第4部 最近の気象・地震・火山・地球環境

1章 気象災害、台風など

1節 平成31年/令和元年(2019 年)のまとめ

 8月26日から29日にかけて、九州付近に停滞していた前線の影響で、九州北部地方を中心に大雨となり佐賀県を中心に河川の氾濫、浸水害、土砂災害が発生しました。

 9月8日から9日にかけて、千葉市付近に上陸した令和元年房総半島台風(台風第15号)の影響で、関東地方南部や伊豆諸島を中心に暴風となり、千葉県では電柱の倒壊が相次ぎ、広い範囲で停電が発生しました。

 10月12日から13日にかけて、令和元年東日本台風(台風第19号)が伊豆半島に上陸した後、関東地方を通過しました。この影響で、静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となり、河川の氾濫が相次いだほか、土砂災害や浸水害が発生しました。

 10月24日から26日にかけて、低気圧等の影響により、関東地方から東北地方の太平洋側を中心に大雨となり、千葉県や福島県を中心に土砂災害、浸水害、河川の氾濫が発生しました。

令和元年(2019年)に発生した主な気象災害

2節 平成31年/令和元年(2019 年)の主な気象災害

・前線による大雨(8月26日~8月29日)

 8月26日から29日にかけて、九州付近に停滞していた前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、九州北部地方を中心に大雨となりました。26日から29日までの総降水量は長崎県平戸で626.5ミリ、佐賀県唐津で533.0ミリに達するなど、8月の月降水量平年値の2倍を超える大雨となったところがありました。特に、28日明け方には九州北部地方に線状降水帯が形成・維持されたため、佐賀県を中心に3時間降水量等の観測史上1位の値を更新する記録的な大雨となりました。

 この大雨について、気象庁は28日05時50分に佐賀県、福岡県、長崎県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけました。

天気図(8月28日09時)3時間降水量の期間最大値(8月26日00時~8月29日24時)

3時間降水量(解析雨量)(8月28日03時~06時)佐賀県大町町上空から見た浸水状況

・令和元年房総半島台風(台風第15号)による暴風等(9月8日~9月9日)

 令和元年房総半島台風は、9月8日に非常に強い勢力で伊豆諸島に接近した後、9日03時前に三浦半島付近を通過して、9日05時前に強い勢力で千葉市付近に上陸しました。その後、日本の東を北東に進み、10日09時に温帯低気圧に変わりました。

 令和元年房総半島台風の接近・通過に伴い、関東地方南部や伊豆諸島を中心に暴風、大雨となりました。東京都神津島で最大風速43.4メートルを観測するなど6地点で最大風速30メートル以上の猛烈な風を観測し、千葉県を中心に19地点で最大風速の観測史上1位の記録を更新しました。また、8日から9日までの総降水量は静岡県天城山で442.0ミリに達し、東京都大島や静岡県湯ヶ島で300ミリを超える大雨となりました。

令和元年房総半島台風経路図暴風により倒壊した電柱

期間最大風速(9月8日00時~9月9日24時)風の観測値(9月8日00時~9月9日24時)

・令和元年東日本台風(台風第19号)による大雨等(10月10日~10月13日)

 令和元年東日本台風は、一時大型で猛烈な勢力に発達して日本の南を北上した後、10月12日19時前に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸しました。その後、関東地方を通過し、13日12時に日本の東で温帯低気圧に変わりました。

令和元年東日本台風経路図

 令和元年東日本台風やその周辺の湿った空気の影響で、広い範囲で大雨、暴風、高波、高潮となり、10日から13日までの総降水量が神奈川県箱根で1,000ミリに達したほか、東日本を中心に17地点で500ミリを超えました。特に静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3、6、12、24 時間降水量の観測史上1 位の値を更新するなど記録的な大雨となりました。

 この大雨について、気象庁は12日15時30分から順次、静岡県、神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、茨城県、栃木県、新潟県、福島県、宮城県、岩手県の1 都12 県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけました。

 また、風については東京都江戸川臨海で最大瞬間風速43.8メートルとなり観測史上1 位を更新し、関東地方の7か所で最大瞬間風速40メートルを超えたほか、台風の接近に伴って大気の状態が非常に不安定となり、千葉県市原市では竜巻と推定される突風が発生しました。

24時間降水量の期間最大値(10月10日00時~10月13日24時)

24時間降水量の期間最大値(10月10日00時~10月13日24時)令和元年東日本台風による被害

・低気圧等による大雨(10月24日~10月26日)

 10月24日から26日にかけて、低気圧が西日本、東日本、北日本の太平洋沿岸に沿って東に進みました。この低気圧に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込むとともに、日本の東海上を北上した台風第21号周辺の湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となりました。この影響で、関東地方から東北地方の太平洋側を中心に広い範囲で大雨となりました。特に千葉県や福島県では、24日から26日までの総降水量が200ミリを超えたほか、3、6時間降水量の観測史上1位の値を更新する記録的な大雨となりました。

