第4部 最近の気象・地震・火山・地球環境

1章 気象災害、台風など

1節 平成30 年(2018 年)のまとめ

 2月3日から2月8日にかけて日本付近で強い冬型の気圧配置が続き、北日本から西日本の日本海側で断続的な雪となり、特に福井県福井市では昭和56年の豪雪以来の記録的な大雪となりました。この大雪によって、福井県や石川県で多数の車両の立ち往生が発生しました。

 5月下旬から7月上旬にかけて、日本付近に停滞した梅雨前線や台風等の影響で、各地で大雨となりました。特に、6月28日から7月8日にかけては、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となり、この大雨によって各地で河川の氾濫や土砂災害等が発生し、死者数が200人を超える※甚大な災害となりました。気象庁は、この豪雨について「平成30年7月豪雨」と名称を定めました。

 9月3日から5日にかけて、台風第21号は、西日本に上陸した後日本海へ進みました。台風第21号の影響で、暴風によりタンカーが関西国際空港連絡橋に衝突する事故や、高潮及び高波により関西国際空港の滑走路や兵庫県芦屋市等の住宅地で浸水被害が発生しました。

 9月28日から10月1日にかけて、台風第24号は沖縄地方に接近した後、和歌山県に上陸し北東に進みました。台風第24号の影響で、広い範囲で暴風となり、関東地方では塩害による停電で鉄道の運休が発生しました。

※被害状況は内閣府「平成30年7月豪雨による被害状況等について」(平成30年10月9日17時00分)による

平成30年(2018年)に発生した主な気象災害

2節 平成30 年(2018 年)の主な気象災害

・強い冬型の気圧配置による大雪(2月3日~2月8日)

 日本付近は、2月3日から8日にかけて強い冬型の気圧配置が続き、上空には非常に強い寒気が流れ込み続けました。この影響で、北日本から西日本の日本海側を中心に断続的に雪が降り、3日から8日にかけての期間降雪量が、石川県加賀市で177センチ、福井県福井市で144センチとなるなど、北陸地方を中心に、山地や山沿いに加え平野部でも大雪となりました。特に、福井市では、この期間の最深積雪が147センチ(7日15時)となり、近年では昭和56年(1981年)の豪雪以来の記録的な大雪となりました。

天気図(2月6日09時)

期間降雪量分布図(2月3日00時~8日24時)

福井県福井市における1時間降雪量・積雪量時系列図(2月3日00時~8日24時)

・平成30年7月豪雨(6月28日~7月8日)

 6月28日から7月8日にかけ、日本付近に停滞した梅雨前線や台風第7号の影響で暖かく非常に湿った空気が継続して流れ込み、総雨量が多いところで1,800ミリを超えるとともに、九州北部、四国、中国、近畿、東海、北海道地方の多くの観測地点で24、48、72時間降水量の値が観測史上第1位を記録するなど、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となりました。

 この大雨について、岐阜県、京都府、兵庫県、岡山県、鳥取県、広島県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県の1府10県に特別警報を発表しました。

天気図(7月6日09時)

期間降水量分布図(6月28日00時~7月8日24時)

48時間降水量の期間最大値(6月28日00時~7月8日24時) 観測史上1位を更新した地点数:125 地点

岡山県倉敷市に関する警報等発表状況と降水量時系列図(7月5日00 時~8日24時)

岡山県倉敷市真備町上空から見た浸水状況(7月9日)

・台風第21号による暴風・高潮等(9月3日~5日)

 台風第21号は、9月4日12時前に非常に強い勢力で徳島県南部に上陸した後、同日14時前に兵庫県神戸市付近に再上陸し、速度を上げながら近畿地方を縦断しました。その後、日本海を北上し、5日9時に間宮海峡で温帯低気圧に変わりました。

 台風第21号の接近・通過に伴い、西日本から北日本にかけて暴風、高波、大雨となったほか、四国地方や近畿地方では顕著な高潮が発生しました

 大阪府田尻町関空島(関西空港)で最大風速46.5メートル、最大瞬間風速58.1メートルとなるなど四国地方や近畿地方で猛烈な風を観測し、観測史上第1位を記録したところがありました。

 大阪府大阪市で最高潮位329センチメートルなど、過去の最高潮位を超える潮位を観測したところがありました。

平成30年台風第21号経路図

期間最大風速(9月3日00時~9月5日24時)

風速 期間最大値(9月3日00時~9月5日24時)

大阪市の潮位時系列図(9月4日00時~24時)

・台風第24号による暴風・高潮等(9月28日~10月1日)

 台風第24号は、9月28日から30日明け方にかけて、非常に強い勢力で沖縄地方に接近した後、北東に向きを変え、急速に加速しながら、30日20時頃に強い勢力で和歌山県田辺市付近に上陸しました。その後、東日本から北日本を縦断し、10月1日9時に日本の東で温帯低気圧に変わりました。

 台風第24号の接近・通過に伴い、広い範囲で暴風、大雨、高波、高潮となりました。

 鹿児島県奄美市笠利で最大風速40.0メートル、最大瞬間風速52.5メートルとなるなど、南西諸島及び西日本・東日本の太平洋側を中心に猛烈な風を観測し、観測史上第1位を記録したところがありました。

