提言で示された防災気象情報のあり方

防災気象情報に関する現状と課題

(1) 集中豪雨による災害への対応

 交通政策審議会気象分科会の提言では、平成26年8月20日に広島市で土砂災害が発生した際に発表した一連の防災気象情報について以下の4つの課題が挙げられています。

平成26年8月19~ 20日の広島市に対する防災気象情報の発表状況と課題

【課題1】 夜間の避難を回避するため、確度が高くなくとも警報級の現象になる可能性があることなど、早い段階から一段高い呼びかけの実施ができないか。

【課題2】 実況情報をより迅速に発表していくことができないか。

【課題3】 避難勧告等の対象範囲の判断を支援するため、メッシュ情報の充実や利活用の促進が必要ではないか。

【課題4】 今後予想される雨量等の推移や危険度を、より分かりやすく、より確実に提供できないか。

(2) 台風などによる災害への対応

 さらに、提言には、広範囲に甚大な災害をもたらす台風などに対する課題も挙げられています。

【課題5】 台風等を想定したタイムラインによる防災対応を支援するため、数日先までの予測に関する防災気象情報の提供の強化が必要ではないか。

防災気象情報のあり方

 提言では、防災気象情報の改善に向けた2つの基本的方向性
  ① 社会に大きな影響を与える現象について、可能性が高くなくとも発生のおそれを積極的に伝えていく
  ② 危険度やその切迫度を認識しやすくなるよう、分かりやすく情報を提供していく
を示したうえで、上記(1)で示した課題1~5への対応策の実施が求められています。

【対応策1】 翌朝までの「警報級の現象になる可能性」の提供

 極めて大きな被害をもたらす集中豪雨などは社会的な影響が大きいことから、集中豪雨が発生する可能性が高くない場合も含めて、夜間から早朝における発生のおそれを[高]や[中]といった確度で、夕方の時点で発表することが求められています。

【対応策2】 実況情報の提供の迅速化

 住民の命を守る行動をいち早く促すため、記録的短時間大雨情報の発表を迅速化することが求められています。

【対応策3】 危険度分布を示すメッシュ情報の充実、利活用促進

 気象庁は現在、土砂災害発生の危険度分布を示すメッシュ情報を提供していますが、気象庁ホームページ上で表示する際に、道路、河川、鉄道などの情報を重ねて分かりやすくすることや、こうした危険度分布のメッシュ情報の種類をさらに増やすこと、また、メッシュ情報と土砂災害危険箇所・土砂災害警戒区域等を重ね合わせる利用法を気象庁から市町村に紹介するなどの利活用の促進が求められています。

【対応策4】 雨量等や危険度の推移を時系列で、危険度を色分けして分かりやすく提供

 現在、警報などの防災気象情報は主に文章で発表していますが、これに加えて、注意報級や警報級の雨になる時間帯を表形式で視覚的に分かりやすい形で提供することが求められています。

【対応策5】 数日先までの「警報級の現象になる可能性」の提供

 現在、数日先までの防災気象情報として、5日先までの台風進路予報、台風の暴風域に入る確率、週間天気予報などを発表していますが、雨について数日先までの危険度を知らせる情報は十分ではありません。タイムラインによる防災対応を支援するため、対応策1で求められている「警報級の現象になる可能性」を、数日先の雨などについても提供していくことが求められています。

交通政策審議会気象分科会の提言を受けて気象庁が目指す防災気象情報の方向性

(参考)タイムラインとは

 タイムライン(時系列の防災行動計画)とは、台風などによる甚大な被害を回避するためには、事前の住民の広域避難や救助等の備えを充実することが望ましく、この事前の対応を円滑に行うため、行政機関等の関係者間で「いつ」「誰が」「何をするか」を時間軸に沿って整理したものです。タイムラインでは、台風が来る数日前からの対応が決められるため、その対応を支援できるよう、数日先までの予測をより充実させた防災気象情報の提供が重要になります。

タイムライン(時系列の防災行動計画)のイメージ