用語集

C

CLIPS(Climate Information and Prediction Services)

 気候情報・予測サービス計画。世界気象機関(WMO)の世界気候計画(WCP)の事業計画の一つで、過去の気候資料や気候実況監視情報、気候予測情報を社会・経済の各分野で有効利用し、社会・経済・環境保護等の活動に資することを目指しているもの。

COSMETS(Computer System for Meteorological Services)

 気象資料総合処理システム。国内外の気象などの観測データを集信し、大気の状態を解析・予測し、その結果を国内外に配信する総合的な電子計算機システム。気象資料の編集・中継などの通信処理、端末でのデータ利用のための業務処理をするための気象情報伝送処理システム(アデス)と、解析・予測をするためのスーパーコンピュータシステムから構成されている。

D

DCPC(Data Collection or Production Centre)

 データ収集作成センター。WMO情報システム(WIS)において、気象に関する各種データの収集や資料の作成を行う。

E

EPOS(Earthquake Phenomena Observation System)

 地震活動等総合監視システム。気象庁本庁及び大阪管区気象台において日本全国における地震や津波の観測データをリアルタイムで監視し、緊急地震速報、津波警報・注意報、東海地震に関連する情報や地震・津波に関する情報等を防災機関、報道機関等に迅速に発表するシステム。気象庁本庁では、東海・南関東地域の地殻変動観測データの監視も行っている。

G

GAW(Global Atmosphere Watch)

 全球大気監視。温室効果ガス、オゾン層、エーロゾル、酸性雨など地球環境に関わる大気成分について、地球規模で高精度に観測し、科学的な情報を提供することを目的に、世界気象機関(WMO)が平成元年(1989年)に開始した国際観測計画。

GCOS(Global Climate Observing System)

 全球気候観測システム。気候系の監視、気候変動の検出や影響評価等の実施に必要な気候関連データや情報を収集し、幅広く利用できるようにするため、様々な観測システムやネットワークを国際的に調整するシステムとして1992年に設立された。世界気象機関(WMO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)、国連環境計画(UNEP)、国際科学会議(ICSU)が共同支援機関である。

GDPFS(Global Data Processing and Forecasting System)

 全球データ処理・予報システム。世界気象機関(WMO)の世界気象監視(WWW)計画の下で、WMO加盟国の利用に供するために気象の解析、予報資料を作成する体制。

GEOSS(Global Earth Observation System of Systems)

 全球地球観測システム。50以上の国並びに欧州委員会・世界気象機関(WMO)・国連教育科学文化機関及び国連環境計画等の40以上の国際機関が参加する、人工衛星観測と地上気象観測を組み合わせた複数の観測システムからなる地球観測のためのシステム。気象・気候分野のみならず、生物多様性の保護、持続可能な土地利用管理、エネルギー資源開発等といった成果をも目的としている。

GFCS(Global Framework for Climate Services)

 気候サービスのための世界的枠組み。気候変動への適応策をはじめとするあらゆるレベルの政策や意思決定に気候情報を活用し社会が気候リスク(気候によって影響を受ける可能性)を適切に管理し対応できるようにすることを目指す枠組み。世界気象機関(WMO)等が推進している。

GISC(Global Information System Centre)

 全球情報システムセンター。WMO情報システム(WIS)において世界の気象通信網の中核をなし、気象に関する各種データの交換や資料の管理を行う。気象庁はWMOからの指名を受け、世界に先駆けて平成23年8月から運用を開始した。

GNSS(Global Navigation Satellite System(s))

 GPS(GPSの項を参照)をはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称。

GOOS(Global Ocean Observing System)

 全球海洋観測システム。全世界の海洋の環境や変動を監視してその予測を可能にするための長期的で系統的な海洋観測システムを構築する国際的な計画。国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間海洋学委員会(IOC)、世界気象機関(WMO)などが共同で推進している。

GOS(Global Observing System)

 全球観測システム。世界気象機関(WMO)の世界気象監視(WWW)計画の下で展開されている地球規模の観測網。地上気象観測所、高層気象観測所、船舶、ブイ、航空機、気象衛星などから構成される。