 和歌山県串本町で最高潮位254センチメートルなど、過去の最高潮位を超える潮位を観測したところがありました。

平成30年台風第24号経路図

期間最大風速(9月28日00時~10月1日24時)

風速 期間最大値(9月28日00時~10月1日24時)

和歌山県串本町の潮位時系列図(9月30日00時~10月1日12時)


3節 平成30年(2018 年)の台風

 平成30年(2018年)の台風の発生数は平年より多い29個(平年値25.6個)でした。8月には9個の台風が発生し、台風の統計を開始した1951年以降、8月の発生数としては1960年と1966年の10個に次ぐ3位タイの多さとなりました。また、猛烈な強さ(最大風速54m/s以上)まで発達した台風は7個(第3号、第8号、第21号、第22号、第24号、第25号、第26号)で、台風の最大風速のデータがある1977年以降、1983年の6個を上回る最多記録となりました。

 日本への接近数は平年より多い16個(平年値11.4個)でした。上陸数は、平年値2.7個より多い5個(第12号、第15号、第20号、第21号、第24号)でした。

平成30年(2018年)に発生した台風の経路

平成30年(2018年)に発生した台風の一覧

2章 天候、異常気象など

1節 日本の天候

 平成30年(2018 年)は、冬は全国的に気温が低く北陸地方中心に大雪となりました。春から夏にかけては東・西日本中心に記録的な高温となり、東日本では年平均気温も記録的に高くなりました。「平成30年7月豪雨」など全国各地で大雨が発生しました。

 年平均気温は、東日本でかなり高く、北・西日本と沖縄・奄美で高くなりました。

 年降水量は、北日本日本海側、西日本太平洋側でかなり多く、北日本太平洋側、東・西日本日本海側、沖縄・奄美で多くなりました。東日本太平洋側では平年並でした。

 年間日照時間は、東・西日本、沖縄・奄美でかなり多くなりました。北日本では平年並でした。


2018 年の各季節の特徴は以下のとおりです。

① 冬(2017年12月~2018年2月)は、日本付近に強い寒気の流れ込むことが多かったため、全国的に冬の平均気温は低く、特に西日本は平年差-1.2℃と過去32年間で最も低くなりました。北日本から西日本にかけての日本海側では発達した雪雲が日本海から盛んに流れ込み、北陸地方を中心に度々大雪になり、交通障害が発生しました。福井では、最深積雪が147cmに達し、37年ぶりに140cmを超えました。北・東日本太平洋側でも低気圧の影響で大雪になった日がありました。

② 春(3~5月)は、期間を通して暖かい空気に覆われやすかったため、全国的に春の平均気温はかなり高くなりました。特に東日本は平年差+2.0℃と春としては1946年の統計開始以来最も高くなりました。東日本から沖縄・奄美にかけては、高気圧に覆われ晴れた日が多くなりましたが、北日本から西日本にかけては、低気圧の通過時には南から湿った空気が流れ込み大雨となる日もありました。春の日照時間は、東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美でかなり多くなりました。春の降水量は、北・東日本日本海側でかなり多くなりました。一方、沖縄・奄美ではかなり少なくなりました。

③ 夏(6~8月)は、7月上旬に本州付近に梅雨前線が停滞し、南から大量の湿った空気が流れ込んだため、西日本中心に数日にわたり記録的な大雨となり、土砂災害や河川の氾濫など甚大な被害が発生しました(「平成30年7月豪雨」)。7月中旬以降は、太平洋高気圧とチベット高気圧の張り出しがともに強まり、多くの地方で梅雨明けがかなり早く、東・西日本中心に晴れて気温が顕著に上昇する日が多くなりました。7月23日には、熊谷(埼玉県)で日最高気温41.1℃を記録して歴代全国1位となりました。東・西日本は夏の平均気温がかなり高く、東日本では平年差+1.7℃と1946年の統計開始以来最も高くなりました。全国の気象官署153地点のうち48 地点で夏の平均気温の高い方から1位の値(タイを含む)を記録しました。一方、北日本日本海側は梅雨前線や秋雨前線の影響で、西日本太平洋側と沖縄・奄美は台風や梅雨前線の影響で記録的な大雨があったため、夏の降水量はかなり多く、沖縄・奄美では1946年の統計開始以来最も多くなりました。

④ 秋(9~11月)は、日本の東海上で高気圧の勢力が強く、北からの寒気が南下しにくかったため、秋の平均気温は北・東日本で高くなりました。活発な秋雨前線と台風の影響で、秋の降水量は東日本から沖縄・奄美にかけて多くなりました。9月上旬には、台風第21号が非常に強い勢力で徳島県南部に上陸したのち近畿地方を北上しました。9月下旬には、台風第24号が沖縄地方に接近した後、和歌山県田辺市付近に上陸し、西日本から北日本を縦断しました。これらの台風の接近・通過に伴い、広い範囲で暴風、大雨、高潮、高波となりました。

地域平均気温平年差の経過

2節 世界の主な異常気象

 2017年秋に始まったラニーニャ現象が2018年春まで続きましたが、2018年は1年を通して世界各地で異常高温が発生しました(図中①②⑤⑦⑩⑪⑫⑭⑯⑲㉑㉓㉕㉖)。夏(6~8月)の3か月平均気温は、東日本で1946年以降最も高く、韓国、中国、米国南西部でも、それぞれ統計開始(それぞれ1973年、1961年、1895年)以降最も高くなりました。ヨーロッパ中部から南部では異常高温が発生した月が9か月あり(図中⑭)、北日本から中国北西部、ミクロネシア北西部から東南アジア北西部、中央アジア南部から南アジア南東部、北米南部から中米中部、オーストラリア東部から南部では異常高温が発生した月が6か月以上ある(図中⑤⑦⑩㉑㉖)など、北半球の夏を中心に世界各地で異常高温が発生しました。