天気図(10月25日09時)

3時間降水量の期間最大値(10月24日00時~10月26日24時)

3節 平成31年/令和元年(2019 年)の台風

 平成31年/令和元年(2019年)の台風の発生数は平年より多い29個(平年値25.6個)でした。2019年春まで続いたエルニーニョ現象の影響で3~6月頃は北西太平洋熱帯域で対流活動が抑制され台風が発生しにくい環境だったことから3~6月中旬は台風の発生がありませんでした。一方で、7月以降の発生数は26個と平年値21個を上回り、特に11月には6個の台風が発生し、台風の統計を開始した1951年以降、11月の発生数としては1964年、1991年に並び最多となりました。

 日本への接近数は平年より多い15個(平年値11.4個)でした。上陸数は、平年値2.7個より多い5個(第6号、第8号、第10号、第15号、第19号)でした。

平成31年/令和元年(2019年)に発生した台風の経路

平成31年/令和元年(2019年)に発生した台風の一覧

コラム 平成31年/令和元年(2019年)の台風の特徴

 平成31年/令和元年(2019年)の台風の特徴は以下の通りです。

・ 台風第1号の発生は1月1日15時で、1951年以降で最も早い発生。

・ 台風第2号は2月に発生した台風としては最も強い最大風速55m/sまで発達。

・ 2019年春まで続いたエルニーニョ現象の影響で3~6月中旬は台風の発生なし。

・ 11月に6個(平年値2.3個)の台風が発生。11月の発生数としては最多タイ(過去には1964年、1991年)。

・ 9月9日に千葉県千葉市付近に上陸した令和元年房総半島台風(台風第15号)は、上陸時の最大風速が40m/sで、統計の残る1991年以降において、最も強い勢力で関東に上陸した台風となり、房総半島を中心に暴風による被害をもたらした。

・ 10月12日に伊豆半島に上陸した令和元年東日本台風(台風第19号)は、上陸時の最大風速が40m/sで、東日本に上陸した台風の強さとしては1位タイの記録となり、東日本や東北地方を中心に大雨による被害をもたらした。

 平成31年/令和元年(2019年)春まで続いたエルニーニョ現象の影響で3月~6月は北西太平洋域で対流活動が抑制され台風が発生しにくい環境でした。令和元年房総半島台風や令和元年東日本台風が日本に接近した9月上旬、10月上旬は日本の南海上で平年よりも海面水温が高く、令和元年房総半島台風や令和元年東日本台風が強い勢力を保って日本に上陸した要因の一つと考えられます。また、11月に台風が多く発生した要因として、赤道から北緯20度付近までの海域において海面水温が高い状態であったことと、赤道付近で西風が吹きやすい状況にあり、その北側の偏東風との境目で低気圧性の渦ができやすい状況であったことなどが考えられます。

令和元年(2019年)11月の台風発生が多かった要因

2章 天候、異常気象など

1節 日本の天候

 平成31 年/令和元年(2019年)は、全国的に気温の高い状態が続き、低温は一時的でした。特に冬の沖縄・奄美、秋の東・西日本は、季節平均気温が昭和21年(1946年)の統計開始以来、最も高くなりました。このため、年平均気温は全国的にかなり高く、東日本では平年差+1.1℃と1946年の統計開始以来、平成30年(2018年)と並び最も高くなりました。また、夏から秋にかけては、前線や台風、低気圧の影響で記録的な大雨となったところがありました。9月は、令和元年房総半島台風(台風第15号)の影響により千葉県を中心に記録的な暴風となり、10月は令和元年東日本台風(台風第19号)の影響により、東日本から東北地方にかけて記録的な大雨となり広い範囲で河川の氾濫が相次ぐなど、大きな被害が発生しました。全国のアメダスの日降水量400ミリ以上の年間日数は47日で、昭和51年(1976年)の統計開始以来平成23年(2011年)に次いで2番目に多くなりました

 ※アメダスの地点数は一定でないため、概ね現在の地点数に相当する1,300地点当たりに換算した値で比較しました。


平成31 年/令和元年(2019 年)の各季節の特徴は以下のとおりです。

① 冬(2018年12月~2019年2月)は、北からの寒気の影響が弱く、東日本以西では冬の平均気温がかなり高くなりました。特に、沖縄・奄美では冬の平均気温の平年差が+1.8℃となり、冬の平均気温として最も高くなりました(統計開始は昭和21/22年(1946/47年)冬)。日本海側の冬の降雪量はかなり少なく、特に、西日本日本海側の冬の降雪量は平年比7%となり、冬の降雪量として最も少なくなりました(統計開始は昭和36/37年(1961/62年)冬)。