GPS(Global Positioning System)

 全地球測位システム。人工衛星を用いて位置を決定するシステムで、一般にはカーナビゲーションシステムへの利用でなじみ深い。高い精度での位置決定が可能なGPSを用いることにより、地震あるいは火山現象などに伴う地殻変動の観測やラジオゾンデによる高層観測に利用している。また、大気中の水蒸気により電波の遅延が生じることを利用して、このシステムから得られる水蒸気に関する情報を数値予報に活用している。

GPV(Grid Point Value:格子点値)

 数値予報の計算結果を、大気中の仮想的な東西・南北・高さで表した座標(立体的な格子)に割り当てた、気温、気圧、風等の大気状態(物理量)。コンピュータで気象状態の画像表示や応用処理に適したデータの形態である。数値予報の計算もこのような立体的な格子上で物理量の予測を行う。

GTS(Global Telecommunication System)

 全球通信システム。世界気象機関(WMO)の世界気象監視(WWW)計画の下で、気象資料の国際的な交換、配信を行うために構築された全世界的な気象通信ネットワーク。

I

ICAO(International Civil Aviation Organization)

 国際民間航空機関。昭和19年(1944年)の国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づいて設立された、民間航空に関する国際連合の専門機関の一つ。

ICG/PTWS

(Intergovernmental Coordination Group for the Pacific Tsunami Warning and Mitigation System)

 太平洋津波警戒・減災システムのための政府間調整グループ。昭和35年のチリ地震により発生した津波が太平洋全域に甚大な被害を与えたことを契機として、太平洋において発生する地震や津波に関する情報を各国が交換・共有することにより太平洋諸国の津波防災体制を強化することを目的として設立された、IOC(次項参照)の下部組織のひとつ。昭和40年に太平洋津波警報組織国際調整グループ(ICG/ITSU)として設立され、平成17年10月に現在の名称へ変更された。平成28年12月現在、太平洋周辺の46の国又は地域が参加している。

IOC(Intergovernmental Oceanographic Commission)

 政府間海洋学委員会。昭和35年(1960年)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)内に設立された機関。海洋と沿岸域の性質と資源に関する知識を深め、その知識を加盟国における海洋環境の管理と持続可能な開発、保護及び政策決定プロセスに適用するために、国際協力を推進し、関連の研究やサービス及び能力開発のプログラムを調整している。

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)

 気候変動に関する政府間パネル。世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により、昭和63年(1988年)に設立された。各国の科学者や専門家で組織され、気候変動の(1)自然科学的根拠、(2)脆弱性・影響・適応策、(3)緩和策の評価を行い、報告書をとりまとめている。その報告書の内容は、地球温暖化に関する条約交渉の際などに、共通認識の情報として取り扱われている。

L

LIDEN(Lightning Detection Network System)

 雷監視システム。雷により発生する電波を受信し、その位置、発生時刻等の情報を作成するシステム。

N

NEAR-GOOS

(North-East Asian Regional Global Ocean Observing System)

 北東アジア地域海洋観測システム。全球海洋観測システム(GOOS)の北東アジア地域プロジェクトであり、参加各国が行った海洋観測のデータなどを即時的に国際交換するためのデータベースを運用している。日本、中国、韓国、ロシアが参加している。

W

WINDAS(Wind Profiler Network and Data Acquisition System)

 局地的気象監視システム。全国33か所に設置した無人のウィンドプロファイラ観測局とこれを制御しデータを自動的に収集する中央監視局で構成するシステム。

WIS (WMO Information System)

 WMO情報システム。従来の全球通信システム(GTS)による即時性・確実性が必要なデータ交換の効率化を進めるのに加え、各国国家センターに対して各種資料を効率良く検索・取得できるようにするために統一した情報カタログを整備・提供する統合気象情報通信網。中核をなす全球情報システムセンター(GISC)、データ収集作成センター(DCPC)、各国国家センター(NC)から構成される。

WMO(World Meteorological Organization)