 ヨーロッパ南部から北アフリカ北西部では1~6月、8~10月に、米国北東部から南部では2月、5月、8~12月に異常多雨となりました(図中⑮⑳)。米国南部、北東部、北中西部の秋(9~11月)の3か月降水量は、1895年以降で1番目、2番目、3番目に多くなりました。一方、ヨーロッパ中部及びその周辺では、2月、5~11月にかけて異常少雨となりました(図中⑬)。

 インド各地では6月から9月の大雨により(図中⑨)、合計で1,500人以上が死亡したと伝えられました(インド政府による)。東アフリカ北部から中部では、3月から5月の大雨や5月のトロピカル・ストーム「SAGAR」により(図中⑱)、合計で500人以上が死亡したと伝えられました(ルワンダ政府、欧州委員会、国連人道問題調整事務所による)。

 オーストラリア南東部では、1~9月にかけて干ばつとなり(図中㉗)、農業収益への影響は1978年以降でみると2018年は2002~2003年の干ばつと並んで最悪だったと伝えられました(オーストラリア政府による)。ニューサウスウェールズ州の1~9月の総降水量は、同期間としては1900年以降で3番目に少なくなりました(オーストラリア気象局による)。

 なお、以上の災害に関する記述は、米国国際開発庁海外災害援助局とルーベンカトリック大学災害疫学研究所(ベルギー)が共同で運用する災害データベース(EM-DAT)や各国の政府機関、国連機関の発表等に基づいています。

平成30年(2018年)の世界の異常気象と気象災害

3節 世界と日本の平均気温

 世界の年平均気温は、長期的には100年あたり0.73℃の割合で上昇しています。平成30年(2018年)の世界の年平均気温の基準値(昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)の30年平均値)からの偏差は+0.31℃で、統計を開始した明治24年(1891年)以降で4番目に高い値となりました。最近4年(平成27年(2015年)~平成30年(2018年))は、すべて歴代4位以内でした。

 日本の年平均気温は、長期的には100年あたり1.21℃の割合で上昇しています。平成30年(2018年)の日本の年平均気温の基準値からの偏差は+0.68℃で、統計を開始した明治31年(1898年)以降で6番目に高い値となりました。

世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2018年)

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4節 大雨・短時間強雨

 国内51観測地点における明治34年(1901年)~平成30年(2018年)の118年間の観測値によると、日降水量100ミリ以上及び200ミリ以上の大雨の年間日数は長期的に増加しています。

 全国約1,300地点のアメダスによる昭和51年(1976年)~平成30年(2018年)の43年間の観測値によると、1時間降水量(毎正時における前1時間降水量)50 ミリ以上及び80ミリ以上の短時間強雨の年間発生回数は増加しています。1時間降水量50ミリ以上の場合、最近10年間(平成21年(2009年)~平成30年(2018年))の平均年間発生回数(1,300地点あたり約311回)は、統計期間の最初の10年間(昭和51年(1976年)~昭和60年(1985年))の平均年間発生回数(1,300地点あたり約226回)と比べて約1.4倍に増加しています。ただし、大雨や短時間強雨の発生回数は年々変動が大きく、それに対してアメダスの観測期間は比較的短いことから、長期変化傾向を確実に捉えるためには今後のデータの蓄積が必要です。

1 時間降水量50 ミリ以上の年間発生回数の経年変化

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5節 大気中の二酸化炭素

 二酸化炭素は、化石燃料の消費や森林破壊といった人間活動から生じ、地球温暖化への影響が最も大きな温室効果ガスです。大気中の二酸化炭素の世界平均濃度は工業化(18世紀後半)以前は280 ppm※程度でしたが、人間活動により増加を続け、平成29年(2017年)には工業化前の1.5倍ほどの405.5 ppmに達しました。世界各地の観測データを緯度20度ごとに平均した二酸化炭素濃度のこれまでの変化を見ると、化石燃料が多く消費されている北半球で南半球より全般的に濃度が高くなっています。また植物の光合成活動などが原因で起こる季節による濃度変動も森林の多い北半球で大きくなっています。

※ppm(ピーピーエム)は、大気中の分子100万個中にある対象物質の個数を表す単位です。

大気中の二酸化炭素の世界平均濃度の経年変化

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大気中の二酸化炭素の緯度帯平均濃度の経年変化

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6節 その他の温室効果ガス

 二酸化炭素の他に地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガスとして、メタン、一酸化二窒素があります。これらも人間活動に伴い増加しており、大気中の濃度は工業化前の2.6倍、1.2倍にそれぞれ達しています。