② 春(3月~5月)は、北・東・西日本では、期間を通して高気圧に覆われる日が多く、春の日照時間はかなり多くなりました。北・東・西日本日本海側と北日本太平洋側では、昭和21年(1946年)の統計開始以来、春の日照時間として最も多くなりました(西日本日本海側は1位タイ)。また、春の降水量は北日本日本海側でかなり少なくなりました。全国的に、晴れて日射の影響を受けたことや、暖かい空気が流れ込みやすかったため、春の平均気温は北・西日本と沖縄・奄美でかなり高く、東日本で高くなりました。

③ 夏(6~8月)は、梅雨前線の北上が平年より遅かったため、梅雨明けは平年より遅れた地方が多く、7月は東・西日本を中心に気温が低く、日照時間が少ない不順な天候となりました。7月末から8月前半にかけては、東日本を中心に太平洋高気圧に覆われて晴れて厳しい暑さが続きました。夏の平均気温は、北・東日本と沖縄・奄美で高くなりました。西日本では、前線や台風の影響により、たびたび大雨となり、特に、九州南部では7月に、九州北部地方では7月と8月に、それぞれ記録的な大雨となり、土砂災害や河川の氾濫など大きな被害が発生しました。また、西日本太平洋側では夏の降水量はかなり多くなりました。沖縄・奄美では、梅雨前線や台風、湿った空気の影響を受けやすかったため、夏の降水量はかなり多く、夏の日照時間はかなり少なくなりました。

④ 秋(9月~11月)は、全国的に暖かい高気圧に覆われやすかったため、気温が高くなりました。特に南から暖かい空気が流れ込みやすかった東・西日本の気温は、昭和21年(1946年)の統計開始以来、秋の平均気温として最も高くなりました。また、秋の日照時間は北・東・西日本で多くなりました。9月上旬は、令和元年房総半島台風の影響で、東日本太平洋側を中心に大雨や記録的な暴風となり、千葉県などで大きな被害が発生しました。10月中旬は、令和元年東日本台風の影響で、東日本から東北地方の広い範囲で記録的な大雨となり、河川の氾濫が相次ぐなど、大きな被害が発生しました。10月下旬には、低気圧の影響で、関東甲信地方や東北地方で再び大雨となり、河川の氾濫や土砂崩れなど大きな被害が発生しました。沖縄・奄美では、この秋に5個の台風が接近・通過し、大雨や大荒れとなった所がありました。

地域平均気温平年差の経過

2節 世界の主な異常気象

 平成31年/令和元年(2019年)は、1年を通して世界各地で異常高温が発生しました(図中②③⑤⑨⑪⑫⑯⑱⑳???)。ヨーロッパでは南部を中心として6~12月に異常高温となり(図中⑫)、ドイツとフランスの2019年の年平均気温は、それぞれ、1881年以降で2番目、1900年以降で3番目に高くなりました。またヨーロッパ北部から中部では6~7月に熱波が発生し(図中⑭)、フランスでは少なくとも1,400人が死亡したと伝えられました(フランス政府)。6月28日に46.0℃の日最高気温を観測したフランスをはじめ、6か国で気温の国内最高記録を更新しました。米国アラスカ州では、2~3、6~7、9月に異常高温となり(図中⑳)、年平均気温は1925年以降で最も高くなりました。オーストラリアでは、1、3、7、9~12月に異常高温となり(図中?)、年平均気温は1910年以降で最も高くなりました。

 米国中西部から南東部では2、4~5、9~10月に異常多雨となりました(図中?)。米国本土では、冬(2018年12月~2019年2月)の3か月降水量は1896年以降で最も多く、年降水量は1895年以降で2番目に多くなりました。一方、マレー半島中部からジャワ島では6~7、9~11月に異常少雨となりました(図中⑥)。また、オーストラリアでは、年降水量が1900年以降で最も少なくなりました。

 南アジア及びその周辺では、7~10月の大雨により(図中⑧)、合計で2,300人以上が死亡したと伝えられました(インド政府、パキスタン政府、欧州委員会)。東アフリカ南部では、3月のサイクロン「IDAI」と4月のサイクロン「KENNETH」により(図中⑲)、合計で1,000人以上が死亡したと伝えられました(欧州委員会)。バハマでは、9月のハリケーン「DORIAN」により(図中?)、34億米国ドルにのぼる経済被害が発生したと伝えられました(米州開発銀行)。オーストラリアでは、9~12月に大規模森林火災が発生し、600万ヘクタール(日本の国土面積の約16パーセント)以上が焼失したと伝えられました(国際赤十字・赤新月社連盟)。