 世界気象機関。世界の気象事業の調和的発展を目標とした国際計画の推進・調整を行うため、昭和25年(1950年)に世界気象機関条約に基づいて設立され、翌昭和26年(1951年)に国際連合の専門機関となった。平成27年(2015年)4月1日現在、185か国と6領域が構成員として加盟している(日本は昭和28年(1953年)に加盟)。事務局本部はスイスのジュネーブに置かれている。

WWW(World Weather Watch(Programme))

 世界気象監視。世界気象機関(WMO)の中核をなす計画であり、世界各国において気象業務の遂行のため必要となる気象データ・プロダクトを的確に入手できることを目的とする。全世界的な気象観測網(全球観測システム:GOS)、通信網(全球通信システム:GTS)、データ処理システム(全球データ処理・予報システム:GDPFS)の整備強化がこの計画の根幹となっている。

アデス

 気象庁本庁及び大阪管区気象台に設置された気象情報伝送処理システム。気象資料の編集・中継などの通信処理、端末でのデータ利用のための業務処理を行っている。

アメダス(AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)

 全国約1,300か所に設置した無人の観測所で、気温や降水量などを自動的に観測するシステム。アメダスはこのシステム(地域気象観測システム)の英語名の頭字語である。

アルゴ計画

 世界気象機関(WMO)及び国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間海洋学委員会(IOC)などの協力の下、国際的な枠組みにより、世界の海洋を常時観測するシステムとして中層フロート(チの項を参照)を全世界の海洋に約3,000台投入して、気候に大きく影響する海洋の状況をリアルタイムに把握することを目的として実施されている。アルゴとは、ギリシャ神話に出てくる船の名前(Argo)にちなんだもの。

アンサンブル手法

 初期値に含まれる誤差や数値予報モデルが完全ではないことにより生じる、予測結果の不確実性に関する情報を、多数の予測計算から抽出する方法。初期値の誤差を考慮する手法を「初期値アンサンブル手法」、数値予報モデルの不完全性を考慮する手法を「モデルアンサンブル手法」と呼ぶ。気象庁では初期値アンサンブル手法とモデルアンサンブル手法の両方を用いている。

異常潮位

 高潮や津波とは異なり、比較的長期間(1週間から3か月程度)継続して、潮位が平常より数十センチメートル程度高く(もしくは低く)なる現象。原因は、気圧配置・海水温・海流の変動など多岐にわたり、これらが複合して発生すると考えられている。

ウィンドシアー(wind shear)

 大気中の2地点で風の強さや向きが異なる状態のことで、風の空間的な急変域をいう。航空機の飛行に大きな影響を与える場合があり、航空路や空港での観測や予測が重要とされている。

ウィンドプロファイラ(wind profiler)

 電波を地上から上空に向けて発射し、主に乱流に起因する空気屈折率の不均一によって後方に散乱された電波を受信し、処理することにより、観測点上空の風向・風速を測定するレーダー。

エーロゾル(aerosol)

 大気中に浮遊している固体あるいは液体の微粒子。地表や海洋から舞い上がるものや、工業活動によって排出される煤煙などがある。太陽光の吸収・散乱や雲の生成などに影響する。

エルニーニョ現象

 太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象で、数年おきに発生する。ひとたびエルニーニョ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられている。

オゾンホール(ozone hole)

 フロンガスなどのオゾン層破壊物質の排出により、1980年代初めから南極域で春季にあたる9、10月頃を中心に成層圏のオゾン量の顕著な減少が観測されるようになり、この現象は、南極大陸を中心にオゾン層に穴のあいたような状態となることからオゾンホールと呼ばれている。

温室効果ガス

 地表面から放出される赤外線を吸収して大気を暖める効果(温室効果)をもつ気体(ガス)の総称。水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などがある。このうち、水蒸気を除くガスは人間活動に伴って増加しており、地球温暖化の原因物質として知られている。