 また、エアコンや冷蔵庫で空気を冷却するために使われてきたクロロフルオロカーボン類(いわゆるフロン類:CFC-11、CFC-12、CFC-113など)には、オゾン層を破壊する性質とともに強い温室効果があります。これらは生産や使用の規制により大気中の濃度が近年減少傾向にあります。一方、フロン類の代わりとして使用されているハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC-22など)やハイドロフルオロカーボン類(HFC-134aなど)は、オゾン層を破壊しにくい(あるいは破壊しない)ものの、いずれも強力な温室効果ガスで、これらの大気中の濃度は増加を続けています。

クロロフルオロカーボン類等の平均濃度の経年変化

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7節 海面水温

 平成30年(2018年)の世界の年平均海面水温の平年差(昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)までの30 年平均値からの差)は+0.22℃で、統計を開始した明治24年(1891年)以降では平成28年(2016年)、平成27年(2015年)、平成29年(2017年)に次いで4番目に高い値となりました。世界の年平均海面水温は、数年から数十年に及ぶ時間規模の海洋・大気の変動や地球温暖化等の影響が重なりながら変化していますが、長期的には100 年あたり+0.54℃の割合で上昇しています。数年から数十年の時間規模では、1970年代半ばから2000 年前後にかけて顕著な上昇が見られた後、2010年代前半までは停滞していましたが、平成26年(2014年)から平成28年(2016年)まで3年連続で統計開始以降の最高記録を更新しました。その後平成30年(2018年)までの2年連続の下降には、平成29年(2017年)から平成30年(2018年)にかけて発生したラニーニャ現象も影響したと考えられます。

世界の年平均海面水温

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 平成30年(2018年)の日本近海の海面水温は、日本の東や日本の南を中心に平年より高くなりました。1~2月は日本海や東シナ海を中心に平年より低い海域が広くみられましたが、3月には日本の東や日本の南で平年より高くなり、5月には東シナ海南部や沖縄の東、父島近海の広い範囲で平年よりかなり高くなりました。7月には北緯30度から北緯40度の間で平年よりかなり高くなり、9月は日本の東や東シナ海で平年より高くなりました。11~12月には日本周辺海域で平年よりかなり高い海域が広くみられました。紀伊半島の南から東海沖では、黒潮大蛇行の影響で平年よりかなり低い海域がしばしばみられました。三陸沖では、暖水渦の影響で平年より高い海域がみられましたが、12月には下層の冷水により平年より低い海域もみられました。

エルニーニョ監視海域の海面水温の変化

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8節 海洋中の二酸化炭素

 海洋は、人間活動により放出された二酸化炭素の約3分の1を吸収していると見積もられており、地球温暖化の進行を緩和しています。気象庁の海洋気象観測船「凌風丸」と「啓風丸」は、昭和59年(1984年)から30年以上にわたって北西太平洋で表面海水中と大気中の二酸化炭素濃度を観測しています。東経137度線に沿った日本の南から赤道域までの海域においては、毎年冬季(1~2月)に表面海水中の二酸化炭素濃度が大気中の濃度より低いことが観測されており、海洋が大気中の二酸化炭素を吸収しています。また、北緯7度から33度で平均した二酸化炭素濃度は、昭和59年(1984年)から平成30年(2018年)まででみて、大気中で1年に1.9ppm、表面海水中で1年に1.7ppmの割合で増加しています。表面海水中の二酸化炭素濃度は大気と比べると年々の変動は大きいものの大気中の濃度同様に増加しています。

冬季の東経137 度線に沿った表面海水中と大気中の二酸化炭素濃度(北緯7 度~ 33 度での平均)の経年変化

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9節 オホーツク海の海氷

 平成30年(2018年)から平成31年のオホーツク海の海氷域面積は、おおむね平年並で推移しました。シーズンの最大海氷域面積は119.74万平方キロメートルで、平年の102%でしたが、海氷域の広がりは平年より東に拡大した分布となりました。

 オホーツク海の海氷域面積は年ごとに大きく変動していますが、最大海氷域面積は昭和46年(1971年)の統計開始以来、10年当たり6.6万平方キロメートル(オホーツク海の全面積の4.2%に相当)の割合で減少しています。

平成31年3月10日(最も面積が大きかった日)の海氷域

海氷に関する現象の初終日(平成31年4月現在)

3章 地震活動

1節 日本及びその周辺の地震活動

 平成30年(2018年)に震度5弱以上を観測した地震は11回(平成29年は8回)、震度1以上を観測した地震は2,179回(平成29年は2,025回)でした。国内で被害を伴った地震は4※回(平成29年は5回)でした。日本及びその周辺で発生した地震でマグニチュード6.0以上の地震は17回(平成29年は9回)でした。また、日本で津波を観測した地震は1回でした(平成29年はなし)。

 主な地震活動は下図及び次ページの表のとおりです。

※平成30年9月6日以降に、北海道胆振地方で発生した一連の地震活動(「平成30年北海道胆振東部地震」)により生じた被害については1回として扱った。

主な地震の震央分布(平成30年)

主な地震(平成30年)

2節 世界の地震活動

 平成30年(2018年)に発生したマグニチュード7.0以上または死者(行方不明者を含む)を伴った地震は23回でした。また、マグニチュード8.0以上の地震は1回でした。最も規模の大きかった地震は、8月19日にフィジー諸島で発生したMw8.2(気象庁による)の地震でした。海外の地震により日本で津波を観測した地震はありませんでした。