平成31年/令和元年(2019年)の世界の主な異常気象・気象災害

3節 世界と日本の平均気温

 世界の年平均気温は、長期的には100年当たり0.74℃の割合で上昇しています。令和元年(2019年)の世界の年平均気温の基準値(昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)の30年平均値)からの偏差は+0.43℃で、統計を開始した明治24年(1891年)以降で2番目に高い値となりました。最近5年(平成27年(2015年)~平成31年/令和元年(2019年))は、すべて歴代5位以内でした。

 日本の年平均気温は、長期的には100年当たり1.24℃の割合で上昇しています。令和元年の日本の年平均気温の基準値からの偏差は+0.92℃で、統計を開始した明治31年(1898年)以降、2016年を上回り最も高い値となりました。

世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2019年)

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4節 大雨・短時間強雨

 国内51観測地点における明治34年(1901年)~令和元年(2019年)の119年間の観測値によると、日降水量100ミリ以上及び200ミリ以上の大雨の年間日数は長期的に増加しています。

 全国約1,300地点のアメダスによる昭和51年(1976年)~令和元年(2019年)の44年間の観測値によると、1時間降水量(毎正時における前1時間降水量)50ミリ以上及び80ミリ以上の短時間強雨の年間発生回数は増加しています。1時間降水量50ミリ以上の場合、最近10年間(平成21年(2010年)~令和元年(2019年))の平均年間発生回数(1,300地点当たり約327回)は、統計期間の最初の10年間(昭和51年(1976年)~昭和60年(1985年))の平均年間発生回数(1,300地点当たり約226回)と比べて約1.4倍に増加しています。ただし、大雨や短時間強雨の発生回数は年々変動が大きく、それに対してアメダスの観測期間は比較的短いことから、長期変化傾向を確実に捉えるためには今後のデータの蓄積が必要です。

1時間降水量50ミリ以上の年間発生回数の経年変化

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5節 大雨・短時間強雨

 二酸化炭素は、化石燃料の消費や森林破壊といった人間活動から生じ、地球温暖化への影響が最も大きな温室効果ガスです。大気中の二酸化炭素の世界平均濃度は工業化(18世紀後半)以前は280 ppm程度でしたが、人間活動により増加を続け、平成30年(2018年)には工業化前の1.5倍ほどの407.8 ppmに達しました。世界各地の観測データを緯度20度ごとに平均した二酸化炭素濃度のこれまでの変化を見ると、化石燃料が多く消費されている北半球で南半球より全般的に濃度が高くなっています。また植物の光合成活動などが原因で起こる季節による濃度変動も森林の多い北半球で大きくなっています。

※ppm(ピーピーエム)は、大気中の分子100万個中にある対象物質の個数を表す単位です。


6節 その他の温室効果ガス

 二酸化炭素の他に地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガスとして、メタン、一酸化二窒素があります。これらも人間活動に伴い増加しており、大気中の濃度は工業化前の2.6倍、1.2倍にそれぞれ達しています。

 また、エアコンや冷蔵庫で空気を冷却するために使われてきたクロロフルオロカーボン類(いわゆるフロン類:CFC-11、CFC-12、CFC-113など)には、オゾン層を破壊する性質とともに強い温室効果があります。これらは生産や使用の規制により大気中の濃度が近年減少傾向にあります。一方、フロン類の代わりとして使用されているハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC-22など)やハイドロフルオロカーボン類(HFC-134aなど)は、オゾン層を破壊しにくい(あるいは破壊しない)ものの、いずれも強力な温室効果ガスで、これらの大気中の濃度は増加を続けています。

クロロフルオロカーボン類等の平均濃度の経年変化

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7節 海面水温

 令和元年(2019年)の世界の年平均海面水温の平年差(昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)までの30 年平均値からの差)は+0.33℃で、統計を開始した明治24年(1891年)以降では平成28年(2016年)と並んで最も高い値となりました。世界の年平均海面水温は、数年から数十年に及ぶ時間規模の海洋・大気の変動や地球温暖化等の影響が重なりながら変化していますが、長期的には100 年当たり+0.55℃の割合で上昇しています。数年から数十年の時間規模では、1970年代半ばから2000 年前後にかけて顕著な上昇が見られた後、2010年代前半までは停滞していましたが、平成26年(2014年)から平成28年(2016年)まで3年連続で統計開始以降の最高記録を更新しました。その後の2年は連続して下降しましたが、平成30年(2018年)秋から令和元年(2019年)夏にかけて発生したエルニーニョ現象等の影響もあり、令和元年は上昇に転じました。

世界の年平均海面水温

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 令和元年(2019年)の日本近海の海面水温は、日本海北部や紀伊半島の南から東海沖南部を除き広く平年より高くなりました。1~3月は日本海南部や東シナ海、日本の南を中心に、平年よりかなり高い海域が広くみられました。4~6月に関東南東方で、6~7月に東シナ海で平年より低い海域がみられたものの、5~8月に北海道南東方で平年よりかなり高い海域が広くみられました。8月には本州東方、関東南東方、日本海、東シナ海にも平年よりかなり高い海域がみられ、9月以降は北緯45度以南でおおむね平年より高く、平年よりかなり高い海域も広くみられました。紀伊半島の南から東海沖南部では、黒潮大蛇行の影響で平年よりかなり低い海域がしばしばみられた一方で、関東の東や遠州灘から熊野灘では黒潮や黒潮からの暖水の影響で平年よりかなり高い海域がしばしばみられました。