海溝型地震

 太平洋側の千島海溝や日本海溝、南海トラフ等では、海洋のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいる。陸のプレートが海洋プレートに引きずり込まれることにより、プレート境界には徐々にひずみが蓄積していく。これが限界に達すると、プレート境界が急激にずれて地震が発生する。これら海溝に近いところで発生する地震を海溝型地震と呼ぶ。

解析雨量

 アメダスや自治体等の雨量計による正確な雨量観測と気象レーダーによる広範囲にわたる面的な雨の分布・強さの観測とのそれぞれの長所を組み合わせて、より精度が高い、面的な雨量を1キロメートル格子で解析したもの。

海流

 海洋のほぼ決まった場所をほぼ定常的に流れる大規模な流れ。代表的なものに日本の南岸を流れる黒潮や北大西洋のメキシコ湾流がある。

火砕流

 火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山体を流下する現象。火砕流の速度は時速数十キロメートルからときには百キロメートル以上に達し、温度は数百℃に達することもある。大規模な場合は地形の起伏に関わらず広範に広がり、埋没・破壊・焼失などの被害を引き起す。火砕流が発生してからの避難は困難なため、事前の避難が必要である。

火山ガス

 火山活動に伴い火口等から噴出する気体。噴火前になると、マグマの上昇に伴い噴出量の増加等が観測されることがある。火山ガスには人体に有害なものがあるが、それらは空気より重いため凹地に溜まりやすく、中には無色無臭のものもあり危険に気づきにくいこともあるので注意が必要である。高濃度の火山ガスを吸い込むと死に至ることもある。

火山性微動

 マグマの活動に起因する連続した地面の震動であり、火山活動が活発化した時や火山が噴火した際に多く観測される。

火山噴火予知連絡会

 火山噴火予知計画(昭和48年文部省測地学審議会(現文部科学省科学技術・学術審議会測地学分科会)建議)により、関係機関の研究及び業務に関する成果及び情報の交換、火山現象についての総合的判断を行うこと等を目的として、昭和49年に設置された。この連絡会は、学識経験者及び関係機関の専門家から構成されており、気象庁が事務局を担当している。

火山礫(れき)

 噴火によって噴出される噴石や火山灰などの固形状の物質は大きさによって分類されており、そのうちの一つ。直径が2~64ミリメートルのものを指す。なお、直径が64ミリメートルより大きいものを「火山岩塊」、2ミリメートルより小さいものを「火山灰」と呼んでいる。

ガストフロント

 積雲や積乱雲から吹き出した冷気の先端と周囲の空気との境界を指し、前線状の構造を持つ。降水域から周囲に広がることが多く、数10キロメートルあるいはそれ以上離れた地点まで進行する場合がある。地上では、突風と風向の急変、気温の急下降と気圧の急上昇が観測される。

活火山

 火山噴火予知連絡会では、平成15年(2003年)に活火山を「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定義した。現在、日本には110の活火山がある。

気候モデル

 気候を形成する大気、海洋、陸面などの諸因子を数値モデル化し(それぞれ大気大循環モデル、海洋大循環モデル、陸面モデルという)、これらを組み合わせコンピュータで計算して気候を予測する数値予報モデル。

緊急地震速報

 地震波には、比較的早く到達するP波(初期微動)と、遅れて到着し主要な破壊現象を引き起こすS波(主要動)がある。緊急地震速報とは、震源近傍の観測点のP波の観測データを処理することにより、震源からある程度離れた地域においてS波が到達する前に、地震の発生、震源の速報、主要動の到達時刻、その予測される震度などについて被害の軽減・防止を目的として可能な限り即時的に発表する情報のこと。

空振

 爆発により発生する空気の振動現象。火山の噴火、火砕流の流下などに伴い発生する。

クロロフルオロカーボン類(chlorofluorocarbons)

 塩素、フッ素、炭素からなる化合物で、オゾン破壊の程度の高い物質。代表的なものとしてCFC-11、CFC-12などがある。フロンともいう。

傾斜計

 地盤の傾きを測定する機器で、地震や火山活動に伴う地殻変動の監視に用いる。

黄砂

 アジア域の砂漠地帯(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠)や黄土高原などから舞い上げられた砂塵が、上空の強い風によって東方へ輸送され、徐々に降下する現象。日本における黄砂現象は、春先から初夏にかけて観測されることが多く、空が黄褐色に煙ることにより、一般にもよく知られた現象である。現象が著しいときは、視程の悪化により交通機関へ影響を与える場合がある。