 主な地震活動は表のとおりです。


4章 火山活動

 平成30年(2018年)は、草津白根山(本白根山)、西之島、硫黄島、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺、新燃岳)、桜島、口永良部島及び諏訪之瀬島の7火山で噴火が発生しました。このうち、口永良部島では、8月15日に噴火警報(居住地域)を発表し、噴火警戒レベルを4に引き上げました。これを含め、平成30年には、火山活動の推移に伴い、8火山に対し噴火警報を計26回発表しました。

 平成30年の日本の主な火山活動は以下のとおりです。そのほかの最新の火山活動のとりまとめについては、気象庁ホームページに掲載している火山活動解説資料をご覧ください(https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/monthly_vact.php)。

○雌阿寒岳(北海道)

 11月20日からポンマチネシリ火口の浅い所を震源とする火山性地震が増加し、23日には更に増加して振幅の大きな地震も多くなるなど火山活動が高まった状態となったことから、11月23日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。24日以降、火山性地震は減少し、地震活動が低調な状態となるなど、火山活動が静穏時の状態に戻る傾向がみられたことから、12月21日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。

○十勝岳(北海道)

 5月29日以降、62-2火口付近の浅い所を震源とする火山性地震の一時的な増加や火山性微動が時々観測されました。11月22日には、継続時間が約27分間のやや長い火山性微動が発生し、火山性地震の一時的な増加がみられました。

○秋田駒ヶ岳(岩手県、秋田県)

 2月から8月にかけて低周波地震が発生しました。また、4月3日に振幅の小さな火山性微動が発生しました。火山性微動、低周波地震発生前後も含めて、傾斜計など地殻変動データに特段の変化は認められませんでした。女岳の山頂付近の噴気や地熱域に特段の変化は認められませんでした。

○蔵王山(宮城県、山形県)

 1月28日から2月8日にかけて火山性微動が6回発生しました。このうち1月30日14時18分に観測された微動の最大振幅は、平成22年(2010年)9月の観測開始以来最大となりました。また、傾斜計では、1月28日の微動発生に先行して、熊野岳の南方向が隆起する明瞭な地殻変動が観測され、その後も継続したことから、1月30日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。2月4日以降地殻変動に変化はなく、2月9日以降火山性微動は観測されなくなったことから、3月6日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。

○吾妻山(福島県、山形県)

 7月22日に火山性微動が発生し、それ以降、傾斜計で大穴火口方向が隆起する傾斜変動が継続しました。また、9月15日に火山性微動が発生したことから、9月15日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。それ以降も火山性微動は繰り返し発生し、10月から11月にかけては多い状態で経過しました。火山性地震は8月中旬頃から増減を繰り返しながら多い状態で経過しました。GNSS連続観測では、5月頃から大穴火口付近の膨張を示す地殻変動が継続しています。監視カメラによる熱映像データの解析では、10月中旬頃から大穴火口及びその周辺で地熱域の拡大が認められています。3月から10月にかけての上空からの観測(陸上自衛隊東北方面隊の協力による)では、大穴火口北西で地熱域の拡大がみられ、新たな噴気を観測しました。5月から9月にかけての現地調査では、大穴火口北西や大穴火口外北側の地熱域でわずかな拡大がみられました。

○草津白根山(白根山(湯釜付近))(群馬県)

 4月21日から湯釜付近浅部を震源とする火山性地震が増加し、ほぼ同時期から湯釜浅部の膨張を示唆する地殻変動が認められ、湯釜近傍地下の温度上昇を示唆する全磁力変化が観測されたことから、4月22日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その後、地殻変動は8月下旬頃に概ね停滞し、全磁力変化は7月末頃から停滞しました。地震活動も9月上旬頃から静穏な状態で経過したことから、9月21日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。9月28日に湯釜付近浅部を震源とする火山性地震が再び増加したことから、9月28日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。火山性地震は9月30日以降減少しましたが、増減を繰り返しています。10月はじめ頃から、湯釜浅部の膨張を示唆する地殻変動が再び観測されています。GNSS連続観測では、平成30年(2018年)に入ってから草津白根山の北西もしくは西側深部の膨張を示唆する変化がみられていましたが、10月頃から停滞しています。現地調査や上空からの観測では、引き続き湯釜火口壁北側、水釜火口の北から北東側の斜面に地熱域が認められましたが、地熱域の広がりや温度に顕著な変化は認められませんでした。

○草津白根山(本白根山)(群馬県)

 1月23日10時02分頃に鏡池火口北側の火口列と西側の火口および鏡池火口底の火口列から噴火が発生したことから、23日に火口周辺警報を発表しました。この噴火の前後で、振幅の大きな火山性微動が09時59分から約8分間観測され、傾斜計では10時00分頃から約2分間で本白根山の北側付近が隆起し、その直後の数分間で沈降する変化が観測されました。主な噴出物は傾斜計で沈降が観測された時間帯に放出されたと考えられます。この噴火により、死者1名、重傷3名、軽傷8名の人的被害が生じました(「草津白根山の火山活動の状況等について」(内閣府、平成30年1月24日8時30分現在による))。噴火発生以降、火口付近ごく浅部で火山性地震が多発し、わずかな傾斜変動を伴う振幅の小さな火山性微動が24日と25日に発生しました。地震は徐々に減少し、5月頃からは少ない状態で経過していますが、6月から8月にかけてと10月下旬から12月上旬にかけて発生頻度が高まるなど、地震活動は継続しています。また、逢ノ峰付近でも時々地震が発生しています。現地調査や上空からの観測では、噴火した複数の火口周辺で地熱域等は認められませんでした。