エルニーニョ監視海域の海面水温の変化

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8節 海洋中の二酸化炭素

 海洋は、人間活動により放出された二酸化炭素の約3分の1を吸収していると見積もられており、地球温暖化の進行を緩和しています。気象庁の海洋気象観測船「凌風丸」と「啓風丸」は、昭和59年(1984年)から30年以上にわたって北西太平洋で表面海水中と大気中の二酸化炭素濃度を観測しています。東経137度線に沿った日本の南から赤道域までの海域においては、毎年冬季(1~2月)に表面海水中の二酸化炭素濃度が大気中の濃度より低いことが観測されており、海洋が大気中の二酸化炭素を吸収しています。また、北緯7度から33度で平均した二酸化炭素濃度は、昭和59年(1984年)から平成31年/令和元年(2019年)まででみて、大気中で1年に1.9ppm、表面海水中で1年に1.8ppmの割合で増加しています。

冬季の東経137度線に沿った表面海水中と大気中の二酸化炭素濃度(北緯7度~33度での平均)の経年変化

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9節 オホーツク海の海氷

 令和元年から令和2年(2019~2020年)のオホーツク海の海氷域面積は、12月上旬から1月上旬まで平年より小さく、1月中旬から3月中旬まではおおむね平年並で推移しましたが、3月下旬以降は、オホーツク海全域で海氷の融解が急速に進み、海氷面積は平年より小さく経過しました。シーズンの最大海氷域面積は105.61万平方キロメートルで、平年の90%でした。

 オホーツク海の海氷域面積は年ごとに大きく変動していますが、最大海氷域面積は昭和46年(1971年)の統計開始以来、10年当たり6.2万平方キロメートル(オホーツク海の全面積の3.9%に相当)の割合で減少しています。

令和2年2月29日(最も面積が大きかった日)の海氷域

海氷に関する現象の初終日(令和2年4月9日現在)

3章 地震活動

1節 日本及びその周辺の地震活動

 平成31年/令和元年(2019年)に震度5弱以上を観測した地震は9回(平成30年は11回)、震度1以上を観測した地震は1,564回(平成30年は2,179回)でした。国内で被害を伴った地震は6回(平成30年は4回)でした。日本及びその周辺で発生した地震でマグニチュード6.0以上の地震は18回(平成30年は16回)でした。また、日本で津波を観測した地震は1回(平成30年は1回)でした。

 主な地震活動は下図及び次ページの表のとおりです。

*平成30年9月6日以降に、北海道胆振地方で発生した一連の地震活動(「平成30年北海道胆振東部地震」)により生じた被害については1回として扱った。

主な地震の震央分布(平成31年/令和元年)

主な地震(平成31年/令和元年)

2節 世界の地震活動

 平成31年/令和元年(2019年)(以下、日本時間を基準とする。)に発生したマグニチュード7.0以上または死者(行方不明者を含む。)を伴った地震は20回でした。また、マグニチュード8.0以上の地震はありませんでした。最も規模の大きかった地震は、5月26日にペルー北部で発生したMw7.9(気象庁による。)の地震でした。海外の地震により日本で津波を観測した地震はありませんでした。

 主な地震活動は表のとおりです。

平成31年/令和元年(2019年)の世界の主な地震活動

4章 火山活動

 平成31年/令和元年(2019年)は、浅間山、硫黄島、西之島、阿蘇山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島の8火山で噴火が発生しました。また、火山活動の推移に伴い、8火山に対して火口周辺警報を計13回発表しました。

 平成31年/令和元年の日本の主な火山活動は以下のとおりです。そのほかの最新の火山活動のとりまとめについては、気象庁ホームページに掲載している火山活動解説資料をご覧ください(https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/monthly_vact.php)。


○ 吾妻山

 平成30年5月頃から続いていた大穴火口周辺の隆起・膨張を示す地殻変動は、平成31年2月から4月にかけて概ね停滞し、地震活動も低下傾向となりました。これらのことから4月22日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その後、4月末頃から大穴火口付近浅部の膨張を示す地殻変動が観測され、火山性地震が多い状態で経過する中、5月9日に大穴火口方向上がりの明瞭な傾斜変動が観測されるなど、再び火山活動の活発化が認められたことから、同日、噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その後、地震活動が徐々に低下し、静穏化したことから、6月17日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。火山ガスの放出を伴う噴気や高温域などの地熱活動は、やや低下したものの継続しました。