自己浮上式海底地震計

 海底に設置する地震計で、記録装置とともに船舶などから投下し海底に沈めて、一定期間の観測終了後に海面上に浮上させ回収する方式のもの。データを記録できる期間は数か月程度で、継続的な監視のための常時観測には向かないが、ケーブル式海底地震計より安価で、機動的な調査のための観測に用いられる。

地震計

 地震動を計測する機器。複数の観測点における、地震波が到達した時刻や地震波の振幅などから、地震の発生場所、深さ、規模(マグニチュード)が推定できる。

地震動

 地震波が地表に到達したときの地面の揺れ。

地震波

 地下で生じる岩盤の破壊は、ある面(断層)を境に互いがずれるように起こる。これを断層運動といい、それに伴い地震波が生じる。地震波は、地球の内部を伝わる縦波(P波)と横波(S波)、地球の表面に沿って伝わる波(表面波)に大別できる。

地震防災対策強化地域判定会

 地震防災対策強化地域に係る大規模な地震**の発生のおそれの有無につき判定するために組織され、学識経験者(現在は6名)から構成される。気象庁は、東海地域の観測データに基準以上の異常が現れた場合、同会を開催し、委員の意見を踏まえ、「東海地震注意情報」を発表する。さらに異常な観測データが前兆すべりによるものと判定され、東海地震の発生のおそれがあると認めた場合に、気象庁長官はその旨を内閣総理大臣に報告する。報告を受けた内閣総理大臣は閣議に諮った後「警戒宣言」を発令する。(東海地震に関連する情報発表の流れについては89ページの図参照)

*:大規模地震対策特別措置法の規定に基づき内閣総理大臣が指定する。

**:現在は東海地震を対象としている。

震源

 断層運動の際に、岩石の破壊(ずれ)が始まり地震波を発生させた最初の地点。震源域は、断層運動により地震波を発生させた領域全体を指し、断層運動によって生じた岩石の破壊面とほぼ同じである。震源域の長さ(差し渡し)は、マグニチュード7の地震で数十キロメートル程度、マグニチュード8では100キロメートルを超えることがある。

震度

 地震動の強さを表す尺度であり、地表での揺れの程度を意味する。震度は揺れの強い方から「7」、「6強」、「6弱」、「5強」、「5弱」、「4」、「3」、「2」、「1」、「0」の10段階の階級で表現する。一般に、地震の震源域に近い場所ほど震度は大きく、またマグニチュードが大きい地震のときほど、各地の震度は大きくなる。

震度計

 地震動を計測し、観測地点における震度(計測震度)を自動的に算出する機器。計測震度の算出には、計測した地震動の加速度の振幅や周期等を用いる。

深部低周波地震(微動)

 深さ約30km~40kmで発生する、周波数の低い(周期の長い)波が卓越する地震のことを言う(P波やS波が明瞭でなく震動が継続するものは「深部低周波微動」と呼ばれる)。長野県南部~日向灘にかけてのプレート境界では、深部低周波地震(微動)が見られる。

スーパーコンピュータシステム

 数値予報モデル等による解析・予測および静止気象衛星(ひまわり)に代表される衛星データ処理に用いるスーパーコンピュータを中核としたシステム。

水蒸気爆発

 マグマから伝わった熱により火山体内の地下水が加熱され生じた高圧の水蒸気によって起こる噴火である。

数値予報

 物理の法則に基づき、将来の気温、気圧、風などの大気や海洋の状態を数値として予測する技術。この計算には、膨大な演算処理が必要であるため、スーパーコンピュータが使われる。計算に用いられるプログラムを数値予報モデルと呼ぶ。