○浅間山(長野県、群馬県)

 火山性地震は6月頃からやや少ない状態となり、浅間山の西側の膨張を示すと考えられる地殻変動も平成30年(2018年)に入ってから停滞しました。また、山頂火口からの噴煙や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量も5月頃から少ない状態となったことから、8月30日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。

○焼岳(長野県、岐阜県)

 11月と12月に焼岳の周辺の地震活動が活発化しましたが、地震活動に伴って、噴気活動や浅部の地震活動に変化は認められず、火山活動の活発化はみられませんでした。

○ベヨネース列岩(東京都)

 海上保安庁及び第三管区海上保安本部の観測によると、明神礁付近では、平成29年(2017年)11月を最後に変色水や気泡などは観測されていません。このことから、噴火が発生する可能性は低くなっていると判断し、10月31日に噴火警報(周辺海域)を解除し、噴火予報(活火山であることに留意)に引き下げました。

○西之島(東京都)

 平成29年(2017年)8月中旬以降噴火が確認されず、火山活動が低下した状態が継続していたことから、6月20日に火口周辺警報(入山危険)を火口周辺警報(火口周辺危険)に引き下げました。7月12日に海上保安庁が上空から実施した観測で、再び噴火が確認され、13日には大きな噴石が火砕丘東側斜面に形成された新たな火口から500メートル程度まで飛散し、火砕丘の山麓部に長さ200メートルの溶岩流を確認したことから、7月13日に火口周辺警報(入山危険)を発表しました。7月下旬以降、噴火は確認されず、気象衛星ひまわりによる観測でも、西之島の地表面温度は周囲と変わらない状態となったことから、10月31日に火口周辺警報(入山危険)を火口周辺警報(火口周辺危険)に引き下げました。

○硫黄島(東京都)

 海上自衛隊硫黄島航空基地が9月12日午前に行った航空機による上空からの観測で、硫黄島南側の沿岸で、海水が海面から5~10メートルの高さまで噴出しているのが確認されました。このことから、海底噴火が発生したと推定されます。

○阿蘇山(熊本県)

 噴煙は白色で概ね500メートル以下で経過し、5月から10月にかけて夜間に火映を観測しました。中岳第一火口の火口底が湯だまりで満たされており、時折、噴湯を確認しました。火山性地震は、3月から5月にかけて一時的に減少しましたが、概ね多い状態で経過しました。微動の振幅は概ね小さな状態で、阿蘇山に特有の孤立型微動は3月以降増加し、4月下旬から6月上旬にかけて一時的に減少しましたが、概ね多い状態で経過しました。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、概ねやや多い状態で経過しました。

○霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)(宮崎県、鹿児島県)

 2月15日から浅い所を震源とする低周波地震が時々発生し、19日からは火山性地震が増加しました。また、活発な噴気活動や熱異常域の拡大及び温度の高まりが認められるなど、火山活動の高まりがみられたことから、2月20日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。4月19日の15時34分頃より火山性微動が発生し、15時39分頃に硫黄山の南側で噴火が発生しました。この噴火に伴い、噴火地点の周辺100メートル程度まで大きな噴石が飛散しました。このことにより、19日15時55分に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げました。19日21時頃まで周辺で噴気地帯の拡大が認められ、火山灰の噴出は20日06時30分頃まで継続しました。19日、20日に実施した上空からの観測(鹿児島県、九州地方整備局の協力による)では、硫黄山の南側に新たな噴気地帯が形成され、その周辺に火山灰が堆積し、黒灰色の泥水が断続的に噴出し、時折この飛沫が火口内に飛散していることを確認しました。4月26日18時15分頃には硫黄山の西側500メートル付近で一時的に火山灰が含まれる噴煙が上がる程度の噴火が発生しました。この噴火に伴う噴石の飛散は観測されませんでした。今後想定される噴火の規模をもとに、5月1日に噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げました。4月27日以降、噴火は発生していませんが、活発な噴気・熱泥噴出活動が続いています。また、5月下旬頃からは硫黄山の南側で湯だまりを確認し、大きさは拡大・縮小を繰り返しています。火山性地震は、5月下旬以降概ねやや多い状態で経過し、浅い所を震源とする低周波地震は少ないながらも引き続き発生しています。GNSS連続観測では、6月上旬頃から伸びの傾向が継続しています。また、平成30年(2018年)3月中旬以降霧島山を挟む基線が伸びに転じ、鈍化しているものの継続しています。これは霧島山の深い場所でマグマの蓄積が続いていると考えられます。

○霧島山(新燃岳)(宮崎県、鹿児島県)