○ 草津白根山(白根山(湯釜付近))

 平成30年10月上旬から湯釜浅部の膨張を示す地殻変動が観測されていましたが、平成31年4月中旬頃からは季節変動を超える変化は認められなくなりました。湯釜付近浅部を震源とする火山性地震が増減を繰り返しながら推移する中で、6月30日には振幅の大きな低周波地震が発生しました。低周波地震の発生後、湯釜湖面では一時的に明瞭な変色域が観測されました。9月上旬頃からは湯釜付近浅部を震源とする火山性地震がやや増加し、地震活動とほぼ同時期から湯釜浅部の膨張を示す地殻変動が観測されました。湯釜湖水中の高温の火山ガス由来成分の濃度は高い状態が続き、10月と11月に実施した全磁力観測では、水釜周辺地下の温度上昇を示唆する変化が観測されました。これらのことから、火山活動は高まった状態で経過していると考えられ、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。

○ 草津白根山(本白根山)

 平成30年1月の噴火以降、噴火は発生していません。また、同年2月下旬以降、噴気は観測されておらず、本白根山火口付近の地震は、同年12月以降は少ない状態で経過しました。これらのことから、平成31年4月5日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その後も火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過しました。

○ 浅間山

 8月7日に小噴火が発生し、今後、居住地域の近くまで影響を及ぼす噴火の可能性があることから、噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から3(入山規制)に引き上げました。その後、火山活動のさらなる活発化は認められないことから、8月19日に噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げました。8月25日にも小噴火が発生しましたが、その後、噴火は発生しませんでした。2回の噴火の後も、噴煙量及び火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は概ね少ない状態で経過し、火山性地震は10月上旬から少ない状態で経過しました。噴火前後を含め、深部からのマグマ上昇を示す地殻変動は観測されませんでした。これらのことから、火山活動が低下していると判断し、11月6日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。これ以降も、火山活動に特段の変化はなく、低調に経過しました。

○ 箱根山

 3月中旬頃から大涌谷周辺の隆起・膨張を示す地殻変動が認められ、4月下旬頃から火山性地震が増加する中で、5月中旬に火山性地震が急増し、火山活動が高まったことから、5月19日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その後、地震活動は増減を繰り返しながら継続しましたが、9月以降、5月の地震活発化の前の状態に戻り、地殻変動も停滞したことから、10月7日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その後、火山活動に特段の変化はありませんが、大涌谷周辺の想定火口域では、活発な噴気活動が継続しました。

○ 西之島

 平成30年7月下旬以降、噴火は確認されず、気象衛星ひまわりの観測でも、西之島の地表面温度は周囲とほとんど変わらない状態となっていましたが、令和元年12月5日に地表面温度が明瞭に高い状態が観測され、噴火が開始したと推定されました。このことから、同日、火口周辺警報(火口周辺危険)から火口周辺警報(入山危険)に引き上げ、警戒が必要な範囲を500mから1.5kmに拡大しました。12月6日に海上保安庁が実施した上空からの観測では、島の中央部やや南に位置する火砕丘の山頂火口から噴石が飛散し、東山腹からは溶岩が流出しているのが確認されました。12月15日に海上保安庁が実施した上空からの観測では、北山腹からも溶岩が流出し、海に達していることが確認されたことから、12月16日に警戒が必要な範囲を山頂火口から2.5kmに拡大しました。今回の噴火は、平成25年以降のこれまでの噴火活動と同様に、火砕丘の山頂火口とその周辺で発生しており、噴火様式はこれまでとほぼ同様と推定されます。その後、活発な噴火活動が継続し、地表面温度は、島の南と西に大量の溶岩を流出した平成29年噴火時よりも高い状態が続きました。

○ 硫黄島

 7月から8月の現地調査では、北ノ鼻海岸や馬背岩付近に新たに噴火口を確認しました。北ノ鼻海岸の噴火口は、前回の調査(3月)以降に形成されたものと推定されます。また、GNSS連続観測では、島全体の隆起がみられている中、10月10日から14日にかけて主に硫黄島北部が沈降する短期的な変化がみられました。硫黄島の島内は全体的に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、火山活動はやや活発な状態で推移しました。これらのことから、火口周辺警報(火口周辺危険)を継続しました。

○ 阿蘇山

 2月以降、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量がやや多い状態となり、火山性微動の振幅が増大しました。3月11日夜からは、火山性微動の振幅が更に大きくなるなど、火山活動の活発化が認められたことから、3月12日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。3月15日以降は火山性微動の振幅は小さい状態で経過し、火山活動に伴う特段の地殻変動は認められないことから、3月29日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その後、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が多い状態で経過している中、4月14日未明から火山性微動の振幅が大きくなるなど、火山活動の活発化が認められたことから、同日、噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。4月16日には中岳第一火口で噴火が発生し、その後も断続的に噴火が継続しました。傾斜計では、火山活動の更なる活発化を示唆する変化は認められないものの、GNSS連続観測では、深部にマグマだまりがあると考えられている草千里を挟む基線において、平成30年後半頃から緩やかに伸びの傾向が継続しました。