静止気象衛星

 赤道上空約35,800キロメートルの高さにあって、地球の自転と同一周期で地球を周回しながら、常に地球上の同じ場所の気象観測を行う衛星。我が国の「ひまわり」のほか、米国のGOES、欧州のMETEOSATなどが運用されている。

静止気象衛星「ひまわり」(Himawari)

 気象庁の運用する静止気象衛星「ひまわり」8号及び9号を指す。従来の「ひまわり」という和名の愛称を受け継ぎ、8号及び9号から英名も「Himawari-8」「Himawari-9」とした。「ひまわり」8号及び9号の気象観測機能は、「ひまわり」6号及び7号と比べ、画像分解能が向上、観測間隔が短縮、画像の種類が増加し、防災のための監視機能を強化すると共に、気候変動や地球環境の監視機能も強化する。8号を平成26年(2014年)に、9号を平成28年(2016年)に打ち上げ、2機あわせて15年間の観測を行う。

成層圏

 対流圏と中間圏の間にある大気圏。昭和36年(1961年)に世界気象機関(WMO)は、「対流圏界面(高さ6~18キロメートル)と成層圏界面(50~55キロメートル)との間にあり、一般に気温が高さとともに高くなる領域」と定義した。

世界気象機関

 →WMO(World Meteorological Organization)参照

前兆すべり

 地震は、まずゆっくりとしたすべりで始まり、やがて急激な断層運動となり、地震発生に至ると考えられている。この地震発生の前段階における断層のゆっくりした動きを前兆すべり(プレスリップ)と呼ぶ。

台風

 北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速がおよそ毎秒17メートル以上のもの。

ダウンバースト

 積雲や積乱雲から生じる強い下降気流を指し、地面に衝突し周囲に吹き出す突風を生じる。地上では、発散性の突風のほか強雨・雹とともに露点温度の下降を伴うことがある。被害域は円または楕円状となることが多い。また、強い低層ウィンドシアーを起こす現象の一つであり、航空機の離着陸に大きな影響を与える。周囲への吹き出しが4キロメートル未満のものをマイクロバースト、4キロメートル以上のものをマクロバーストとも呼ぶ。

高潮

 台風や発達した低気圧などに伴う気圧降下による海面の吸い上げ効果と風による海水の吹き寄せ効果のため、海面が異常に上昇する現象。

竜巻

 積雲や積乱雲に伴って発生する鉛直軸を持つ激しい渦巻きで、漏斗状または柱状の雲や、陸上では巻き上がる砂塵、海上では水柱を伴うことがある。地上では、収束性や回転性を持つ突風や気圧降下が観測され、被害域は帯状・線状となることが多い。

中層フロート(アルゴフロート)

 海面から深さ2,000メートルまでの間を自動的に浮き沈みしながら水温・塩分を観測し、そのデータを人工衛星経由にて通報する観測機器。アルゴ計画(アの項を参照)において主要な観測機器として用いられている。中層フロートから通報されたデータは、直ちに気象データ交換のための全球通信システム(GTS)を通じて国際的に交換され、海水温予測やエルニーニョ現象の監視・予測などの気象・海洋業務に利用されている。

潮位

 基準面から測った海面の高さで、波浪など短周期の変動を除去したもの。

長周期地震動

 大きな地震が発生したときに生じる、周期が長い揺れ。長周期地震動により、高層ビルは大きく長時間揺れ続ける。また、長周期地震動は遠くまで伝わりやすい性質があり、地震が発生した場所から数百km離れたところでも大きく長く揺れることがある。長周期地震動による大きな揺れにより、家具類が倒れたり・落ちたりする危険に加え、大きく移動したりする危険がある。

長周期地震動階級

 長周期地震動の揺れの大きさの指標で、高層ビルの高層階における人の行動の困難さの程度や家具類等の移動・転倒などの被害の程度から区分したもの。揺れの大きい方から「階級4」、「階級3」、「階級2」、「階級1」の4段階で表現する。

津波

 海底下の浅いところで大きな地震が起きると、海底が持ち上がったり下がったりする。その結果、周辺の広い範囲にある海水全体が短時間に急激に持ち上がったり下がったりし、それにより発生した海面の変動が波として周囲に広がっていく現象。津波が陸地に近づき水深が浅くなると、速度は遅くなるとともに、津波の高さは急速に高くなる。

