議論を進めていきたいと思います。

    (委員)簡単な質問です。いろいろなところに出ているのですが、どのくらい先までというので、ちゃんと出ているのが1年先というのばかりです。気候の温暖化で、先ほど専門委員が、何かいろいろな企業を巻き込むとよいとおっしゃいました。もし1年先だけだったらきっと企業は乗ってこないと思うんです。辛うじて出ているのが11ページの下の中央の図の横軸の2100年までの長期の気候、温暖化だけです。これは長期とは1年先までで、その後は余りそういうことを表面立てて主張してはいけないというような何か気象庁の業務に縛りがあるということなんでしょうか。

    (事務局)今のご質問は、1年先ということが余りにも強く出て、長期、例えば50年、100年というところのものが見えないというご指摘と思います。だから、温暖化の下に予測情報とかいろいろ書いてありますけれども、この辺にその点を明記することにさせていただきます。

    (部会長)気候の予報という問題と、いろいろな外因に対する気候システムのレスポンスを考えるという問題と、ちょっと違う問題があります。

    (事務局)きょうのご意見をもとに事務局で案をということですが、きょうのご意見を踏まえて、これからはドラフトの形で資料をお出しすることになると思います。とりあえずこの絵はそのときのための参考にもなりますので、これはこれとして、次はドラフティングされたものをご審議いただく。ですから、きょういろいろいただいた言葉の問題とかそういうのが全部訂正されて、わかりやすいようにしたいというふうに考えております。

    (部会長)実は次の議題で今後のスケジュールの話があるんですが、前回申し上げましたように主要なテーマが3つありまして、その3つのうちの1つとして気候・地球環境問題があります。もう1つは日々の短期天気予報を含む観測と気象予報の問題、それから地震・火山にかかわる問題、そういうあと2つの大きなテーマが残されているわけです。それぞれについても、ちょうどきょう行ったと同じような課題についての審議をしまして、一応3つの課題についての討議が終わった後で、素案を改めてご審議いただきたい。

    そういう行き方にしたいなと思っているんですが、ちょうどそういう議題になりましたので、4番目の議題はここで打ち切ることにしまして、5番目の今後のスケジュールについて、お願いいたします。

  5. 今後の審議スケジュールについて

    (事務局)1枚目はこれまでの審議経過が書いてありますので、これは今までに終わったところで、第5回目がこの一番下に書いてあります。

    裏をめくっていただきまして、今後のスケジュールがございます。ただいま部会長からご説明がありましたように、2月3日、第64回の総会で、本日ご了承いただきました中間報告をご報告しまして、今後の審議の進め方について議論がなされます。その後、引き続きまして第6回部会として「予報分野における課題」を予定しております。それから、第7回部会、これは本日冒頭にお配りしました先生方のご都合をできるだけ配慮して、最も適当な日を部会長に選んでいただいて、それをできるだけ速やかに委員の先生にお配りしたいと考えております。これが地震・火山分野における課題です。

    これが終わった後、その次に答申をドラフト化するという作業がございますので、先生方の本日の議事録なども参考にしつつ、それを文章化したものを用意して、それでまたご審議いただきたいと考えております。それが全般事項の審議として4月、5月、その後、答申案作成及び答申で、当初からの予定の6月までにはでき得れば答申をいただきたいと考えております。

    (部会長)こういうような今後の審議スケジュールでいかがでしょうか。次回は2月3日に総会がございます。総会の終わった後、引き続いて第6回部会を開く。そこでは、気象の観測予報分野における課題の審議をする。第7回目は3月上旬、これはまだ日取りは決められないですね。地震・火山分野における課題についての審議を行う。そして、それらを終えた後で、4月か5月ごろの部会で全般事項の審議、そのときに素案を出していただく、それに基づいて審議をする。そういうことで進めたいと思います。

    何回で終わるか、今のところ見通しは立ちませんが、一応そういうスケジュールでやりたいというふうに思っております。よろしいでしょうか。

3.閉 会

(部会長)それでは、最後にその他ということですが、事務局から何かございますか。

(事務局)特にございません。

(部会長)それでは、本日の部会をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


[ 以 上 ]

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