第1部 気象業務の現状と今後

3章 気象業務の国際協力と世界への貢献

日々の天気予報や警報・注意報の的確な発表のためには、全世界の気象観測データや技術情報の相互交換など国際的な協力が不可欠です。気象庁を含む世界各国の気象機関は、世界気象機関(WMO)等の国際機関を中心とした連携体制や、近隣諸国との協力関係を構築しています。

1 世界気象機関(WMO)を通じた世界への貢献

WMOは、世界中の気象等の観測とデータの収集、配布を促進し、また気象や気候の情報を改善させることなどを任務として活動している国際連合の専門機関の一つです。気象庁は、WMOの構成員として、国際会議への専門家の派遣、国際的なセンター業務を担当するなど、活発に活動しています。

WMOの会議の様子

写真。WMOの会議の様子

WMOの執行理事会で発言する気象庁長官(スイス・ジュネーブ)。

WMOの組織

図。WMOの組織

気象庁は、アジア地区における気象機関の要としての役割を果たしてきており、歴代気象庁長官は執行理事としてWMOの運営に参画しています。また、気象庁の多くの職員が、専門家として専門委員会や地区協会の活動に貢献しています。

2 国連教育科学文化機関(UNESCO)を通じた世界への貢献

UNESCO政府間海洋学委員会(IOC)は、世界気象機関(WMO)とも協力し、各国の海洋に関する科学計画の調整を行っています。気象庁は、海洋・津波分野での技術的貢献をしています。

1 北東アジア地域海洋観測システム地域リアルタイムデータベース

日・中・韓・露が協力し、北東アジア域の海洋、海上気象データの収集、解析、提供を行っています。

2 津波の警報に関する国際協力

北西太平洋で発生した地震によって起きた津波情報を各国に提供するとともに、各国からの情報を収集して国内の津波防災情報に役立てています。

日本周辺海域の海面水温

図。日本周辺海域の海面水温

収集したデータから解析した海面水温の分布。暖色系ほど水温が高いことを示します。

津波発生時に津波情報を各国に提供る日本の担当海域

図。津波発生時に津波情報を各国に提供る日本の担当海域

提供した津波情報は、受領した各国が、国内への津波警報発表や住民への避難勧告などの緊急津波防災措置を行うために活用されています。

3 国際民間航空機関(ICAO)を通じた世界への貢献

ICAOは国連の専門機関の一つであり、国際民間航空の健全な発達のために設立されました。気象庁は、ICAOが主催する航空気象に関する会合に積極的に参加し、航空気象業務の国際的な統一基準の策定や高度化に向けた検討に参画しています。また、ICAOの指定を受けて、東京航空路火山灰情報センター、熱帯低気圧情報センター等の国際的なセンター業務を担当し、世界の航空機の安全運航に貢献しています。

4 国際的な技術開発・研究計画との連携

気象業務の充実・改善のためには、数値予報モデルの開発・改良に代表される技術開発が不可欠です。気象庁は、各国と協力して様々な国際的な研究計画を進めています。

とりわけ地球温暖化問題については、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の活動に対し、昭和63年(1988年)の設立以来、気象研究所の研究者が評価報告書の執筆者として参画しているほか、気候モデルによる地球温暖化予測をはじめとする研究成果が評価報告書に盛り込まれる等、積極的に貢献しています。

5 開発途上国への人材育成支援・技術協力について

開発途上国の国家気象機関の技術向上のための支援は、その国の防災活動の強化につながる重要な活動であるだけでなく、精度ある観測データが地球全体で充実することを通じて、日本国内の予報精度の向上にもつながります。

気象庁は、開発途上国の国家気象機関の職員を対象に、気象業務の改善のための集団研修を国際協力機構(JICA)とともに40年以上にわたって実施してきました。研修生の多くは現在、世界各国の気象機関において指導的な立場で活躍しています。また、WMOや各国個別の要請に応じて、気象等の観測、解析、予報に関する分野で気象庁職員を専門家として派遣し、また、各国国家気象機関等から研修生を受け入れています。

気象庁が国際協力機構(JICA)とともに実施する集団研修

写真。気象庁が国際協力機構(JICA)とともに実施する集団研修

衛星画像の解析について講義を受ける研修生。

気象庁異常気象情報センターが実施する地球温暖化予測情報作成に関する研修セミナー

写真。気象庁異常気象情報センターが実施する地球温暖化予測情報作成に関する研修セミナー

地球温暖化予測情報作成の実習風景。

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