津波地震早期検知網

 津波の発生の有無を即座に判定するための地震観測網。各観測点からの地震波形データは本庁、各管区気象台および沖縄気象台に伝送され、地震の位置・規模を迅速に推定することにより津波の有無の判定を行っている。

データ同化技術

 気象台などが行う地上気象観測や高層気象観測のように、ある決まった時刻に行われる観測に加えて、衛星観測のように特に観測時刻が定まっていない観測など、様々な観測データを数値予報の「初期値」(予測計算を開始する時刻の気温や風速などの大気の状態を表す物理的な数値)として活用するための手法。

東海地震

 過去の大規模な地震の発生間隔などから、駿河湾から静岡県の内陸部のフィリピン海プレートと陸のプレートの境界を震源域として、いつ発生してもおかしくないと考えられているマグニチュード8クラスの海溝型地震で、現在日本で唯一、防災対策に結びつけられる短期直前予知の可能性がある地震。

東南海地震及び南海地震

 過去の大規模な地震の発生間隔などから、紀伊半島沖から四国沖付近のフィリピン海プレートと陸のプレートの境界を震源域として、今世紀前半にも発生する可能性が高いとされるマグニチュード8を超える海溝型地震。

熱帯低気圧

 熱帯又は亜熱帯地方に発生する低気圧のうち、最大風速がおよそ毎秒17メートル未満で台風に満たないもの。台風も含めて熱帯、亜熱帯地方に発生する低気圧の総称として用いることもある。

ハザードマップ(hazard map)

 ある災害に対する危険な地区が記入されている地図。火山噴火、地すべり、山崩れ、洪水、高潮、土石流、なだれなどの現象に対して、それぞれ作成されている。

波浪

 海面の波のうち、風によって引き起こされるものの総称。その場所で吹いている風によって起った「風浪」と、他の場所で風によって生じた波がその場所まで伝わって来た「うねり」がある。

ひずみ計

 地下の岩盤の伸び・縮みを非常に高感度で観測する装置。気象庁では、東海地震の短期的な前兆と考えられる地殻変動を捉えることを目的として、地下数百メートル程度の深さに円筒形のセンサーを埋設し、周囲の岩盤から受ける力によって変形する様子を極めて高い精度で検出し、監視している。センサーには、変形による体積の変化を測定する体積ひずみ計と、水平面内の方位ごとの変形の量も測定できる多成分ひずみ計がある。

ヒートアイランド現象(heat island phenomenon)

 人工的な熱の排出や、人工的な地表面及び建築物の増加により、都市の気温が周囲よりも高い状態になる現象。等温線が都市を丸く取り囲んで、気温分布が島のような形になることから、このように呼ばれる。

藤田スケール

 藤田スケールとは、竜巻やダウンバーストなどの風速を、建物などの被害状況から簡便に推定するために、シカゴ大学の藤田哲也により昭和46年(1971年)に考案された風速の尺度。竜巻やダウンバーストなどは現象が局地的なため、風速計で風速を観測できることがほとんどないことから、このような現象における強い風を推測する尺度として世界的に用いられている。藤田スケールは「Fスケール」とも呼ばれ、F0からF5の6段階に区分されている。過去に日本で発生した竜巻のうちで最もFスケールの大きかったものはF3。

プレート

 地球表面を覆う厚さ数10キロメートルから100キロメートル程度の固い岩石の層。地球表面は大小合わせて十数枚のプレートで覆われており、日本周辺は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートの4枚のプレートが接する境界に位置している。

プレートテクトニクス(plate tectonics)

 地震活動、火山活動、地殻変動などの地球表面の地学現象を、地球表面を覆っている複数のプレートの相対的な運動から生じるものとして統一的に説明・解明する学説。

噴火警戒レベル

 火山活動の状況に応じた「警戒が必要な範囲」(生命に危険を及ぼす範囲)と、防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分した指標で、噴火警報、噴火予報で発表する。各火山の地元都道府県等が設置する火山防災協議会で共同検討を行い、火山活動の状況に応じた避難開始時期・対象地域が設定された火山で運用を開始している。平成19年12月1日から順次運用を開始。