○ 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)

 硫黄山の南側の噴気地帯及び西側500m付近では活発な噴気活動が継続しましたが、1月以降は更なる規模の拡大は認められず、硫黄山付近のごく微小な地震を含む火山性地震は2月頃から減少し、4月以降少ない状態で経過しました。GNSS連続観測では、硫黄山近傍の基線で伸びの傾向は2月頃からは概ね停滞しました。これらのことから、4月18日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その後も、硫黄山では活発な噴気活動が続きましたが、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、1日当たり10トン未満と少なく、火山性地震も少ない状態で経過し、現地調査や地殻変動観測でも特段の変化は認められませんでした。

○ 霧島山(新燃岳)

 新燃岳火口直下を震源とする火山性地震は平成30年11月中旬頃から減少し、山体膨張を示す変化は認められず、火山活動が低下したことから、平成31年1月18日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。2月下旬から火山性地震が増加したことから、2月25日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その後、火山性地震が減少したことから、4月5日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。11月中旬から再び火山性地震が増加したことから、11月18日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げましたが、火山性地震が減少したことから、12月20日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。GNSS連続観測では、霧島山の深い場所でのマグマの蓄積を示すと考えられる基線の伸びは平成31年2月以降停滞しました。

○ 桜島

 南岳山頂火口では、噴火活動が平成30年11月頃から平成31年1月頃にかけて活発となり、その後はやや低下していましたが、9月以降は再び活発な状態となりました。年間で噴火が393回発生し、このうち爆発は228回でした。噴煙は最高で火口縁上5,500mまで上がりました。弾道を描いて飛散する大きな噴石は最大で4合目(南岳山頂火口より1,300~1,700m)まで達しました。また、同火口では高感度の監視カメラで火映を時々観測しました。一方、昭和火口では、噴火は観測されませんでした。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、9月以降多い状態で経過しました。鹿児島県が実施している降灰の観測データから推定した桜島の火山灰月別噴出量は、噴火活動が活発となった9月以降、やや増加しました。桜島島内の傾斜計及び伸縮計では、9月上旬頃から山体の隆起及び膨張と考えられる変化がみられました。GNSS連続観測では、桜島島内の基線で9月頃から山体膨張と考えられる変化が継続しました。広域のGNSS連続観測では、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部の膨張を示す一部の基線で、9月以降わずかな伸びが認められており、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部では、長期にわたり供給されたマグマが蓄積した状態が継続しました。これらのことから、噴火警戒レベル3(入山規制)を継続しました。

○ 薩摩硫黄島

 11月2日に硫黄岳で噴火が発生しました。噴火に伴う灰白色の噴煙が火口縁上1,000mをわずかに超える程度まで上がりましたが、火砕流や噴石は観測されませんでした。今後、火口から1km以内の範囲に噴石を飛散させる程度の小規模な噴火が発生する可能性があることから、11月2日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。11月3日に第十管区海上保安本部の協力により実施した上空からの観測や、11月5日から7日にかけて実施した現地調査では、噴煙の状況や地熱域の分布などに特段の変化は認められませんでしたが、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量はやや多い状態でした。傾斜計やGNSS連続観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。その後、噴火は発生しておらず、地震や微動の発生状況や地殻変動の状況に特段の変化はありませんが、夜間に火映が観測され、時折噴煙が高くなるなど、長期的には熱活動が高まった状態が継続しました。

○ 口永良部島

 1月17日に新岳で噴火が発生し、新岳火口から大きな噴石が約1,800m飛散するとともに、火砕流が北西側約1,900m及び南西側約1,600m流下するなど平成30年10月以降の噴火活動で最も規模の大きな噴火となりました。その後も断続的に噴火が発生しましたが、2月3日以降噴火は観測されませんでした。新岳火口付近のごく浅い場所を震源とする火山性地震が2月以降減少し、火山活動がやや低下したため、6月12日に噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げました。10月には新岳火口付近の浅い場所を震源とする規模の大きな地震や新岳の西側山麓のやや深い場所を震源とする火山性地震が発生し、火山活動の活発化が認められたことから、10月28日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。その後も、12月にかけて時々火山性地震が増加し、新岳火口付近の浅い場所を震源とする規模の大きな地震が発生するなど、活発な地震活動が継続しました。