 3月1日11時頃、平成29年(2017年)10月17日以来となる噴火が発生しました。噴火発生後に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が1日あたり5,500トンと急増したことから、3月1日に、火口周辺警報を切替え、火口から概ね2キロメートルの警戒が必要な範囲を3キロメートルに拡大しました。3月6日には平成23年(2011年)3月1日以来の爆発的噴火が発生し、7日にかけて34回断続的に発生しました。傾斜計で、6日9時頃からえびの岳付近の収縮と考えられる明瞭な変化が認められました。この付近は、平成23年の新燃岳の噴火に関与したマグマだまりがあると推定される領域です。また、火口内に新たな溶岩が蓄積しつつあることが確認され、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は7日に1日あたり34,000トンとさらに急増しました。3月9日には火口の北西側への溶岩の流下が観測されましたが、3月下旬頃にかけて流下速度は次第に遅くなり、4月中旬以降停滞しています。3月10日の爆発的噴火では、大きな噴石が火口の中心から1,800メートルまで飛散しました。今後、さらに噴火活動が活発になる可能性があると判断し、火口周辺警報を切替え、火口から概ね3キロメートルの警戒が必要な範囲を4キロメートルに拡大しました。その後、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が次第に減少し、火口内への溶岩の噴出が9日には概ね停止したとみられ、噴火活動のさらなる活発化が認められなくなったことから、3月15日に、火口周辺警報を切替え、火口から概ね4キロメートルの警戒が必要な範囲を3キロメートルに縮小しました。3月25日の噴火では、火砕流が火口縁から西側へ約400メートル流下しました。4月5日の噴火では、火砕流が火口縁から南東側へ約400メートル流下し、噴煙が火口縁上約8,000メートル上がりました。4月以降も時々噴火が発生しましたが、大きな噴石の飛散は火口から2キロメートル以内に留まりました。傾斜計では、6月以降、山体膨張を示す顕著な変化は観測されず、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量も1日あたり100トン以下で推移したことから、6月28日に噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げました。6月28日以降、噴火は観測されていません。火山性地震は11月中旬以降概ね少ない状態で経過しており、10月24日以降火山性微動は観測されず、火山活動が低下した状態が続いていることから、平成31年(2019年)1月18日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。

○霧島山(御鉢)(宮崎県、鹿児島県)

 火口縁を超える噴煙は認められませんでした。御鉢の南西側が振動源と推定される火山性地震が、2月9日から16日にかけて一時的に増加し、継続時間の短い火山性微動も2回発生したことから、2月9日に噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その後、地震は少ない状態で経過し、2月10日以降、火山性微動は観測されなくなったことから、3月15日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。

○桜島(鹿児島県)

 平成30年(2018年)の噴火は479回(平成29年:406回)、このうち爆発的噴火は246回(平成29年:81回)で、昭和火口での噴火は4回と前年(394回)に比べて減少し、爆発的噴火は発生しませんでした(平成29年:77回)。4月2日00時17分の噴火を最後に昭和火口では噴火は発生していません。南岳山頂火口の噴火活動は、3月~9月頃及び11月中旬以降は概ね活発な状態で、6月16日07時19分の爆発的噴火では、多量の噴煙が火口縁上4,700メートルまで上がり、火砕流が南岳山頂火口の南西側へ約1,300メートル流下しました。南岳山頂火口で火砕流を観測したのは平成29年3月25日の噴火で1,100メートル流下して以来でした。7月16日15時38分の噴火では、多量の噴煙が火口縁上4,600メートルまで上がり、大きな噴石が4合目まで達しました(南岳山頂火口の噴火により大きな噴石が4合目まで達したのは、平成24年7月24日の噴火以来)。平成30年の噴火は475回(平成29年:12回)、このうち爆発的噴火は246回と前年(4回)に比べて増加しました。

 平成30年の火山性地震は3,811回で、前年(7,295回)に比べ減少しました。火山性微動の継続時間の年合計は約81時間で、前年(約290時間)に比べ減少しました。桜島島内の傾斜計、伸縮計による観測では、顕著な山体隆起を示す変化は認められず、一部の噴火の発生前に山体のわずかな膨張が、発生直後にわずかな収縮が観測されました。GNSS連続観測では、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部の膨張が続いています。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は噴火活動が活発な時期を中心に多く、特に、5月22日の観測では1日あたり6,200トン、12月12日は4,500トンと非常に多い状態となりました。鹿児島県の降灰量観測データをもとに解析した平成30年の総降灰量は、約191万トン(平成29年:約91万トン)でした。これらの活動状況から、噴火警戒レベル3(入山規制)を継続しました。

○薩摩硫黄島(鹿児島県)

 3月16日に火山性微動が発生し、3月19日には火山性地震が93回と増加したため、噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げました。火山性地震は3月22日にも93回と再び増加しました。その後火山性地震は減少し、火山性微動も観測されなくなったことから、4月27日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。

○口永良部島(鹿児島県)

 8月に入り、火口付近のごく浅い所を震源とする火山性地震や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が増加していた中で、8月15日に新岳の西側山麓のやや深い場所を震源とする火山性地震が増加しました。地震の規模は最大でマグニチュード1.9(暫定値)とやや大きなものでした。この地震の震源は、平成27年(2015年)5月の噴火前(同年1月)に発生した地震と概ね同じ場所であると推定され、新たなマグマの貫入の可能性を示唆するとともに、今後、火山活動が更に高まる可能性があると判断し、8月15日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から4(避難準備)に引き上げました。8月16日以降、新岳の西側山麓のやや深い場所を震源とする火山性地震は観測されず、火口付近のごく浅い所を震源とする火山性地震や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量も減少したことから、8月29日に噴火警戒レベルを4(避難準備)から3(入山規制)に引き下げました。以降、火山性地震は概ね少ない状態で経過していましたが、10月19日から再度増加しました。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は増減を繰り返しながら不安定な状態となっていました。10月21日に平成27年6月以来となる噴火が発生し、12月13日まで断続的に発生しました。一連の噴火では、噴煙が最高で2,100メートルまで上がりましたが、火砕流や噴石は観測されませんでした。12月18日16時37分に再び噴火が発生し、火砕流が火口から西側へ約1,000メートル流下するとともに、大きな噴石が火口から700メートルまで飛散しました。噴煙は、海抜約5,000メートルに達したことが確認されました。