噴火警報

 火山現象に関する警報。噴火に伴って、生命に危険を及ぼす火山現象(大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流等の避難に時間的猶予がほとんどない現象)の発生やその危険が及ぶ範囲の拡大が予想される場合に、「警戒が必要な範囲」を明示して発表する。

噴石

 噴火に伴って火口から噴出する石は、その大きさや形状等により「火山岩塊」、「火山れき」、「火山弾」等に区分される。気象庁では、防災情報で住民等に伝える際には、これらを総称して「噴石」という用語を用いている。噴石は、時には火口から数キロメートル程度まで飛散することがあり、落下の衝撃で人が死傷したり、家屋・車・道路などが被害を受けることがある。

マグニチュード(magnitude)

 地震(断層運動)の規模の尺度。一般にMという記号で表され、観測された地震波をもとに算出される。Mの値が1大きくなると地震のエネルギーは約30倍になる。

民間気象業務支援センター

 気象庁は、予報業務許可事業者その他民間における気象業務の健全な発達を支援し及び産業、交通その他の社会活動における気象情報の利用促進を図るため、「民間気象業務支援センター」を指定できることになっている。現在、(一財)気象業務支援センターが気象庁長官よりその指定を受けている。

有害紫外線

 紫外線の中でも特に、波長280~315ナノメートルの紫外線(B領域紫外線、UV-B)は、オゾンによる吸収が大きいことからオゾン層の破壊の影響を最も強く受け、かつ、生物にとって有害であることから、一般に有害紫外線と呼ばれている。オゾン層破壊に伴い、地上に到達する有害紫外線量の増加による皮膚がん、白内障など健康被害の増加が懸念されている。

 *:1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1(10億分の1メートル)

余震

 比較的大きな地震(本震)が発生した後、その近くで続発するより小さな地震。震源が浅い大きな地震は、ほとんどの場合、余震を伴う。余震の数は本震直後に多く、時間とともに次第に少なくなる。大きな余震による揺れは、場所によっては本震の揺れと同じ程度になることがある。壊れかけた家や崖などに注意する必要がある。なお、気象庁では、さらに規模の大きな地震についての注意を怠ることのないよう、防災上の呼びかけにおいては「余震」ではなく「地震」という言葉を使用する。

4次元変分法

 数値予報モデルが短時間(例えば3時間程度)に予測する、風、気温、降水量などの様々な物理量と、地上の様々な場所や時刻に実際に観測される物理量との差が最小になるようにするデータ同化技術。空間(3次元)の観測値の分布に加えて、時間的な分布も考慮されることから4次元と称される。

ライダー(lidar : Light Detection and Ranging)、ドップラーライダー

 レーザー光の短いパルスを大気中に発射し、雲、エーロゾル、大気分子からの散乱光を受信することによりそれらの濃度の高度分布を遠隔測定する装置のことをいう。レーザーレーダーとも呼ばれる。また、ドップラー効果を利用して上空の風の情報を得る機能を備えた装置をドップラーライダーという。

ラジオゾンデ(radiosonde)

 センサーと無線発信器を一体とした気象測器のこと。水素又はヘリウムを詰めた気球に吊して上空に飛揚し、気圧・気温・湿度・風など大気の状態の測定に使用する。

ラニーニャ現象

 エルニーニョ現象(エの項を参照)とは逆に、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象で、数年おきに発生する。ひとたびラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられている。

レーダー(radar:Radio Detection and Ranging)、ドップラーレーダー

 パルス状の電波を大気中に発射し、雨粒や雪からの反射波を受信することにより降水の水平分布や高度などを遠隔測定する装置のことをいう。また、降水の分布や強さなどの観測に加え、電波のドップラー効果を利用して上空の風の情報を得る機能を備えたレーダーをドップラーレーダーという。

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