○ 諏訪之瀬島

 御岳火口では、噴火が時々発生し、爆発は15回(1月:1回、8月:4回、12月:10回)で、活発な火山活動が継続しました。これらの爆発に伴い、監視カメラで火口付近に飛散する噴石を時々確認しました。11月以降、諏訪之瀬島付近を震源とする規模の大きな地震が増加し、最大のものは、11月6日に島内の震度観測点で震度3を観測しました。火山性微動は時々発生しました。GNSS連続観測では、火山活動によると考えられる変化は認められませんでした。これらのことから、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。


5章 黄砂、紫外線など

1節 黄砂

 平成31年/令和元年(2019年)の国内のいずれかの気象台で黄砂現象を観測した日数(黄砂観測日数)は8日でした。

日本における年別の黄砂観測日数(昭和42年(1967)年~令和元年(2019年))

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 日本への黄砂の飛来は、例年3月~5月に集中しています。この時期は、①東アジアの砂漠域のような黄砂の発生源となっている地域で地面を覆う積雪がなくなる一方、まだ植物が芽吹いていないため乾燥した地面がむき出しで、砂じん(砂やちり)が舞い上がりやすいこと、②大量の砂じんを舞い上げ、運ぶ強風の原因となる低気圧が通りやすい季節であることから、黄砂が多く飛来します。この時期以外にも、黄砂の発生源となっている地域が乾燥していて上空の風が日本へ向いて吹いているなどの条件がそろえば、日本に黄砂が飛来します。

 平成31年/令和元年の月別黄砂観測日数は、10月~11月にかけて平年を上回ったものの、その他の月では平年を下回りました。

平成31年/令和元年(2019年)の月別黄砂観測日数

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2節 オゾン層・紫外線

 上空に存在するオゾンは、フロン等による大規模なオゾン層破壊の影響で、1980年代から1990年代半ばにかけて世界的に大きく減少しました。その後は、国際的なオゾン層保護の取組により、わずかに回復しています。国内でも、つくばなどの地点で地上から上空までのオゾンの総量(オゾン全量)を観測していますが、同様な傾向が見られます。(第1部3章4節「環境気象情報の発表」参照)。また、オゾン層破壊の指標である南極オゾンホールの平成31年/令和元年(2019年)の面積は、大規模なオゾンホールが継続してみられるようになった平成2年(1990年)以降で最も小さくなりました。南極域上空の気温が高く推移したことなど、気象状況が主な要因とみられます。

南極オゾンホール

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 紫外線の人体への影響度を示す紅斑(こうはん)紫外線量は、国内では観測を開始した1990年代初めから緩やかに増加しています。一般に、上空のオゾン量が減少すると地表に到達する紫外線は増加しますが、この期間、国内ではオゾン量は減少していません。大気中の微粒子が減少して紫外線が地上に到達しやすかったことなどが紅斑紫外線量の増加の原因と考えられています。

日本国内の紅斑紫外線量年積算値の経年変化

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3節 日射と赤外放射

 地球の大気や地表は、太陽からの放射(日射)によって暖まり、大気外への地球放射(赤外放射)によって冷えます。大気中にわずかに含まれる二酸化炭素やメタン等の温室効果ガスは、地表面から地球の外に向かう赤外放射を吸収し、再びあらゆる方向に赤外線を放射しています。そのため、温室効果ガスが増加すると、これまで地球の外に出ていた赤外放射の一部が地表面に戻り(地表面に向かう(下向き)赤外放射が増加し)、地表面や大気が暖まります。一方、地表面に達する日射の量は、雲、水蒸気、エーロゾルなどの量によって変わります。例えば、火山噴火で成層圏のエーロゾルが大幅に増加すると、噴火後数年間にわたって地表面に到達する日射が減少し、全球の平均気温が低下することがあります。日射及び赤外放射の変化は、気候変動の要因のひとつですが、そのメカニズムについてはまだ十分に解明されていません。

 日射及び赤外放射の地球環境や気候への影響を把握するため、気象庁では、1931年から行ってきた日射観測の観測要素を拡充した精密日射放射観測(直達日射、散乱日射、下向き赤外放射)を2010年に国内5地点(札幌、つくば、福岡、石垣島、南鳥島)で開始しました。これらの観測データは、世界気象機関(WMO)をはじめとした国内外の関係機関にも提供され、気候変動の監視や温暖化予測モデルの精度向上に貢献しています。また、温暖化対策や再生可能エネルギーに関する研究や技術開発にも信頼性の高い高精度なデータの提供を通じて貢献しています。

 世界の多くの地域における全天日射量は、1960年頃から1980年代後半まで減少し、その後、2000年頃まで急激に増加し、その後は大きな変化が見られないという傾向が報告されています。

 日本における変化傾向(国内5地点平均)を見ると、1970年代後半から1990年頃にかけて急激に減少し、1990年頃から2000年代初めにかけて急激に増加し、その後は大きな変化は見られません。これは、世界的な変化傾向とほぼ整合しています。

精密日射放射観測装置全天日射量の経年変化

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