○諏訪之瀬島(鹿児島県)

 御岳火口では活発な噴火活動が継続し、爆発的噴火は42回(平成29年:32回)でした。3月27日の噴火では噴煙が火口縁上2,200メートルまで上がりました(前年の最高2,800メートル)。概ね年間を通して夜間に火映を観測しました。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、集落で降灰を確認した日数は15日(平成29年:9日)でした。これらの活動状況から、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続しました。


5章 黄砂、紫外線など

1節 黄砂

 平成30年(2018年)の国内のいずれかの気象台や測候所で黄砂現象を観測した日数(黄砂観測日数)は11日でした。

日本における年別の黄砂観測日数(昭和42年(1967 年)~平成30年(2018年))

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 日本への黄砂の飛来は、例年3月~5月に集中しています。この時期は、①東アジアの砂漠域のような黄砂の発生源となっている地域で地面を覆う積雪がなくなる一方、まだ植物が芽吹いていないため乾燥した地面がむき出しで、砂じんが舞い上がりやすいこと、②大量の砂じんを舞い上げ、運ぶ強風の原因となる低気圧が通りやすい季節であることから、黄砂が多く飛来します。この時期以外にも、黄砂の発生源となっている地域が乾燥していて上空の風が日本へ向いて吹いているなどの条件がそろえば、日本に黄砂が飛来します。

 平成30年の月別黄砂観測日数は、4月は平年とほぼ同じでしたが、その他の月は平年を下回りました。

平成30 年(2018 年)の月別黄砂観測日数

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2節 オゾン層・紫外線

 上空に存在するオゾンは、フロン等による大規模なオゾン層破壊の影響で、1980年代から1990年代半ばにかけて世界的に大きく減少しました。その後は、国際的なオゾン層保護の取り組みにより、わずかに回復しています。国内でも、つくばなどの地点で地上から上空までのオゾンの総量(オゾン全量)を観測していますが、同様な傾向が見られます。また、南極域では1980年代初め頃から上空のオゾン量が極端に少なくなる南極オゾンホールが観測されています。オゾン層破壊の指標である南極オゾンホールの平成30年(2018年)の面積は、成層圏の気温が例年より低かったため最近10年間の平均よりも大きくなりましたが、平成12年(2000年)前後の顕著に大きかった規模には拡大しませんでした。

南極オゾンホール

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 紫外線の人体への影響度を示す紅斑(こうはん)紫外線量は、国内では観測を開始した1990年代初めから緩やかに増加しています。一般に、上空のオゾン量が減少すると地表に到達する紫外線は増加しますが、この期間、国内ではオゾン量は減少していません。大気中の微粒子が減少して紫外線が地上に到達しやすかったこと、雲が少ない天候が多かったことなどが紅斑紫外線量の増加の原因と考えられています。

日本国内の紅斑紫外線量年積算値の経年変化

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コラム

■南極オゾンホールの回復傾向

 大気中のオゾン層破壊物質の濃度と南極の気象状況が、オゾンホールの規模に影響を与えます。オゾン層破壊物質は、生産規制等の効果により、世界的に1990年代半ば以降緩やかに減少しています。一方で、南極の気象状況は年々変動が大きいため、オゾンホールの年々変動も大きく、これまで回復傾向については述べることができませんでした。

キャプション

 しかし、平成30年(2018年)は、南極上空の成層圏(50hPa(高度約20キロメートル付近))の気温が低く、オゾン破壊を促進させる極域成層圏雲が発達しやすい気象状況であったにもかかわらず、平成12年(2000年)前後の顕著に大きかった期間ほどの規模にはオゾンホールは拡大しませんでした。また、オゾンホールの年最大面積の変化傾向を見ると、平成12年以降は統計的に有意な縮小傾向を示しています。これらのことを総合すると、南極オゾンホールは回復傾向にあると考えられます。

 一方、大気中のオゾン層破壊物質の濃度は減少しているものの依然として高く、またオゾンホールの規模は大きい状態にあります。そのため、今後も監視を継続していくことが重要です。


3節 日射と赤外放射

 気象庁では、日射と赤外放射について地球環境や気候への影響を把握するため国内5地点(札幌、つくば、福岡、南鳥島、石垣島)で精密な日射放射観測を行い、全天日射、直達日射、散乱日射および下向き赤外放射の経年変化を監視しています。

 世界の多くの地域における全天日射量は、1960年頃から1980年代後半まで減少し、その後、2000年頃まで急激に増加し、その後は大きな変化が見られないという傾向が報告されています。

全天日射量の経年変化

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 日本における変化傾向(国内5地点平均)を見ると、1970年代後半から1990年頃にかけて急激に減少し、1990年頃から2000年代初めにかけて急激に増加し、その後は大きな変化は見られません。これは、世界的な変化傾向とほぼ整合しています。

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