海洋について

エルニーニョ現象(ラニーニャ現象)が発生すると、日本近海の海面水温はどのようになるのですか?

 エルニーニョ現象(ラニーニャ現象)が発生すると、大気循環が変化して、日本付近では冷夏・暖冬(猛暑・厳冬)になると云われています。そのような日本付近の気温の状態が日本付近の海面水温に影響を及ぼすことがあります。一方で、エルニーニョ現象(ラニーニャ現象)に伴う中・東部太平洋赤道域の水温変化が海洋を伝って、すぐに日本近海の海面水温を変化させることはありません。そのような水温変化が日本付近に到達するには数年かかると考えられ、またその間に大気の影響を受けるため、日本付近に到達する段階では水温の変化は不明瞭になります。

日本近海の海面水温が高い(低い)と、日本の地上気温は高く(低く)なるのですか?

 大気と海洋は熱を交換しながら影響を及ぼしあって変動していますが、必ずしも海面水温が高いから地上気温が高くなるというわけではありません。たとえば、冬季の大陸からの寒気の吹き出しにより、海面水温が低下することがあります。この時、大気は海洋によって逆に暖められています。一方、夏季に太平洋高気圧に覆われるなどして晴天が続くと、気温と海面水温は高くなりますが、この時、海洋が大気を暖めているわけではありません。

海面水温が高いと台風が発生するのですか?

 一般的に台風は海面水温が26~27℃の海域で発生するといわれています。ただし、大気の状態も重要な要因であり、海面水温が高いだけでは台風の発生・発達につながりません。

高潮の発生の仕組みは?

 高潮は、台風や低気圧によって海面が上昇することです。高潮発生の主な要因としては、以下の2つを挙げることができます。

  • 気圧低下による海面の「吸い上げ効果」
    台風や低気圧の中心では気圧が周辺より低いため、気圧の高い周辺の空気は海水を押し下げ、中心付近の空気が海水を吸い上げるように作用する結果、海面が上昇します。気圧が1ヘクトパスカル(hPa)低くなると、海面は約1センチメートル上昇します。
  • 風による「吹き寄せ効果」
    台風に伴う強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられ、海岸付近の海面が上昇します。湾の形によっては、吹き寄せられた海水の逃げ場がないため、さらに海面が上昇しやすくなります。また、水深が浅いほど、風の吹き寄せ作用がよく働き、海面が上昇しやすくなります。

異常潮位とは何ですか?

 「異常潮位」とは、台風などによって引き起こされる「高潮」や地震に伴う「津波」とは異なった原因で、潮位(海面の水位)がある程度の期間(概ね1週間から3か月程度)継続して平常時※より高く(もしくは低く)なる現象のことです。暖かい海水の渦(暖水渦、中心付近は周辺よりも海面の水位が高い)が接近した場合や、太平洋側では黒潮が通常より四国、本州などに接近した場合のほか、気圧配置などその他の要因と複合して発生すると考えられています。なお、例年、夏から秋にかけては、他の季節と比べて全国的に潮位は高くなりますので、この期間に異常潮位や高潮が生じて潮位がさらに高くなると、浸水などの被害を生じることがあります。最近では、平成13年(2001年)に南西諸島及び関東地方から九州地方の沿岸で、平成15年(2003年)に南西諸島及び東海地方から九州地方の沿岸で、いずれも夏から秋にかけて発生しています。

※平常の潮位とは、台風などの影響がない場合の、月と太陽の引力などをもとにあらかじめ計算された潮位の値です。

副振動とは何ですか?

 日々くり返す満潮・干潮の潮位変化を主振動としてそれ以外の潮位の振動に対して名づけられたもので、湾・海峡や港湾など陸や堤防に囲まれた海域等で観測される、周期数分から数10分程度の海面の昇降現象をいいます。主な原因は、台風、低気圧等の気象じょう乱に起因する海洋のじょう乱や津波などにより発生した海面の変動が海洋長波(水深に比べ波長の長い波)となって沿岸域に伝わり、湾内等に入ることにより引き起こされる振動です。振動の周期が湾等の固有周期に近い場合は、共鳴を起こして潮位の変化が著しく大きくなることがあります。このような振動をセイシュとも言います。副振動は、全国どこの沿岸でも発生しますが、全振幅(海面昇降の山から谷までの高さ)が100センチを超えるような顕著な副振動は、九州地方から奄美地方でしばしば観測され、海面昇降に伴う強い流れによる小型船舶の転覆や低地の浸水などの被害を生じることがあります。過去に、副振動による被害が多くみられる長崎では副振動のことを「あびき」と呼んでいます。

 平成21年(2009年)2月24~25日に九州地方から奄美地方にかけて顕著な副振動が発生し、熊本県と鹿児島県の沿岸で小型船舶の転覆や破損、家屋への浸水等の被害が発生しました。このとき観測された最大全振幅は長崎で157センチ、枕崎で141センチでした。

干潮、満潮の時刻はどのように予想するのですか?

 潮汐(干潮、満潮)は、主に月と太陽による引力と地球の公転に伴う慣性力をあわせた力(起潮力とよびます)で生じます。起潮力の周期は天文学の知識からわかります。ある地点の潮汐の予報を行うには、周期の他に潮汐の波の大きさや時間的な遅れの情報が必要となります。これらの値は地形や水深が異なるために場所ごとに違ってきますので、それぞれの地点で観測を行った結果から決定します。これらの値をもとに60項位の三角関数を計算し、加えあわせることで潮汐(干潮、満潮)の予報を行っています。

アルゴ(ARGO)計画とはどんな計画ですか?

 国際的な枠組みの中で「中層フロート」を全世界の海洋に展開し、表層から中層の水温、塩分等の観測をする計画。気候に大きく影響する海洋の状況を把握します。

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